2024年も変わらずインドネシア映画を見て、喜んだり悲しんだり泣いたり笑ったり、最高の物語をいくつも体験することができました。
インドネシアの作品が好きだ!2025年も楽しみな作品が山ほどある。まだ配信に来てないものも、公開を待っているものも、たくさん。インドネシアの映画館でも見たいし、日本の映画館でも見たい。本当に日本で見たい。2024年は映画祭を除けば一本もなかったんじゃないですか? 飛ぶ鳥落とす勢いのジョコ・アンワル作品すら公開しないという信じがたい現実がありましたが諦めない。インドネシア映画の波が来る日を待つぞ。(宣伝活動に勤しみながら)
というわけで2024に見た映画57本、ドラマ2本の中からベスト10とクリティカルヒット賞(10に入れられなかったけど心に残った何かのある映画)を紹介していきます。(見た、なので2024公開に限らない)本当に10に絞るの大変だった。20本近い中から泣く泣く厳選した。インドネシア映画、もう200近くは見たので、当然微妙な作品に当たることも多くなってきたけれどもまだまだ面白い作品が多すぎる。詳しい感想は当ブログにあげているので興味あったら見てくれると嬉しい。ただだいたい後半ではネタバレをかましている。
① Joko Anwar's Nightmares and Daydreams
もうブログ感想の星の数が「★★★★★∞」になってるからね。面白すぎて誇張でなくどうにかなりそうだった。面白過ぎた結果ツイートを羅列しているだけでまともな感想が書けていないけど、伝わると思います。どれだけの体験だったか。終わりたくないから見たくない、見ないではいられない。ジャカルタのモールに穴ができてたの、本当に見たかったな……第一話はジョコ監督十八番の王道ホラーで始まりますが最後に全く別の場所に連れていかれ、そして「政治権力と資本主義と家族主義と排除の理論をぶん殴りながら超絶テクニックの演出と映像美でホラーとSFとのダブルエンジン転がして、オープンエンドのストーリーテリングなのにきっちりエンタメに仕上げた上で最後の最後で急カーブジャンル変更。凄すぎてわけがわからない」(ブログより引用)になります。まじで全ての映画ファンに見てほしい。
② 13BOM DI JAKARTA
私の愛するアンガ監督、リオデワント主演作。なんと、大阪アジアン映画祭で監督自らやってきてくれました。本当に嬉しかった。今年一番嬉しかった。作品も素晴らしかった。敬虔な信者であり神であり人間であるリオデワントを描いてくれてありがとうございます。腐敗した強い神の前で周縁に追いやられた人々に真摯な目を向け、そのためにカタルシスをもたらさなかった監督のことが本当に好きだ。
zombiewanwan.hatenablog.com③ JANJI JONI
ジョコ・アンワル監督3番目にして既に二本目。だって天才が過ぎるのだ。長編監督デビュー作なんですがあまりに素晴らしかった。映画のフィルム配達人の話、というだけで惹かれるでしょう。ジョコ監督はホラーが十八番ではありますが、多く作っているのがホラーというだけでジョコ監督はなんでも撮れるし、全ての基礎に愛がある。大好き。愛してる。労働者映画であり、ロマンス映画であり、見知らぬ誰かと出会わせてくれる、出会いの可能性を教えてくれる。そしてとってもクィアです。
④ SUSUK
躍進凄まじいギナンティ監督の傑作ホラー。高級コールガールのララスを中心とした物語はフェミニズムに根差していてこの男中心の家父長制社会の構造を撃つ物語になっている。そして演出も素晴らしい。今年の呪術シーンナンバー1です。SUSUKという宝石を体に埋め込む魔術もこれで初めて知ったけどインドネシアの魔術世界、本当に深い。
⑤ ロスト・イン・シャドー(THE SHADOW STRAYS)
「血に染まった道をいくほど、力を極めるほど、これしかないのだと奮うほど、残るのは虚無ばかり。『シャドー・オブ・ナイト/THE NIGHT COMES FOR US』でイトウが体現したように『Killes』でバユが吞み込まれたように、振り上げた拳の隣ではいつでも空ろが口を開けている」(ブログより)
これに尽きる。ティモ監督の描く暴力の空虚さが本当に好きだ。これこそがインドネシアの映画だ。物語として続きであると示されてはいないけれどこれはTHE NIGHT COMES FOR USの正統な続編だ。
⑥ Bonnie
HiGH&LOWみたいな拳ひとつの力が信じられている学園喧嘩ものともいえるけれど、主人公ボニーはずっと怒っていて、怒りは最後まで貫き通されて、だからカタルシスはない。そんなボニーのことがすごく好きだった。眩しくもなくて、愛らしさもなくて、孤独だったボニー。レザ・ヒルマンが出演しているので(王子様みたいな役)アクションが素晴らしいです。インドネシアのアクション界も安泰だな~~と思わされる役者がたくさん出ているのも肝。レザばりに動ける人間、他に2人も出てるんですよ。凄すぎない?
