
★★★★
その日暮らしの青年ジョジョはある日、クイッキーエクスプレスというピザの配達屋を装った男による性的サービス(ジゴロ)の会社にスカウトされる。福利厚生と教育の整ったその会社で、同期入社のピクトールとマーリーと共に訓練を受けてデビューし、順調にジゴロとして出世していく。富裕層など特別な客を相手にするようになりひとりのマダムと独占的に契約を結んだ頃、ジョジョは偶然出会った医者のリラと恋に落ちる。そうして仕事もプライベートも順風満帆と思われた日々だったが、リラの家を訪れ両親が何者かを知った時からジョジョは大きなトラブルに巻き込まれることになる。
※トランスへの茶化しや、生まれつきの容姿に対する差別的表現が少し見られる映画です。
ジョコ・アンワル脚本作は外れがない!面白かった……今年のドラマでリオデワントもジゴロ役やってたし、GERAS KACAでもジゴロがメインキャラクターだったし、インドネシアではいつ頃からポピュラーな存在なのかな。日本では女性向け風俗が一般的に認知されるようになったのは近年な気がする。2001にそういう小説は出ているけど(ジョコ脚本の映画とレベルが違い過ぎて並べたくないのでタイトルは出さない)あくまで特殊な世界の話、という扱われ方だったように思う。この辺りは印象論でしかないけど。
撮り方がかなりJANJI JONIに似ていて、監督は違うけど絵コンテくらいはジョコが描いててもおかしくないなという感じがした。テンポとか演出にも関わってないかな。とても見やすく、ギャグも面白かった。Tora Sudiro、KAN MAKにも出てたけど良かったな~
年齢や性別や立場によってこうであるべきとされる姿を破壊する物語、大好きです。ジョコはいつも既存の価値観を破壊している。破壊することで希望が生まれるパンドラの箱みたいな作家だ。コメディによって反発を上手に流して、でも決して冗談だとはいわない真剣さがある。女の性欲もさまざまな性的”嗜好”もあって当然のものとしている。笑いが向けられるのはそれらの存在自体にではない。(だからこそトランスの客から逃げるジョジョの描写は残念だった。ちゃんと仕事しろよ!ジョジョはプロのジゴロなんだから)
恋人リラの家に行ってからの展開の熱さは極まってた。母親とジゴロとしての関係をもっているのが発覚するのは読めても、マフィアの父親がゲイまたはパン/バイセクシャルで、死んだ親友との関係を忘れられず、その面影をジョジョに求めて迫るシーンなんて手を叩いてしまったよ。ジョジョの部屋に潜んでいる父親、妻と娘のことで脅迫にきたのかと思ったら親友への想いを独白しはじめて……。さらには部下であるマテオが父親と関係をもっていて、嫉妬のあまりジョジョを殺そうとクイッキーエクスプレスにカチコミくる展開最高すぎた。痴情の縺れるマフィア! ジゴロたちのマフィアに臆さない「やるぞ!」な戦いも、仕事へのプライドやジョジョとの友情が見えて熱かった。ピクトールとマーリーとジョジョ、すごくいい関係なんだよ。一緒に仕事で頑張ってきて、お互いを信頼するようになって、というのがここまでできちんと伝わるように描かれている。適切な労働環境がそういう関係づくりをも支えているというのもわかる。教育があり、病院での検査も定期的にあり、搾取されず報酬は分配される。セックスワークはワークです、をいうためにはまずはこういう環境の整備が絶対的に必要だと思う。(もちろんいまのワーカーの人たちの労働者としての権利や人権は絶対に守られ差別されないことが重要であるという前提の下で、権利が守られるために環境の整備がいるし、そのためには法律が必要と思ってる)
最後、ピクトールとマーリーはジゴロをやめて昔からの夢だったり好きなことを始めるけど、ジョジョはクイッキーエクスプレスに勤めていてスカウトをしている、という締めも本当に好きだった。ジゴロ「なんか」やってたから殺されそうになったし、みんながやめてそれぞれの「まともな」道へ、という展開だったらセックスワークへの否定にしかならなかったけど、そうはしないジョコが好きです。
女のセックスワーカーの物語でも、こんな風に描くものがあったらいいのになと思った。