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地獄の看護実習の思い出〜後半〜

看護実習の思い出の続き。

 

◯高齢者

担当患者は80歳女性でBCG治療後萎縮膀胱と左水腎症の治療の手術目的で入院していた。BCGとは予防接種で聞いたことがあるかもしれないが、ウシ型弱毒結核菌のこと。膀胱がん(上皮内がん)の患者にそのBCGを膀胱内に注入する治療法があり、稀な後遺症として膀胱が萎縮してしまうことがある。

 

対面したのは術後2日目の朝で既に膀胱全摘と両側尿管皮膚瘻造設術が行われていた。痛み止めのための硬膜外カテーテル、酸素1リットル投与のための鼻カニューレ、輸液のための右手の点滴、排液のための骨盤内ドレーンと体のあちこちが管とつながっている。

 

膀胱を全摘したため両側の尿管にユリテジンカテーテルを留置し両腹部にストーマ(人工膀胱)を装着している状態。高齢にも関わらず長時間の手術で、恥骨直上から臍部横までの正中切開もしているため満身創痍という感じだった。

 

術後2日目の午前中に硬膜外のカテーテルの抜去、ガーゼの交換、酸素投与の中止が行われて少し身軽に。処置室まで移動する時に患者さんが股のところが痛いと言っていた。 今回の手術で尿が腹部のストーマに排出されるようになったので、パウチと呼ばれる排泄物をためる袋をつけなければならなくなった。

 

病院では看護師が尿の廃棄と周囲の皮膚の洗浄とパウチの交換を行う。自分もついて行って処置室に入ったら「外に出ていてほしい」と患者に言われたので外に出た。

 

痛みもきついのだろうが「こんな体になってしまって」という発言からも精神的なショックが大きいよう。何も言えなかった。患者はストーマと今後一生付き合っていかなければならない。手術前に説明は受けていたはずだが、いざそうなるとすぐに受け入れるのは難しいのだろう。

 

治療のせいで他の病気になるなんてやるせない。80年も生きていきなり排泄の仕方が変わるなんで精神的にもきついだろうと思った。手術による身体の変化にも対応しなければならないことを学んだ。

 

◯精神

担当患者は42歳女性でウェルニッケ脳症、栄養障害(特にビタミンB群)に伴う神経障害、アルコール依存症疑があり、せん妄の精査目的で入院していた。

 

既往歴にL4/5腰椎椎間板ヘルニアがあり治療中。自分が関わったのは退院前で、歩行がやや不安定なこと以外はなんの問題もないように見えた。

 

ウェルニッケ脳症はビタミンB1チアミン)の不足によって起こり、意識障害などの精神状態の変化やふらつき(失調性歩行)等の症状がある。原因の50%以上はアルコール依存症。 過剰なアルコールの摂取によりビタミンB1の吸収が妨げられるので、おそらく酒の飲み過ぎが全ての原因。

 

歩行が不安定なのは腰椎椎間板ヘルニアのせいなのかウェルニッケ脳症の症状なのか不明。 いろいろ話したり遊んだりしてみて健常者と変わりないように見えたが、過去のカルテにはいろいろ書かれていた。

 

ナースコールたびたびあり。「リモコンがない」「あれがなくなった」等の訴えがあったが目の前に全てあった。22時ごろより約5分おきにコールがあり「今、手で押さえとるところから何かが出てくるけんテープ貼って」「目の前に虫が飛んでいる」等の訴えを繰り返し手足が震える。一晩中タオルを振っていたり、眠る様子もなく「世界が終わる、梅子さんが来る、遠隔操作されている」等ずっと話しながらベッドの隅を掘る動作を繰り返している。

 

どう考えても普通に日常生活をおくれないような状態から回復したことに安心した。実習中はトランプやクロスワードパズルなどをして患者さんと遊んだ。

 

精神科病棟には他の病棟とは違って、散歩ができる中庭、金魚、卓球台、オセロ、ジェンガなどの遊び道具がたくさんあって病棟から外に出なくても退屈しにくいように工夫がされている。理由は長期入院になる人が多いのと遊びをすることが治療になるから。

 

また精神科病棟は病棟の入り口が施錠されているという特徴がある。これは患者が自由に出入りするのを防ぐためである。患者の外出時間は決められており、外出するためには申請書を書かなければならない。

 

廊下と保護室には患者の行動を観察するために監視カメラが取り付けられており、自傷や自殺の危険性がある人は拘束することもある。

 

こういったことから精神科には他の病棟にはない閉塞感があるが、実習の間はほとんど患者さんと遊ぶだけだったので楽しかった。精神科の治療には遊びが大切だということを学んだ。

 

◯在宅

病院ではなく訪問看護ステーションでの実習のため担当患者はいない。訪問は1日2件くらいと余裕のあるところだったので、スタッフも優しくいろいろ教えてくれた。

 

訪問看護ステーションの利用者は寝たきりの人が多い。病院で入院できずに家に帰っている人や、入院を拒否して家で過ごしたいという終末期の人がおり、決して軽症というわけではない。

 

訪問に2件同行させてもらった。

1件目は胃がん末期の患者。余命3か月という診断だが患者本人には伝えておらず弟だけが知っている。患者は延命治療を強く拒否しており、入院しても自宅に戻りたがってすぐに退院してしまう。現在低栄養状態であるが、点滴も経管栄養も拒否している。同居している母親も寝たきりで介護を受けなければならない状態。弟は市外に住んでいるが、よく家に来ている。

 

