「24時過ぎても帰ってこないのは…」iPadで夫の位置情報を監視する、妻の悲哀とは
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これは国税庁の『統計年報』から推計する、日本で年収が1億を超える人の割合だ。
年収数千万単位を稼ぐ男性なら、東京ではそこそこ出会える。
だが“ミリオネア”に出会える確率は超レア。もしそんな男性と出会い、仮に独身だったらそれはほぼ奇跡に近い。
だが彼らを射止める可能性だってゼロではないのだ。
では”ミリオネア”を射止めた妻たちとは一体どんな人物なのか?その生態を探ってみよう。
【シリーズBの男を狙い撃ちした女】
名前:紗代
年齢:35歳
職業:専業主婦(一児の母)
夫の職業:上場企業の社長(創業者)
外銀や商社マンには、早々に見切りをつけた
「お食事会かぁ…。いいわね、楽しそう」
麻布十番の『カラペティ・バトゥバ』で、紗代は微笑んだ。
今日はCA時代の後輩との食事で、集まった4人のうち2人は独身。
先週外銀の誰と食事会したとか、幼稚舎上がりの商社マンとのデートはどうだったか、などの話で盛り上がっている。
―懐かしいな、この感じ。
紗代はワインを1人飲みながら、明日意中の相手とデートだというのに明らかに飲み過ぎている後輩のために、水を頼んだ。
紗代も20代の頃は、いわゆる“婚活女子”だった。
女子大生の頃から数えきれないほどの食事会に参加し、当時から人気だった外銀や商社マンの人たちと散々遊んだ。
でもある日、ふと気づいたのだ。
外銀や商社マンは、エリートだし稼いできてくれる。でもしょせんはサラリーマンのそれだし、業界的に成長性があるとは言い切れない。だったらどうせなら、“ミリオネアの妻”になりたい、と。
そう思った紗代はすぐにターゲットを変え、そしていまの夫となる裕一と結婚した。
裕一は起業家で、会社は2年前に上場。
当時まだ資金調達の段階がシリーズ“B”だった彼を狙い撃ちしたのだ。シリーズ“B”を狙え!婚活女子の恐るべし先見の明とは…?
「経営者と結婚したい」
そういう女性は多いけれど、一度冷静になって考えてみてほしい、と紗代は思う。
きっと彼女たちが想像している経営者とは、既にIPOを果たした人とか老舗企業の御曹司とか、滅多に出会えない確率の人たちだ。
だけどそういう人たちは、まず普通の女性とは付き合わない。
一般女性といったところで、東大出身の外銀セールス美女とか、アナウンサーとかそのレベルだろう。
どちらの肩書も持たない紗代が辿り着いたのが、若手の起業家だった。しかも資金調達の段階がシリーズBくらいだったら尚良し。
なぜならシリーズBの段階なら、少し頑張れば出会えるから。
それにエリートサラリーマンとの結婚と比べたら博打だけど、上場やEXITを果たせば“ミリオネアの妻”になるのだって夢じゃない。
シリーズ“B”との出会い
裕一と出会ったのは、起業してもう20年経ち、会社を “メガベンチャー”まで成長させた松田さんの紹介だった。
紗代は当時、顔が広い友人のツテでベンチャー界隈の人たちの食事会にしょっちゅう顔を出していた。そして徐々に、ベンチャー界隈は結びつきが強く、上下関係もきっちりしていることが分かってきた。
そこで紗代は、若い子から慕われていて頻繁にパーティを開いている松田さんと仲良くなり、色んな会に呼ばれることにまず成功した。
その日も松田さんの広尾にある別宅(家族は成城に住んでいる)で、彼の後輩の上場祝いをしていた。
そこに現れたのが、裕一だった。
裕一はいわゆる“ヒョロ眼鏡”の、冴えない感じの男の子だった。
そのパーティは上場祝いということだけあって豪華だった。部屋中にカラフルなバルーンが浮き、年代もののワインが振舞われ、一流店のシェフが料理を準備していた。
そうした場所にジーパンで来た裕一は、こういう会に明らかに慣れてなさそうで、キョロキョロと辺りを見回している。
「裕一、こっちこっち」
松田さんが裕一を呼び寄せた。当時から彼は裕一をかなり可愛がっていて、「紗代ちゃんさぁ、こいつと仲良くしてやってよ」と紗代に言ったのだった。
―彼、いいかも。
それは紛れもなく直感だ。
そして男2人の会話を横で聞きながら、その直感は確信へと変わっていった。
裕一は家柄は普通そうだったが、学歴は松田さんと同じで、筑駒から東大のエリートコース。会社名をググったら、シリーズBラウンドで先日13億の資金調達に成功したという記事が出ていた。
そして一番の決め手になったのが、事業に集中していて女慣れしていなかったこと。
だから紗代は裕一の隣に座り、まず彼が事業への思いを熱く語るのをひたすら聞いた。(当時起業家とよく飲んでいた紗代は、彼らの話がきちんと理解できるよう、毎朝日経とテック系メディアが出す記事を欠かさずチェックしていた。)
そして彼が好きだと言う漫画やアニメの話で打ち解けさせ、時折自分が知っている知識も嫌味がない程度に話した。
そこから付き合うまでは、トントン拍子だった。
毎日の電話に、2回のデート(3回のドタキャンとデート当日は30分の待ちぼうけを経て実現、店はもちろん近所の適当な店)を経て、紗代たちは結ばれたのだった。
でも、シリーズ“B”男と付き合うのは、予想以上にキツかった。
とにもかくにも彼は人生の全てを事業に捧げていたから、普通のカップルだったらできる全てのことが難しかったのだ。起業家とのリアルな交際事情とは・・・?
