Pulp は今年はじめに rockin'on sonic でヘッドライナーをつとめたのも記憶に新しいが、久方ぶりの新曲である。
タイトルからしてもしかしたらと思ったら、やはり1990年のストーン・ローゼズのスパイク・アイランドでのライブにインスパイアされたものなんだね(ただし、ジャーヴィス・コッカーはそのライブには行ってないとのこと)。
それより驚いたのは、24年ぶりのアルバムが6月に出るということ。正直、アルバムを作るとは思わなかった。Pulp 解散後もジャーヴィス・コッカーとずっとコラボレーションしてきたスティーヴ・マッキーが2年前に亡くなったのもあり、ライブや単発のリリースはあってもアルバムはないんじゃないかと思い込んでいた。お達者なのは良いことである。
今年はそのように Pulp の久方ぶりの新譜が出る年なのだが、彼らの最高傑作『Different Class』がリリースされて30周年でもある。
新曲 "Spike Island" も、ビデオ自体『Different Class』のジャケットに使われた写真を AI を使って動かす趣向になっているが、ワタシはこのアルバムを愛する洋楽アルバム100選に入れるくらい好きで、そういえば Pulp については昔にも文章を書いている。
これを書いた人は、ラリってたのでしょうか?
それはさておき、『Different Class』に収録されたヒット曲、つまりは彼らの代表曲の歌詞にはモデルがいたというのを実は最近知ったので、それについて少し触れておきたい。
まずは "Disco 2000" だが、エルヴィス・コステロも歌詞を賞賛したこの曲で歌われる、語り手の幼なじみの「デボラ」は、まさにジャーヴィスと子供時代の友人だったデボラ・ボーンがモデルだったのね。
歌の通り、二人が結ばれることはなかったものの友人であり続けたようで、ジャーヴィスがデボラさんの50歳の誕生日に彼女のためにこの曲を歌ったというのは良い話ですな。
しかし、残念なことにデボラさんは骨髄がんの多発性骨髄腫を患っており、52歳の誕生日を目前にして、しかも彼女に大英帝国勲章(MBE)が贈られることが発表された日に亡くなっている。
そして、言わずと知れた "Common People" である。この曲は Pulp の代表曲というだけでなく、ブリットポップ期を代表する楽曲といえる。
この曲の文化的な影響力は現在まで大きく、例えば先ごろシーズン7が配信された『ブラック・ミラー』の ep1 のタイトルもこの曲からとられている(と思う。『ブラック・ミラー』では、過去にスミスの "Hang the DJ" もエピソードのタイトルに使われたし)。
リリース当時この曲は大ヒットし、全英一位に輝き……はしなかったんですね。映画『イエスタデイ』に、「もちろん、僕はいつも二番手だ。でも、それも悪くない。1位になれなかった最高の曲もある。パルプの「コモン・ピープル」がそうだろ」てな台詞があり、ワタシなどグッときたのだけど、あの映画を観て台詞の意味に気づいた日本人って100人いなかったかもしれない。
この曲で歌われる、大学時代の語り手を振り回す「ギリシャから来た富豪の娘」は誰だというのはリリース当時からいろいろ詮索されたが、ジャーヴィスはそれについて曖昧に語るのみで、一切明言はしなかった。
しかし、少し前にこの曲の Wikipedia のページを見ていて、この曲のインスパイア元となったのは、ギリシャの元財務大臣にして、『テクノ封建制』の邦訳も出たばかりのヤニス・バルファキスの妻であるダナエ・ストラトスらしいことを今更知った。マジか!(当人はこの件について現在までコメントしてませんので念のため)
それはともかく、この曲の名演といえば、なんといっても1995年のグラストンベリー・フェスティバルになろう。本来であればストーン・ローゼズがトリを務めるはずが、ジョン・スクワイアがバイク事故で骨折したために急遽代役を務めた Pulp が一世一代のライブを見せる。
ラストのこの曲の演奏前にも、お前ら広告なんかに踊らされるなよ、俺みたいなヘナチョコが15年かけてここまで来れたんだから、君らだってできる、という内容の MC をやっていて泣かせる。