ネタバレありで「きみの色」の感想書きます。
というわけで、未見・またはネタバレ厳禁な方はお戻り下さい。
結局の所、この映画の感想は「美しい」の一言につき…いや、「See you」を観た瞬間に零れた「素晴らしい…」も追加で。
正直な所、エンターテインメントとしては強烈さがなく、物語の緩急もないと思います。
が。それは何の問題もない。そもそも「そういう作品ではない」と感じています。
ただ普通の高校生達の日常を、彼らが暮らす街を、そこに響く音楽を、ただただ美しく描く事に全力を傾けた作品。
だからこの作品はただ美しいと思えば十分。体験を買ったと思えば十二分の価値があると思います。
もちろん、別に美しくもない、楽しくもなかった、という感想もあると思います。それはもう「何を美しいと思うかの基準が違う」というか、単純に趣味の違い、という話になるのではないかと。
冒頭、淡くも色彩に富んだトツ子の視界が表現され、彩りを「足された」世界を実感。
そこから「普通」の視界で描かれた風景に移り、それでも静謐でありながら、生徒たちの活気にあふれた声が響く学校の光景は少し輝いて見えます。
歴史ある校舎、光を透かす木々と葉、人々の生活が息づく街並み、海の色、夜景…兎に角全ての背景が光をまとって美しいと思えました。
そんな景色の中をトツ子がふわふわ歩いてる。どうもトツ子はとぼけた印象があり、不思議と浮いている印象を受けます。
それが彼女の色覚(とあえて言いますが)と相まって、少しだけ非現実的な子に見えてしまう感じ。…よくよく考えると、「普通」なのですけども。
でも、所々で見せる「えっ?」と思わせる言動はツッコミ入れたくなるところがあり、まとめてみると「変な子」と「普通の地味な子」のギリギリ境界線をあるくようなキャラクターだと思います。そして、だからこそ彼女が物語の主役(推進役)たりうる、と。
ビジュアル的に見ると、どうしてもキミちゃんが目を惹くのですが(マジでドアップとか美少女以外の何者でもない)、自分から動けない、臆病な繊細さを持っているので主役ではないのだなぁと。
この静かな、動かない、どこか壊れそうなイメージがトツ子との対比になってどうにもこうにも庇護欲を誘うというか。
…それでいてロックスタースタイルを選ぶ、って辺りは意外なんですが、妙に様になるというか似合うというか。
「本当の自分はこうじゃない」を表に出してくるとあんな感じなのか、も。
ルイ君は…なんというかこの子も微妙に天然というか。
女子2人とコッソリバンドとか…いい歳した大人から見たら……そりゃそのあれだ、…羨ましいな!!
…ともあれ、テルミンなんて不思議楽器を奏でるところ、線の細さ、無邪気さ…良くも悪くも頭が良いから良い子にしかなれない、どこか鬱屈してるとことか。この子も静かな魅力があるな、と感じます。
で。
如何せん、キャラクターが抱える悩みであったり葛藤が「大したことではない」ので、物語が大きく動く事はない。
せいぜい、寮に部外者を連れ込み、嘘をついてしまう、くらいが事件と言えるでしょうか(大人の視点からすると、「合宿」もヤバい気がしますが)。
これで視聴者のカタルシスを満足させられるか、というと…。
…そんな、視聴者の求めるカタルシスを与えない、という作品なんですよね、これ。
あくまでも等身大の彼・彼女らの視点で物語を描き、あの年頃、あの瞬間の子供達にとっては大きな問題で心揺らす姿こそを主題としている。
10年後の自分が笑い話にできたとしても、その時の自分には確かに傷であったという、そんな…私達(視聴者)にも確かにあった戻らない日々と重なる光景。
ノスタルジーかもしれないけれど、それはただそれだけで美しい、というのは胡麻化しようのない事実だと思っていて。
…私には白猫堂の皆のようなキラキラした日々はなかったけれど。何か重なるような、感覚。
だから皆はその時出来る事を頑張る。
トツ子は問題解決にはならないけれど、キミちゃんを一人ぼっちにできなくて嘘をつくし、寮に引き込んでしまう(修学旅行をサボるっていうのもなかなかにロックではある)。
そんなトツ子にキミちゃんは「なんてこった…」とつぶやく。自分の弱さがトツ子に嘘をつかせた、ルール破りという罪を犯させたという後悔。この辺のくだり、ホント好き。楽しいだけじゃなくて、互いの心を思いやってる感じがして。
ルイ君は一人で教会の掃除をしつつ、環境を整えて…久しぶりに会えた二人に飛びついたりして。…いやいや大問題だなぁと思って見てたら、見事にキミちゃんに刺さってしまって何という青春。
そんなキミちゃんを美しいと思うトツ子の感覚、ホント尊い。
…個人的に、トツ子の「色を観る」感覚が、例えば人の本質を見抜くような超能力じゃなく、彼女の中だけにある感覚、誤解を恐れずに言えば「錯覚」に過ぎないと思われても仕方ないものとして描かれている事が嬉しかった。
誰かの性格や心を知る事が出来る、というのは余りにも高慢で冒涜的な事だと思っていて、もし本当にトツ子の感覚がそういうものであるなら、それだけで話の主題になってしまう。だからあくまでも彼女の中だけの問題にとどまり、そして恐らく、彼女自身を知るきっかけとして描写されてたのは、本当に優しくて美しい処置だったなぁ、と。
ツラツラと書き殴りましたが、やっぱり考察だとかオススメポイントだとかを書くことは無理だなと(苦笑)
なので、好きなシーン、好きな曲を羅列して〆としたいと思います。
・「がん ばっ てえええええええぇ……!!!」
応援、応援、祈り…となっていく心の吐露がもうホントに尊い…。
全力で走る姿がまたたまらなく青春感じるんですよねぇ…。
・「水金地火木土天アーメン」でソロ中のキミちゃんの横顔。ニヘ、って笑うところがホント自然で良い。
単純に音楽を楽しんでるって感じもあり。
・白猫にですます調で語るトツ子がめっちゃ可愛い。なんだこの和みの景色。
・「日吉子先生は綺麗な色をされています」
「…?」ってなる感じですが、上述の通り「だから良い人」なんて繋げたりせず、あくまでも自分の感覚、言ってみれば「私は日吉子先生の事好きです(好ましい)」って言ってるだけなのがトツ子らしくていいなと。
・反省文で「パンパン!」ってクラップするルイ君がなんか好き。パフォーマンスとして考えてたんだろうなぁ。
・海の表現がホント好き。綺麗。
・あぁそうか。ジュブナイルを感じてるのかな、私は。
・白猫堂の曲はどれもホントに好き。高校生バンドでかつオリジナルって考えたら完成度高すぎる気がするけど、素直に刺さったからもうそれでいい。
・「See you」
続編とか次回作とかなかったとしても、彼・彼女らの日々が続いていって、またどこかで出会うのだとすれば、それは素敵な事だなぁ、と。
最後に。
私は映画館を出た後、視界が彩りを増しているような気がしました。
トツ子達の日々は決して珍しいものじゃない。誰にでもある、貴方にだってあるかもしれない日々。
…それが、こんなにも美しい。だから、きっと貴方も。