以下の内容はhttps://gigazine.net/news/20220621-recession-unavoidable-economists-views/より取得しました。


by Mike Lawrence

インフレへの懸念から、アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)は2022年6月に、1994年以来最大の利上げに踏み切りました。各国の中央銀行がFRBに追従する中、高まりつつある「大幅な金融引き締めのせいで景気が後退して不況に陥るのでないか?」との懸念について、非営利メディアのThe Conversationがイギリスの経済学者に取材をしたところ、高齢化や賃金の伸び悩みといった、日本とも共通する課題が浮かび上がってきました。

Is a major recession unavoidable? Three economists give their views
https://theconversation.com/is-a-major-recession-unavoidable-three-economists-give-their-views-185233

◆シェフィールド大学経済学部上級講師のジョナサン・ペラトン氏
ペラトン氏は、アメリカのFRBが6月15日の会合で0.75ポイントの利上げをした一方で、翌日イギリスの中央銀行であるイングランド銀行が発表した利上げが0.25ポイントにとどまった点について、「イギリスの経済成長が従来の予想より弱くなるとの懸念を反映したものです」と指摘しました。

ペラトン氏によると、イギリスは主要国の中で最も高いインフレ率に見舞われると予想されているほか、「新型コロナウイルス感染症のパンデミック前に比べて失業率が低下したものの就業率も下がっている」という点から、非労働力人口、特に高齢者の増加が顕著であるという問題も指摘されており、人手不足がイギリス経済の課題になっているとのこと。

人手不足になれば賃金が上がるのが自然ですが、2022年2~4月の実質賃金は前年比2.2%減と、過去20年で最大の減少幅を記録しました。この点からペラトン氏は、「少なくとも、企業が労働者からの賃上げ要求に応じ、そのコストを物価の上昇という形で消費者に転嫁し、それに対応すべく労働者がまた賃上げを求めるという典型的な『賃金・物価上昇スパイラル』にはなっていないようです」と分析しました。

by 401(K) 2012

物価が上がっているのに賃金が下がっているということは、「イギリス経済を支えてきた消費者需要の少なくとも一部が家計における貯蓄の切り崩しによって賄われてきた」ことを意味しているとのこと。その背景には、パンデミックによる規制が緩和されて支出が増えたことも一因として存在しますが、貯蓄の切り崩しはいずれ限界を迎えるので、消費意欲の減退につながりかねません。

こうした点からペラトン氏は、「イングランド銀行は前代未聞の難題に直面しています。成長が止っているイギリス経済においては、金利の引き上げは供給サイドの問題に対処する上で効果的とは言えません。上昇する物価が賃金の伸びを上回り、経済が停滞する限り、国民への支援はイングランド銀行ではなく政府の手に委ねられることになるでしょう」と述べて、金融政策での対応には限界があるとの見方を示しました。

◆ロンドン大学クイーン・メアリー校国際経済学・経済政策教授のブリジット・グランビル氏
グランビル氏は、経済停滞と物価の上昇が同時に発生するスタグフレーションが迫りつつあるとの認識を示した上で、「今回はどうなるかという議論の焦点は、1970年代のイギリスと同程度かもしくはそれよりさらに悪い事態に向かうかというものになります。私は、景気後退の可能性は高いものの、景気後退と高インフレが続くという1970年代のような経験は避けられるはずだと考えていますが、比較的穏やかなスタグフレーションでも痛みを伴うのは避けられないでしょう」と述べました。

グランビル氏によると、インフレの原因は大きく分けて2つあるとのこと。1つ目は、中国のゼロコロナ政策によってサプライチェーンの混乱が長引いている点で、2つ目はエネルギーの供給がロシアによるウクライナ戦争とそれに対する西側諸国の政策により制限されている点です。

by manhhai

また、労働市場に目を向けるとやはり人手不足が問題になります。これは、パンデミックにより低迷していた労働需要が正常化した一方で、50歳以上の労働者が仕事に戻らないことを選択するようになったのが一因とのこと。また、イギリスはBrexitによりEUから離脱しているため、中欧や東欧からの良質な労働力の流入が妨げられていることも関係しているそうです。

