以下の内容はhttps://gigazine.net/news/20220519-hakenanime-staff-interview/より取得しました。



新人・斎藤瞳監督による、地球を守るために少年少女がロボットに乗り戦うオリジナルアニメ『サウンドバック 奏の石』(サバク)と、天才・王子千晴監督が8年ぶりに手がける新作『運命戦線リデルライト』(リデル)がNo.1アニメの座をかけて戦う姿を、監督やその仲間たちの奮闘を交えて描く映画『ハケンアニメ!』が2022年5月20日(金)から公開されます。

原作は直木賞・本屋大賞・吉川英治文学新人賞・メフィスト賞などの受賞経験がある作家・辻村深月さんの小説。新人監督・斎藤瞳役を吉岡里帆さん、瞳を厳しく引っ張る敏腕プロデューサー・行城理役を柄本佑さん、天才監督・王子千晴役を中村倫也さん、王子監督に久々の作品を作らせる剛腕プロデューサー・有科香屋子役を尾野真千子さんが演じます。

本作の特徴の1つは、アニメ業界のお仕事モノということで、実際に「サバク」と「リデル」が一部ながらアニメとして制作されて作中で流れるところ。かなり特殊なオリジナルアニメにどのように取り組んだのか、「サバク」を実際に制作した谷東監督、そして「リデル」を実際に制作した大塚隆史監督と松下慶子プロデューサーにお話を伺いました。

映画『ハケンアニメ!』公式サイト
https://haken-anime.jp/


GIGAZINE(以下、G):
『ハケンアニメ!』に出てくるアニメの監督をして欲しいとオファーがあったときの感覚はどんなものでしたか?

谷東監督(以下、谷):
ふだんはアニメを作っているのですが、若いころに実写映画を作りたいと思っていたこともあって、「アニメの仕事をしながら実写にも携われる」ということで、やってみたいなと思いました。今回、原作は引き込まれて夢中で読んだのですが、その前に脚本の途中稿を読ませてもらっていたので、原作を読んだあと「これだけの内容をよく2時間にまとめたな!」と思いました。

G:
確かに(笑)

谷:
原作は3人の女性を中心とした作品ですが、そこを「サバク」の斎藤瞳監督を中心に、見事にまとめているなと。

大塚隆史監督(以下、大塚):
話を聞いたときは単純に「面白そう~」って思いました。もちろん、「大変そう」とも思いましたが(笑)。谷さんと同じように僕も実写に関心があったんです。「撮りたい」ではないものの「どう撮っているか」には興味があって。本作は、実写映画の中にアニメパートがあるという構成で、しかも実写とアニメが作品内で表現として融合しているのではなく、「アニメを作っている現場」の話だと。つまり、アニメをアニメとして捉えている。「そういうの、あったらいいな」って昔から思ってはいたんですけれど、なかなか現実にはならなかったので「本当にやるんだ!」と思いました。僕は原作を先に読んで、「どうまとめるんだろう?」といろいろ妄想しつつ、完成した脚本を読ませていただきました。

G:
その順で読んでみて、いかがでしたか?

大塚:
まず、小説の中に出てくる瞳しかり王子しかり他のキャラしかり、「僕の知っている!?」「きっとあの人がモデルなんだろうな」と(笑)

G:
あとがきにスペシャルサンクスがありましたし(笑)

大塚:
そうなると、とても面白い一方で、彼らが作るアニメを僕が作るというのは困るな……というか、小説の中の登場人物のようなアーティスティックな技術は自分にはないと思っているので、そんな僕が作品に対してどう力を貸せるだろうかと。だから「やりまーす!」ではなく、僕がやって監督の求めるものと違うものになってしまってはいけないので、「いったん自分の力を出せるものかどうか考えさせてください」という感じでした。

G:
谷監督は、不安に思う点などはありませんでしたか?