付き合ってからは彼の並木橋にある1LDKのマンションで、毎日会うようになった。
紗代は当時外資航空会社のCAを辞めて、投資ファンドの秘書をしていた。定時で終わる仕事だったので余裕があり、仕事終わりに近くのスーパー『ライフ』で夕食の買い出しをして食事を作り、彼の帰りを待った。
付き合いたての時期は、これがかなりしんどかった。
暇だから彼の家で一人、SNSを見ている。すると友人たちはお洒落なレストランに行って、彼に買ってもらったプレゼントや旅行先をあげているのに、自分は狭い部屋で1人、ただ彼の帰りを待つだけ。
付き合ってから結婚するまで1年弱だったが、その間に外食をした記憶は、数える程度だ。(ちなみに旅行はこの間初めて行ったくらい。会社が上場したお祝いに近場の温泉に1泊のみ。)
彼は家に帰ってきても深夜2時くらいまでは仕事、土日も仕事、たまの会食は先輩起業家に呼び出されるか、採用のためだけだ。
だから紗代も途中何度もしんどくなって、こっそり他の男性と食事に行ってみたり、本当に彼でいいのか悩んだりしたものだ。
でもなぜ紗代がここまで「お金持ちとの結婚」に執着したのかというと、全ては生まれ育った環境だ。
紗代は郊外の中流階級で生まれ育ったが、父親は零細企業のサラリーマン、母親は専業主婦。食うには困らなかったけど決して余裕はなかった。
紗代は昔から勉強ができたので何とか大学に通わせてもらえたが、妹は「お姉ちゃんが大学に行ったから」という理由で2年制の専門学校を選ぶしかなかった。
それを妹から聞かされたときは、とても辛かった。
だから紗代は、お金で将来を諦める人生にはしたくなかったのだ。そう思ったときに、女性が考える手段は2つ。玉の輿にのるか、自分で成功するか、だ。
もちろん自分で稼ぐ将来も考えたが、そうなるには時間がかかり過ぎる。きちんとキャリアを積んで経済力をつけるには、きっと10年はかかるだろう。そこから結婚して子供をもつのは遅すぎると考えたのだ。
だからこそ裕一との結婚に賭けた。
…でもこれが果たして正解だったのか、自分でも分からない。
裕一と結婚出来て彼の事業も安定してきて、そろそろ第2子を作ろうか、と話している自分たち夫婦は紛れもなく幸せだ。
それに最初は計算高く彼に近づいたけれど、常にストイックに夢を追っている彼のことを心から尊敬するようになったし、いろんな壁を乗り越えた夫婦の絆はとても強い。
でも一緒にいるこの数年間、彼は事業のことしか頭になく、紗代に目が向いていたのは最初の数か月だけだったように思う。
それに…信じたくはないけれど、最近彼に薄っすらと女性の影を感じる。
毎日24時、定時のように帰ってきていた彼の帰宅時間が、最近バラバラなのだ。
だから紗代はこっそり夫のiPadで携帯の位置情報を確認するようになった。
今日食事した後輩たちは「私はできないけど、紗代さんは勝ち組」としきりに言う。
噂によると、いま私のようなステージ“B”男子を狙う女性が増えてきて、その段階にいる男性には、先輩から“女には気をつけろ”なんてお触れがでているようだ。
でも私は言いたい。
強靭な精神の持ち主でなければ、ミリオネアの妻になるために“起業家”を狙うのは、辞めておいた方がいい。
時刻は24時04分。夫はまだ帰ってこない。
紗代は1人、南麻布の高級マンションで彼の帰りを待ちながらそう思うのだった。
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