ゴールの場面以外でも、選手間での意思疎通が見て取れ、チームとして統制がとれていた印象だ。素早く囲い込みボールを奪うと、一斉にカウンターに出ていき、押し込まれている状態では、大きく蹴り出して悪い流れを断ち切る。そういった判断を、ほとんどの選手が共有して実践していた。
「初めて一緒に試合のピッチに立つ選手もいたなかで、全員が共通意識を持ってやれたのは良い成果だったかなと思う。怪我人が多いなかでも、これだけメンバーが意識高く準備できれば、これぐらいはできる」
柿谷がこう言うように、負ければグループステージ突破の可能性がなくなる済州を相手に気圧されることなく、巧みに試合を運んでいた。最終盤に失点を許したのは反省材料だが、相手の激しいチャージにも屈せず、ほとんどの時間で優位に立っていたのは、ターンオーバーをして臨んだC大阪だった。「(相手の当たりは)アウェーでやった時の方が激しかった。相手も疲れもあるでしょうけど、それ以上にうちの選手の方が、気合いが入っていた。荒いとは別に思わないですし、それをいなしていけるような技術がある選手は揃っている」と柿谷は言う。
とはいえ、柿谷は『浮かれるな』と言わんばかりに、苦言を呈する。
「みんなが与えられたチャンスをしっかり活かしたけど、済州相手に苦戦しているようじゃまだまだ厳しいと思う。自信を持ってやるのは良いけど、自分たちはまだまだ強くなったわけじゃない」
済州に勝利してグループ2位に浮上したものの、次節はグループ首位の広州恒大とのアウェー戦。敗れれれば、グループステージ敗退の可能性もある(ブリーラム・ユナイテッドが済州に勝利した場合、勝点1差で敗退が決まる)。いまだ予断を許さない状況なのだ。
敵地でグループ最大のライバルを下して、決勝トーナメントに進めるか。グループ最終戦は文字通りの大一番となる。
取材・文●多田哲平(サッカーダイジェストWEB編集部)