EUではApple、Alphabet、Meta、Amazon、Microsoft、ByteDanceの6社に公正な行動を義務付けるデジタル市場法(DMA)が施行されており、2024年3月7日(木)をもって規制が始まりました。このDMAによってユーザーにどんな影響がでるのかをまとめてみました。
Digital Markets Act
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_24_1342
◆DMAの規制対象は？
DMAは大規模なプラットフォームを「ゲートキーパー」に指定し、ゲートキーパーに対して公正な行動を求める法律です。2023年9月にはApple、Alphabet、Meta、Amazon、Microsoft、ByteDanceの6社がゲートキーパーに指定されることが確定し、各社が展開する「コアプラットフォームサービス」が規制の対象となりました。規制対象となるサービスは以下の通り。
・SNS
TikTok
Facebook
Instagram
LinkedIn
・インターミディエイション
Google マップ
Google Play
Google ショッピング
Amazonマーケットプレイス
App Store
Meta Marketplace
・広告サービス
Google
Amazon
Meta
・ブラウザ
Chrome
Safari
・OS
Android
iOS
Windows
・N-IICS
Whatsapp
Messenger
・動画配信プラットフォーム
YouTube
・検索エンジン
Google
◆DMAによるユーザーの恩恵は？
DMAによるゲートキーパーやコアプラットフォームサービスへの規制によって、ヨーロッパの一般ユーザーは以下のメリットを得られます。
・ゲートキーパー以外の企業が提供するアプリストアやサービスを選択できるようになり、「ゲートキーパーが提供するデフォルトの選択肢しか選べない」という状況を抜け出せる
・自らのデータがどのように利用されているか把握可能になる
・利用中のサービスやアプリから別のサービスやアプリへデータを移動可能になる
・ゲートキーパーが提供する支払いサービス以外の決済手法を利用可能になる
また、EU内でビジネスを展開する企業は以下のメリットを得られます。
・ゲートキーパーと公正な条件で競争できる
・新たなサービスを展開する際に、ゲートキーパーに対して相互運用性の確保を要求できる
・ゲートキーパーが提供するアプリストア以外の場所でアプリを配布する
・ゲートキーパーのプラットフォーム以外の場所で製品を提案し、顧客と契約できる
◆ゲートキーパーに指定された企業の対応状況
・Apple
ゲートキーパーに指定された企業は2024年3月7日(木)の規制開始までにDMAへの対応を進めてきました。最も顕著な対応を示したのがAppleで、EU圏内でApp Store以外のアプリストアの設立を認めたほか、Webkit以外のブラウザエンジンを用いたアプリの開発も認めています。
Appleがデジタル市場法を受けてEUでのサイドローディングとApp Store外決済を認めるも厳しい条件や新しい手数料が追加される - GIGAZINE
しかし、Appleは第三者によるアプリストア設立に厳しい条件を課しており、MicrosoftやMetaといったゲートキーパーからも非難されています。実際に、記事作成時点ではApp Store以外のアプリストアは登場しておらず、独自ゲームストアの設立を目指していたEpic Gamesが開発者アカウントを剥奪される事態も発生しています。
Appleへの批判を繰り返すEpic Gamesの開発者アカウントをAppleが「信用できない」として停止したことが判明 - GIGAZINE
なお、Appleはウェブ上のアプリをローカルアプリ風の見た目でホーム画面に表示できる「PWA」について、DMAへの対応を理由にEU圏内でのサポート廃止を発表していました。しかし、後にAppleは方針を転換し、EU圏内でもPWAのサポートを継続することを発表しています。
Appleが「iOS 17.4でのPWA廃止」を撤回すると発表 - GIGAZINE
・Google
GoogleはDMAに準拠するために、「Google検索」「YouTube」「広告サービス」「Google Play」「Chrome」「Google ショッピング」「Google マップ」において各サービスのデータを相互利用するか否かの選択肢をEU圏内のユーザーに与えることを発表しています。
DMA およびリンクされたサービスについて - Google アカウント ヘルプ
https://support.google.com/accounts/answer/14202510?hl=ja
また、GoogleはAndroidアプリ内で「Google Playを介さない課金手段」などをアピールするためのAPI群も整備しています。
External offers APIs | Google Play's billing system | Android Developers
https://developer.android.com/google/play/billing/external
