Photoshop 色調補正ゼミナール : これならできる!「黒」から「白」への色変換
基本的には、これだけです。順にお話していきたいと思います。
1)色変換したい部分の選択範囲を作成
こちらに関しては、詳しくは既にお話させて頂いております。過去記事の、連載第11回〜第15回をお読みいただけましたら幸いです。
画像上のあらゆる部分を選択できるようになるテクニックを最短距離で獲得できるよう、お話をさせて頂きました。今回に関しましては、パスを使って作成した選択範囲(マスク)が既にpsdファイルに埋め込まれております。
2)「レベル補正」調整レイヤーで階調番号を大幅シフト
選択範囲がアクティブな状態から、「レベル補正」調整レイヤーで図のようにスライダーを動かします。
いかがでしょうか。現時点では空間から浮き上がった感じではありますが、確かに白のソファにはなっているのではないかと思います!
この「レベル補正」こそが、白への色変換を行なう際の最大のポイントです! そこで、なぜこの操作で白のソファができたのか、もうちょっと詳しくお話したいと思います。
当連載を最初からお読み頂いている方でしたら、連載第3回『「レベル補正」を使ったプロフェッショナルな色調補正』にて、階調番号のお話をさせていただいたことを覚えていらっしゃるかもしれません。デジタル画像の明るさには番号が振られており、一番暗いドットを「0」、一番明るいドットを「255」と呼んでおりました。
「黒から白への色変換」とは、おおまかに言えば、
「階調番号0〜50」くらいの部分を「階調番号200〜255」あたりへ「平行移動」してあげる操作
と、言うことができると思います!
大事な部分ですのでもう一回言います!(笑)。
「黒から白への色変換」とは、おおまかに言えば、「階調番号0〜50」くらいの部分を「階調番号200〜255」あたりへ「平行移動」してあげる操作 です!
それをふまえて、先ほどの「レベル補正」で行なった操作を「分解」しますと
a)「入力レベル」でドットのない部分をカット
b)「出力レベル」で「階調番号200〜255」あたりへ「平行移動」(数字は超おおまかな目安です。画像をよく見ながら、違和感のない場所にスライダーを移動しましょう)
c)拡大して階調の破損に注意しながら、「入力レベルのグレースライダー」「出力レベルの黒・白スライダー」を微調整してコントラストを操り、理論的に最短距離で「"黒"から"白"への色変換」を行なうことが可能、という訳です!
(この説明がわかりにくかった方は、もしかしたら「レベル補正」の復習が必要である可能性があります。もしよかったら、連載第3回『「レベル補正」を使ったプロフェッショナルな色調補正』の再読がオススメです!)
ちなみに、
c)拡大して階調の破損に注意しながら、「入力レベルのグレースライダー」「出力レベルの黒・白スライダー」を微調整
を行なう時に、「入力レベルのグレースライダーと白スライダーが離れすぎている」「出力レベルの黒・白スライダーの距離が離れすぎている」と、階調の破綻のリスクが上がります。元画像のレタッチ耐性が、どこまでスライダーの移動を許してくれるか?階調の破損に注意しながら慎重に微調整を行ないます。
時にはどんなに丁寧に頑張っても、画像の「レタッチ耐性」が足りずに、階調の破壊なしには白の画像を作り出せない場合も存在します。
(その時に打つべき手は、後で当記事最後の「特大おまけ」にてお話しさせていただきます)
それでは、お話を先に進めます! 色変換はできました。ここから先は「この空間に白いソファを馴染ませる」作業になります。
3)「トーンカーブ」調整レイヤーでシャドウを作成し、周囲の色となじませる
多くの場合、色変換で作り出した「白い被写体」は、陰が白すぎるため、背景から浮き上がったような状態になりがちです(もし、今のままで自然であれば、この操作は必要ありません)。
そこで、図のような「トーンカーブ」調整レイヤーを作成し、マスクを黒に塗りつぶします。
次に、硬さ「0%」、不透明度と流量を「10%前後」に落とした「描画色:白」のブラシで、シャドウ部分を焼きこんで立体感をつけます。
同様に黒ベタ塗りのレイヤーを作成し、マスクを黒に塗りつぶします。
硬さ「0%」、不透明度と流量を「10%前後」に落とした「描画色:白」のブラシで、シャドウ部分を焼きこんで立体感をつけます。また、マスクに3%程度のノイズをかけるのも、自然な仕上がりのために有効だと思います。
今回は、トーンカーブで微妙な色の転びをつけたりして、更に背景への一体化を狙いました。
レイヤーの一番上部に「トーンカーブ」の調整レイヤーを配置し、全体の微調整を行なったのも、白いソファを背景になじませるのが目的です。こういったテクニックにつきましては、既に以前の記事でお話ししている部分ですので、詳しくはダウンロードファイルの「after」画像のレイヤーウィンドウから「トーンカーブ2」と「トーンカーブ3」調整レイヤーをご覧いただけましたら幸いです。
連載第18回、19回の技術でソファを環境になじませる
(一連のテクニックの詳しい方法は、連載第18回「色変換後の違和感を退治する! 〜人工物編〜」、第19回「色変換後の違和感を退治する! 〜自然物編〜」でお話しさせて頂きました。ご興味のある方はご一読いただけましたら幸いです)
4)階調の健康状態チェック・エッジの処理
かなり極端に色変換を行なったので、最後にもう一度、拡大して階調破綻の有無を再確認する必要があります。さらに、エッジに不自然なところがないかチェックすることがお勧めです。
階調破綻が見つかった場合の対処法は、この後「特大おまけ」にてお話ししますので、ここではエッジのチェックをしてみたいと思います。
表示状態を「100%」に拡大しながら、ソファのエッジをよく観察していくと いかがでしょうか?
