「私は、自分自身に勝てればいい」どんなときも揺らがない、乃木坂46・山下美月の強さ

インターネットやSNSの普及により一層、誰しもが人からの評価を意識せずにはいられなくなった。それが日本を代表するアイドルグループの一員となれば、なおさら多くの声が耳に入ってくるはずだ。

しかし乃木坂46・山下美月は、揺らぐことなくこう語る。「私は、自分自身に勝てればいい」。

周囲の声を真摯に受け止めながらも流されず自分の糧とできる強さは、いかに養われたのか。冷静で思慮深く、まっすぐ芯の通った山下の言葉から、そのヒントが得られた。

撮影/曽我美芽 取材・文/木口すず 制作/iD inc.

まっすぐな芯を持っているツバメと、自分が重なった

山下さんは、今春放送されたTVドラマに引き続き、絶賛公開中の映画『映像研には手を出すな!』でもアニメーター志望の人気読者モデル・水崎ツバメ役を演じられています。まず原作の漫画を読んだ感想から教えてください。
ジャンル分けできない、不思議な作品だなと思いました。部活モノと言うよりはプロの仕事の話!という感じだし、青春モノと言うには熱量がスゴくて(笑)。とても個性的な原作だったので、これが映画になったら今までにない作品になりそうだなと感じました。
ドラマに先行して2020年1月からはアニメも放送され、好評を博していましたが、そちらもご覧になりましたか?
観ました。私たちはアニメの放送開始前にクランクインしていたので、撮影中盤頃になって初めてアニメを観て「スゴいね…」と。(齋藤さん、梅澤さんを含めた)3人それぞれ、そう思ったと思うんですけど。

(原作の)大童(澄瞳)先生のタッチってけっこう独特というか、先生にしか描けない作画だなと思っていて。でもアニメではそこを忠実に表現しつつ勢いもつけていて、本当に素晴らしかったです。

個人的には、アニメのツバメちゃん(声/松岡美里)が、自分の思うツバメちゃんと同じ解釈だったことに安心しました。もちろん声優さんが演じられているから、私とは声の感じなどは違いますけど、「こういう子、こういう子!」って。
ツバメをどんな性格の女の子だと思いましたか?
ツバメちゃんはとにかくまっすぐで、めちゃくちゃ性格がいい女の子だなと。映像研のほかのふたりが言えないようなことでもズバッと言っちゃうんですけど、周りも彼女の素直さをわかっているから憎めないし、嫌な気分にもならないんですよね。

ただ演じるうえでは、本当に嫌味なく演じないとその部分が表現できないと思ったので、監督としっかり相談して演じました。
そのなかで、山下さんが心がけたことは?
二次元にしか出せないよさを、どうやって三次元に持ってくるか…というところはすごく大事に考えたところです。漫画のタッチを生身の人間が実写で表現するとなると、難しい部分も多いので。まずは見た目を原作やアニメに寄せようと、頑張りましたね。
ツバメとご自身で、似ていると感じるところはありましたか?
ツバメちゃんは自分の意見を大事にしていて、周りからどう言われようと自分の芯は曲げないタイプ。アニメーターという大変な道を選んだところに、その芯の強さを感じます。

私も芸能界に入るときは、「一度入ったら戻れない場所」というイメージがあったのですが…後戻りはできないけどやってみたい!と決心して、今ここにいます。そういうところが自分と重なるなと思いました。
両親から俳優になるようにと将来を決められていたツバメですが、山下さんはご両親に乃木坂46に入りたいと話したとき、反対されたりしませんでしたか?
両親はあまり私のすることに反対しないタイプなので応援してくれていましたが、私が思い詰めやすい性格だったこともあって、その点は心配していましたね。

どの世界もそうですけど、芸能界も大変なことや苦しいことが多い場所なので…。「そううまくはいかないよ」とは言われていて。でも今では喜んでくれているので、本当によかったなと思っています。

賛否両論も覚悟のうえ。私たちはただ全力を尽くすだけです

公式サイトには「アイドルが主役で大丈夫か?」と書かれていますが、実写化作品でメインキャラを演じることへの不安やプレッシャーはありましたか?
私はこれまで原作がある作品の実写化に出演することのほうが多くて、二次元を三次元にする面白さや大変さをたくさん経験してきました。そのなかで原作ファンの方が物足りなさを感じていたり、「原作と実写が違う」という意見を耳にしたりすることも、数え切れないほどあったんです。

もちろん原作ファンの方のそうした気持ちも、痛いほどわかります。だからこの作品も、やっぱり賛否両論あるだろうなと。

でも、そういう厳しい意見も受け止める覚悟で、私たちはこの役をやらせていただくと決めて撮影に臨んでいたので。全力を出し尽くして頑張れましたから、あとはただもうみなさんに映画を観ていただくだけだな、と思っています。
そうした心構えを持っていられる強さがカッコいいです。
あはは、全然。3期生として乃木坂46に加入した当初は、私もアイドルが好きだったので、“オリジナルメンバーの大事さ”を理解している以上、乃木坂46の一員として認めてもらえるように最初は必死でした。

