深田萌絵さんがいう天才エンジニア・后健慈(ジェイソン・ホー)のここ20年のカネの回し方はおぼろげながらわかってきた。主に4つの種類の会社を多数使い分け、表に立つ会社「C.活動会社」に外から資金を集め、裏にある会社「B.存続会社/X.謎会社」にカネを回していたようである。その様子は次の記事にて説明した。

| 分類 | 説明 |
|---|---|
| A:事業会社 | チップセットArticia等の事業を行なっていた米Mai Logic社のみを指す。 (創業時はMentor ARC社、後に社名変更) |
| B:存続会社 | 知財等を蓄積し、あまり目立つ活動をせず、長期存続させる会社。外部からの資金はC.活動会社を介してのみ受け取る。 |
| C:活動会社 | 表舞台に立って事業構想を打ち出し、投資家と顧客の期待を集めつつも、結果的に特に実績を残すこともなく比較的短命に終わる会社。外部からの資金を受け入れるが、知財は持たない。 |
| X:謎会社 | パナマ文書(オフショアリークス)がなければ部外者には存在が知られることすらなかったはずの会社。資金が流れた形跡はある。比較的短期で閉鎖。 |
ただ、それがいつからどのように始まったのかがイマイチ不明だったのだが、とうとう尻尾が見えてきたので考察する。つまり、一連の深田事件の背後にある策謀の原点ということになる。
考察の直接的なテーマは「亞圖科技股份有限公司が株式公開前後に集めた資金はどうなったか」である。
しかし、探っているうちに何が見えてきたかというと、黒幕は后健慈かとずっと思っていたが、ゲーム的にいえばその裏にさらに「ラスボス」だとか「隠しボス」がいたというような話である。
以下に順を追って説明する。(敬称略)
1. Paramount Pride Company Ltd.
2. 華非グループ
3. 徐至毅と徐錦鏘
4. 時系列の整理と不審点
5. 馬英九の影
6. 仮説としての推理
7. 株式投資のカラクリ
8. 本当の黒幕
この Paramount Pride Company Ltd. は、冒頭の表で「X.謎会社」に分類した会社のひとつである。

深田事件に精通している人なら、上図を見ただけであっと思う程度にはインパクトがあるはず。
図の中央は、オフショアリークスからの画像である。
https://offshoreleaks.icij.org/nodes/131462
つまり、パナマ文書から流出した情報ということになる。
この文書は、1970年代から作成されたもので、総数は1150万件に上る。文書にはオフショア金融センターを利用する21万4000社の企業の、株主や取締役などの情報を含む詳細な情報が書かれている。これらの企業の関係者には、多くの著名な政治家や富裕層の人々がおり、公的組織も存在する。
その Paramount Pride社、所在地は英領ヴァージン諸島。ここは、租税回避地(タックス・ヘイブン)としても知られている。
代表者(Directoor)は后健慈である。株主がたくさんいるが、后健慈と亞圖科技股份有限公司、さらには后健慈の妻である徐秀瑩氏の名前も見える。
問題は、その他の株主の面々である。次項で説明する。
后健慈が1998年に台湾に設立した亞圖科技股份有限公司は、1999年の増資の際に「虚偽登記」事件を起こしてのちに刑事事件に発展している。詳細は「ジェイソンの足跡(後編) - ZF」の《16. 台湾での刑事事件=会社法違反(虚偽登記)》を参照。
簡単に言えば、借りたカネを一旦会社の口座に入れて、増資がうまくいったかのように虚偽の登記をしたということである。(似た話を日本でも見たが、それはまた別途)
その虚偽登記事案について、Niaoさんの記事から引用する。
つまり、この虚偽登記の際にカネを一時的に亞圖科技に貸したのが華非グループである。
華非グループは2社だけではないようだが、とりあえずこの記事では次の2社を指すものとする。上の判決文に登場する社名がこの2社である。
それで、改めて1項の図を見ていただきたいが、問題の Paramount Pride社の株主に、華非グループの役員の面々がずらりと並んでいるのである。
