
★★★★★
初めて訪れたジャカルタの映画館で見ました。
素晴らしかった!!!ソラヤ監督作の中で一番好きかもしれない。 ソラヤは父親と夫の支配、即ち家父長制をホラーによって再現し物理的に破壊するというのをめちゃくちゃ意識的にやり続けているので、フェミニズムホラーだなと思ってますが、今作はホラー以外の直球フェミニズム映画でもやらないことをやったので、もう本当ものっっすごく好きです。
婚約者がいたものの、両親の借金により地主に「跡取りを産む女」として第二夫人としてもらわれていったスザンナ、第一夫人から黒魔術で呪われて出産に伴い凄惨な死に方をするが、婚約者はスザンナを甦らせ、代わりにスザンナと地主の間のこどもを捧げるという契約を悪魔と交わす。
ここからスザンナ自身によるこどもを取り返すための復讐が始まるのだけど、誰の子であろうと生んだ子供は愛するもの、母である自分のもの、というのをやるのか……と思っていたところ、最後にスザンナ自身が婚約者に対してこどもを殺すように要求するんですよ。悪魔との契約だから。そうしないと自分が婚約者と幸せにもう一度生き直すことはできないから。 それをはっきり言葉にして要求するの、すごいなと思ったんだよ……
こどもへの愛が全てに勝ることを正義としない!!!母親になったら誰もがそれを全てに優先させるわけではない!!
スザンナにはその権利があるんですよ。父に売られ、強姦され、婚約者にすら意志と無関係に甦らされてこどもを取引材料にされた、自分で決めたことがなにひとつない彼女が最後に自分の意志で要求する。ものすごい感動した。小説『鋼鉄紅女』を思い出した。
彼女には自分の命かこどもの命かどちらかを選択することしか残されてなくて、だからこれは決して自由な選択とは言えないし、選択ですらないのだけれど、それでもいま言わせたことにはものすごい価値があると思いますね……すごいよソラヤ… でも同時に、スザンナはその状況に追い込まれているので責任はないんだけれども、その要求を通せば生んだ者による生まれてきた者に対する支配になってしまう。こどもは親の所有物ではないし、もちろん命を奪われる筋合いもない。
だから婚約者はスザンナを殺す方を選ぶ。「望んで生まれてきたわけではないこども」の命とその子の自由な人生を守り続けることを選ぶ。 そして、その上で彼は自分の間違いを認め、責任を背負う。スザンナを自分のものと見做して振る舞い、甦らせ、取引をしたことについて間違いを認め、いつか死ぬその日に悪魔の元で自分が責任をとるとはっきりいうんですよ。悪魔に対して。 これもさ…すごいなと思ったんだよ。家父長制を男がきちんと責任持って壊すっていってる。
血の繋がらないこどもを支配せず、無条件で守られれるべき他者として認め、妻(婚約者)の人格を認める。家父長制がもたない他者の他者性に彼は気がつくし、その境界は超えてはならないものだと理解して実践する。 すごいよ〜〜〜〜〜〜
そしてこれをやりながらホラーとして最高峰のクライマックスも同時に見せるんですよソラヤは…これしかないのやり方で、燃える火の前で、スザンナが全身血まみれになり白い服を真っ赤に染め上げて現れる、ホラー史屈指のシーンじゃないですか………インドネシア以外のホラーあんまり見てないけどこのシーンは凄いよ…
あと、リメイク前のオリジナルがそうなのか?スザンナは前作からコメディシーンをものすごく入れてきていたけど、ソラヤコメディうまいからそこもすごく楽しかったよ〜〜警官2人の味わいの良さ……
とにかくスザンナ2大好きだしこれ、世界で見てほしいですね。日本でももちろん。Netflixの前に映画館でかけてほしい。燃える火と赤い血、大画面で見るべきです。