なんだか冬の香り。
少し間が空いてしまいました。10月末に開催した、花房観音さんの小説「果ての海」の舞台・福井県の名所を回る聖地巡礼ツアーの最終回です。
①永平寺編と②あわらミュージック劇場編はこちら▽
前日夜の暴風&雷雨は明け方にはおさまり、曇天とはいえ観光日和の最終日となりました。
宿から徒歩5分ほどの「あわら湯のまち駅」から、東尋坊行きの路線バスに乗車。
車内は平日にも関わらず観光客で満員状態でした。
温泉街を抜け、東尋坊まで約30分。
小説「果ての海」の主人公・圭子が眺めたであろう車窓を追体験しました。
結局、バスに乗り込み東尋坊に向かった。バスには女性ふたり組と、子連れの男女が乗っている。観光客だろう。
芦原の沿線街を離れ、田園地帯を通り、思ったよりも早く東尋坊に着いた。
(略)
駐車場に大型観光バスが何台か停まっていて、バスガイドが旗を持って団体客を誘導している。表紙抜けした。自殺の名所と言われるぐらいだから、もっとおどろおどろしいところかと思っていたら、賑やかな観光地だ。平日ではあったけれど、人の姿は結構あった。
花房観音著「果ての海」(新潮文庫)78頁より引用
駐車場から東尋坊へ続く道の両脇には、海産物や土産物店が並んでいます。
賑やかな通りを抜けると、「海の彫刻」ともいわれる巨大な柱状の絶壁と岩肌。
その向こうに、深く青い日本海が広がります。

文庫版の表紙に描かれた、「この世の果ての美しい海」…
一緒に行ったメンバー4人で、手持ちの文庫を並べて記念撮影をしました。
沖合に浮かぶのは、海の神様としてあがめられている「雄島」▽

訪れた時間帯は好天候だったのですが、朝方までの大雨の影響により遊覧船は運休とのこと。残念…。
小説「果ての海」では、物語のキーパーソンとなる2人が一緒に遊覧船に乗るシーンが描かれます。クライマックスを彩る名シーンの舞台です。
小説の中で、遊覧船に乗って海から崖を見た登場人物の一人は「もしも崖の上から身を投げたなら、まっすぐ海に落ちずに、この尖った岩に突き刺さるだろう」と想像します。
死ぬならば、もっと楽な手段がいくらでもあるだろうに。激しい痛みを伴いながら死んでいくなんて、まるで自らを罰するかのようだ。
だとしたら、ここで死ぬ人たちは、罪を背負った人たちなのだろうか。自らを罰しようとしているー。
花房観音著「果ての海」(新潮文庫)306頁より引用
遊覧船に乗って、「海の側から断崖を眺める場面」の描写は、物語全体を貫くような印象的な場面です。
「断崖の上」から大雨が過ぎた後の鈍色の日本海を眺めながら、同行メンバーと「また今度、遊覧船のリベンジに来よう」と約束しました。
断崖を離れ、土産物店が並ぶ通りへ。
福井県のおとなり・石川県在住の同行者が教えてくれた名物ジャズ喫茶「ダウンビート」で一休みすることにしました▽

ガラス張りの窓に、メニューが細々と張り出されたいい感じの外観!

昔ながらの純喫茶メニュー。ジャズが流れる落ち着いた雰囲気の中、かなりのんびり談笑させていただきました。ごちそうさまでした。
その後、遅めのランチタイム。
バス停近くの食堂に入り、小説「果ての海」の主人公・圭子が食べたと思われる海鮮丼(と、生ビール)を注文しました▽

奥の席に座り、テーブルの上のメニューを開く。ウニや蟹、いくらなどが乗ったものは三千円以上するので、手を出す気にはなれない。ひとりでそんな高い食事をしたことはなかった。とはいえ、目の前に並ぶ魚のメニュー写真が美味そうで、千七百円の「本日のおすすめ海鮮丼」を注文する。
花房観音著「果ての海」(新潮文庫)84頁より引用
主人公の圭子が食べるご飯の描写は、本当にどれも美味しそうです。
同行者の一人がイカ焼きを追加注文され、お裾分けをいただきました。
焼いたイカに醤油をかけたシンプルな一品ながら、大変に美味なのでした。

北陸旅で食べたご飯は全部おいしかった!
お腹を満たして、バスでJR芦原温泉駅へ。
そこで解散し、北陸名物「羽二重餅」を食べながら北陸新幹線で帰途につきました。
今回は蟹の漁季(11月〜翌3月)直前の10月末に旅したので、次回は蟹シーズンに合わせて訪れてみたいところ。
小説の舞台を巡って登場人物の心情に思いを馳せながら、彼女たちが食べたり見たりしたものを追体験すると、主人公の「生き抜こうとする意思」をはじめ物語の世界がより一層身近に感じられました。同じ小説を読んだ同行者と一緒に「聖地」を回るという体験も初めてで、とても新鮮でした。
「果ての海」は新潮社のサイトから試し読みができます▽
読めば北陸を旅したくなる「果ての海」。おすすめの小説です。