この謎を解くのがこの記事の主目的である。
その華非グループから、問題の Paramount Pride社の株主に名を連ねている徐至毅と徐錦鏘の2名を取り上げる。
1)徐至毅
元・Mentor ARC(米国)の管理マネージャー。父親が中国本土に移住することになったため、徐はアメリカを離れ、上海で家業を継ぐことにした。
上の2つの記事を総合すると、米 Mentor ARC社の管理マネージャーをしていた徐至毅は、馬英九とも関わりが深い華非グループを率いる父親が2003年に台湾から上海に拠点を移すことになったので、これに付き従い自分も米国から上海に移住した、というような話である。
その Mentor ARC社とは、後に Mai Logic社と社名変更することになるが、創業時の社名が Mentor ARC である。
そして、その Mentor ARC社の名義は、CEOである后健慈ではなく、妻の徐秀瑩である。
(徐秀瑩=HSU,HSIU-YING)
http://archive.today/g2EDZ
なお、馬英九は、後の2008年5月–2016年5月に中華民国(台湾)の総統を務めた。華非グループが上海に移った2003年といえば、馬英九が国民党首席(2005年8月–2007年2月)になるより前、台北市長時代(1998年-2006年)ということになる。
また、上の記事にはこういう表現がある。
政治家と企業グループの関係だから、つまり馬英九・台北市長にとって華非グループは有力スポンサーだったと解釈することができる。華非グループは台北を中心に不動産開発事業をしていたが、円滑な事業運営には政治家の口添えが効果的である。許認可の権限が行政側にあり、政治家はそこに権力を行使できるからである。日本でも少し前まで建設業界と政治家の癒着がよく問題になっていた。(例:西松建設事件)
2)徐錦鏘
上の徐至毅の父親にして華非グループを率いる人物はこの人であろう。
その徐錦鏘、虚偽登記後の亞圖科技で、役員の持ち株比率の筆頭にいる。
この徐錦鏘は、華非グループを率いる人物であり、虚偽登記の際に后健慈に一時的にカネを貸す決断をし、亞圖科技の役員に名を連ね、創業者である后健慈より持ち株が多く、Paramount Pride社の株主であるところを見ると、虚偽登記事件に際しても「后健慈に騙された、私は何も知らなかった」という立場とは思えない。
ちなみに、上のサイトは「台北非上場株式情報サイト(台北未上市股票資訊網)」である。その意味は後述する。
それから、上述の話からもわかるように、この華非グループの役員に名を連ね、Paramount Pride社の株主に居並ぶ「徐」の姓を持つ面々は皆一族と思われる。
つまり、后健慈の妻である徐秀瑩もこの一族であろう。そう考えると、徐秀瑩が設立した米 Menter ARC社に兄弟と思われる徐至毅が管理マネージャーとして入っていたこともわかる。
問題の Paramount Pride社と亞圖科技股份有限公司を中心に時系列を整理する。
| 年月 | 出来事 |
|---|---|
| 1992年9月 | 米国にて Mai Logic社(当初社名はMentor ARC)設立、名義は徐秀瑩 |
| 1997年9月 | 后健慈、後のセキュリティコンセプト「Genetic Computing」につながる米国特許(US-5935247-A)出願(米国での初出願、まだ取得ではない) |
| 1997年10月 | Mai Logic社とWinbond社がチップセット共同開発で合意 |
| 1998年3月 | 台湾に亞圖科技股份有限公司を設立 |
| 1998年10月 | Winbond社CEO焦佑鈞、社内メールで后健慈の「データ・セキュリティ技術という非常に価値のある発明」に興味を示しつつ「亞圖科技のミッションは不明」と書く |
| 1999年1月 | 亞圖科技「98年まで12件の特許が予備審査を通過し、11件の特許が成立」 |
| 1999年7月 | 亞圖科技「9700万元の現金増資」(これが後に虚偽登記事件に) |
| 1999年8月 | 后健慈、後のセキュリティコンセプト「Genetic Computing」につながる米国特許(US-5935247-A)取得 |
