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Sehidup Semati(2024)

★★★

幸せな結婚をしたはずのレナタだが、夫のエドウィンは些細なことで暴力を振るい、レナタを家に閉じ込めるようになった。夫の仕事部屋には決して近づくなと言われ、息を潜めるようにして生活する中、同じマンションの住人と夫が浮気しているのではないかという疑いを持ち始める。隣人の「売女のような」アスマラに相談をするうち、浮気相手が夫の部屋に住んでいるような気配がし始める。

 

キリスト教の宣教師による「女は男の所有物であり決して逆らうことは許されない」という説教から始まる。マンションは今にも崩れそうな気配がして、廊下には行方不明者の張り紙が貼られ住人たちは我先にと引越していく。誰とも交流をもたないレナタはひとり、部屋の中で息を殺して夫を窺う。

こうしてフェミニズムホラー/サスペンスであることを明確に示した上で映画は始まる。 キリスト教の宣教師にしたのは社会的な圧力を避けるためでおそらくこの説教はウスタズへの批判でもある。

レナタは夫からの暴力に耐えながら、離婚という選択肢は持たない。不貞を疑っても怒りや呪いはひたすら相手の女へと向けられる。既に自分に対する愛が失われているのを知りながら、それを暴かれるのを最も恐れている。殴られることよりも、他の女とのセックスよりも。 アスマラによる浮気相手の殺害、ふたりでの死体遺棄アスマラの死まで至る物語は、最終的に全ての幕が剥がされ、レナタが全てを起こしたことが明かされる。離婚を告げ、他の女との生活を始めようとする夫をレナタは刺し殺し、女も呼び寄せて殺害する。アスマラはドラマの中で妻から夫を寝とる売女であり、イマジナリーフレンドであると共にもう1人のレナタである。

よくある話だろう。凡庸なシナリオとも言えるかもしれない。でもこれは、嫉妬に狂った妻の兇行を面白く描いた映画ではない。酷い夫に虐げられた結果でもない。最初に提示されているように、これはフェミニズム映画である。家父長制に徹底的に従った結果を、説教師の言う通りにした結果を描いたものである。

レナタが夫を刺すのは愛のためではない。ひたすらに家父長制を遂行しようとしたからだ。家父長制に対する一切の抵抗をやめたレナタだから夫を殺した。 宗教、家族、レナタの周囲にいる人々はアスマラを除いてみな夫に従い決して逆らうなという。夫が殴るのは妻が原因をつくっている。不貞も同じだ。しかし夫が求めるような女になれば夫の不興を買う。家父長制を守ろうとすれば矛盾はそこら中で露呈する。離婚を申し渡されたとき、神が決めた聖なる結婚を踏み躙ってはならず夫には完全に服従しなければならない、そのふたつを同時に果たせといわれたとき、レナタにはそれ以外の選択がなかった。売女は遊び相手であれば妻に口を出す権利はないが、家庭を壊すならばそれは家父長制の敵である。レナタは正式な妻としての正義をもって敵を殺す。 殺す、が、だから、レナタは一切抵抗はしていないのだ。かわりに抵抗は全て内に秘められ、アスマラの姿をとる。

コインランドリーであなたの幸せってなに?と聞かれて「母はこどもが私とエドウィンの関係を改善すると言った」と答え、だからこどもが欲しいというところから画面が切り替わって始まるアスマラとの出産シーンは、明らかに性愛の暗喩でもある。両膝を開き、喘ぐラナタの股間に顔を埋めるアスマラは口淫をイメージさせ、そしてしばらくの間の後に、体を起こしたアスマラは洗濯物でできた 「私たちのこども」 を、差し出す。夫との関係改善のために欲しかった子どもを、全くその価値を持たない、レナタとアスマラの子どもに変える。こどもという概念を家父長制から奪う。 映画史に残るようなシーンだった。堪らなく好きなシーンだった。 でも、アスマラは、レナタの抵抗の化身は、レナタに負ける。レナタはレナタを殺し、家父長制の奴隷であることを選び続ける。

構造の堅牢さを描き切った作品だと思う。ただ、表面上の復讐と、それによって精神の均衡を崩した女の話として消費されてしまわないだろうかという不安がある。Upi監督は大衆に訴えかけるエンタメを作るのがうまくて、そこに今回でいえば出産シーンのような、監督の本質なのだろう、手触りと濃度の違うシーンを入れてくるのがすごく好きなんだけど、今作はただの消費に終わらないような仕掛けがもう少し必要だったと思う。夫や父親にとって後味が悪いような。

個人的な感想で言えば、私はレナタにアスマラと逃げて欲しかった。でも奴隷のレナタは女たちの連帯も破壊する。辛かった。少しの希望もなくて、確かにこれはホラーだった。




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