谷:
作中で、視聴率1位2位を争うような作品ということで、ほぼ「日本のアニメ頂上対決」みたいな描かれ方をしているじゃないですか。不安というか、「それを作れるのだろうか」という思いはありました。

G:
劇中アニメを「本物の覇権アニメ」と思えるものにするために、なにか取り組んだポイントはあるのでしょうか。

谷:
視聴率1位2位を競うアニメであるとはいえ、劇中作なので、あくまで本編の面白さを増幅させる役割ですから、語弊があるかもしれませんが「日本一風」のものを作ればいいのだろうと考えました。本編の吉野耕平監督と相談してみて、やっていけそうだなという感触を得ました。

谷監督が担当した「サウンドバック 奏の石」


資料の数々


G:
なるほど。

谷:
もう1つ、主人公の瞳はゲーム業界からアニメ業界に移ってきて、才能を認められて監督デビューするのですが、僕もずっとアニメ業界にいるわけではなく、実写で結構やったあとに広告代理店に行き、それからアニメ業界に来たという経歴で、瞳に似た部分があるんです。自分自身がアニメーターとして育ってきていないということで、そういうリアリティは担保できるかなと。

谷:
あと、アニメーター出身ではないことで、「すごく動かせるのか」という点には悩みましたが、窪之内英策さんがデザインしたキャラクターがいるので、実写と共通しますが、レイアウトをキメキメにかっこよくすれば要件を成立させるものになるのではないかと思いました。


キャラクターに命が宿っていくかのよう


G:
同様に、トップを競う作品を作るにあたって大塚監督はどうでしたか?

大塚:
まずは、監督の吉野さんがどう考えているのだろうかというところでした。仮に、めちゃくちゃアーティスティックな映像を求めているのであれば僕ではないということを伝えようと思い、吉野さんと話をしました。それで「作品のターゲットはどういった層ですか?」と聞いたら「アニメに詳しい人たちも入るけれど、実写映画なので、どちらかといえば一般の人たちが見るアニメです」と。そういった層を考えるのであれば、アニメ業界で「すごい」と言われるようなアーティスティックなものを出してしまうと、むしろわからないということになってしまうんじゃないかと思いました。

大塚監督が手がけた「運命戦線リデルライト」


G:
ああー、なるほど。

大塚:
あくまで、一般の方が見たときに「これはアーティスティックだ」と思えるような表現に落とし込むべきなのではないかと。そう僕なりの意見を伝えたところ、吉野さんも「そう思っていました」と言われて。反対に「あまりにとっぴなものだと一般の人にはわからなくなってしまうので、わかりやすい表現をするにはどうしたらいいですか?」と相談されたので、「では、一般の人が見たときにアーティスティックだと伝わるような表現を考えましょう」ということになりました。ちゃんとお客さんが楽しめるものにするにはどうしたらいいのか、吉野さんと話ができたのは大きかったです。

作中で「リデル」のカット袋が積み上がっている様子


G:
それでああいった映像になっていったわけですね。

大塚:
あと考えたのは、単純にどれぐらいの尺の長さなのかという点です。実写映画ですから、アニメが登場する尺はトータルで2~3分程度。おまけにどう使われるのかはその時点では明確には定まっていなかった。スクリーンいっぱいに映るのか、画面の端のテレビモニターにちょこっと映るだけなのかもわからない。そうなると、コンテも緻密にカット割りを計算して描くよりも、パッと出てきたときの印象が大事だろうから、そうなるのは重要なのは「色」です。王子千晴監督は新進気鋭のアーティストということだったこともあり「色で遊ぼう」という考えになって、吉野監督とともにステップを詰めていったという感じです。


G:
王子監督は「伝説の天才アニメ監督」という設定で、言動もかなり天才肌の人物として描かれていますが、実際にこういったタイプの人物を見たことはありますか?


大塚:
天才肌か……難しいですけれど、間近に見て感心した人を挙げるなら、東映時代の先輩の細田守さんや、同じく後輩の松本理恵さんがいますけれど、「天才」というと怒られるかもしれません。自分の表現に合うものを探して努力しておられるので、「秀才」と表現するべきかもしれないですね。人よりも関心があって頑張る人で、彼らは並外れにすごかったと思います。

谷:
人にはない感受性があったり、普通の人だと引っかからないところを、感度の高い釣り針みたいなものがあるから引っ掛けることができて、いざ釣り上げたあとは誰もが共感できるものにしているような感じですね。そういうことをしている人を見ると本当にすごいなと思います。

G:
本作ではそれぞれの監督に個性的なプロデューサーがついていますが、監督の立場から見てプロデューサーというのはどういった人ですか?