| 1999年9月 | Mai Logic社とWinbond社(WECA)がチップセットの製造販売で合意 |
| 1999年10月 | 后健慈、Genetic Computing 関連と思われる複数の特許出願 Mai Logic/Winbond共同開発のチップセットが登場するはずの時期だが以後消息なし |
| 1999年11月 | Mai Logic社から Genetic Computing コンセプトの資料公開 |
| 2000年3月 | 英領ヴァージン諸島に Paramount Pride社設立(「X.謎会社」の3社同時) |
| 2000年5月 | 台北市調査局がWinbond社CEO焦佑鈞に聞き取り調査「亞圖科技から資金が次々に海外に流出?」と質問、焦佑鈞「わからない、后健慈から現行技術を遥かに上回るシステム・セキュリティ関連の技術をすでに発明してあるからと亞圖との提携を求められた」と返事 |
| 2000年7月 | 中華民国財政部が亞圖科技の株式の公開を承認 |
| 2000年9月 | 亞圖科技、「1億9200万元現金増資し、払込資本金3億6000万元に」「米Inguard社に間接出資し、同社のGenetic Computer技術と亞圖科技のシステムエンジニアリング技術を融合させる」「システム・チップセット技術と亞圖科技のシステム・エンジニアリング技術の融合を図るため、米Mentor ARC社に間接的に出資」 |
| 2001年8月 | 亞圖科技「Articia S、評価ボードTeron CXが出荷開始」 |
| 2002年5月 | Mai Logic社とカイザー、JSF/F35向け「Articia P」の開発で契約 華非グループの徐一族、中国・上海に「汉荣房地产开发(上海)有限公司」設立 |
| 2002年6月 | 亞圖科技「これまで35件以上の特許を取得、100件以上の申請が審査中」 |
| 2002年7月 | 亞圖科技、株式非公開化 |
| 2002年10月 | Bplan社からMai Logic社CEO后健慈氏への手紙=ArticiaSのひどい設計品質へのクレーム |
| 2003年 | 華非グループの徐一族、上海に移住 |
| 2005年8月 | 虚偽登記の裁判から逃匿した后健慈に指名手配(2016年2月に時効が成立) |
上の表は、次の「亞圖科技股份有限公司 公司發展」から主な箇所を抜粋し、かつ他の要素も盛り込んでいる。
https://web.archive.org/web/20030814212304/http://www.atumtech.com:80/milestone/milestone.htm
以上の時系列を踏まえて、主な不審点を列挙する。
【不審点1】亞圖科技の特許
亞圖科技の公司發展に特許の話が羅列されているが、全部ウソである。亞圖科技として取得した特許も、他で取得後に一時的にでも亞圖科技に移管されたことのある特許も1件もない。
https://patents.google.com/?assignee=Atum+Technology&oq=assignee:(Atum+Technology)
【不審点2】Winbond社CEO焦佑鈞への亞圖科技への投資誘導
1998年10月にWinbond社CEO焦佑鈞が社内メールで后健慈の「データ・セキュリティ技術という非常に価値のある発明」に興味を示しているが、これは後にMai Logicから資料が出されたセキュリティコンセプト「Genetic Computing」を指していると思われる。しかし、不審点1に記したように、亞圖科技には後にも先にも特許はない。にも関わらず、台北市調査局からの質問に答えたように「后健慈から現行技術を遥かに上回るシステム・セキュリティ関連の技術をすでに発明してあるからと亞圖との提携を求められた」というのである。参考4に記したが、実はWinbond側にはMai Logicと提携せねばならない理由があったにも関わらず。
参考3)Genetic Computing 論 v2.0(Winbond社CEO焦佑鈞が興味を示したのはこれか?)
