ものすごく面白かった。意外と普通に映画としてしっかりしている。しかしジークアクスにおける初代ガンダム並みの岡本太郎リスペクトが観る側にないと厳しいかも。
岡本太郎については自分は割と知っているほうかと。企画展目的ではあるが岡本太郎美術館に行った回数は数えきれない。太陽の塔も実物を観に行った。"今日の芸術"もかなり昔に読んで非常に面白かった。TV版の奇獣の元ネタはほぼ全部実際に作品を観たことあると思う。
TV版はWebで公開されていたのは5話くらいは観た。それ以上観てないのはカロリー高すぎて連続で観ると疲れるから。内容自体は好きだったので映画版ということで観てみた。
本作の凄いのはTV版の濃い映像とテンションが映画の長い時間もずっと続いていること。そしてそれなのに映画としてストーリーが非常に綺麗にまとまっていることだと思う。
ストーリーが素晴らしいのは何よりも「大阪万博」がテーマになっていることだと思う。岡本太郎と言えば太陽の塔と大阪万博までは誰でも知っている。
しかし岡本太郎と大阪万博について詳しく調べたことがある人であれば、その屈折した関係はよくわかっているはずだ。だから当然万博素晴らしいという話になるわけがない。本作のラストは素晴らしかった。
パンフを読んだのだがもともと大阪万博ありきの企画というわけではなかったらしい。映画化の企画を監督が映画会社から持ち掛けられ、最初はあまり乗り気でなかったのだが、公開時期が2025年になりそうという話を聞いて思いついたとのこと。
もう一点面白いのは、これがCBTという地球防衛軍組織のメタ的な批判物語にもなっていることだ。正義の組織というのは当然秩序を守ることを目的とする。そのために同じ秩序を求める宇宙人や、利害の一致する怪獣と共闘する。
しかしタローマンは「でたらめである」ということが哲学になっている。だから論理的に秩序を求める組織と相入れない。過剰な秩序を非難する一方で、じゃあおっさん隊員がいいのかと言われると、あれはあれでどうなのという感じはするところがバランスが良い。
また謎の人物の正体が誰だったネタなど意外なくらいちゃんと伏線が回収されて面白い。こういう映像な派手な作品は、話が意味不明か凡庸に終わることが多いのに。
映像についてはTV版の5分番組の濃度のまま90分走り続けるという偉業が凄すぎる。パンフによると俳優の演技はほぼすべてブルーバックのスタジオ撮影で、背景は1500カットくらい全部編集したとのこと。しかもこれ撮影開始が2024年になってかららしい。おかしいだろ。
「うまくあるな、きれいであるな、ここちよくあるな」
「今日の芸術」を読んだ時は現代美術に対する態度として圧倒的に正しいと思ったのだけれど、それがどれだけ困難であるかは全く分かっていなかった気がする。
最近少しイラストを描くようになって思ったけど、これは相当な覚悟がないとできない。評価とか共感という現代においても重要とされていることを全否定できるか。岡本太郎はやはり偉大過ぎる。