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「雪の粒」を食べる愉しみー長岡・大和屋の銘菓『越乃雪』のこと。

何事においても、美しい、というのは大事なことだと思うの。

例えば、お菓子。

新潟県長岡市の老舗、大和屋がつくる「越乃雪(こしのゆき)」。

四国特産の和三盆糖と、新潟の上質なもち米の粉をあわせた干菓子です。

金沢の長生殿(ちょうせいでん)、島根の「山川(やまかわ)」と並ぶ日本三大銘菓のひとつとされています。

木箱を開くと、白い紙に包まれた「越乃雪」が現れます。

ぴっちりと収まった、宝石のようなお菓子。まるで正方形の真珠。

ため息がもれるほどの美しさです。

非常に繊細で壊れやすいため、注意書きが添えられています。

 

「越乃雪はこわれやすいお菓子でございます。箱からお取り出しの際は下図のように左右の紙を持って静かに持ち上げ一ケずつやさしくお持ちになりそのまま一口でお召し上り下さい。」

「そのまま一口でお召し上りください」…

そうなのです。齧ったら最後、ほろほろと崩れてしまう。指で優しくつまんで、形そのまま口に運ぶしかありません。噛み砕く間もなく口のなかでさらりと溶ける、不思議な食感と上品な甘さの余韻。

やっぱり、白いお皿に載せて「雪」の感じを味わいたいよね。

木箱からお皿に移すのにも、大いなる慎重さが求められます。新品の消しゴムの角のようにピチッと尖った頂点に、妖艶さすら感じます。

 

「越乃雪」は、エッセイスト・森下典子さんのベストセラー『日日是好日ー「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』(新潮文庫)にも登場しています▽

「これが、長岡から取り寄せた、大和屋の『越乃雪』よ」

どんよりと曇った、一月の寒い土曜日だった。

菓子盆の上に、平べったい角砂糖のような、白い干菓子が並んでいた。とりたてて変わったところもない「らくがん」(上等な砂糖を固めたお菓子)である。

(なんで先生は、わざわざ遠くから取り寄せたのかしら)

と、思いながら一粒、懐紙に取り、指でつまんでひょいと口の中に入れた。

「……あっ」

驚いた。その白い菓子は、歯をたてる間もなく、舌の上でグズグズッと柔らかくこわれた。

森下典子著・新潮文庫日日是好日ー「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』111、112頁より引用)

 

溶ける白い宝石。お取り寄せもできるようなので、ぜひ▽

www.koshinoyuki-yamatoya.co.jp

美しい、というのは、儚い、というのとある意味で同義だとも思います。

雑に触ったらすぐに壊れてしまうから、優しく丁寧に扱わないといけない。

舌に乗せた瞬間、すぐにほどけて余韻だけが残る。

掴みどころがなくて、厄介で、だから貴重で愛しい。

 

それなのでわたしは、食べたらなくなる綺麗なお菓子が好き。

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銘の通り「冬のお菓子」だけど、通年で味わえる「越乃雪」。

残暑を見送りながらぜひ一粒味わってみてほしい、素敵お菓子です。




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