https://zfphantom.hatenablog.com/entry/2021/05/27/090927
参考4)Winbond/Maiの件(チップセット共同開発の件)
https://zfphantom.hatenablog.com/entry/2001/05/20/191515
【不審点3】華非グループが后健慈にカネを貸した理由
1999年7月の亞圖科技の増資の際に予定したようにはカネが集まらず、后健慈は華非グループから借りたカネを見せ金として虚偽登記した。華非グループは后健慈から見れば妻の一族のようだから、困って泣きついた可能性はある。ただ、この場面では一時的にカネを貸しただけでは亞圖科技の経営上は何の問題解決にもならないし、挙げ句の果てには后健慈はのちに立件されることになった。したがって、出資ならわかるが、カネを貸した理由が不審である。
【不審点4】Paramount Pride社に資金流出?
英領ヴァージン諸島に Paramount Pride社を設立した2ヶ月後の2000年5月に、台北市調査局がWinbond社CEO焦佑鈞に聞き取り調査し「亞圖科技から資金が次々に海外に流出?」と質問している。
送金先の少なくとも一部は設立間もない Paramount Pride社の疑いがある。というのも、少し時期は後になるが2000年9月に亞圖科技は「米Inguard社とMai Logic社に間接出資」と書き、オフショアリークスの情報でも亞圖科技がParamount Pride社の株主になっているからである。
また、2006年4月の新新聞の記事に「さらに華邦(=Winbond)は后氏が海外の子会社を利用して2億元の資金を流用していたと反撃した。」とある。
https://niaohui.blogspot.com/2020/05/jsf.html#08-01
ただし、后健慈が代表を務めるBVI会社は4社あり、亞圖科技が株主になっているのは Paramount Pride社だけではなく、「X.謎会社」とした3社全てがそうである。またこの3社はいずれも設立が2000年3月と思われる。
その中でも特に Paramount Pride社に注目しているのは、株主として華非グループを率いる徐一族の面々ずらりとが並んでいるからである。
なお、脚色が入っていると思われるが、深田さんも自身のブログに4社のBVI会社について書いている。
【不審点5】亞圖科技の株式非公開化時期
株式公開承認を得てから2年後の2002年7月には亞圖科技は株式非公開化した。その直後には「ArticiaSのひどい設計品質」が明らかになった。株式公開したままでいれば株価急落したはずである。このタイミングで株式非公開化したのには意味がある。可能性のひとつは、カネ集めの舞台装置の撤収、ということである。
http://archive.today/kvYln
参考10)Bplan社からMai Logic社CEO后健慈氏への手紙=Articiaのひどい設計品質へのクレーム(下記ページの下の方)
https://amigaworld.net/modules/newbb/viewtopic.php?mode=viewtopic&topic_id=10225&forum=33&start=20&viewmode=flat&order=0
【不審点6】華非グループが上海に移転した時期
3項の徐至毅の記事にあるように、2003年に華非グループは上海に進出した。そして、華非グループを率いる徐錦鏘(正確には記事中では「徐至毅の父親」)は上海(記事中では中国本土)に移住することになったので、米国で Mentor ARC社の管理マネージャーをしてた徐至毅も「アメリカを離れ、上海で家業を継ぐことにした」という。
この、2003年という時期は、亞圖科技の株式非公開化の翌年である。なぜこの時期なのか。可能性のひとつは、徐一族として事業拡大の軍資金を得たということであり、さらには台湾に留まることはもはや好ましくない状況になった、ということである。
漢栄不動産開発(上海)有限公司(汉荣房地产开发(上海)有限公司)
http://archive.today/EaR77
http://archive.today/h3cGD