斎藤瞳監督と組む行城理プロデューサー


王子千晴監督と組む有科香屋子プロデューサー


谷:
「プロデューサー」と一言でいっても千差万別です。昨今のアニメには「製作委員会」がありますが、出資した会社からそれぞれ1人ずつプロデューサーが出てきて、必ずしもアニメに詳しい人ばかりではないですから、言葉が広がってしまっているように思います。僕としては、作品作りのために、作品の方向を決める監督とがっつり組んで作っていく人がプロデューサーだなと思います。監督とプロデューサーの関係は、漫画家と編集の関係にも例えられますが、深い部分で永遠のテーマですね。相性もあるし、そのときの運もあるし、どれだけお金を集められたかというのもあるし、話すと長くなるやつです(笑)

大塚:
そうですね、僕も付き合ってきたプロデューサーにはいろいろなタイプの人がいますが、やはり、「相棒」になれる人じゃないと、一緒に作品を作っていくのは難しいです。監督の立場でいう「プロデューサー」というのは、やはり制作会社の人ということになりますが、作品作りの中ではいろいろなことが起きますから、時にはけんかしてもいいけれど、一緒に物事を解決してくれる人、前向きに進めていける人がいいですね。こっちの心が折れかけたときには引き上げてくれたり、反対に向こうが折れそうなときにはこっちが引き上げたりと、二人三脚という側面はあります。作中のプロデューサー像は、楽しく見せていただきましたが、エンタメとして誇張されている部分はあって、「そこまで極端な人はいるかな?」と思いましたけど(笑)

G:
(笑) 今回、「運命戦線リデルライト」制作側のプロデューサーである松下慶子さんにも同席していただいていますが、プロデューサー像はどのようにご覧になりましたか?

大塚:
いろいろな要素がありますよね。

松下慶子プロデューサー(以下、松下):
現場のプロデューサーだけではなくいろいろな要素がミックスされている感じですが、「リデル」の方でいえば、本当に王子監督をプロデュースしていく大変さや苦労の点ですね。クリエイターさんたちは常に何かと戦っているので、いかにして理解者になり、本人を守りつつ、協力者を集めていくか。そこでプロデューサーが監督の魅力に引っ張られていくというところで、描かれている内容は合っているなと感じました。

G:
プロデューサーにもいろいろあるとのことなのですが、松下プロデューサーの場合は、どういったきっかけでプロデューサーになったのですか?

松下:
私はあまり自分がプロデューサーをやっているという自覚がないのですが(笑)

G:
(笑)

松下:
もともとは映像業界を目指していて、CGの制作進行をしていたんです。CGアニメーターさんが演技をつけているのを見たときに「手で描いているアニメーターさんの脳はどうなっているんだろう!?」ということに興味を持って作画の方に飛び込みました。

G:
すごい思い切り……。

松下:
監督さんやアニメーターさんって個性が強くて魅力的な方が多いのですが、みなさん、結構孤軍奮闘されていたんです。自分の思っていることを伝えるのにどうすればいいんだろうかと。そういう戦いをしているのを見ているうちに、だんだんと見えてくる範囲が広くなって、「守れる力」を備えていた方がいいなと思って動いているうちに、やっていることがアニメーションのプロデューサーという名前になっていた、という感じなんです。

G:
そういう経緯なんですね。

松下:
だから、自分が「プロデューサー」という自覚がないんです。でも、毎日面白い作品に携われて、とても心地がいい場所です。

G:
『ハケンアニメ!』では、期待の新人監督の初監督作品と、天才・王子監督の復帰作が激突する様子が描かれます。谷監督と大塚監督が初めて監督をしたときは、どうでしたか?


谷:
僕の初監督作品は「」のアニメ化でした。まだ若くて元気があり、野心も持っていたので、すごく前のめりに取り組んでいました。FLASHアニメなのであまり動きが大きくなくて、当時、ニコニコ動画がすごく流行していた時代で作品に対して厳しいコメントが流れていて……まだうぶだったので、見てから一週間ぐらいは調子が悪かったです(笑)

G:
さすがに監督本人がコメントを見るとは思っていないですからね……。

谷:
そうそうたるキャストの方々に出ていただいたのですが、僕のやりたいことを思い切りぶつけてしまい、とある方にはヘッドホンを投げられてしまいました。

大塚:
えっ!

谷:
とても収まらないぐらいの尺のところにセリフを詰め込んで欲しいと、何度もリテイクをしてしまって。僕自身、あまり場になじんでいないなと実感があり、舞い上がってしまっていたこともあって詳細は正確に覚えていないのですが、ヘッドホンを投げられてしまったことはよく覚えていて、今となってはいい思い出です。

G:
なんと……大塚監督はどうでしたか?

