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果てしなきスカーレット

個人的には細田守の最高傑作だと思う。わけわからんと他人に言われたらまあそうですよねと返すけど。

細田守のオリジナル作品は一応全部見ている。エンターテイメントと作家性のバランス的な意味では自分も「未来のミライ」からおかしくなっていた感はあった。「竜とそばかすの姫」はメタ的な意味では興味深いが面白いかと言われるとという感じだった。

本作は前評判も悪く、正直自分も全く期待していなかった。実際公開されてレビューを観るとやはり悪評がほとんどだが、意外と面白いという声も少しあり観てみることにした。


話は変わるが小劇場演劇というものがある。自分もしばらく演劇の公演には行っていないので語るほど話せるわけでもないのだけれど、一時期は多少は観に行っていた。これがミュージカルとも映画とも文学ともまた違ったノリで説明するのが難しい。

この小劇場演劇のノリを映像で再現しようとする作品がたまにあって、これはわかる人は「演劇モード」に感性を切り替えることでその文脈で解釈しようとするのだけれど、それを知らない人はあまりにも意味不明すぎて混乱してしまう。

例として挙げるなら幾原邦彦作品や、少女歌劇レヴュースタァライトは明らかにそういう作品だと思う。そして"果てしなきスカーレット"もそういう作品なのだ。

"ハムレット"をベースにしている部分があるからそうなのではと言われるかもしれないが、そこはそうでもない。ハムレットの原作と本作がいかに異なるかというのは各所で指摘されている。

ただそういう人は小劇場演劇の"XXXのハムレット"みたいなシェークスピア劇の翻案みたいなのを観たことあるだろうか。そういうものでは元の戯曲の要素なんか1割程度しかなく、そこから作った新しい何かが9割みたいなのは珍しくない。むしろそこが評価されるくらいだ。

本作でも人物名などを無理にハムレットからそのまま持ってこなくても良かったのではと思うかもしれない。あえて持ってきたのはたぶん「これはそういう演劇的な文脈で解釈してくださいよ」というアピールなのではないだろうか。

そのうえでスカーレットの父の殺され方が公開処刑である時点で、これはハムレットとは全く違う話ですよとハムレットを知っている人に知らされる。公開処刑だとそもそも死因が謎にならないので。

ちなみに自分はシェークスピアの戯曲はハムレット含めていくつか読んだことがあるが、正直何が面白いのかどれも理解できなかった。マジでハムレットも全然面白い部分わからないのよ。

これが小劇場演劇だと確信したのが聖の登場で、スカーレットが男性と出会うのは知っていたけど、こんな登場とは思っておらず笑ってしまった。完全に不条理劇のノリをやろうとしてるんだと確信した。

聖にとっては異世界転生でもあるんだけど、本作の面白いのは聖がこの世界の人と仲良くという意味ではなじむ一方で、異世界であることの違和感をずっと維持し続けていること。異世界転生ものはそうではないので。そのうえで他の人物との会話が全く違和感がないのがすごい。


本作の非常に面白い部分は、演劇ではなくアニメーションで表現することの意味とはなんであるかということを追及した上で、映像としても見ごたえのあるものになっている点だ。

本作は時間も空間も超えた死後の世界なので、リアリティも何もないのだが、実際の映像は切り取って来る時間と空間の解像度が異常に高い。そこを省略すれば楽だし統一感が出るはずなのにあえてしない。ロケハンはイスラエルやヨルダンらしく、確かに中東の遺跡は本当にあんな感じだと行ったことを思い出した。

そのうえで現代については実写風や未来の渋谷の謎CGみたいなシーンが入るが、物語上の意味はある。バトルシーンも多いが特に少人数での戦いは重量感があり非常に良かった。


肝心のストーリーであるが、世界観設定の謎とか突っ込むのは意味がないという前提を受け入れたうえで、純粋に復讐劇としての筋書きがどうだったのかが問題だろう。

自分は生死の辻褄や王の最後の言葉等、伏線の最低限の回収はされており、奇想天外な展開の割にまとまっているように思った。ラストはあまりにも説明的で甘すぎる気がするが、そこまでしないと伝わらないという判断なのだと思う。

ワン・バトル・アフター・アナザーでも同じことを思ったのだが、多くの作家が自分なりのやり方で、中世に逆行しつつある世界へ作品の力で歯止めをかけられないか考えている。冷静に考えると復讐をどう扱うべきかという点も似ている部分がある。監督本人がインタビューで言っている通り、これもそういう作品の一つだ。




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