主な不審点は前項に挙げたが、特に「馬英九」についてはこの項で取り上げる。
取り上げる理由は次の通りである。
【理由1】馬英九と華非グループの接点
これがなければ「馬英九」について取り上げるつもりはなかったが、予想外に関係者の至近距離にいたことがわかったので考察してみようという趣旨である。
3項に書いた話を再掲する。
政治家と企業グループの関係だから、つまり馬英九・台北市長にとって華非グループは有力スポンサーだったと解釈することができる。華非グループは台北を中心に不動産開発事業をしていたが、円滑な事業運営には政治家の口添えが効果的である。許認可の権限が行政側にあり、政治家はそこに権力を行使できるからである。日本でも少し前まで建設業界と政治家の癒着がよく問題になっていた。(例:西松建設事件)
この記事のテーマは「亞圖科技股份有限公司の株式公開前後に集めた資金はどうなったか」であるが、この件に関係なく、馬英九と華非グループの接点は最初からあったということが鍵である。
【理由2】深田萌絵さんのブログにおける「馬英九」の出現頻度。
改めて、深田萌絵さんのブログにおいて「馬英九」その他がどの程度出現するか確認してみる。
深田 ... 17200件
藤井 ... 852件
マイケル ... 349件
馬英九 ... 249件
呉思国 ... 240件
焦祐鈞 or 焦佑鈞 ... 46 + 66 = 112件
蔡英文 ... 57件
ファーウェイ ... 5580件
パナソニック ... 5420件
TSMC ... 1200件
青幇 ... 905件
シャープ ... 389件
IRS ... 188件
藤井氏についてはここでは触れないが、金銭トラブルが発端で長年にわたって係争し不当な貶めを連投していたから出現頻度が高くて当然として(「呉思国」も藤井氏関連)、その次のマイケル=后健慈だからこれも別格として、第三者の個人名としては「馬英九」がトップではないだろうか。
「馬英九」は、深田さん自身が資料提出要請されてなんだかんだと騒いでいる「IRS」や、最近敵視度が高そうな「焦佑鈞」よりも出現頻度が高いのである。
そうなってくると、深田さんの(背後には后健慈がいるが)「馬英九」への執着がどこに起因してるのか気になる。
(ここから「馬英九」についての考察)
「馬英九」が深田さんのブログに登場する比較的初期の代表例を次に示すが、后健慈(=ブログ中ではマイケル)のセリフとして次のように書いている。
深田さんの話は、観察していると意外にも事実が発端になっていることが多いが、話のベクトルはだいたい真逆である。そして、時間が経つとどんどん変形していく。
そこで、比較的初期の上の話から脚色と思われる部分を除去し、「馬英九は、どこからか得たカネで国民党序列5位から1位になり、総統選に勝ったんだ」というあたりを要素として残すことにする。その後、国民党首席を経て総統になったことは事実だから。
そもそも、政治家とカネの問題は古今東西どこでもある話だろうし、現に【理由1】で挙げたように馬英九と華非グループは最初から密な接点がある。
そういう目線で前項に続いてさらなる不審点を探すと次のような点が浮かぶ。
【不審点7a】亞圖科技の株式公開承認の謎
2000年5月に台北市調査局は明らかに亞圖科技から海外への資金流出を怪しんでいる。(Winbond社CEO焦佑鈞氏への聞き取り調査)
それにも関わらず、その直後の2000年7月には中華民国財政部が亞圖科技の株式公開を承認している。それはなぜなのか。
これは、調査局の疑念がその直後に氷解した可能性もあるし、行政組織は縦割りだから横同士で話が通っていない可能性もある。しかし、もしここで調査局が亞圖科技の株式公開承認の阻止に動いたならば、あるいはそうではなくても華非がその懸念を感じれば、ここは馬英九・台北市長と華非グループの以前からの接点が生きるチャンスでもある。
【不審点7b】亞圖科技の不明朗な海外送金疑惑再燃阻止の謎
これは、上の7aの変形である。時系列では2000年7月の株式公開承認の後の9月により大きな資金を得ている。そして同じ9月、「InguardとMentorARCに間接的に出資」という表現で、また怪しい海外送金があったことを示唆している。そうすると、再び調査局が動きそうだが、今のところそういう形跡が見当たらない。それはなぜなのか。