大塚:
僕は、長編映画としては「プリキュアオールスターズ」の1作目が初監督で、すべてが大変でした。当時、このオールスター映画を3月にやるというのが初のことで、しかも「いつか映画の監督をしたい」とは思っていたのですが、当時27歳での抜擢で、すごくテンションが上がりました。「そういった仕事を任されるくらいには認められたんだ」と。ありがたいと思うと同時に、やるなら最大のものをやりたいじゃないですか。

G:
ええ。

大塚:
それで、ありとあらゆる、すべての自分の時間を使って挑んだという覚えがあります。運よく、大きな失敗談というのはないのですが、毎日ただただ必死に頑張った作品で……もう、あれだけの頑張りはできないなというぐらいです(笑)

G:
そんなにですか(笑) アニメ業界で働いていて、どういう部分にやりがいや、やっていて「いいな」という感触がありますか?

大塚:
僕はたぶん、他の監督さんとはちょっと性質が違っているのではないかと思います。子どもの頃のことを振り返ってみると、その瞬間、その場にいる友達を集めて「どんな楽しい遊びをしようか」と考えて実践したり、「こうすれば面白くなる」ということを考えたり、みんなでどうやって最大限に楽しく遊ぶか、というのをやっていたんです。

G:
ふむふむ。

大塚:
それが今にもつながっていて、自分のところに来た仕事を、届けるべきターゲットにいかに面白がってもらえるものにしていくかというのが好きなんです。達成したときに、やりがいを感じます。たとえば「プリキュア」なら、小さい女の子に向けた作品なので、小さい子にちゃんと伝わるようにと考えます。「僕がやりたいからこれをやる」ではなく「小さい子ならきっとこっちの方が楽しいだろうからこれをやろう」ということで、どう表現したら面白がってもらえるかなと考えて仕事をしています。

G:
おお、なるほど。

大塚:
誰がターゲットなのかを考えて、その人が一番楽しめるようにとやっているので、お客さんがどう受け取ったのかということも重視しています。「作品を好きな人が楽しめるように」というのは1つのポイントですが、「よりよく楽しんでもらうことができれば」というのが、僕のやりがいです。

G:
谷監督はいかがですか?

谷:
最近耳にしたのですが、「ネタバレ」OKだし、「倍速視聴」でもOKという人が出てきていると。理由は「無駄な時間をなくしたいから」だそうなのですが、僕は無駄な時間こそが大切なんじゃないだろうかと思っているんです。それが「文化」なんじゃないかと。剣呑な時代ですけれど、本やアニメで感動するような経験をすることが、心のいい面を伸ばすことにつながるんじゃないかなと思うんです。だから「無駄」といわれるようなものを作っていけたらいいなと思いますし、そうなりたいなと思っています。

G:
なるほど。松下プロデューサーにもうかがえればと思いますが、いかがでしょうか。

松下:
本当に個人的なことなのですが、私は目の前に見えているこの才能の集まりが好きなんです。これを世の中の人に「面白い人だね」「面白い作品だね」と伝えられた瞬間、その反応が返ってきたときというのが最高で、「でしょ!私もこの人好き!この人の描く絵、カッコいいよね!」って。自信を持ってオススメしているので、「この人のここが好き、ここがいい」というのを1人でも感じてくれる人がいたら、自分も頑張れます。そうやって、どう世の中に伝えていくかを考えているときが一番ですね。

G:
なるほど。実際にアニメに携わる方々のこうした思いもふまえて『ハケンアニメ!』全編楽しんでもらえればと思います。本日はお話、ありがとうございました。

映画『ハケンアニメ!』は2022年5月20日公開です。


映画『ハケンアニメ!』本予告〈2022年5月20日公開〉 - YouTube


◆『ハケンアニメ!』作品情報
出演:吉岡里帆、中村倫也、工藤阿須加、小野花梨、高野麻里佳、六角精児、柄本佑、尾野真千子
原作:辻村深月『ハケンアニメ!』(マガジンハウス刊)
監督:吉野耕平
脚本:政池洋佑
音楽:池頼広
主題歌:ジェニーハイ 「エクレール」(unBORDE/WARNER MUSIC JAPAN)
制作プロダクション:東映東京撮影所
配給:東映
©2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会




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