⑦ Tuhan,Izinkan Aku Berdosa
巨匠ハヌン・ブラマンチョ監督。最近(遅い)気が付いたけどこの監督凄いね?ハイペースに撮りすぎる(インドネシア映画あるある)からなのか、退屈な映画もあるものの、基本的にはすごくうまいし真摯。『?』などに見られるように宗教ともずっと避けることなく向き合ってきているけど、この作品はこの時世でここまで描いたことに尊敬しかない。インドネシアのイスラム教の、女を食い物にする構造をごまかすことなく描いてしかも悲劇で終わらせなかったこと、すごく嬉しかった。悲劇でないことの重要性を良く知っている監督なのだと思った。アグニニ・ハクのキャスティングも、受けたアグニニさんも、最高だ。
⑧ SIKSA KUBUR
3本目ですジョコ・アンワル監督。天才だから……素晴らしかった。完璧だった。「墓の拷問」、死後に生前の信仰心を試され、足りないと判断されれば天使によって拷問を受けるという子供のしつけにも使われる教義を題材にした、宗教と対峙して作られた作品だったけれど、私はジョコ監督作品には破壊という神の存在をいつも感じる。破壊の下には怒りがあり、怒りの下には愛がある。ジョコ監督作品はこの世界と人間を愛して、愛しているから怒りをもって破壊する。だからジョコ監督はホラーというジャンルの映画を撮ることが多いのだと思う。
「彼らの苦しみはこの世界を破壊するに値する苦しみであり、彼らの暴力はこの世界を破壊しなければ消し去ることのできない暴力だ。だから死の天使が破壊するべきものがあるとすればそれは不信心者ではなく、この世界そのものでしかない。SIKSA KUBURは道徳を謳うものではなく、世界を破壊する作品である」(ブログより)
⑨ Imperfect
見た目でジャッジされたことのある、ジャッジしてしまったことのある全ての人に見てほしい。こんなにも優しい映画を見たことがない。能力はあるのに見た目のせいで評価されない女性が、変わる努力をすることで認められていくんだけれど、同時になにかが変わってしまう、そんなありきたりな物語だけどその「変わった」ことを丁寧にひも解いていってくれるから、ありきたりに個人の話で終わらない。そのように方向づけられる社会構造と責任の話にまで辿り着く。登場人物がみんないいんだ……ものすごく泣きました。
⑨ Budi Pekerti
SNS社会の暴力性を描いた映画、と一言でいうとありふれているんですがそこはインドネシア映画、その暴力についての解像度がものすごく高い。変な人しか出てこないのに、誰にでもある加害性を丁寧に描いている。そして最後に、他者と他者であることを明確にして、互いに譲れない線を踏み越えるな、と拒絶を行うことで加害から離れる。家族ものでもあるんだけれど、家族の加害性についても同様に描き、その先の可能性についても触れているように思った。
いやー本当に今年も面白かった。
そしてここからは心に刺さった作品たち。
★GELAS KACA
不倫ドラマです。リオデワントが出ていなければ見なかっただろうジャンル。でもすごかったんですよこれ……ものすごい政治ドラマだったしフェミニズム作品だった。惜しいところはあるんだけど、不倫ドラマがこんな結末を迎えるとは思っても見なかった。最終話のタイトル、Woman on Topですよ。最高ですね。
リオデワント、ホット過ぎて登場人物全員に性的ファンタジーを向けられすぎて可哀想なほどだった。
★MADAME X
批判点もあるんだけど「トランス女性×特撮×スーパーヒーロー×伝統文化 が全部入った映画」なの、最高が過ぎて忘れられない。めちゃくちゃかっこよかった。ルッキー監督大好き。セルフリブートして、いま作ってほしい。”いま”映画館で公開できるかわからないけど、だからこそ作ってほしい。
★Para Benita Pengikut Iblis
2はつまらなかったし監督インタビューに不安点などもあるんですが忘れられない面白さがあったんですよね……そして「VIRGO」から気になっていたマワルの振り切った演技が最高で、ここから大ファンになりました。超美しいのに全くそれを感じさせないねじ曲がった根性と悪意を完璧に演じ、なおかつ蟷螂拳法やってくれるんですよ。これ以外にもわりと変な役やること多くて、そういうの好きなんだろうか。もっと見せてほしい。
なんとか2024年中に今年のインドネシア映画まとめをあげることができました。基本的に自分に向けて書いているので普通に見られる作品が少なすぎる&面白さを伝えようとするテクニックのない文章ですが、インドネシア作品に興味を持ってくれた人がいたら嬉しい。
2025年もたくさん見ます!!