ここも、調査局が亞圖科技からの海外送金阻止または捜査に動いたならば、あるいはそうではなくても華非がその懸念を感じれば、ここは馬英九・台北市長と華非グループの以前からの接点が生きるチャンスでもある。
つまり、指摘したい可能性はこうである。
・ところが、その前の増資の際の亞圖科技から海外への資金流出に調査局が不審を抱いた
・調査局の動きで亞圖科技の株式公開 or 海外送金に支障が出るとみた華非は、馴染みの馬英九・台北市長に口添えを依頼した
・馬英九の口添えのためか、亞圖科技の株式公開は中華民国財政部から承認が出た、あるいは海外送金への調査局の不審は封じられた
・華非は口添えおよび海外送金成功の報酬として馬英九にかなりの額を渡した
この話のポイントは、馬英九が中華民国財政部あるいは調査局への権力行使をしたか、あるいは可能だったか、は実はどうでもいいことである。
馬英九に助力を求めた。
ここまでで十分である。その後の馬英九が何もしなかったとしても、黙認してもらうだけでも華非は馬英九側に払わねばならない。華非の企みが成功すればなおさらである。
その結果、「馬英九は、どこからか得たカネで国民党序列5位から1位になり、総統選に勝ったんだ」という話につながる。
また、后健慈のいう「馬英九は今でも俺を抹殺したい」についても、意味があるかもしれない。
上の深田萌絵さんの話の初出がよくわからないが、該当箇所を含む『第7回戦 マイケルの技術』で検索すると、2015年11月の記事が出てくる。后健慈との会話という意味ではさらに数年遡るかもしれない。
http://archive.today/IJ9J0
馬英九・総統の任期は、2008年5月20日 – 2016年5月20日だった。
つまり、后健慈が「馬英九は今でも俺を抹殺したい」と語った時期は、(それが事実なら)馬英九総統の任期中と思われる。
もし、馬英九が台北市長時代に投資詐欺まがいの不当なカネを得て、それを軍資金にして「国民党序列5位から1位になり、総統選に勝った」ということなら、これはおそらくまだ明るみになっていないスキャンダルということになるだろう。
今となってはどうかわからないが、この秘密を任期中に暴露されるのはまずい。その意味で、秘密を知っている后健慈に対して「馬英九は今でも俺を抹殺したい」と思っているはずだと后健慈が勝手に感じても不思議はない。
逆に、后健慈から見ても馬英九に対して不満があり得る。なぜならば「投資詐欺まがいの不当なカネ」を得たとして、本来なら后健慈と徐一族で山分けできたはずなのに、そのうちの何割かは馬英九側に流れたはずだからである。それも、「国民党序列5位から1位になり、総統選に勝った」というほどの額である。
馬英九に対する口添え依頼が、后健慈の発案ではなく華非・徐錦鏘の一存であれば、后健慈の馬英九への不満はなおさら大きくなるはず。それが、「馬英九は俺が開発したJSF用のチップ設計を中共に売った金で」という表現につながっているようにも見える。おまえが持っていったカネは俺のカネだ、というわけである。
なお、この項の馬英九の話は直接的な証拠があるわけではなく、あくまで可能性としての推理でしかない。しかし、妙に状況が整合しているのでここに記しておく。
以上を踏まえて、仮説としてこう置いてみる。
2)亞圖科技の増資と株式公開はそれが主目的であった
3)関係者の目論見は概ね成功し、巨額の不当利益を得た
そうすると、様々な謎が綺麗に説明がつくのである。
謎1)亞圖科技に特許の実績が並んでいるのに、なぜ実際には1件もないのか
→亞圖科技に投資価値があると見せかけるための偽装だから
謎2)Mai Logic社との提携を望んでいたWinbond社CEO焦佑鈞氏を后健慈はなぜ亞圖科技に誘導したのか
→その資金を奪うつもりだったから
謎3)1999年の増資の際に、なぜ華非は出資ではなくカネを貸したのか
→亞圖科技は開発成果は出せず、まもなく畳むことになるのを最初から知っていたから
謎4)亞圖科技も株主であるBVI会社 Paramount Pride社の株主に華非グループの面々が居並ぶのはなぜか
