はじめに
私の音楽聴取スタイルは保守的で、未だにサブスクをほとんど使わずに、CDを買ったりレンタルしたり、デジタル購入したりした曲をパソコンやスマホに取り込んで、再生ソフトで好きな曲を並べたプレイリストを作って聴くというものだ。すると普段どのアルバムに収録されているかとか、アルバムの中での曲の並び順とかを気にすることはない。しかし、こないだたまたまアルバムを通しで聴く機会が訪れた。出張中にパソコンのバッテリーが無くなり、スマホで音楽を聴かざるを得なくなったが、普段聴くのに使っているパソコンとは異なり、スマホに入れている曲数は少なく、アプリのプレイリストもあまり整っていない。そういうわけで私はアルバムを通しで聴くことにした。選んだのは赤い公園「猛烈リトミック」。単純に好きな曲がたくさん入っているから、またフルアルバムのほうが曲数が多いからという理由だったのだが、いざ聴いてみたらものすごいラインナップだった!ので、アルバムがリリースされて10年、私が赤い公園を聴き始めて5年半も経ったこのタイミングだがレビューしたい。
各曲レビュー
NOW ON AIR
この曲は私が初めて出会った赤い公園の曲で、思い出深い。「熱唱サマー」までの楽曲が収録されたベストアルバムでもトップバッターを飾る曲。エネルギッシュなピアノの音から始まり終始ワクワクし続ける曲。
寝そべってギター弾いてる津野さんがかわいい。このMVも好きだけど、歌詞の内容にもっと寄り添ったMVの絵コンテとか漫画とか描いてみたい。
絶対的な関係
この曲は、まだ私が赤い公園をよく知らなかった頃、「NOW ON AIR」と「恋と嘘」だけ聞いたことがあり、可愛い曲調の曲が多いバンドなのねという印象を抱いていたところに聞いてびっくりしためちゃめちゃかっこいい曲。
そしてわずか100秒で終わってしまうので、MVも100秒のカウントアップしながら1秒ごとにカットが変わっていく面白い作り。私は28秒の津野さんが可愛くて好きです。ていうかミニスカ津野さん激ヤバ。バンドの振れ幅を印象付けるのに、最初のたった2曲で成功してしまっている。
108
ほんでもって3曲目はめちゃめちゃおしゃれなサウンド。どのパートもテクニカルなことをしていて、各パートに集中しながら4回聴き直せてしまうほど。そんな曲調で歌うはラブソング。自分に気がありそうな様子を全く見せてくれない相手を想った主人公の歌。108はお気付きの通り煩悩の数だけど、ラブソングが取り上げるなかでも最後の方に思いつかれそうな題材で、ふつうのラブソングと一線を画している。ここまでで赤い公園のなかで最も再生した曲第3位、2位、6位(すべてのアーティストに対象を広げても=人生で最も聞いた曲としても、3位、2位、10位)で、私の中では昨年世界一になったWBC日本代表の1,2,3番・ヌートバー、近藤健介、大谷翔平を凌駕する強力打線である。笑
いちご
4曲目はここまでの3曲と打って変わってしっとりとしたラブソング。といってもイントロから拍の取り方が特殊で津野印がちゃんと刻印された曲。赤い公園に出会うまで、私がヘビロテする曲はすべてテンションが上がるキャッチーな曲だったけれど、赤い公園が好きになってから静かな曲調の曲も聴きごたえのある所があればヘビロテするようになった。
誰かが言ってた
5曲目。カラッとしててアップテンポなんだけど聞き手を励ましてくれて、でも最後は歌っている主人公を励まして去っていく、津野さんの小粋さが現れた一曲。アウトロでサビのメロディラインをなぞったギターが好きです。
私
このあたりから本格的に夜の世界へ誘われていく。イントロで響く歪んだギターが、赤い公園を好きになってしばらくたった今となっては心地良い。前の曲までは他人のことを想って歌われていたのが、この曲と次の曲とで内面にこもるようになる。そうすると人に見せていたのとは違ってネガティブな一面が表れてくる。静かな思索も悲痛な叫びも身に覚えがある。
ドライフラワー
この曲が今作の最深部。人に見せない一面をそのままお出ししたような印象を受ける。もっと遡ったアルバムの頃の面影を残している。好きになりたての頃はあまり聴いていなかったけど、昨年からようやく好きになって繰り返し聴き始めた。猟奇的なストリングスが癖になるのは、椎名林檎の3枚目のアルバムくらいも彷彿とさせる。
TOKYO HARBOR
また他人の眼差しのある場面に戻ってきた。基本的には同じ楽器構成なのに猟奇的な前の曲と打って変わって、おしゃれでオトナな一曲に仕上がっている。KREVAさんの魅力を最大限活かして、曲全体が色っぽくなっている…けど肯定されるべきでない恋を歌っているね!!笑
ひつじ屋さん
ここまで内面のぐちゃぐちゃしたところを見せてくれたり色っぽいところを見せてくれたりしたと思ったら!!めちゃめちゃ変な曲ぶっこんできた!!のが好き😂😂出張中に車で流していたら、同乗している同僚の方の印象に強烈に印象に残ったそうで、たまに「ひつじ屋さん ひつじ屋さん」と口ずさむ様子が見られました。こういうおもしれーバンドなのが、私が赤い公園を好きな最大の理由です。
MVも超おもろい。フルで見たかった!!
