「俺が独身なら、可能性あった?」既婚男の口説き文句に、美女が“イケそう”な態度をとった理由
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男は何故すぐに、そう思い込んでしまうのだろうか。
周囲を見渡して見ても、やはり女性より男性の方が“脈あり”を客観的に判断できない傾向にあるように思う。
今この瞬間も、男たちの一方的な勘違いにより被害を被るアラサー女子は後を絶たない。
前回は高級鮨屋での惨劇をお届けした。さて、今週は?
【今週の勘違い報告】
名前:市川美咲(仮名)
年齢:25歳
職業:IT系企業 営業職
勘違い報告Vol.2:「既婚男は最初からターゲット外です。当然でしょ?」
「まず最初に声を大にして言いたいんですけど…結婚してるくせにノコノコ食事会に来る男って、どういう神経なんでしょう?」
火曜19時。
六本木『マーサーブランチ』に現れた今回の報告者・市川美咲は、「信じられない」というそぶりで大げさに目を見開いた。
その目には有無を言わせぬ力があり、彼女が一筋縄ではいかぬ女であることを物語るようだ。
IT企業の営業として働く美咲の風貌は、いかにも仕事のできるいい女という感じ。25歳という年齢にしては落ち着いて見え、ふわりと髪をかきあげる仕草も小慣れている。
強気な若い女をちやほやしたい年上男に執心されそうなタイプである。
「ああ…やっぱり、わかっちゃいます?私、既婚男に言い寄られる確率が本当に高くて。私の方はもちろん興味なんかないですよ。最初からターゲット外です。当たり前じゃないですか」
真顔のまま、美咲はハッキリと断言する。
そして今度はあからさまに不愉快な表情を浮かべると、思い切り眉を顰めてこう吐き捨てた。
「奥さんがいながら他の女とも関係しようなんて、思い上がりもいいところ。申し訳ないけど、1,000万もらっても相手したくない。ああやっぱり、ハッキリ言ってやればよかったわ」強気の美女・美咲を苛立たせた、勘違い既婚男。男はなぜ“イケる”と思ってしまったのか
「事が起きたのは、つい1週間前のお食事会です。私、学生時代から仲良しの男友達がいるんです…隼人っていう。彼、総合商社に勤めているんですが、商社の若手って大変ですね。先輩たちから毎週のように食事会のセッティングを頼まれるみたいで。頻繁に、隼人からヘルプ要請がくるんですよ。可愛い子集めてくれ、頼む!って(笑)」
呆れたように笑う美咲だが、先ほどまで浮かんでいた嫌悪の表情は消えている。二人の間柄について詳しくは聞かなかったが、美咲と隼人が良好な関係を築いていることはわかった。
「自分で言うのも…ですが、私は割と顔が広いので、同世代の綺麗な女の子を集めることくらいお安い御用。他ならぬ隼人の頼みでもあるし、その日も粒ぞろいの独身女子をセッティングしました。可愛いだけじゃなく気が利いて、隼人の先輩たちにも失礼にならないような子を集めたんです」
しかし当日の、しかも夕刻になってから、隼人から詫びと懇願のメールが届いたという。
「男性側のメンバーに、佐竹さんという34歳の人がいたんです。それは前から知っていて、随分年上だなぁ、まだ結婚してないのかぁ…なんて思っていたら、案の定。
実は佐竹さんだけ既婚なんだけど、他の女の子たちには黙ってて欲しいって。もうメンバー変更できない直前になってから白状するなんて、隼人もずる賢いですよね。
文句は言ってやりましたけど、渋々了承しました。10歳近く年上の先輩に言われて、断れなかった隼人の立場もわかるから…」
ところがここで既婚男の参加を許してしまったことが、美咲にとって面倒の始まりとなってしまった。
「既婚者が参加するのは1万歩譲って許すとしても、だったら立場をわきまえてもらいたい。それなのに佐竹さんってば、他の若い独身男を差し置いて、自分が自分がってアピールがすごいの…」
「ほんと、ありえない」と付け加え、美咲は身震いをするような仕草を見せた。
何も知らない大切な可愛い女友達が、既婚男の毒牙にかかってしまっては困る。そう思った美咲は、唯一事情を知る自分が盾になろうと決めたらしい。
「二次会のバーでは、率先して佐竹さんの隣に座りました。まあ、もともと私は女側の幹事だし、損な役回りも買って出ないと仕方ないです」
佐竹の隣に座ることを、躊躇なく損な役回りと言い切る美咲。そのことからも、彼女が佐竹に何の興味も抱いていないことがわかる。
心を無にして最低限の相槌をうつ美咲。ところが佐竹はそんな美咲のテンションにまるで気づかず、上機嫌で空気の読めない提案をした。
「この中だったら誰が好みか言い合おうって囁いてきて。しかもそう提案したあとすぐに、媚びるような目で『俺は美咲ちゃん』とか言うわけです…ほんと、罰ゲームかって話ですよ…」
美咲はうんざりした顔で深いため息を吐く。
強気な美咲のことだ。きっとその場でも、佐竹にあからさまに不快な表情を見せてしまったのでは…?
しかし意外にも美咲は佐竹に対し、“デキる女”の対応をしたという。
「もちろん心の中では『何言ってんだ、このおじさん』と思ってます。でも態度に出したら隼人の顔を潰しちゃう。幹事の私がそれをするのはナシだと思ったから、ちゃんと“正解”を答えてあげました」
美咲は真剣に悩むそぶりまで見せた後、「うーん、やっぱり佐竹さんかなぁ」と笑顔で答えたのだった。美咲は“正解”を言わされただけ。しかし勘違い既婚男の暴走は止まらない
当然、ただの社交辞令。というよりむしろ、仕方なく答えてあげただけ。美咲の言い分はそうだ。
しかし佐竹はどうやら全面的にポジティブに、言葉通りに受け取ったらしい。
「お食事会を解散した後、その日の深夜のことです。寝る間際、翌朝のアラームをセットしようとしてスマホを手に取ると、ソッコーで佐竹さんからLINEが来てて…」
“今日はすごく楽しかった。美咲ちゃんみたいに美人で頭のいい子、俺好みなんだよ。今度は二人で食事行かない?”
その文面を見た瞬間、美咲はあまりにイライラして眠気が吹っ飛んだという。
「何を好き好んで既婚者と二人でデートしなきゃいけないんですか…。しかも私はただ友達の手前愛想よくしただけなのに、謎に自信満々で上から目線なのが本当に嫌で。当然、断ることにしました」
“すみません、隼人から聞いたのですが、佐竹さんってご結婚されてるんですよね。奥様のいる方と二人で会うのはちょっと…なので、ごめんなさい”
失礼にならぬよう、しかしはっきりと拒絶したつもりだった。ここまで言えば引いてくれるだろう。そう思って、間髪入れずに返信した。
もうこのままスルーしてくれればいい…。そんな風に願いながら、再びアラーム設定画面を開く。
ところが1分と空けず、再び佐竹からメッセージが届いたのだ。しかもその内容は、想像の斜め上をいっていた。
“そっか、知ってたんだね。別に騙すつもりはなかったんだけど。でもさ…もし俺が独身だったら、可能性あった?”
「もう!何なの、一体…!」
美咲は思わず声を荒げ、スマホをベッドに投げ捨てたという。当然、LINEは既読スルーだ。
「…絶句ですよ絶句。もし独身だったらとか…そんな“もしも”に意味あります?」
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