→后健慈から見れば妻の一族であり、不当利益を分け合う仲間だから
謎5)株式公開承認を得てから2年後の2002年7月に亞圖科技が株式非公開化したのはなぜか
→開発成果物であるArticiaの問題発覚前にカネ集めの舞台装置を撤収する必要があったから
謎6)華非グループが2003年に上海に進出し、徐錦鏘/徐至毅ら徐一族が上海に移住したのはなぜか
→巨額の不当利益で新事業の軍資金を得て、かつ台湾に居残るのはリスクになったから
謎7)深田萌絵さんの話を通した后健慈が「馬英九」に設計を奪われたと敵対視するのはなぜか
→技術も設計資産も奪われてはいないが、不当利益の一部を“奪われた”と思っているから
謎8)深田萌絵さんと后健慈がやたらとWinbond社CEO焦佑鈞氏を敵視するのはなぜか
→かつて不当にカネを奪い、真相解明されるなどの逆襲を恐れているから
謎9)台北市調査局がWinbond社CEO焦佑鈞氏に「亞圖科技から資金が次々に海外に流出?」と質問したのはなぜか
→それが真相の断片だから
謎10)標準化まで見据えれば勝ち目のないセキュリティコンセプト「Genetic Computing」を株式公開の直前に打ち出したのはなぜか
→株式公開時の株価つり上げが主目的だから
謎11)Mai Logic/Winbond共同開発のチップセットが登場しなかったのはなぜか
→本来なら開発費に回るはずの資金が不当に奪われたから
謎12)深田萌絵さんと后健慈が相手を問わずやたらと「設計を盗まれた」と連呼するのはなぜか
→喧伝する技術は投資詐欺まがいのエサでしかなく実態がないから
謎13)后健慈が手がけた製品にひとつも事業的成功実績がないのはなぜか
→喧伝するほどには技術力はなく、集めた資金をまともに開発費として投入しなかったから
謎14)后健慈の国内特許で、出願したのに審査請求しないという怠慢があるのはなぜか
→不当利益を得ることに成功した後には手間暇かける意味がないから
現に、IRS(アメリカ合衆国内国歳入庁)が「Hsiu-Ying Hsu and Jian-Ci "Jason" Ho」つまり徐秀瑩と后健慈に次の会社の記録を要求して揉めている。
・Paramount Pride, Ltd.
・Atum Technologies Corp.(亞圖科技股份有限公司)
・Mai Logic, Inc.
HSIU-YING HSU v. U.S.
https://www.leagle.com/decision/infdco20180517931
http://archive.today/onp5L(アーカイブ)
例えば、Paramount Pride社に対しては、「后健慈とのすべての取引と活動に関連するすべての文書」を要求し、「特に、株式購入契約書、株式売却契約書、雇用合意書/契約書、遂行すべき職務のリスト、后健慈が管理する口座、信託文書、会議の議事録、あらゆる形式の支払いまたは報酬、および通信文を要求」している。
IRSが、これらの企業を通じてのカネの流れに不審を抱いていることは明らかである。
そして、深田さんがブログにIRSについて書いているのも、上の話が元になっている。
いくつか補足する。
(見せ金の理由)
この時、亞圖科技股份有限公司は予定していた投資金額を集めることができず、結果として后健慈は華非グループから一時的にカネを借りて、増資が成功したように見せかけて、のちに虚偽登記で立件された。
ここで、なぜ「虚偽登記」なのかを考えてみる。答えはこれである。
A:見せ玉とは、自己の注文を有利に約定させるため、約定させる意思のない大量の発注を行い、他者に相場の状況を誤解させる行為を指します。
華非は亞圖科技の裏側を知っているから投資するつもりはないが、投資したように見せかけたのである。見せ金で虚偽登記が終わったらすぐ資金を回収すれば金銭的なリスクはない。
逆に、もし増資に失敗して資金が集まらなかったのでは投資家に不人気なのがバレる。それでは次の出資者が集まらない。その手口は深田萌絵さんが自分で説明している。

虚偽登記なのに亞圖科技の役員筆頭株主に「徐錦鏘 華非建設股份有限公司」と書いたのも「見せ玉」と同じと思われる。つまり、当時の后健慈あるいは亞圖科技よりは華非建設の方が台北では知名度があったはずだから、そういう企業が出資しているならば、と他の投資家に安心感を与える効果が期待できる。
