
★★★
トランス女性×特撮×スーパーヒーロー×伝統文化 が全部入った映画。大好きルッキー監督作。 トランス女性のヒーローものとしてすごく良かった。DCのスーパーガールが2018ならこっちの方が早い。
ヒーローオリジンなわけだけど、きっかけが性的マイノリティを抑圧しようとする団体からの暴力で、更にその団体を牛耳るのは“国民の守るべき道徳”を掲げる政党であるというところもさすがルッキー監督だった。
最大のヴィランがヴィランになる理由も家父長制を通してのものであり、且つ、マダムX(今作ヒーロー)の「X」がヴィランとの思い出に基づくものであるというのもすごく良かった。何が悪なのかわかってきっちりやってる。
性的マイノリティを排除する社会は女も支配するものとしてしか見ないことや、移民なら更に搾取されることなども入れ込んで視野が広い。ヒーロー組織の創始者に元軍人を据え、女を娶らない男であることで軍を追い出された過去を設定したのは白眉だと思う。差別と搾取の構造のことがちゃんと描かれる。
ルッキー監督はマイノリティが“いる”こと、そして“あなたはあなただ”というのを創作のかなり初期からやってきているんだなと改めて感じた。ジョコアンワルも出てます。
が、だからこそ、だからこそかなり批判点がある。コメディでいいんだけど、ヴィランの3人の妻たちとかかなり面白かったんだけど、トランス女性の在り方をコメディでやるならもっと慎重に、差別や暴力は「笑えない」のだという線引きをきっちりしなきゃいけない。 トランス当事者を起用すべきところ、主演もコメディ出身の方のようだし、きちんと物語としてのメッセージはあっても、それだけを見て笑う人たちもいるでしょう。トランス女性はみんな類型的な「オネエ」で、殺されるのもトランス女性ばかりなのも辛い。 2010年のインドネシアの社会状況で作られた作品ということを考えても批判されるべきところは多い。 ヒーローとしてのトランス女性というのはすごく良かったから、設定は保ちつつ、リメイクというよりリブートでもう一度見てみたいなと思う。