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ミセスのコロンブス炎上から考える差別意識の現在

今年の夏の初めに、ミセス・グリーンアップルのコロンブスという曲のMVが炎上した騒動がありました。曲自体はまさに暑い夏にスカッと爽やかなコカ・コーラのようなテンポの良い曲で、このMV騒動がなければ今年の夏を代表する曲になっていたかもしれないのに、黒歴史みたいな感じになってしまって残念です。


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しかし私もアメリカの中でも差別に敏感といわれるカリフォルニアに住んでなんやかんや2年、日本では他人事だった差別感覚についてなんとなく肌感覚で考えることもあります。いまアメリカは11月の大統領選挙を控えて盛り上がっていて、ここでも焦点の一つは、いわゆる典型的なWASP、白人であるトランプと、黒人とアジア人(インド人)のミックスであるハリスの人種の違いです。そんなテレビでの討論をみていたら初夏のミセスの騒動を思い出したので、最近ちょっと考えたり考えなかったりしていることを少し記録しておこうと思います。

結論はないのですが要するに、「今回の騒動はしょうがないけど、そんなこといったら例えばアメリカで一番尊敬されているジョージ・ワシントンだって非道なやつだという認識が広まっていたりしていつ悪者になるかわからず、こういうのってけっこう相対的だよね」という話です。

コロンブスという人の評価の変遷

クリストファー・コロンブス(1451-1506)は1492年にアメリカを「発見」したといわれるイタリアの冒険家で、大航海時代カソリックのスポンサーを受けてインドを目指して大西洋を航海したらアメリカに到達し、アメリカ繁栄の礎を築いたとして西洋社会で勇敢な英雄として知られていた人。

コロンブスアメリカ(正確にはバハマ)に到着したといわれているのは1492年10月12日で、そこから300年後の1792年に、アメリカのイタリア人コミュニティを中心にその日をコロンブス・デーとして祝うことが増えたらしい。イタリアやスペインでも、この日は「新世界の発見」(Discovery of the New World)や「ヒスパニックの新世界到達」を祝う日とされた。1934年には、アメリカでこの日を連邦祝日にする法案が可決するも、ゴタゴタしているうちに第二次大戦が勃発。この戦争でイタリアはアメリカの敵国だったことから、イタリア人中心のお祭りであるコロンブス・デーは停滞。戦争終了後に再び機運が高まり、1971年についに正式な連邦休日として制定。

一方この間、世界の一体化が進んで見識が広く深くなるにつれて、コロンブスなどその時代にアメリカにやってきた西洋人は、先住民を殺しまくったりアフリカから奴隷をつれてきてこき使ったりした酷いやつらだという認識が広まった。西洋社会がやってくる前からアメリカには原住民が住んでいたわけで、それを「発見」とはなんて身勝手な、あれは繁栄の始まりではなく、侵略、虐殺の始まりであると。そういう認識が広まり、コロンブス・デーは現在でもアメリカではいちおう国民の祝日ではあるものの、実際に祝われることは減りました。自由の国アメリカではそれを休日とするかは組織や個人の自由なので、休みにしない会社は多い。1989年にはサウスダコタ州が初めてコロンブス・デーを「先住民の日」(Indigenous Peoples' Day)として先住民を思う日に塗りかえ、今ではそういう趣旨にしている州や都市がけっこうある。

日本での感覚

この騒動の際、ネットではそんなことも知らないのかという声も目立ったように思いますが、最初に炎上したときには正直なところ、えっ、そんなにダメなの?というのが一般的な感覚だったんじゃないでしょうか。アメリカと縁の深いヨーロッパやアフリカの教養人の間では、コロンブスはもはやヒトラーのような扱いだったりするようですが、直接あまり関係ないアジア諸国などではあんまり30年前と変わらないでしょう。コロンブスの卵の逸話は今でも聞くことがあると思いますし、ミセスの曲でも、いわゆるワンピース的な「勇敢なドキドキワクワクの冒険家」というイメージで語っているように思います。今回のMVも、日本のワイドショーなどでも当初は売れっ子バンドの新曲として肯定的に紹介していたようですしね。

私の友人でも、差別的だとは思わず、お猿さんと楽しく歌って踊っているという感じがBruno Marzのこれっぽいよねとか、


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RADWIMPのこれっぽいよねとか、


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そういう感じのネガディブではない感想を持った人が多かったように思います。