(株式公開の仕組み)
上のサイトは「台北非上場株式情報サイト(台北未上市股票資訊網)」である。
台湾では日本と異なり、非上場の会社の株式を売買できる仕組みがある。すなわち、「上場または店頭登録を行う前に、興櫃(新興)市場を経由する必要」があり、この「新興市場」でもう株式売買ができるというのである。
https://www.koryu.or.jp/Portals/0/images/publications/magazine/2011/9/09-01.pdf
だから、創業間もない企業で非上場なのに株式公開し、上述の「見せ玉」が通じるのである。
ここまで書けば、この亞圖科技股份有限公司の増資を舞台にした投資詐欺まがい事案の本当の黒幕は誰かわかるであろう。
后健慈ではなく、華非グループの徐一族である。
主体的に動いたのは后健慈だろうが、決定的な場面で華非グループが重要な動きをしている。そして、不当利益を稼いだであろう後は上海に移住している。リスクを承知しつつ、一族でこれに賭け、よほど稼いだのであろう。
残っている情報では、資本金3.6億元である。正確ではないが、15億円とかであろうか。2000年当時の15億円。その一部が不正に流出した可能性がある。
后健慈夫妻がIRSと争いになってる件で、后健慈ではなく徐秀瑩が前面に立っている理由もなんとなくわかる。カネの扱いは徐一族の徐秀瑩が主体なのだろう。
また、米Teklium社のCEOは今は深田萌絵さんに交代し、后健慈の名前はもう消えたが、CFOは徐秀瑩(HSIUYING HSU)である。
https://businesssearch.sos.ca.gov/Document/RetrievePDF?Id=02945401-27473259
ここで改めて、「X.謎会社」のBVI3社の社名を確認しておきたい。なぜか、P で始まる単語だけで構成されている。その理由まではわからない。
・Pyramid Principles Company Ltd.(https://offshoreleaks.icij.org/nodes/131464)
・Peak Picture Company Ltd.(https://offshoreleaks.icij.org/nodes/131465)
あえて社名を意訳してみる。
・金字塔の信念
・絶頂の状況
一世一代の大勝負で一攫千金を企んだ者たちの高笑いが透けて見えないだろうか。
参考に、石平さんの著書から引用する。
もうひとつ。これも石平さんが書いてた話と記憶してるが、中国のことわざ。
深田萌絵さんの名言。
文脈的にはイマイチだが、事件の真相を実に的確に表現している。「彼ら」とは本当は誰を指すのか。
そういえば、この1千万事案も当初は「出資してほしい」から始まって、拒否して「貸金」→「契約書上は保証金」→返済交渉時に「株式転換してやる」→訴訟、という展開だった。これもその手口のひとつか。
平成25年(ワ)第31235号、平成27年(ワ)第2695号
原告 株式会社Alpha-IT System
被告 Revatron株式会社 他2名 by rescue_fujii
https://link.medium.com/KpEkxMOZIgb
2021.06.02 新規
ジェイソンの足跡(前編)
https://zfphantom.hatenablog.com/entry/2019/07/31/140527
ジェイソンの足跡(後編)
https://zfphantom.hatenablog.com/entry/2021/05/12/114453
后健慈スキームと深田陰謀論
https://zfphantom.hatenablog.com/entry/2021/05/22/085917
深田事件の考察一覧
https://zfphantom.hatenablog.com/entry/2019/07/21/090735
深田萌絵事件リンク集
https://zfphantom.hatenablog.com/entry/2021/05/04/121934

