iam8bitは、ロサンゼルスに拠点を持つ、クリエイティブ・プロダクション。これだけだとなんのことやら分かりにくいですが、iam8bitは、ECサイトでのゲーム音楽のLP(レコード盤)販売やグッズ販売(TVや映画のLPも販売)をメイン事業に展開している会社です。
例えば、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』の音楽を64人編成のオーケストラで演奏したものをLPにしたり(こちらで音源を聞けます)、『風ノ旅ビト』、『Rez Infinite』、『No Man's Sky』など名作と名高いゲームの音源をLPにして販売しています。最近、日本版のサイトも立ち上がりました。
また、ロサンゼルスではゲーム関連の展示会を自社ギャラリーで展開したり、レトロなアーケード筐体で遊びながら飲食を楽しめるアーケードゲームバーなども運営しています。
アーケードゲームバー「Button Mash」の写真ロサンゼルスで開催されたアニメエキスポがきっかけで、iam8bitの共同経営者のジョンとアマンダの二人にインタビューできる機会がありました。二人に、「なぜゲームのLPを作っているのか?」や「お墓に持っていきたいゲーム」「日本のゲーム音楽をどう思うか?」などざっくばらんに話を聞いた様子をお届けします。
写真左がアマンダ・ホワイト(Amanda White)、右がジョンMギブソン(Jon M. Gibson)手りゅう弾でパックマン!? ゲームの個展からスタート
ーーiam8bitは設立12年目と聞きました。設立当初からゲーム音楽のLPを販売をしていたのでしょうか?
ジョン:はじめは、パックマンとか、ドンキーコング、マリオ、メトロイド、などのレトロゲームを題材にアーティストが制作した絵などを展示する個展をやっていました。
このパックマンはその時に展示していたものです。これは本物の手りゅう弾を使って作っています。
ーー本物の手りゅう弾・・・。いかにもアメリカっぽくて素敵です。さきほど出た名前はすべて日本のゲームタイトルでしたが、なにか理由があるのでしょうか?
ジョン:当時のビデオゲーム、レトロゲームは日本のものが一番良かったですからね。はじめた頃にやっていた個展やイベントの95%くらいは日本のゲームタイトルだったと思います。
ーーそこからLPを販売されるようになったキッカケは?
アマンダ:イベントを重ねていくうちに、プレゼントできる小物だったりTシャツなどを作ってくれと頼まれるようになったんです。そうしてイベントごとにグッズを作っていたのですが、あるイベントで参加してくれた方限定でLPを無料で配ったことがありました。それが人気になって。これは需要がある感じがしたので、もっと拡大して作ってもいいんじゃないかと思ってつくりはじめました。
当時は、ゲームを題材にしたギャラリーもLPも珍しかったから興味を持ってくれたんだと思います。
LPは音源だけではなくジャケットにもこだわる
ーーLPにするゲームタイトルの選択基準を教えてください。
アマンダ:いろいろと選ぶ選択基準はありますが、1番大事なのは音楽が素晴らしくて、音楽だけでもみんなが聞きたいと思えるか。あとは、みんなに紹介したいかとか、ゲームそのものの人気も考慮します。
ーーゼルダの時のオカリナや、ポケモンの金・銀は、オーケストラで収録をしたり、ほかのLPではバンドサウンドにアレンジしたりしていますよね。これは、どうやって決めているのでしょうか?
ジョン:昔のゲームに関しては音の表現に制約があったりするので、壮大に表現できるようにオーケストラで収録をしています。これに関しては、チップチューンの音のほうが好きな方もいらっしゃるので、そちらでのリクエストをいただくこともあって賛否はありますがこだわって収録しています。
また、こだわりでいえば、僕たちはLPのパッケージにも力を入れています。例えば、これはゲームのLPではないですが、ダニエル・ラドクリフが主演した映画「Swiss Army Man」(無人島で死体と友情を育む映画)のLPです。ジャケットを開けばジオラマとしても遊べるようになっています。
LPごとにこういった遊び心や、こだわりを随所に詰め込んでいます。
日本のゲーム音楽は遊び心を感じる
ーーLPを作るうえで、たくさんゲーム音楽を聴いていると思うのですが、日本とアメリカのゲーム音楽に違いなどはありますか?
ジョン:まず、日本のゲーム音楽をつくっている作曲家たちは素晴らしいと思います。ファミコンやアーケードゲームで曲を作っていた人たちも、今のゲーム機で曲を作っている人たちも皆さん素晴らしい。
違いに関しては、なんというか、日本のゲーム音楽は遊び心だったり、楽しさを感じます。それに対して、アメリカはすごく真面目ですね。
ーー遊び心・・・ですか?
ジョン:そうです。日本のゲーム音楽はめちゃくちゃ遊び心がありますよ。例えば、塊魂とかヤバいです! それにパラッパラッパーだって! こんなのアメリカ人には作れないですよ。
ーー言われてみると確かに。アメリカのゲームって、今流行っている音楽をそのままBGMとして流したりできるますが、塊魂とかパラッパーラッパーみたいなワクワクするようなオリジナルサウンドってあまりない気がしました。それにどちらのタイトルも、ポップからファンクとかレゲエまで幅広いジャンルの曲が収録されていますよね。
ジョン:アメリカ人にはこういった発想は難しいと思います。
ーーこの違いはなぜだと思いますか?
ジョン:難しい質問ですね(笑)。あくまで僕のイメージですが、アメリカ人より日本人のほうがクレイジーだからじゃないかと思います。日本のテレビ番組って、バスをクレーンで吊って沈めたりするクイズの企画とかあって超クレイジーなものが多い。それに、ネオン街みたいなものもアメリカはありません。そういった環境も音楽に影響しているんじゃないかと思います。
お墓に持っていきたいゲームは?
ーージョンさんは大のゲーム好きだと伺ったんですが、はじめて買ったコンシューマーゲーム機はなんですか?
ジョン:SEGAのジェネシス(メガドライブの海外の名称)です。任天堂も好きだったけど、ジェネシスの『ザ・スーパー忍』に一番影響を受けていると思います。今は、オープンワールド系のゲームが好きで、ここ最近だとLPにもした『No Man's Sky』にハマりました。
ーーでは、お墓に持っていきたいゲームを教えてください。
ジョン:えっ。お墓に(笑)。ロックマンも好きだけど、ひとつだけ選ぶとするとアーケードゲームの『BurgerTime』です。
ーーBurgerTime、初めて聞きました・・・。
ジョン:ゲームとしてめちゃくちゃ好きというよりは、ゲームの可能性とか、イマジネーションを掻き立てる意味では1番クレイジーだから選びました。人の大きさのバンズをおとしたり、1m80?くらいのソーセージを運んだりとかするんですよ。それで、敵のキャラクターの動きもそれぞれ個性的で、ピクルスはぐるぐる回っていたり、たまごは不規則でよくわからないし、ほんとにおもしろいんです。
ーー最後に、これをLPにしたいというゲームタイトルがあれば教えてください。
ジョン:パラッパラッパーです。パラッパラッパーのLPを出すのが僕らの夢なんです。パラッパラッパーを作っている人たちにこのインタビューや僕らの夢が届いてほしいと願っています。コラボレートできるチャンスをぜひ!