−三位一体改革が進んでいない。どう思うか?
「発想はいいと思う。ただ、三位一体改革の基本は役割分担。それをはっきりさせないで、補助金や交付税をどうしようかと言っても、なかなか難しい。役割がはっきりしていないから、お金のぶんどり合戦になってしまう。代表的なのが義務教育費。文部科学省がもつのか、都道府県がもつのか、市町村がもつのか、まったく議論されていなくて、さてどうしようかと、いまごろになって始めている。(国と地方の)分担をきっちり明確にしてから、三位一体を進めるべき。特に地方は、都道府県と市町村の役割分担があいまいだ。きちっと役割分担することで、自然に三位一体改革は出来上がると思う」
−なぜ1期で退任するのか?
「(志木市と)朝霞、新座、和光3市との法定合併協議会が発足した後で、市長に就任した。志木市は最も小さかったし、当初から4年の任期と思っていた。合併前の4年間を無駄にしないように、個性ある施策を出して住民自治を出来るだけ実証したかった。残念ながら合併は破たんしたが、自分が考えていた基本的な方向性はすべて出し尽くした。ボランティアではないのだから、アイデアを出し尽くしたシティマネージャーは次の人にバトンタッチするのは当たり前だ」
−このほど出した著作『
市町村崩壊 破壊と再生のシナリオ』では、地方の惨状を訴えている。
「地域力が国の基盤になると信じている。地域や地方の衰退を阻止し、再生しなければいけない。仮に地方が崩壊して(大勢の人が)大都市に移住してきたら、都市機能は一発で破たんする。(人口が)20%増えたらガタガタになる。スラム化し、失業率は増大し、国民健康保険料なども上がる。落ち着いてはいられない。地方と都市部が両立する共存体制をとらなければ。「もっと地方を解放して、元気な地方をつくろうよ」という、(わたしの仕事の)集大成として書いた」
−7月に全国の市民団体や地方議員、有識者と設立するNPO「地方自立研究所」の理事長に就任する。同NPOの活動内容と目指すものは?
「いまの都道府県や市町村は二元代表制になっており、首長と、チェック機能や牽制機能を持つ議会がある。両方が改革に向かわなければ、二元代表制だから片方が頑張っても片方が駄目だったら進まない。地方自立研究所では、地方議員、地域の団体、NPOなどとこれからの地方の自立や改革に向かって情報を交換、共有しながら、広く加速した活動を展開したい。本部は東京都中央区日本橋馬喰町。全国に8カ所の支部をつくる」
−目指すのは?
「21世紀に対応できる財政構造を国は国で、地方は地方でつくる。地方が元気になることで、国の基盤がより強化できる。みんながきらきら光るような日本だと思えるようにしたい」
■穂坂邦夫(ほさか・くにお) 埼玉県出身。埼玉大学経済短期大学部卒。埼玉県職員、足立町(現志木市)職員、志木市議会議長、埼玉県議会議長などを経て、2001年6月に志木市長に無投票で初当選。【了】