数年前に、ダウンタウンの浜ちゃんがエディ・マーフィに扮するために顔を黒塗りにしたブラックフェイスで登場したときも差別的だと話題になりましたが、あのときも正直まだ、えっ、そんなにダメなの?というのが日本では一般的な感覚だったんじゃないでしょうか。

わかるけど、そんなこといったら…

浜ちゃんのブラックフェイス騒動も今回のコロンブス騒動も、やってる側に差別的な意図がなかったのは明らかだと思いますが、結果的にあれが差別的という認識が広まったのは良いことだとは思います。思いますが、この辺の見方はわりと流動的というか相対的というか、どこまでが正当な排斥でどこからやり過ぎなのか、というのは難しい問題だとも思います。

アメリカではそういう歴史的な偉人や有名人が実は差別的なレイシストだとして炎上し、表舞台から干されることを「キャンセルする」とか「キャンセルカルチャー」といったりします。ちなみにこの「キャンセル」という現象はいわゆるリベラル・左翼的な人たちがSNSなどで騒ぎ立てるのが発端となることが多く、保守的・右翼的な人たちが嘲笑や皮肉を込めて「キャンセル」という場合が多いようで、こういったことをキャンセルという言葉で表現すること自体にやや保守的な意味を帯びるようです。

私が身近なところで起きてビックリしたのは、カリフォルニア・ベイエリアの名門ロースクールとして知られるUCバークレーロースクールの愛称だったボルト・ホール(Boalt Hall)が2020年にその名をやめたり、UCヘイスティングスが2023年にUCローサンフランシスコ(The UC College of the Law, San Francisco)と改名したりしたことです。ボルトもヘイスティングスも、カリフォルニアにおける法律関連の偉人の名前でしたが、外国人や原住民にひどいことをしたレイシストだったというわけです。

わかります。わかりますけど、そんなこといったら変えなきゃいけなくるなる名前は他にもたくさんあります。開拓時代のアメリカの西洋人にとって奴隷を使うとか他民族を排斥するとかは当たり前のことだったからです。

アメリカでおそらく最も尊敬されている偉人はジョージ・ワシントンだと思います。ワシントンはイギリス軍を撃退してアメリカ独立を先導するとともに初のアメリカ大統領となり、建国を先導した文武両道の立派な人として知られています。しかし彼は、何百人もの奴隷のオーナーで、彼らをこき使っていましたし原住民を迫害しまくりました。けっこうゾッとするのは、歯の悪かったワシントンが愛用していた入れ歯は、生きた奴隷から歯を引っこ抜いてつくったものだったといわれています。

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彼に由来する地名の「ワシントン」なんてたくさんあります。ワシントンDCもそうですし、ワシントン州もあるし、市区町村単位では数えきれないくらいあるでしょう。尊敬されてきた歴史と規模が大きすぎるのでそれらを改名するのは現実的に無理ですが、ワシントンを偉人として讃えることが非常識とされる未来はすぐそこにあるのかもしれません。

コロンビア大学とかコロンビア川とかありますけど、あの辺も由来はコロンブスなわけですしね。「アメリカ」の語源となった探検家のアメリゴ・ベスプッチもダメでしょう。奴隷商人ですから。徹底するなら国名を変えないといけません()。独立宣言を起草したといわれるトマス・ジェファーソンもダメです。この人も奴隷オーナーでしたし、奴隷の女性を犯しまくってできた子供が6人もいたといわれていて、最近の特に女性知識人の間での評判は最悪です。

ちなみにミュージカルも大ヒットしたアレクサンダー・ハミルトンが最近注目されているのは、 Founding Fathers と呼ばれるアメリカ建国の父たちはほとんどみんな金持ちWASPで奴隷オーナーでしたが、そのなかで彼だけが唯一、アメリカ大陸外で生まれて貧困層から這い上がった人物で、奴隷をもたなかったとして再評価されていることが理由にありそうです。「彼こそがアメリカの体現者だった」というわけです。


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というわけで、こんなような歴史認識というか人物認識は今後も流動的で、いつの間にか変わってた、ということが起こり得るかもしれないので、気を付けたいですね。

(参考)

news.yahoo.co.jp en.wikipedia.org en.wikipedia.org en.wikipedia.org




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