サイダー
若い勢いを閉じ込めたみずみずしい一曲!夏だね!!学校のチャイムをモチーフにしたイントロがあるから学生っぽさが増しているのか…そもそも学校のチャイムから着想を得てサビのコード進行を作ったのか?とにかくぐるぐる考えるとか後悔するとか、そういう陰鬱さが一切無いさっぱりしたところが良き。イントロのギターリフを2番でベースがなぞってるのも良いですよね😌
登場人物が全員半笑いなのが良い。笑 10年前だと皆若い!!!
楽しい
この曲はアルバム収録曲(ベスト盤未収録曲)のなかで初めてヘビロテした曲の一つ(同時に「AUN」「ハンバーグ!」もヘビロテしていた)。タイトルのとおり本当に楽しい曲。間奏の中華風な「ジャジャジャジャジャッジャッ ジャッジャッジャーン」が好きで繰り返し聴いていた。でも楽しさ100%じゃなくてどこか切なさを感じさせるのが、聴かずにはいられなくなるゆえんだと思う。
牢屋
先程ひとりでぐるぐる内面の深みに入っていくパートがあったけど、今度はほとんど内面と同化しているような恋人といる時を歌った一曲。この曲の並び、外で友達とハチャメチャに楽しく遊んだあと一人家に帰ってきて、日常をまた過ごしている感じがして好き。
お留守番
リバーブがかかってて奥行きのあるギター、ビーズを転がしたようなドラムが、一人で自宅に佇む心細さや手持ち無沙汰な様子を感じさせる。このアルバムを通しで聴く魅力がわかった今回、これまでほとんど聴いていなかったのに好きになった度が一番高いのがこの曲。
風が知ってる
解散ライブで「透明」「ショートホープ」との並びで好きになった曲。もう解散してから3年半だもんな、赤い公園を好きになってから今までの半分以上昔なんだな。ギターの迫力がかっこいい。この曲がひつじ屋さんと並んでシングルカットされてるの、めちゃめちゃ攻めてるよね。そういうところが好きです。
木
ボーナストラック的に配置されたこの曲は、最初の2枚のミニアルバム、いわゆる白黒盤に曲の合間に十数秒~30秒の謎のインタールード群が収録されていたけど、それをつなぎ合わせたものがこの曲のサビである!!という暑い伏線回収曲。しかし歌詞の意味は難解である。歌詞の意味がわからない曲は初期にちらほらあって、それがこのバンドの魅力でもある。イントロのドラムがかっこいい。
終わりに
普通のフルアルバムって、12~13曲くらいから構成されていると思うけど、この曲は贅沢な15曲収録。それでいて重複のない幅広い曲、というか、このアルバム全体でバンドどころか人間の普遍的な性質を隅々まで表してくれているような気がする完璧なアルバム。プレイリストに混ぜて聴くのも好きだけど、この並びで聴くことにも価値があるものすごいアルバムだ、と本稿を書いていて改めて感じた。
今日は津野さんが亡くなってから4年の日だ。新曲がリリースされなくなっても、あまりたくさん聴いてこなかった曲にスポットライトが当たったり、聴き慣れない並びでまた新鮮な気持ちで聴けるようになったりするのが嬉しい。でもやっぱり新しい曲が聴けないのはさみしい。他のバンドのライブに行くたびに思いを馳せてしまう。
上の図は赤い公園を聴きはじめてから今までの、アーティスト別月間再生数比率を表にしたもの。どのアーティストもアニメの劇伴も、最初の3ヶ月くらいでめちゃめちゃヘビロテしたあとは数%に落ち着き、思い出した頃にまた10%くらいに戻る動きを見せているが、赤い公園だけは安定して10%を超えている。5%を切ったのはけいおん!にドハマリした2021年2月と、響け!ユーフォニアムにどハマりした2024年2月だけで、他のアーティストや作品の楽曲のヘビロテが落ち着いた頃に帰る先であり続けている。この要因は、解散した翌年以降も、2022年は解散ライブの特典CDに収録されていた「オーベイベー!」「EDEN」を、2023年はスピッツのカバー曲である「ハチミツ」を、そして今年は本稿で紹介した「お留守番」を好きになり、新曲がリリースされなくなった今でも新たに好きにある曲があったから、というのが大きいと思う。これからそういう曲もどんどん少なくなると思うけど、それでもずっと赤い公園とともにある生活を送れたら良いな。
今年はこれまでで最も穏やかにこの季節を迎えられている気がする。津野さん、最近はおかげさまで一人で過ごすのが上手になってきたよ。来年はついに津野さんの年齢を追い抜いてしまうよ。この先もずっとよろしくね。