その一方で、私たちが後輩として入ってきた意味って、何なんだろう…?と考えたりもして。私たち3期生だって「グループをよくしたい!」という想いは全員共通で持っているし、ただただ一心に頑張りたいという気持ちでやってきています。

実写化に関わるときって、それと本当に同じで。私たちも覚悟を持ってやっているのでどうぞよろしくお願いします…!と。そういう礼儀は忘れずに、乃木坂46の活動もお芝居の活動もやらせていただいています。
映像研の監督であり3人の軸となる浅草みどり役・齋藤飛鳥さん、プロデューサー的立場で金策に走る金森さやか役・梅澤美波さんは、同じ乃木坂46のメンバーです。今回の共演を通じて感じた、おふたりの尊敬できるところは?
ふたりともセリフ覚えが素晴らしいですし、真面目な性格なのでしっかり(演技プランを)固めてきていて。そのうえ梅(梅澤さん)は現場でも徹底的に台本を読み込んでいたし、逆に飛鳥さんは現場でほとんど台本を見ないんですよ。たぶん家とか移動中に、頭に入れていたんだと思います。

ふたりは長ゼリフも多かったのに、それも完璧。だから撮影が止まって現場が押す…なんてこともほとんどなく、ありがたかったですし(笑)、ふたりともプロだなぁ…!と思いました。
そんなおふたりに感化されて、山下さんのお芝居も乗っていったのでしょうか?
そうですね。ふたりがいたから、実写版での『映像研』3人の関係性も作れたと思っています。ひとりだったらできなかったことも3人だからできた、ということがすごく多くて…共演したのが飛鳥さんと梅で、本当によかったです。

体育会系の3期生は、「野球部」って感じです(笑)

山下さんは乃木坂46の3期生ということで、グループの未来を引っ張っていく世代かと思います。そんなご自身が思う「3期生のここが最強!」というところは?
なんか私たち3期生って…仲がいいのに、周りからはそうでもなさそうって見られている気がして(笑)。
えっ、そうでしょうか!?
あはは! 乃木坂46って、女子校みたいなお嬢様感があるんですよね。もちろん3期生もグループの中に入ればそうなんですけど、3期生だけで集まっていると、なんだか…野球部みたいな感じなんですよ。ちょっと私たちだけ、体育会系というか(笑)。
たしかに、「野球部」という表現はしっくりきました(笑)。
負けず嫌いでまっすぐな子ばかりで、やる気も人一倍あって。それに私たち、一人ひとりの個性もものすごく強いんですよね。というのも、3期生は加入当初、先輩方とは別稼働なことが多くて、私たちだけでライブをやったり、舞台(『3人のプリンシパル』)をやったりしていたんです。

だからか、3期生だけでアイドルグループができるんじゃない?ってくらい、12人のキャラクターが色とりどり。そのぶん3期生で舞台をやっていたときは、他の子とキャラが被らないようにしよう!という気持ちも大きかったんですけど。

とにかく向上心が強い人の集まりで、4年経った今でもまだひとりもグループを卒業していないですし…。そういったところで私たち3期生は、他の期とは違う強さを持っているなって感じます。私の性格的には、断然3期でよかった!と思います。
ちなみに、同期でいちばん相談することが多いのは誰でしょう?
伊藤理々杏ちゃんですね。理々杏は3歳年下ですが、加入初期から大の仲良し。プライベートでご飯に行ったり出かけたりするのも、理々杏とが多いです。

理々杏は乃木坂46に入ったとき、まだ中学2年生で、沖縄からひとりで上京してきていて。その歳で親元を離れるって…すごい寂しいじゃないですか? だから一緒に帰ったり、夜は理々杏の家に行ったりして、一緒に過ごすことが多くて。

本当なら年上の私が面倒を見るものだと思うんですけど、実際には同級生としゃべっている感覚でいられるメンバーです。

マイナスな意見から、自分に足りていないものに気づける

もともと「アイドル」に対しては、どのようなイメージをお持ちでしたか?
「オーラがある存在」ですかね。顔立ちやスタイル、立ち振る舞い以前に、パッと見て華がある…真ん中に立つ人だな!というオーラを持っている方って、やっぱりいるんですよね。生まれ持った才能ですし、なるべくしてアイドルになった人。同期でいうと、大園桃子ちゃんがそのタイプなんですけど。

そういう人ってたぶん…自分は真ん中に立ちたいとかとくに思っていないけど、いつの間にかその世界の主人公になっているんです。そういうストーリー性ってアイドルには絶対必要だと思うし、あったほうがカッコいいなと思っていました。

