以下の内容はhttps://yamdas.hatenablog.com/entry/20110502/foreignbooksより取得しました。


邦訳の刊行が期待される洋書30冊を紹介しまくることにする

今回の文章を書こうと思ったのは、マガジン航に掲載された大原ケイさん「2011 ロンドン・ブックフェア報告」がきっかけである。

この記事の最後に「日本は出版コンテンツにおいても「情報後進国」」として、以下のようにある。

それより、気になるのは相変わらずの出版不況が伺える日本。どの版権担当者に、どの本のことを問い合わせても「えーとね、中国と韓国の版権は売れちゃってる(=既に翻訳されて刊行される予定がある)けど、日本語版権は空いてるわよー」という返事が返ってくる。これは純文学系のフィクションでも、最新のコンピューター専門書でも同じ。

ロンドン・ブックフェア2011報告 « マガジン航[kɔː]

今更だが、これは由々しき事態だと思う。何でも翻訳すればいいというものではないが、質は一定以上の量に担保されるとワタシは考える。近年日本人の内向き志向についてとやかく言われるが、日本の翻訳文化まで細るのが良いこととは思えない。

一方でワタシはこのブログをはじめ、洋書の新刊を好んで取り上げるようにしている。これにはいくつか理由がある。一番大きいのは、海外出版状況に注意することでアンテナを高く保つことなのだけど、実はそれと同じくらい大きな別の理由もあって、(おそらく驚かれるだろうが)それが金にならないことがある。つまり、いくら洋書を紹介しようが、アフィリエイト的にはほとんど収入にならないのだ。しかし、それが実に精神衛生上よい。もちろんワタシだって自分がブログで紹介する本や CD が売れて、その楽しさを分かち合う人が増え、ついでにいくばくか生活費の足しになれば嬉しい。しかし、そのアフィリエイト収入のことを意識しすぎると、ブログの内容や質に悪影響が出る。洋書を紹介するのは、その点すがすがしい気持ちでいられる。

話が逸れたが、ゴールデンウィークで時間が空いたので、ワタシがこれまでここなどで紹介した洋書を中心に、未だ邦訳が出ておらず、それを残念に思う本をひたすら紹介しまくることにする。といってもあんまり前の本を取り上げても仕方ないので、2009年以降に刊行された本に限ることにする。実にその数およそ30冊である。

未だ邦訳が出てなくても版権が取られていることを知っている本は外したが、ワタシが知らないだけで既に邦訳が出ている、あるいは出ることが決まってる本があったら教えていただけるとありがたい。

Matt Mason『The Pirate's Dilemma: How Youth Culture Is Reinventing Capitalism』

これに関しては、八田真行(id:mhatta)が翻訳を始めたと表明したのが昨年6月で、一年近くになる。しかし、未だ刊行の報を聞かない。誰か八田真行のケツを叩ける人間はいないのだろうか?

Geoffrey MacNab『Screen Epiphanies: Filmmakers on the Films That Inspired Them』

これは邦訳が出ると思ったんだけどねぇ。思い出を語っている映画監督もダニー・ボイルマイク・リーラース・フォン・トリアーとメジャーどころが多いし。

Eric Segalstad, Josh Hunter『The 27s: The Greatest Myth of Rock & Roll

この本について Wikipedia にページができているのに驚いたが、海外ではこの「27歳で死んだロックスター」について 27 Club という呼称があるんだね。

ニック・ケイヴNick Cave)『The Death of Bunny Munro

近年も旺盛にマルチな活動を続けているニック・ケイヴだが、彼が書いた小説は邦訳されないのだろうか。以前、といっても90年代前半だが、山形浩生らによる彼の詩集や小説の邦訳が出ているのでこれも出るかと思ったのだが、洋楽市場の冷え込みはこれや上のような本の邦訳にも影響を与えているのか。

Chris Mooney, Sheril Kirshenbaum『Unscientific America

ブッシュ政権の教育分野への影響については海外でもいろいろ報道され、軽蔑の念を抱いた人も多いだろうが、今回の東日本大震災後の原発問題を受けてみると、我々だってどれだけ科学的にモノを考えているか怪しいものである。そうした意味で、この本は日本人にも示唆するところがあるかもしれない。

