THE SECOND〜漫才トーナメント〜2025 選考会
東京2日目第1部・3部
東京3日目第1部
2月2日(土)12:00・19:00
2月3日(日)15:30
渋谷・CBGKシブゲキ!!
去年のザセカの事前番組で見たリニアのネタがあまりに面白く、こりゃ決勝だけ見てる場合じゃない、予選から行かなきゃ、32組まで減ってても勿体無い、選考会だ!と決意して1年待っていました。
2日目(土)1部3部、3日目(日)1部を取っていたんですが、金曜の時点で日曜が雪という予報があったので、じゃあ日曜はやめとこうと思っていました(雪が降ると容易に帰れなくなる事情がある)。でも2日目を見たら、あまりにもおもしろいのと、それ以上にあまりに客席の感じが良くて、こんないい客層でいいメンツ見られることまずないなと日曜も行きました。行って良かった。
ザセカの選考会は、優しくも頼もしいMCのキクチウソツカナイさん曰く、「他の賞レースで一番おもしろいと言われる準々決勝スタート(本尺だから)」、「おじさんおじさんたまにおばさんの最高におもしろい寄席」とのことなんですが、その言葉に偽りなしで、もうほんっっとうにおもしろかった。賞レースと、劇場と、ライブハウスと、営業と、寄席のいいとこ取りみたいなライブでした。
そして10年くらい前までよくお笑いライブに行っていて、まごうことなき中年になった私には、客席がほんとーーーに居心地が良くて。出番を終えた後の芸人さんたちが口々に「温かいお客さんだった」とポストしていた通り、なんかねぇ、客席がほんとに好きな感じだったんですよ。
ザセカの選考会に行ったのは初めてなので、「客受け」が審査基準のどれくらいを占めるのかはわかりません。なんでこんなことを気にするかというと、ザセカに限っては客席が沸く時に「受けてる」と「盛り上がってる」の2種があると感じたからです。私が見た回で「盛り上がってる」のベクトルでぶっちぎりはマシンガンズと虹の黄昏、「受けてる」のベクトルでぶっちぎりは囲碁将棋。こう書くとなんとなく伝わるのではないかと思います。リニアは圧倒的に「受けてる」だけどネタの構造的に客席がすごく盛り上がる。ドドんはリニアよりは盛り上がり方向が強いけど、これはネタにちょっと営業要素があるから。
まぁこんなこと説明しなくても、過去2回の決勝ファイナルラウンドは、「盛り上がってる」と「受けてる」の対決なので、その2つがあるのも、そのどちらも決勝までは上がれるというのも周知のことなのですが。そしてどちらも「受けてる」が優勝してる。
これが若手の大会だと、「盛り上がってる」は審査基準外というかまぁそもそも起こらないんじゃないかと思います。でもザセカは起きる。なぜなら客が沸くから。虹の黄昏なんか出てきた時客席ヒューヒュー言うてましたよ。
なんか若い頃って、客にも尖ったとこがあって、営業ネタを一段下に見るみたいなとこがないですか。私はありました(虹の黄昏が営業ネタと言ってるのではないです。当たり前ですが念のため)。そんで芸人さんも尖りが行き切ると、客になんざ受けなくていい袖に受けりゃいいみたいになったりして。まぁ若い頃って言っても私は10年前でも余裕で30代なんですけど。
でも歳を重ねると、誰が来るかわからないどんな環境下もわからない営業で受けることの偉大さがわかってくる。芸人さんも、持ってるもの総動員してとりあえず目の前の客を全力で笑わせてくれる。
なんか、客も、芸人も、年取って丸くなったなぁ……ってしみじみ思いました。
それを一番思ったのが2日目1部1番受けのエル・カブキ。
昔一度だけゴシップライブに行ったことがあって、その時上田さんがいたかは覚えてないんですが、舞台上の芸人さんは嬉々としてテレビタレントのゴシップを話すのだけど、週3でゴールデンタイムにライブ見にきてるライブ客はそもそもテレビタレントに興味がなくて、客席と舞台の温度差えぐいなと思ったことがあります(なので1回しか行かなかった)。
