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Budi Pekerti(2023)

★★★★★

熱心なスクールカウンセラーであるプラニには、躁鬱の夫と、YouTuberの息子ムクラス、反体制的バンドをやりつつ古着を売る娘のティタがいる。コロナ下で、躁状態の夫が浪費するお金の工面に苦労しつつも、副校長に昇進するチャンスを目前に、仕事と趣味に張り切っている。 ある日、市場の人気店で夫のために好物を買おうと並んでいたところ、金で割り込んでこようとする客を見つけて問い詰める。騒ぎになり、店の主人である老婆からも止められ、プラニは立ち去るが、その時の様子を映した動画が観光客のYouTubeチャンネルにあがり、生徒がそれを見つけたことから騒動となる。悪いことはしていないと突っぱねるプラニだったが、家族も巻き込んで事態は様々な方向へと加速し始める。

 

傑作。 PHOTOCOPYの監督ですが、前作同様演出が上手くてシーンの切り取り方が素晴らしい。アーティスティックな絵を撮るんだけれど、それが物語の現実味を損なわずに、語られていることが何かを強く示してくる。

利益とバズしか考えないWEBマガジンを糾弾しにいったティタがお前はどうだ?と自分のビジネスの痛いところを突かれ、檄したところに一斉に向けられるカメラのライトなど、ありふれた演出でもタイミングと意味とが合致しているのでぞっとする。

インドネシアは日本以上にSNSが社会に深く関わっているけれど、描かれる炎上と批判と反論とさらなる批判と問題が起きた時の方法論、というのは十分共通している所で、それをリアルに描いていた。SNSでの炎上、コメディでホラーでサスペンスなんだよね。その映画手法を全部使って表現していた。

と同時に、それが「映画」ではなく「現実」であること、私たちは現実の人の人生を笑って怖がってスリルに感じて謎解きをしようとしていること、その「人間を当たり前に消費している」スタンスをはっきりわからせてくる。

当然ながら見えるのは一部分で、SNSの向こう側にいる人間は複雑で、光の当たり具合によって如何様にも見える。なのに、SNSのライトは強すぎて、現実に知っている相手ですら、照らされた部分以外は見えなくなってしまう。プラニを応援していた生徒たちが手のひらを返すところ、いろいろなことを考えているつもりでも何を見て何を信じるかの線なんて簡単にひっくり返るんだという、いいシーンだった。

ラニのやばさなんて、だってもう最初から明らかなんですよ。カウンセラーとして絶対にいて欲しくないし指導とか勘弁してほしい、ということを最初からやってる。応援してた生徒たちが出してくるエピソードも全部やばい。だけど一線までは「いい先生」として語られ続ける。

その一線が 「喧嘩ばかりのする暴力的なこどもに墓を掘らせる」 なの、凄い。めちゃくちゃ笑った。プラニ先生やばい。内臓の描かれたTシャツに拾ったシケモクをくっつけていくやつもやばかったけど、それはだめだわ。 そう、だめなんですよ。プラニ先生のやってること基本的にこどもの人権侵害だし、効果があるととても思えない(実際、専門的な勉強はしてないといってる)。正規の手続きもとってないし、クビで然るべき案件ではある。学校側から、また法律的な観点から処罰されるのは仕方がない。 だけど、現実にそれで救われたこどもがいたということも否定はできない事実として現れてくる。墓を掘ったおかげで衝動をコントロールできて、墓にいるのが好きになったという青年がいる。それは偶然の産物で、決してプラニ先生の行動を肯定しないし、結果よければ良かったには絶対ならない。でも、そんなことは、この世にたくさんある。 SNS上の倫理で測れないことなんて、山ほどある。 プラニ先生は処罰されるべきで、先生を続けるべきではないけれど、それを判断するのはプラニ先生となんの関わりもない人々ではない。 もちろんme too運動のように権力を相手にするとき、関係のない人たちの声が力を生むことはある。基本的に対権力であれば、関わりないから声をあげるな、なんてことは絶対にない。あげるべきだし一緒に戦うべき。それは武器になる。 でも、その武器は向ける方向を間違えれば、快楽のための暴力にもなる。簡単に。

ここら辺、インドネシア映画でしたね本当に……なぜこんなに加害性に向き合えるのか…… プラニ先生は教師なので対生徒において権力勾配はあるので、SNSで声を上げるのが間違いではないんだけど、墓掘り少年のことを勝手に「トラウマがある」「将来DVをする可能性がある」とか語り始めているのでやっぱり消費と快楽に向かっちゃっているんですよね。 少なくともプラニ先生は彼を自分のために消費しようとはしない。水の中に二人で沈むシーン、すごく良かった。彼には彼の考えがあり、プラニ先生に感謝はしても譲れない線があり、水の中に沈んでもひとりとひとりでしかない。

家族でバクソを一個ずつ食べさせていくラストシーン、希望とまではいわないけど、SNSとは無関係に、ももう無理だけど、でも、終わりではないんだという感じがした。救いがないとは思わなかった。 躁鬱の夫が特に何かするわけでもなく、ただそういう状態の人という描写だったのも良かった。ドウィ・サソノ演技上手い。




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