”どストライクの美女”を妻に迎えた男が、結婚3年目に離婚を考えた理由
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かつては見つめ合うことに夢中であった恋人同士が結婚し、夫婦になる。
非日常であったはずのときめきは日常となり、生活の中でみるみる色褪せていってしまう…。
当連載では、結婚3年目の危機にぶち当たった夫婦が男女交互に登場する。
危機を無事に乗り越える夫婦と、終わりを迎えてしまう夫婦。その違いは一体、どこにあるのか−?
これまで、3年目の浮気により危機を迎えた妻と夫の話、そして前回は節約地獄を嘆く妻・千尋の鬱憤を聞いた。
危機事例? 金の切れ目が縁の切れ目?−夫の言い分−
【藤崎家・結婚3年目の事情】
妻:千紗
年齢:27歳
職業:専業主婦
夫:信之
年齢:33歳
職業:出版社勤務
「こんなはずじゃなかった…って?妻はそんな風に言っていましたか。そうですか。でもそれを言うなら僕だって同じだ。千紗がまさか、こんなに変わってしまうなんて、結婚前には想像もしていなかった」
「はは」と諦めたように笑うと、信之はどこか割り切った表情でそう言った。
神楽坂『Bar kansui』のカウンターで、ため息をつく信之。接待帰りだと話していたが、まだ飲み足りないとばかりに赤ワインを煽っている。
妻の千紗も随分と鬱憤を溜め込んでいたが、信之には彼なりに、相当言いたいことがあるらしい。
「まあ、僕の見る目がなかったと言ってしまえばそれまでです。彼女の本質を見抜けなかったんだから。だけど…可愛かったんですよ、出会った頃の千紗。僕が言うのもアレだけど、華も色気もあるしいい女でしょう?なんだかんだ綺麗事を言ってみても、男は美人に弱い生き物なんですよ、仕方がない」
信之はそんな風に愚痴ったあと、妻の千紗が結婚後、いかに変わってしまったかについて語り始めた。美女を妻にした男。幸せの絶頂だったはずが、少しずつ妻の言動に疑問を抱くようになる
「専業主婦になれば?と言ったのは、彼女が仕事の愚痴ばかりこぼしていたからです」
信之は、千紗が専業主婦になった経緯をそう話す。
なんでも、千紗は不動産会社の秘書室で働いていたが、同じ部署のお局と反りが合わないとかで、随分ストレスを抱えていたのだという。
「妻にやりたくない仕事を続けさせるなんて、男としてどうかと思うじゃないですか。僕も一応、大手出版社に勤めているし、養ってやれないわけじゃない。それで、仕事は辞めたらいいよと伝えたんです。
もちろん、華やかな彼女が、ファッションや美容に少なくない額を使っていることは知っていました。でもそれは結婚し、家庭に入るなら節約するのが当然。僕はサラリーマンです。湯水のようにお金があるわけじゃないことくらい、いちいち説明しなくてもわかるでしょう」
信之の言葉で、結婚と同時に仕事を辞めた千紗は、結婚当初、毎日楽しそうにせっせと家事をこなしてくれたという。
九段下に借りたマンションにも「すごい素敵!」と目を輝かせ、「毎日家事頑張るね」などと殊勝なことを言ってくれていた。
正直、結婚するまで実家暮らしだった千紗の家事スキルは高くない。しかし朝は和食派の信之のために夫より1時間早く起き、焼き魚つきの朝食を用意してくれるなど一生懸命だった。
だからこそ信之も、できる限り妻の要望に応えてやりたいと思ったという。
「正直、毎月のカード請求額は予想をはるかに超えていました。でもまあ、いきなり節約を強いるのも男として情けないし、何より慣れない家事を頑張ってくれている千紗がいじらしくて可愛いから、どうにか貯金を切り崩しつつやりくりしていたわけです。
僕だって、彼女がおしゃれすることには賛成なんです。何度も言いますが、千紗は可愛いし、服もジュエリーも、似合うものを買ってあげたい気持ちは山々なんですよ」
ところが。結婚して1年が経つ頃から、だんだん妻の手抜きが目立つようになっていったのだと、信之はため息混じりに続けた。
「まず、朝起きてこない日が増えました。洗濯物や洗い物がそのまま放置されていたり…まあでもそれは、体調が悪かったり彼女にも事情があるのでしょう。家事をきっちりこなしてもらえればもちろん有難いが、なければないでなんとかなる。そもそも独身時代は自分で適当にやっていたわけで」
少々不満そうな表情を浮かべながらも、信之は「家事の手抜き、それ自体が問題なのではない」と口にする。では何が、彼を苛立たせたのか。その理由を、信之はこんな風に語った。
「そうですね…一言で言えば、僕が良かれと思ってしてあげていることに対して、感謝の気持ちが感じられなくなったこと、でしょうか。僕が家賃を負担して住んでいる家も、食事も、細かいことを言えば電気もガスも水道も。遠慮するそぶりさえ見せず、当たり前の顔で使い放題しているのを見ると…なんとも言えない気持ちになります。男性ならこの気持ち、きっとわかってもらえると思いますが」
モヤモヤとした思いを吐き出すように、信之は一息に話し、そして「やっていられない」とばかりに小さく首を振った。
「本当なら、言わなくても気づいて欲しかった。でも千紗には、ハッキリ伝えないとわからないんだなと。それで彼女に言ったんです。うちはセレブじゃない、好き放題されては困る。食費と日用品の代金として7万円を渡すから、その範囲でやりくりして欲しいって」「生活費7万円」を言い渡した夫。その際の妻の反応で、信之は“離婚”を考え始める…
食費と日用品で7万円というのは、信之の考えでは、決して少なくない金額だった。
そもそも信之は毎晩帰りが遅く、平日は家で食事をすることなどほとんどない。週末に外食する時などは自分が支払いをするし、だとすれば十分にやりくりできるはずだと考えての、提示金額だった。
ところが、信之が「月7万円で…」と言った時、千紗はというと、まるで汚いものでも見るかのような目を夫に向けたのだ。
「その瞬間、僕の中で何かがガラガラと音を立てて崩れました。僕がこれまで彼女にしてあげてきたことって、一体なんだったんだろう?と。まるで理解し合えない、一緒に頑張ろうという意志もない。そんな妻に、僕だってもうこれ以上、頑張って何かをしてあげようという気にはなれませんよ」
すでに2杯目の赤ワインを飲み干して、信之は恨めしそうに宙を睨む。
「先日、千紗は家を出て行きました。しばらく実家に戻るそうです。…迎えに行かないのかって?ちょっと今は、とてもそんな気になれないですね。このまま離婚することになったとしても…僕はもう、それでもいいかなと思ってしまっています」
ついに「離婚」という単語まで口にした信之。
男の決心は固いというが、もしかすると彼の中ではもう結論が出ているのかもしれない。
両者の意見を聞いてみると、“生活費7万円で足りるかどうか”という論点の背後にある気持ちのすれ違いも見えてきた。
なぜ結婚前から金銭事情を話してくれなかったのかという妻の言い分と、自分への感謝の気持ちがないことに不満を訴える夫の言い分。
両者とも金銭問題にとらわれて、お互いの気持ちを見ようともしていない上に、話し合いをする気も無い。
今のままの二人では、3年目の危機を乗り越えるのは難しそうだ。
まさに、金の切れ目がきっかけで、ご縁まで切れることになりそうな藤崎家であった。
▶NEXT:10月26日 土曜更新予定
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