
★★★★★
とてもよかった!
ラマダンの終わり、暦の切り替わりを示す三日月を見るため病をおして旅に出る父親に(ウスタズにあたるのかな?)、ラマダンの断食もせず日々の祈りもせず、家に寄りつかない折り合いの悪い息子が付き添うことになる……という、よくある父子もののロードムービー、なんだけれど、互いを理解できない二人が少しの距離をあけたまま歩き続けて同じ三日月を見る、その他者を他者のままにする道程がすごくよかった。
ヘリには父親を許せない理由があり、父親にも譲れない信仰がある。親子だからといってわかりあわなくてもよくて、わかりあわなくても共に歩くことはできる。
旅の途中で出会う様々な人も同じで、宗教を権力に使ったり迫害の理由にしたり、クルアーンとは別の自分たちの村のやり方をもっていたりする。別の祈りをもつ人々もいる。
インドネシア社会への批判の目がそこにはあり、正されるべきことも示しているのだけれど、そこに憎しみは持ち込まれない。他者を尊重することを徹底したお話だった。 父親は信仰の強さゆえにその線を踏み越えてしまうんだけれど、最後にはヘリに自分を委ねる。ずっと神にだけ従ってきた父親にとって初めてヘリを“自分と同じ神の子”だけではない他者として見た瞬間だったように思う。
アンガ監督の『いつか今日の話をしよう』シリーズもそうだけれど、インドネシアの父子の解体は父殺しもちろんある一方で、子の解放から始めようとする流れもあって、とても好きです。 オカアンタラもデディストモもすごい良かった。