―普通じゃありません!
■完全非合法地帯! 80年代の秋葉原 ―ところで、PBXさんは80年代中頃の秋葉原へもよく通ったそうですけど、当時の秋葉原ってどんな場所だったのですか?
PBX みんな潰(つぶ)れちゃったけど、コピー屋がいっぱいありましたよ。
―コピーするものとは?
PBX パソコン用のソフトですよ。有名だったのが「マーズ・マーケティングカンパニー」というコピー屋です。台湾人のマー・ホーケイって社長が経営してて。
―その名前は、さすがに盛りましたよね?
PBX クラーク・マーとか、馬淵慶(まぶち・けい)とかいくつも名前があったんですよ。マーズにはソフトから取説まで、なんでもそろってた。それこそ、コピー版のほうが勝手にアップデートされてて、オリジナルの不具合が修正済みだったぐらいですよ(笑)。マーズは、“コピーソフトの殿堂”でしたね。
―その時代の秋葉原は、そんな店ばかりだったと?
PBX 大型の有名店でも閉店後に店長が常連を呼んで、店舗のパソコンを使って“コピー大会”とかやってましたよ。 お客も大学教授から有名企業の人まで普通の人たち。まだ“海賊版が違法”という認識がなかった時代ですからね。
―ちなみに現在、マーズはどうなったんでしょうか?
PBX 1987年にマー社長が逮捕されたんですよ。国内初の海賊版ソフト販売での逮捕者です。マー社長が逮捕されて店を閉めたあたりから、秋葉原が浄化されてきたんでしょうね。マー社長はひと財産稼いで、台湾の高雄にビル建てたらしいですよ。
―ちなみに、コピーソフトはどのような経緯で制作を?
PBX 元のデータは海外からです。大学のサーバーが、一番ソフトが豊富でした。そこからハッカーが盗んだものが、コピー屋に流通してた感じですかね。なかには米軍経由とかもありましたよ(笑)。これも、普通じゃ絶対に入手できないようなソフトがあってすごかった!
―それ、逮捕じゃ済まないレベルかと! この時代のハッカーたちはどんなことをしてたんですか?
PBX 基本、お金儲(もう)けでやる連中じゃなかったですね。サイトを乗っ取って、そこを書き換えるのが面白かった。イタズラばっかりですよ。
―具体的には?
PBX 例えば企業のサイトだったら、そのトップページを改変する。トップに“フェラチオしてる動画”を出現させたりとかですね(笑)。あとは、フーゾクのサイトを乗っ取ったやつもいた。値段とか女のコの画像を入れ替えてしまう。そうしたら、そのフーゾク店の電話がパンクしてましたね。
―ところで、PBXさんがそもそも電話に興味を持ったきっかけとは?
PBX 公衆電話ですよ。
―昔、外国人がよく販売してた偽造テレカ的なやつ?
PBX そんなんじゃありませんよ。まず公衆電話本体を“バチバチ!”ってショートさせるんです。
―完全にアウト!!
PBX そこに秋葉原で買ったパーツで自作したブツを接続すると、通話し放題だったんですよ。
―それ、偽造テレカ以上に悪質なやつ! 最近のスマホなんかにも造詣が深いんですか?
PBX まー、電話はなんでも好きですね。iPhone買っても、OSをAndroidに替えるとかやってましたよ。携帯の回線もいっぱい持ってますからね。一時、通信費の請求が60万円以上来てましたよ。
―今でも毎月そんなに払ってるんですか?
PBX そんなことないですよ。今月は20万円ぐらいかな。
―それでも十分すぎかと! そろそろ話題の格安SIMとか使ったらどうですか?
PBX あんなの速度が遅くていろいろとやれませんよ。一般の人にもオススメしませんね。
―一般の人は、いろいろやりませんから!
(取材・文/直井裕太 協力/クーロン黒沢)