「典型的な賃金・物価上昇スパイラルにはなっていない」とするペラトン氏とは異なり、グランビル氏は賃金が年率4%伸びているとの政府統計を根拠に、「1970年代のような賃金・物価上昇スパイラルが発生しており、これをけん制するためにイングランド銀行は金利を上げている」と指摘しています。

ただし、いくつかの経済指数は賃金・物価上昇スパイラルがそれほど深刻ではないことを示唆しているとのこと。さらに、グランビル氏はイギリス経済には「企業が消費低迷をおそれて価格を上げず、賃上げに応じることもしないまま雇用や生産量を削減する」という傾向があることを指摘。「パンデミックの問題はいずれ解決されるので、それよりも賃金が上がらない長期的・構造的問題が今後のインフレの動向を左右するでしょう」と述べました。

その上でグランビル氏は、「イギリス経済は停滞、つまり軽い景気後退に陥る可能性が高いので、インフレ率はイングランド銀行が目標とする2%に向かって下がると予想しています。最も危険なのは、イングランド銀行がこの2%の目標にこだわりすぎることです。私は、自著の『』で、5%までなら長期的な成長へのダメージはほとんどないと論じています。従って、イングランド銀行はインフレ率が今より少し下がった時点で利上げをストップして、デメリットがメリットを上回るのを避けるべきです」と述べて、インフレ解消の数値目標にこだわらずに経済回復を優先すべきとの見解を示しました。

by Pictures of Money

◆バース大学経済学部教授のクリス・マーティン氏
マーティン氏は、労働市場の動向がイギリス経済のカギだと指摘した上で、「イギリスの労働市場は、パンデミックからの回復力を証明しました。政府の雇用維持スキームは成功し、最悪の事態から労働市場を守ったので、経済の縮小幅が大きかったにもかかわらず、雇用の減少は1970年代の3分の1でした」と評価しました。

その一方で、パンデミック前と比べて労働者が25万人近く減少したり、実質賃金が伸び悩んだりしている点や、マクロ経済の行き先が暗いことなどから、今後の先行きについては分からないことが多いとのこと。


予測を困難にしている要因は大きく分けて2つあります。1つ目は、失業率が労働市場の指標として役に立たなくなってきている点です。イギリスでは、労働者は大きく分けて「就業者・失業者・非活動者」に分類されますが、積極的に仕事探しをする失業者とは違って高齢者などの非活動者は就労を目指していません。そして、2019年以降から減少した労働者25万人のうち80%は非活動者であり、失業者は20%に過ぎないとのこと。

多くの非活動者が労働市場に戻らないことを選択したことがうかがえる一方で、新たに雇用される人の大半が失業者ではなく非活動者だという実態もあるとのことで、マーティン氏は「経済学者の非活動者についての理解は、失業者への理解よりもはるかに弱いものです」と述べて、労働市場を分析する手がかりが不足していることを認めました。

by Richard McKeever

第2の問題は、Brexitにより移民の数ではなく質が変化したという点です。イギリスでは、ナイジェリアやインドから来た労働者が増えていますが、そうした人々は高度な技術を持っていて接客業ではなく医療や社会福祉の分野で働く傾向があるとのこと。従って、医療などの分野とは異なり接客業は人手の確保に苦戦することになります。こうした労働実態の変化が恒久的なものなのかどうかが分からないので、労働市場の行く末も不確実だと、マーティン氏は指摘しました。

また、業種だけでなく民間部門と公的部門の間にも著しい格差が生まれつつあります。マーティン氏によると、民間企業の雇用はパンデミック前の水準に戻りつつあり、賃金の伸びも堅調なのに対して、公的部門は大きく遅れを取っているそうです。

こうした点を指摘した上で、マーティン氏は「慢性的な投資低迷と消費支出の減少が、GDPの鈍化や低下を示唆しているため、企業は労働者をそれほど求めなくなるかもしれません。しかし、現在のところ企業は多くの欠員を抱えており、民間部門で比較的大きな賃上げが起きていることもあって、長期的なマイナス要因は相殺されており、これによりパンデミック後にいなくなった労働者の一部が労働市場に戻る可能性もあります。その結果、今後数カ月間の労働者の減少は最大10万人になると予想していますが、これは割合としては多くないので、経済における他の問題を大きく悪化させることはないでしょう」と結論しました。




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