キーボードは小さいものの打てないレベルではなく、小型タブレットに外付けキーボードを付けるよりも持ち運びは簡単です。そしてキーボード付きスマートフォンがほぼ全滅してしまった今、UMPCはキーボード付きモバイル端末を求める人の救世主ともなっています。
さて、現在市場で人気となっているGPD PocketやOneMixシリーズは、それらのメーカーが自社で開発した製品で、これに続くメーカーも今のところまだ数社のみと、参入企業の多さという点ではまだ少ないのが実情。しかし今年は、ついに複数メーカーから製品が出てくるかもしれません。というのも、ノートPCのODMメーカーがUMPCに興味を示し始めたからです。
中小メーカーのノートPCは自社で開発されたものではなく、相手先ブランドの製品設計から生産までを行うODMメーカーの製品であることがあります。今年5月末に台北で開催されたCOMPUTEX TAIPEI 2019にも、そんなノートPCのODMメーカーが多数出展していました。その中でUMPCを見ることができたのです。
その中の1つ、中国深センのChitech Shenzhen Technologyは数多くのノートPCやタブレットの製品ラインナップを持ちます。いずれも他社ブランド向けに製造するもので、自社ブランドでは販売を行なわない、典型的なODMメーカーです。
同社のラインナップの中に「YOGA」(CHT-Y70)と名付けられたモデルがありました。もちろんこの名前はカタログ上の名称なので、製品名がYOGAとなるわけではありません。
YOGAは7型1920x1200ピクセルディスプレイを搭載するUMPCで、CPUはAtom x5-Z8350を搭載。メモリ4GB、ストレージ64GBと、昨今のUMPCとしては比較的ロースペックな構成です。カメラはディスプレイの上部に200万画素を備えます。バッテリー容量は5000mAhと、GPD Pocketシリーズなどと比べると、こちらもやや少なめ。通信はWi-FiのみでLTEは非搭載です。
本体サイズの詳細も現状では不明ですが、見た目からも厚みがだいぶある感じです。全体的なスペックが低いことも考えると、かなり安価な価格で販売されることを想定しているのでしょう。
I/Oポートは本体左側に集中しており、USBやマイクロSDカードスロットなどが確認できます。おそらく組み合わせはODM先のリクエストに応じて多少の設計変更にも対応できるようになっているでしょう。またYOGAの名前から想像できるように、ディスプレイ面は180度反転させ裏側に回し、タブレット的に使うことが可能です。
キーボードはスペースキーが分割されその下にクリックボタン、中央にポインティングデバイスを搭載する、OneMix風のレイアウト。FNキーやCapsキーが隣のキーとかなり近づいており、フルキーボードをこのサイズに収納するのはギリギリだったようです。
このモデルの生産は今年の夏あたりから始まるとのこと。注目すべきは、最低オーダーロット(MQO)が3000台からと比較的少ないこと。そのため、無名メーカーからいきなりこの製品が出てくる可能性もあります。
なお展示されていた製品はモックアップのため、キーボードの押し心地までは試せませんでしたが、両手でのタッチタイプはできそうな感じがします。
さてこれだけ小さければいつでも持ち運んで使うことができますが、UMPCだからこそ対応してほしいのが4Gモデムの搭載です。COMPUTEX TAIPEI 2019ではクアルコムとレノボが5GノートPCの発表をしましたが、UMPCクラスの小型PCにこそモバイルでの通信手段は欲しいと思います。
電車に乗って画面を開けば即通信、また閉じている時もSNSのメッセージをバックグラウンドで受け取る......なんてことができれば、スマートフォンすら不要になってしまうかもしれません(バッテリーの持ちが心配ですが)。
なおChitechのラインナップには、Snapdragon 835を搭載し4G通信に対応した13.3型ノートPC「CHT-I133Q」という製品もあります。またUMPCでは、ONE-NETBOOK Technologyが開発中の「OneMix 3」がLTEを搭載予定です。
COMPUTEXのブース担当者は「日本でもUMPCは人気があるようですね」と言っていましたが、ユーザーが増えた結果ChitechのようなODMメーカーも市場の参入を決めたのでしょう。ちなみに他のノートPCのODMメーカーで話を聞いたところ、UMPCの開発計画はあるとのことでした。
とはいえUMPCでも、昨今では価格が安いだけの低スペックなモデルは使い勝手が悪く、消費者からそっぽを向かれてしまいます。モバイル通信の便利さは使い勝手に大きく影響するでしょうから、ODMメーカーにはスペックアップはもちろんのこと、選択肢の中にLTEモデルも含まれるような製品開発を行ってほしいものです。