80人のミュージシャンがニール・ヤングの好きな曲を挙げる企画だが、なんで80人かというと、先週彼が80歳の誕生日を迎えたのにかけている。
こういう企画だと、自分が好きなミュージシャンが何を選んでいるかが気になるのが人情で、そのあたりを少し取り上げておきたい。
まず、ピクシーズのフランク・ブラックは "Winterlong" だが、えーっと、この曲はどのアルバムに入ってたっけ?
各人のチョイスが栄光の70年代以前の曲に偏るのは不思議ではないが、それよりも新し目の曲を選んでいる人に好感を持ってしまう。例えば、ハイムのダニエル・ハイムは『Sleeps with Angels』(1994年)収録の "Train of Love" を選んでいる。
古い曲でも、ロビン・ヒッチコックをはじめ3人が選んでいる "On the Beach" はちょっと意外なチョイスかも。これは1974年の同名アルバムの曲だが、このアルバムはなかなか CD 化されず、ニール自身が気に入ってないのではという噂もあったくらい。けど、これも名盤よね。
全部数えたわけではないが、ブラック・カントリー・ニュー・ロードのタイラー・ハイドはじめ4人が選んでいる "Ambulance Blues" が最多かな。これもアルバム『On the Beach』収録で、ヒット曲でもなんでもないことを考えると意外なチョイスと言える。その次に多いのは、サミー・ヘイガーやデイヴ・マシューズなど3人が選ぶ "After The Gold Rush" だが、こちらは定番ですね。
レイジ・アゲンスト・ザ・マシーンのトム・モレロは "Hey Hey My My (Into The Black)" を選んでいて、やはりこの人はアコースティックでなくロックな曲を選ぶよな。
90年代半ば、レイジがニールの前座をやってたとき、"Hey Hey My My (Into The Black)" はライブの一番最後に演奏され、それまでに先に帰るので聴くことができず残念に思っていた。あるとき楽屋にニールが入ってたとき、オープニングで "Hey Hey My My" をやるべきだよ、とトムが声をかけたところ、「坊主、俺はお前が生まれる前からセットリストを書いてんだぞ」ってな表情で何も答えずにニールは通り過ぎちゃった。でも、その日ニールはこの曲を一曲目にやってくれた、という逸話を語っていて心が温まる。
そういえば、R.E.M. のマイケル・スタイプも『Rust Never Sleeps』収録の "Pocahontas" を選んでいるが、これはアコースティックサイドの曲ですな。
意外なチョイスという意味では、カート・ヴァイルが選んでいる "When Your Lonely Heart Breaks" も入るだろう(俺は究極のニール・ヤング・マニアだから、ちょっとマニアックな曲を選ぶぜ、と微笑ましい)。この曲は、1987年のアルバム『Life』に収録されており、このアルバムは『Rust Never Sleeps』と同じくクレイジー・ホースとのライブ音源を基にしているが、当時ニールは低迷期にあった。
カート・ヴァイルも、当時の所属レコード会社のゲフィンと「意図的に売れないアルバムを作っている」と訴訟沙汰になるなどの背景情報を書いており、彼は十代の誕生日にこの CD を初めて手にしたが、2018年にニールの前座を務める少し前にこのアルバムに出会い直し、"When Your Lonely Heart Breaks" が再び胸に沁み込んできたという。
初めて彼に会った時、ニールは "Down By The River" を30分も演奏して、それを目の当たりにしてカートは、「ニール、あなたを何度も観てきたけど、今回は断トツで最高だった。"Down By The River" はまるで地下と宇宙を同時に体験しているようだったよ」と言うと、「ああ、そうだな、俺たちはいつでも宇宙へ行けるんだ」とニールは笑いながら返したそうで、かっこいいよね。これも良い逸話。