そうそう、気鋭の美人サイエンスライターが解き明かす『キスの科学』と紹介したこの本の共著者 Sheril Kirshenbaum の単著は先月発売になったばかり。

ポー・ブロンソンPo Bronson), Ashley Merryman『NurtureShock: New Thinking About Children』

この本の邦訳が出ていないのはすごく意外だ。ポー・ブロンソンの本は既に何冊も邦訳が出ているし、子育ての定説を覆す本書の内容もキャッチーだと思うのだけど。アドバンスが高額とか何か事情があるんだろうか。

スチュアート・ブランド(Stewart Brand)『Whole Earth Discipline

ちょうど今読んでいる池田純一『ウェブ×ソーシャル×アメリカ <全球時代>の構想力』(asin:4062880938)の中でもスチュアート・ブランドが大きく取り上げられていて、彼の存在の大きさを再確認している。

それなら、何でこの本の邦訳が出ないのか……と書きたいところだが、本書に関しては残念ながら邦訳は出ないだろう。何故か? この本は、地球温暖化などの諸問題に抗するためには原子力発電や遺伝子組み換えも積極的に利用しようじゃないかという、彼の支持層も困惑させる内容になっている。池田純一さんの本を読むと、それがブランドの変節でないことが分かるのだが、原子力発電に関しては現在の日本の状況を鑑みれば難しいだろうね。

ちなみにブランドは東日本大震災後に受けたインタビューが Nuclear Winner という記事になっているが、まったく立場を変えていない。

池田さんの本なり、ブランドのインタビューは、いずれ何かの形でまた取り上げたい。

シャーリーン・リー『Open Leadership: How Social Technology Can Transform the Way You Lead』

日本でも結構話題になった『グランズウェル』の著者の一人の単著。本書が説くリーダシップ論も日本では先進的なものとして受け入れられると思うので、これはいずれ邦訳が出るのではないか。

クレイ・シャーキー(Clay Shirky)『Cognitive Surplus

正直クレイ・シャーキーの善導的な見立てには食傷なところもあるが、『みんな集まれ! ネットワークが世界を動かす』(asin:4480863990)がどれくらい売れたかでこれの邦訳が出るかも決まるんだろうな。

Lori Gottlieb『Marry Him: The Case for Settling for Mr. Good Enough』

これについては、単にアメリカ版婚活本ってどんな内容なんだろう、という好奇心が大きい(笑)。ちなみに Lori Gottlieb の名前で検索すると、同時期に以下の二冊が刊行されているのだが、題名は違うが同じ本なのだろうか。

デビッド・マーマン・スコット(David Meerman Scott)の近著

一昨年、昨年と新刊を出しながら、旧作もアップデートし、グレイトフル・デッドマーケティング本を共著し、他の人の本にいくつもまえがきを書くなど本当にハードワーカーだなと思う。

Adrian Johnsの海賊行為研究書

『Piracy: The Intellectual Property Wars from Gutenberg to Gates』は海賊行為について考える上で読んでおきたい本なのだが、640ページの大著で邦訳は難しいだろう。『Death of a Pirate: British Radio and the Making of the Information Age』のほうは、イギリスの海賊ラジオという個人的にもすごく興味のある話題で、前著より薄いので今読んでいるところだったりする。

Sanjoy Mahajan『Street-Fighting Mathematics: The Art of Educated Guessing and Opportunistic Problem Solving』

以前にも書いたが、『ヤバい経済学』の数学版という感じで売れないだろうか。公式サイトができているが、告知されていた CC ライセンスでの公開は実現していないっぽい

[追記]:コメントで id:pho さんに教えていただいたが、MIT Press のページから CC ライセンスの PDF 版がダウンロードできる。

ケヴィン・ケリー(Kevin Kelly)『What Technology Wants

いや、この本の邦訳が出ないのはおかしいだろう。前にも書いた通り、堺屋七左衛門さんが既にかなり訳しているわけで、氏に翻訳の仕上げをお願いすればよいだけじゃないか。

Barbara van Schewick『Internet Architecture and Innovation』

これがレッシグや Yochai Benkler の本に匹敵する内容なら是非とも邦訳が出るべきなのだが、これも560ページという大著である。邦訳の話が聞こえてこないのは、そのあたりで出版社が二の足を踏んでるのかな?