だからゴシップってライブ客に向かないんだと思ってたんですが、この日のエル・カブキは、ゴシップなのは相変わらずなんだけど、確実に客に刺さるものを選んできていた。そして過たず全てツボに刺してきた。エル・カブキが客の方を向いている!(そして主催者の方も!)と本当にびっくりしました。あと10年前より確実に声が出てるところも。上田さん明らかにガタイ良くなってて、筋肉って偉大だと思いました。
そして丸くなった客も、無理に盛り上げようとしてるんじゃなくて、なんていうかこう、どんなネタが来ても受け止めて笑うぜ!みたいなのを感じたんですよね。浅草の人が来た!(拍手)音曲漫才が来た!(拍手)営業ネタが来た!(拍手)みたいな感じで、全部好意的にそれぞれの良さで笑おうとするというか。
私はここ10年全然見ていないですけど、それこそM-1が10年だった頃から見てる人達は、賞レース用の4分ネタから脱却せざるを得なかった芸人さんの変遷をずっと見てるわけで、ザセカに出てくる人達はみんな、賞レースで勝ってテレビに出るという道ではなく、自分たちで道なき道を切り拓いて、各々の主戦場を作ってそこで戦ってる人達なんだって、見たらわかるじゃないですか。にほんしゅは日本酒のイベントとかMCで引っ張りだこだろうなとか、蓮華はイオンモールで子供に群がられてるんだろうなとか。
そんな主戦場を持ってる人たちが、日本全国津々浦々から交通費払ってやってきて、時間制限のある賞レース用に自分たちの武器を磨いてライブハウスで見せてくれるって、こんな贅沢なことないって客席がわかってるってのがわかったんですよ。座ってただけですけど。
なんでもありってことは、これまでの芸歴で培った全部を見せてくれるってことで、その積み重ねてきたものに客席全体から惜しみなくリスペクトの拍手を送れるのが本当に嬉しかったし楽しかった。
私がお笑いライブに行き始めた2009年頃、M-1はまだ手数漫才論が主流だったと思います。
純粋なしゃべくり漫才はやっぱり大阪吉本のもので、東京の特に非吉本ライブ芸人は、何か一つ型を発明して、それで賞レースに勝つしか芸人を続ける道はない、みたいな空気があった気がします。ズレ漫才を発明してM-1で売れたオードリーみたいに。
逆に言うと、その発明した型で売れなかったらどうするのか、という答えはまだなくて、別の型を発明するのか、芸人を辞めるのか、それとも別の道があるのか、ということが全くわからないまま4分ネタを磨いていたのが、私の見ていた世代のライブ芸人さんたちで、THE MANZAIの認定漫才師たちでした。
あれから15年経って、予想通りどころか想像できたことなんか何一つなかった、ということだけは、ライブに行かなくなった今も毎日のように感じます。なすなかにしとタイムマシーン3号がロケ王者になっていることも、ヤーレンズの全国ツアーが落選祭りなのも、「川北さん」がトレンドに入りまくるのも、芝さんが綾鷹カフェやったのも。想像すらできるかそんなこと。
でもザセカの選考会で見たネタは、みんなあの頃「発明」された型でした。エルシャラカーニもスパローズもドドんもリニアも。流れ星⭐︎に至っては伝統芸能博覧会みたいだった(そしてまだいくらでもあろう)。もちろん歳を重ねたのと6分尺でさらに面白くなっていた。でも、毎月のライブで新ネタがかかって、こないだの事務所ライブであのコンビがやったネタいいらしいよ、トッパレで見られるかなって客の口の端に上っていた、あの頃のあの型だった。
だから、予想通りになったことも、この先予想できることもなにひとつないけど、リバティからバイタスからV-1からミラクルからの帰り道、「なんでこんなおもしろい人たちが明日にも売れないんだ」って首を捻っていたあの頃見たあのネタは、やっぱりあの人たちの一生にひとつのネタだったって、それだけははっきり答え合わせできました。