
今週のお題「感動するほどおいしかったもの」
もう20年以上前のことです。中学生の料理コンテストの会場として、私の勤務先が選ばれたことがあります。最初は別の高校が頼まれたらしいのですが、その学校の家庭科教諭が難色を示し(まあ、普通に考えればそうでしょうよね)、私の勤務先にお鉢が回ってきて、先輩の家庭科教諭が「何事もお勉強よ!」との一言で決定したのでした。
念入りに調理室は掃除をして迎えたコンテスト前日。担当の各中学校の家庭科の先生方が大挙来校され、皆さん白衣に三角巾を身につけてテキパキと準備を始めました。私も先輩の家庭科教諭も手伝うつもりでいましたが、ほとんど出番は無し。不要な調理器具が隣の準備室にどんどん運ばれてくるのでそれらを捌いたり、先生方の荷物番をするくらいでした。
いつも思うのは家庭科の教員にスイッチが入ると、恐ろしいほどの働きぶりが発揮されるということ。(自分も調理室にいるとそうなります。)調理器具はもちろんのこと、調理台、黒板や床、窓や換気扇などなど、ものすごい勢いで徹底的に磨き上げていくのです。
準備室からその様子を見守っていた先輩。
「キレイになっていいわね〜。」
あ!そうか。だから調理室を提供することを快諾したのか。
先輩、流石です!(ガッテン、ガッテン)
そして迎えたコンテスト当日。控室には緊張の面持ちの中学生が40名くらい。審査員は料理のプロの方々。私は審査員が着ていらした高級なコートをお預かりしたり、帰りのタクシーを手配をしたりと後方支援です。いつもの授業で使う調理室とは全く違う音が聞こえてきて、準備室の空気も張り詰めています。外に目をやると、磨き上げた窓の隙間から、参加者の保護者が見守っている姿もあって、今でも忘れらません。
さて、今回のお題、私が心に残った美味しいものは、このコンテストの作品ではなくて、審査員長の先生がお土産として持参されたアップルパイ。調理専門学校の校長先生が「私が焼いたのよ。」と数本持参されたものでした。
後片付けも全て終了して、中学校の先生方と一緒にいただいたのですが、
え〜、何でこんなに美味しいの?
見た目が美しい色合いなのはもちろん、シナモン風味のリンゴは酸味も程よく、パイ生地のバターの香りも歯触りも、とにかく全てがベストバランス。かと言って既製品のようなよそよそしさはない、手作り感が感じられるのです。
これぞ、ホームメイドアップルパイの最高傑作?
家庭科教員が集まる中、皆その美味しさに驚愕。一目惚れをしてハートが射抜かれるイラストのように、私もこのパイには見事やられたのでした。