風景&ネイチャー レタッチの教科書 : 季節を意識したレタッチ?
風景&ネイチャー レタッチの教科書 : 季節を意識したレタッチ?
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「補正後」と「レタッチの設計」拡大図はこちらをクリック ※別ウィンドウで表示
※記事の最後には、作例写真とPhotoshop体験版のダウンロードコーナーがあります。
夏のシーンはハイコントラストに仕上げたい
夏らしさの元となるのが、明るい露出でハイコントラストな描写。メインの被写体に影響しないなら、多少の白とびを許容して明るく仕上げてみよう。
作例は、雲の階調がとばないように画面の上部(空と雲)と下部(地表物)を個別に補正している。画面に雲を写し込む場合は、雲の立体感を失わないことが重要だ。
Photoshopにおける部分補正の方法としては、「調整レイヤー+レイヤーマスク」が王道だが、今回は遠方まで繊細な描写を再現したかったので、「Camera Rawフィルター」の「段階フィルター」を使用している。
「段階フィルター」で部分補正すれば、「かすみの除去」や「明瞭度」などの透明感や階調感を高める機能が使用できて便利だ。
はじめに
最終的なレイヤーの状態 空と地表の部分補正と、基本的な露出と色彩の補正は「Camera Rawフィルター」を使用。不足している要素を、調整レイヤーで仕上げている。
?は「背景」レイヤーをスマートオブジェクト化したもの。このレイヤーに対して「Camera Rawフィルター」を実行(?)。
?の「特定色域の選択」で空の青と地表の緑の色彩を、?の「トーンカーブ」で最終的なコントラストを整えている。
?「Camera Rawフィルター」の準備をする
■STEP1 「背景」をスマートオブジェクト化する
「Cmaera Rawフィルター」を調整レイヤー的に使うために、補正するレイヤー(ここでは「背景」)を「スマートオブジェクト」に変換する。「レイヤー」パネルを表示して、「背景」レイヤーを選択し、 ボタンをクリック。「スマートオブジェクトに変換」を選択すると変換は完了。「レイヤー0」が作られて、レイヤーサムネールの右下にアイコンが付加されたらOKだ。
ボタンをクリックして「スマートオブジェクトに変換」を選択 スマートオブジェクトのレイヤー(レイヤー0)が作られる ≪ワンポイント≫
■「スマートオブジェクト」とは
元の画質を維持したまま編集が行なえる形式の画像レイヤーのこと。拡大や縮小、フィルター加工、変形などを行なった後でも、編集内容を変更したり取り消して元の状態にすることができる。「調整レイヤー」の編集機能版と考えると分かりやすい。
■STEP2 「Camera Rawフィルター」を表示する
「レイヤー」パネルで、?STEP1で作成したレイヤー(レイヤー0)を選択したら、?「フィルター」メニューの「Camera Rawフィルター」を選択。これで、「Camera Rawフィルター」画面が表示される。
レイヤーを選択して「フィルター」メニューの「Camera Rawフィルター」を選択「Camera Rawフィルター」画面が表示される
≪ワンポイント≫
■「Camera Raw」とは
Photoshopに搭載されたRAW現像機能のこと。色温度の変更や露出の補正など、「写真的」な編集が行なえるのが特徴。Photoshop CCでは、Camera RAW機能をフィルターとして使用することができる。
?「Camera Rawフィルター」で全体の色調を整える
■STEP1 露出を補正する
仕上がりのイメージが得やすいように、全体の露出を整えておく。作例は雲が白とびしない露出にしたため地表物が暗く写っているので、まずはこれを改善。使う機能は「露光量」スライダーだ。
補正前の状態「露光量」スライダーを右に移動して明るく補正
■STEP2 シャドウの質感を改善する
山肌に見える緑(シャドウ)の微妙な濃淡が出ていない(=クリアな印象が薄い)のが気になったので、「シャドウ」スライダーで少し明るく補正して階調を出す。最終的に見えなくなる可能性もあるが、補正の途中ではできる限り階調を出すようにしておきたい。
