
日常系ジュブナイルSFの傑作。もっと評価されるべき作品。
本作は女子中学生4人の夏休みを描く日常系に近い作品だ。4人のうちの一人の紗季の夏休み後の転校、そしてアイドルへの憧れ、そして"御石様の奇跡"の3つが軸になって話が進んでいく。
"御石様の奇跡"というのは以下のようなものだ。御石様は触れた複数の人物が同時に強く思っていることを叶える。しかし意図的にやったとして叶うかどうかはかなり運任せである。偶然触れた状態で何気なく思ったことのほうが叶うことが多い。
脚本力の高さは本当に素晴らしい。人間関係のトラブルが非日常的な出来事により解決されるというのは物語の定番だが、だからこそ純粋に脚本家の力が試される。
本作は毎回展開が全然読めない。"御石様の奇跡"の初回は空を飛ぶだが、これはまだ序の口でコピー人間からタイムリープ、タイムループまでSFの定番が何でも出てくる無茶ぶりである。
単に変な展開というだけではなく、4人の背景や関係性、心情が丁寧に描かれることにより、この奇跡に意味がでてくるのが素晴らしい。
そのうえで本作の焦点はあくまで4人の夏休みという部分にとどまっている。この力を利用しようとする悪い大人も出てこないし、世界の危機をこの力で救おうとすることも、最後にこの力の謎が解き明かされるようなこともない。
全話通した大きな物語としてはむしろ紗季の夏休み後の転校のほうが強い。アイドルオーディションもあるが、これもメインの物語にはなっていない。
この点は世界の危機を救ったり、アイドルになったりする大きな物語を期待していた人は不満に思うかもしれない。しかし自分はむしろ夏休みの日常と転校という個人的な小さい世界の物語にこだわったことにこそ良さを感じた。
本作はあくまで女子中学生4人の話だけれど、最終話で大人の視点がさりげなく組み込まれるところが素晴らしかった。毎日が休みであることの価値なんて学生の頃はわからない。今から思うと無駄に遊んでいたかもしれないけど、だからこそ価値があったのだと。