事前にご用意してあった選択範囲を使われた方ですと、例えば図のような部分のエッジが、不自然に残っていることと思います。
実のところ「"黒"から"白"への色変換」では、ほぼ必ず、エッジに不自然な箇所が残ってしまいます。そしてそれには、はっきりとした理由があります。
まず、「元画像」で「ソファ」が「黒い」時の画像の状態はどうだったでしょうか。「被写体(ソファ)」と「背景(床)」の明るさを比べると、「ソファ(暗い)<床(明るい)」という関係だったのが、色変換後は「ソファ(明るい)>床(暗い)」と、逆転します。
そのため、選択範囲のパスを描いた位置が1pixelでも内側に入っていると、黒いエッジが残ってしまいます。反対に、選択範囲のパスを描いた位置が1pixelでも外側に出ていると、白いエッジが目立ってしまう場合があります。
そのため、選択範囲を作る際に、ドットが見えるまで拡大して、ソファと背景のエッジの本当にギリギリのところを狙うと理想なのかもしれませんが ここでどんなに労力をかけても多少のエッジは出てしまうものです。ここは割りきって、色変換後にエッジのフリンジ(このように、エッジに不自然なピクセルが残ってしまうことをフリンジと言います)を修正することがお勧めです。
方法は、大きく分けて2つあると思います。まずは、方法の1つ目です。
ソファを選択しているマスクのうち、一番上のものを除いて全て削除します。
一番上のマスクの部分をダブルクリックしますと、「属性」というウィンドウが出てきますので、「マスクの境界線」をクリックします。
「マスクを調整」というウィンドウから「エッジをシフト」のスライダーを、エッジを広げたい場合は右へ、エッジを狭めたい場合は左へ動かします。さらに「ぼかし」を微調整して、結果に納得がいったら「OK」をクリックします。
すると、マスクの大きさが変化し、フリンジがグッと少なくなりました!
最終使用サイズが小さい場合は、これだけでも十分な場合もある
次に、方法の2つ目です。
「レイヤーウィンドウ」の、一番上に「新規レイヤーを作成」します。新しいレイヤーが選択された状態で、「option(alt)」キーを押したまま「レイヤー」→「表示レイヤーを結合」と、たどっていきましょう。
そうすると、現在の状態を統合した画像が、先ほどの新しいレイヤーにペーストされます! この方法を使うと、今まで作った調整レイヤーの過程を残したままで、全てのレイヤーを統合した画像が手に入るので、非常に便利です!!
スタンプツールを使って、この統合されたレイヤーのフリンジを修正したらOKです。この際に、選択範囲を補助として使うと、スタンプツールでの作業が非常に楽になります。背景側のフリンジ消す場合は、選択範囲を反転すると良いと思います。
スタンプツールで、ぐるりと一周、フリンジの削除をし終わったら、最後のひと押しです。エッジがクッキリしすぎている部分を、「ぼかしツール」でなじませておきましょう。
これで完成です!! いかがでしょうか?
完成画像
もう一度、「"黒"から"白"への色変換」の「絶対的方法」を復習してみたいと思います。
「"黒"から"白"への色変換」の「絶対的方法」
1)色変換したい部分の選択範囲を作成
2)「レベル補正」調整レイヤーで階調番号を大幅シフト
3)「トーンカーブ」調整レイヤーでシャドウを作成し、周囲の色となじませる
4)階調の健康状態チェック・エッジの処理
まずは「階調番号」や「レベル補正」についてのきちんとした知識を持つことが前提です。そのうえで、
「黒から白への色変換」とは、おおまかに言えば、「階調番号0〜50」くらいの部分を「階調番号200〜255」あたりへ「平行移動」してあげる操作 である。