私は全然そういうタイプじゃないので…。それが本当にスゴいな、いいなぁ…って思いますし、そういう人を見つけ出すスタッフさんたちもスゴいなと思います。
そのなかで山下さんはどうやって自分の強みを見つけていったのでしょう?
ファンのみなさんが私を引っ張り上げてくださったところが大きいです。それこそ3期生が入った頃の(18th)シングル『逃げ水』でも、私は選抜に入っていなかったのに、ファンの方々が「それならもっと応援しよう!」と力を入れてくださって。本当にいろんな部分で支えてくださいました。

いくら努力をしても、応援してくださるファンの方がついてきてくれなければ、その努力って実らないと思うので…。ファンの方がいてくれたからこそ、頑張りがいがあったなと思います。
お話をうかがっていて、山下さんの強みは「ファンの声を聞ける力」なのかなと感じました。
ブログのコメントをはじめ、ファンの方の声は日々気にしているところではありますね。気にしすぎるのもよくないでしょうし、中にはマイナスな意見もやっぱりあるんですけど…でもそのマイナスな意見が刺さるということは、自分にはそこが足りてないんだなと考えます。

たとえば「山下さん、ちょっと太った?」と言われたとして、それがただの着膨れだったら、なんのダメージも受けないんですよ(笑)。でも実際に太った自覚があるときは、「やっぱり太ったよな…痩せよう!」と思えますし。

そういうふうに、自分の中でいい意見と悪い意見を判断する力が、乃木坂46に入って養われましたし、マイナスな意見をもらったとしても、気分を落とさず耳を傾けられるようになったのは、自分の強みだなと思います。
自分のことを俯瞰して見ることができているんですね。
そうですね。私に足りていないところはファンの方がいちばんに指摘してくださいますし、それに自分も納得できるので…。なるべく客観的にファンの方の意見を取り入れて、自分のことを外側からも見られるよう意識しています。

普通の女の子に憧れる日もあるけど、私の居場所はここだから

乃木坂46という日本のトップアイドルグループに所属され、日々厳しい環境にいらっしゃると思います。他のメンバーを見て、ふと焦りを覚える瞬間はありますか?
もちろん焦ることもありますが、誰かと競い合わなければいけないという状況になっても、私は「自分自身に勝てればいい」というメンタルでやっています。

私の性格上、自分と他人を比べたり、誰かと競争させられたりすることが、すごく苦手なんです。そういう状況ではいい結果を出せないと、わかっているから…。でも芸能界ってそういう世界なので、しょうがないとも思うんですけど(苦笑)。
グループの中にいながら、戦う相手は自分自身だと思われているんですね。
選抜でのポジションもここだからいい、ここだから悪いとか、考えたことがなくて。

それよりも、ひとりで外の仕事に行ったときに結果を残せるか。お芝居のお仕事ならどんな評価が得られるか…そういうほうを、個人的には気にしていますね。

グループはホームなので、そこからひとりで出たときのほうが戦闘態勢、みたいな(笑)。
大変な毎日だと思いますが、「普通の女の子に戻りたいな」と思うこともあるのでしょうか?
めっちゃ思いますね! えへへ。

もちろん今いる場所は楽しくて、満足もしています。でも、「もしも自分が芸能界に入っていなくて、普通の女の子として生きていたら、どんな人間になっていたかな?」とかは、すごく考えますね。

だけど…もう取り返しのつかないところに来ていますから(笑)。
たしかに、もう芸能界に入っていますもんね(笑)。
はい。入ったからには、今は戻るという選択肢はなくて、それよりも「やらなきゃいけない!」という責任感のほうが強いです。私にはこの場所だな、ここが向いてるなって思います。
山下美月(やました・みづき)
1999年7月26日生まれ。東京都出身。O型。乃木坂46の3期生として、2016年にグループに加入。20thシングル『シンクロニシティ』で初めて選抜メンバー入りを果たし、フロントポジションを任される。『CanCam』(小学館)では専属モデルを務めるほか、女優業にも邁進。TVドラマ『電影少女 -VIDEO GIRL MAI 2019-』(テレビ東京系)や、乃木坂46版 ミュージカル『美少女戦士セーラームーン』では主演を担い、映画『日日是好日』といった話題作にも出演している。2020年1月発売の1st写真集『忘れられない人』(小学館)は、累計発行部数18万部を突破した。

出演情報

映画『映像研には手を出すな!』
9月25日(金)から全国公開中
https://eizouken-saikyo.com

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、山下美月さんのサイン入りポラを抽選で1名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2020年10月8日(木)12:00〜10月14日(水)12:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/10月15日(木)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから10月15日(木)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき10月18日(日)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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