補正前の状態「シャドウ」スライダーを右に移動。暗部を明るく補正して階調感を高める
■STEP3 周辺光量落ちを補正する
広角レンズ+絞り開放の弊害として、画面の四隅(とくに右上)が暗くなっている。この状態を、?「レンズ補正」パネルの、?「周辺光量補正」機能で補正。自然に仕上げるポイントは、?「適用量」スライダーを一時的に最大に設定して補正の効果を分かりやすくしておき、?「中心点」スライダーを移動して適切な範囲を見つけ出すこと。最後に?「適用量」スライダーを調整してフラットな露出にすればよい。
補正前の状態補正の範囲が分かりやすいように「適用量」スライダーを一時的に最大に調整「中心点」スライダーを調整して、暗い部分が適切に明るくなる範囲を見つけ出す「適用量」スライダーを再度調整して、フラットな露出になるように仕上がる
?「段階フィルター」で空を補正する
■STEP1 「段階フィルター」を選択する
「Camera Rawフィルター」画面の上部にある、?「段階フィルター」ボタンをクリックして機能を表示。まずは雲の立体感と空の色の濃さから補正する。現状は雲が白とびに近い状態なので、?「露光量」の「−」ボタンをクリックして補正量をマイナスに設定。効果の範囲が分かりやすいように、強めの設定にするのがコツだ。あとで調整できるので、仮の設定でOK。ちなみに、各スライダーの両端にある「+」や「−」ボタンをクリックすると、クリックしたスライダー以外の設定がリセットされる。便利な使い方なので覚えておこう。
「段階フィルター」を選択して、「露光量」の設定をマイナスにする
≪ワンポイント≫
■「段階フィルター」とは
部分補正機能のひとつで、直線的なグラデーション状に補正を適用する機能。写真上でドラッグすると、ドラッグを開始した部分から終了した部分にかけて補正が徐々に弱くなる。補正の内容は画面右のスライダーで調整し、補正を確定した後でも、対象となる段階フィルターのピンアイコン(○印)をクリックして選択することで再調整が可能。
■STEP2 ドラッグして補正する範囲を決める
まずは、画面上半分の空と雲、そして山肌に部分に対して補正を行う。補正する部分からしない部分に向けてドラッグして補正を適用。このとき、Shiftキーを押しながらドラッグすれば、補正の向きが45度単位に固定できる。ドラッグする幅が広いほど補正の境界が目立たなくなるが、補正したくない部分への補正の影響も生じるため、適切な範囲に設定したい。
補正前の状態補正する部分からしない部分に向けてドラッグ。補正が自然に移り変わるように調整する
■STEP3 雲の階調を出す
雲の白とびを改善するには、「ハイライト」と「白レベル」スライダーを使用する。それぞれを左に移動して暗く補正することで、雲に立体感を出すことができる。
補正前の状態「ハイライト」と「白レベル」スライダーを左に移動して、雲の立体感を出す
≪ワンポイント≫
■「ハイライト」「白レベル」とは
どちらも明るい領域を重点的に補正する機能。「ハイライト」よりも明るくて白に近い色を補正するのが「白レベル」。使い方の目安としては、「白レベル」でもっとも明るい色(白の明るさ)を決め、「ハイライト」で明るい領域の露出を整えるとわかりやすい。
「露光量」スライダーで仮に設定した暗めの露出を、イメージに近い露出に補正する。この後にコントラストも調整するので、雲が白とびしない程度の露出(少し暗め)にしておくと微調整の手間が省ける。
雲の白さと立体感、日射しの強さ、澄んだ空気の透明感などを再現するのがコントラスト。「コントラスト」スライダーを右に移動してコントラストを強くすることで、明暗差が生じてヌケのよい立体感が得られるようになる。
コントラストを強くしたことにより、山肌のシャドウが暗い状態に。仕上がりイメージよりも暗いため、違和感のない明るさに補正しておく。使う機能は「シャドウ」と「黒レベル」スライダー。暗さを感じさせず、階調感のある状態を目指せばOK。
どちらも暗い領域を重点的に補正する機能。「シャドウ」よりも暗くて黒に近い色を補正するのが「黒レベル」。使い方の目安としては、「黒レベル」でもっとも暗い色(黒の濃さ)を決め、「シャドウ」で暗い領域の露出を整えるとわかりやすい。