Joseph Michael Reagle Jr.『Good Faith Collaboration: The Culture of Wikipedia

これも面白そうな本だし、こちらは長さも適当だと思うのだが、ウィキペディア本は一通り出揃った感があり、本書は Wikipedia コミュニティに寄った本だが、既出の本にないサプライズがないと難しいのかもしれない。

パティ・スミスPatti Smith)『Just Kids

ブログで取り上げたときは全米図書賞の最終候補だったが、その後見事に同賞を受賞している。それならこれは邦訳が出ているはずと思いきや、まだ出ていない。これには困惑するし、怒りすら覚える。翻訳が進んでいることを願う。

Lars Martinson『Tonoharu』

マンガ版『ロスト・イン・トランスレーション』というべき本だが、題材はもっと地味で読んでみると淡々としたタッチで書かれている。そのまま邦訳されても、日本人にとってはちょっと落ち込んでしまう本なのかもしれない。というか、これは英語で読むべき本か。

Tim Wu『The Master Switch: The Rise and Fall of Information Empires』

ネット中立性という問題はこの一二年が正念場だと思うし、今後のインターネットを考える上で彼の本の論考は外せない(著者は連邦政府入りしてるんだぜ?)。前著は結局邦訳が出なかったが、本書の翻訳の話が山形浩生とかに行ってることを願う。

ドン・タプスコット(Don Tapscott)、アンソニー・D・ウィリアムズ『Macrowikinomics: Rebooting Business and the World』

このコンビによる前著『ウィキノミクス』はそこそこ売れたはずで、続編のこれも日経BP社から出ると予想しているのだがどうだろう。

Sean Moffitt, Mike Dover『WIKIBRANDS: Reinventing Your Company in a Customer-Driven Marketplace』

これもタイトルに Wiki が冠せられた本だが、こちらにもドン・タプスコットがまえがきを寄せている。彼の書く通りならなかなかの本だと思うが、日本で Wiki ブランドといってビジネス層にピンときてもらえるかというと難しいかも。

ティーブン・レヴィ(Steven Levy)『In The Plex: How Google Thinks, Works, and Shapes Our Lives』

Google 本は既にいくらもあるが、著者は邦訳がいくつもある有名記者だし、実際 Google 経営陣にかなり切り込んだ内容になっているようなので、間違いなく邦訳が出るだろう。現在翻訳がガリガリ進んでいる真っ只中のはずだ。

[追記]江坂健さんよりタレコミがあった。

Evgeny Morozov『The Net Delusion: How Not to Liberate The World』

この本のことは ReadWriteWeb のレビューで知り、しばらくして小林啓倫さんがブログで言及していて、面白そうだと思った次第。

単なるネット論ではなく、ベラルーシ出身の著者の政治哲学が色濃く反映された本のようで、こういうシビアな認識を持つ本も翻訳されんといかんよなと思う。既に翻訳作業が進んでるとかでなければ、小林啓倫さんが翻訳されるのがよいのではないか。

ティーヴン・ジョンソン(Steven Berlin Johnson)の近著

彼の本は『感染地図』(asin:4309252184)までは必ず邦訳が出ていたのだが、近著二冊がまだである。いずれの本も普遍的な内容で、それなりのセールスが見込めると思うのだけど何故だろう。

なお、最新作の内容については書名をそのまま題に冠した TED 講演「良いアイデアはどこで生まれる?」を見るのがよい。




以上の内容はhttps://yamdas.hatenablog.com/entry/20110502/foreignbooksより取得しました。
このページはhttp://font.textar.tv/のウェブフォントを使用してます

不具合報告/要望等はこちらへお願いします。
モバイルやる夫Viewer Ver0.14