看護師は通常は点滴や栄養の管理を行うが、患者が拒否しているので体位変換や褥瘡の処置、清拭などを行っていた。自分では体を動かしづらいせいか褥瘡(床ずれ)がひどくて痛々しかった。それでも病院より家にいるほうが患者にとっては幸せなのかもしれないと思った。

 

2件目はALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者。ALSは徐々に筋肉がやせて力が入らなくなる病気。患者はベッドに寝たきりの状態で、透明文字盤と目線と瞬きを使ってコミュニケーションを取っていた。介護福祉士や看護師は慣れているのか簡単に理解していたが、自分にはさっぱりだった。 介護士や看護師が和やかに談笑しながら患者とコミュニケーションを取って食事の世話や清拭をするのに圧倒された。

 

ALSは現在治療法の見つかってない難病であるが、患者からその不安は感じとれなかった。体を自力で動かせないのに、褥瘡(床ずれ)は全くなく皮膚がきれいだった。

 

訪問看護ステーションで働く看護師は病院看護師よりも患者との距離が近いと思った。自宅でケアするということもあり患者とのコミニュケーションがより大切だということを学んだ。

 

◯母子

担当患者は30歳女性で切迫早産のため入院していた。早産とは正期産(妊娠37〜42週の出産)より前の出産のこと。切迫早産とは早産となる危険性が高いと考えられる状態のこと。

 

切迫早産は子宮収縮(お腹のはりや痛み)や子宮口の開大の程度で判断される。軽い場合は通院でもいいのだが、重くなると入院して子宮収縮抑制薬の点滴をする。

 

入院中は安静のためにトイレに行く以外は横になって過ごさなければならず暇そうだった。 安静にすること以外は特に問題がないので話がしやすかった。職業は臨床検査技師だったので病院のことにも詳しい。あの看護師は冷たいとか話しづらいとか言ってた。ずっと患者と話してたら邪魔だと思われたのか看護師に病室から追い払われた。

 

担当の患者ではないが初めて出産を見た。出産は分娩台で。足を開いた状態で仰向けではいきみにくそうだと思った。大河ドラマとかでは天井からぶら下がる綱を両手で持って座って産んでいたのに。仰向けだと膣だって斜め上を向くから、重力に逆らって赤ちゃんを押し出さなければならず、妊婦はより一層力まないといけない。

 

分娩台で仰向けで産むメリットは医師が処置をしやすいから。リスクがある出産なら仕方がないのかもしれないが、妊婦さんにとってのメリットがあるのか疑問に思った。

 

出産が近づくと妊婦さんはずっと痛い痛いと叫び続ける。全然余裕のない本気の痛がりよう。助産師はずっと腰をさすっていた。自分はうちわで扇ぐ。医師が取り上げた赤ちゃんを見たときは感動した。無事に生まれて本当によかった。こんなに何時間も痛みに耐えながら自分を産んでくれた母親は偉大だと改めて思った。

 

台風の日は出産が多いとかいう話も聞いた。人が亡くなることの多い病院で産婦人科は唯一命が生まれるところなので明るいイメージがある。だが赤ちゃんが亡くなることもあるし、母親が亡くなる可能性もゼロではない。

 

小さかったり病気を抱えて生まれてきた赤ちゃんが入るNICU(新生児集中治療室)やGCU(新生児回復室)もある。保育器に入った新生児に装着されているチューブはとても細く、ケアするためには細かい作業が求められる。

 

赤ちゃんの沐浴もやらせてもらったが、手が滑らないかと気が気でなかった。まだ首も座ってないので頭を支えるのは必須。お湯につけるときに一方の手は親指と人差し指で太ももを挟み込むように持つ。足からゆっくりお湯に入れて安定したら片手に。空いた手で力を入れすぎないように優しく頭から洗っていく。前面を洗い終わったら赤ちゃんの向こう側の脇に手を入れて肘下で胸を支えながら慎重にひっくり返す。赤ちゃんの顔が水面につかないように気をつけながら背中を洗う。洗い終わった赤ちゃんをタオルで包んだ時には疲労困憊だった。

 

やりがいはあるが看護師の責任も重い厳しい科だということを学んだ。

 

◯小児

担当患者は6歳女子で口唇口蓋裂の手術のため入院していた。口唇口蓋裂とは生まれつき口唇(くちびる)、口蓋(くちの中の天井)、上顎(はぐき)に裂を認める病気のこと。

 

この子は口蓋裂のみで外見ではわからなかった。手術を受けるまでの関わりだったので、暇を持て余した子とずっと遊んでいた。小児科にはキッズスペースのような場所があるため、病室から出てそこでトランプなどをした。

 

初対面ですぐに遊びに誘ってくれるような子だったのでコミュニケーションがとりやすかった。一人で歩いて手術室に入っていくのを見送った時はなんか泣きそうになった。

 

小児科ではイベントがある。11月はハロウィンイベント。ベッドからキッズスペースに来られる状態の子どもは飾り付けをして歌を歌ったり。看護師は魔女とかかぼちゃの被り物して病室を回っていた。

 

予防接種を受ける子どもの腕を2人がかりでベッドに固定するという体験もした。子どもに親が痛みを与える人だと認識させないために、親には部屋の外に出ていてもらう。

 

注射を泣いて嫌がる子どもを押さえつけるのは良心が痛むが、針を刺している間に動くのは超危険なため必死で押さえる。1歳の子どもといえど本気で抵抗する力はばかにできない。ちょっとでも気を抜くと動いてしまう。関節を固定しながらアンパンマンとかで気をそらし、なんとか予防接種が完了。

 

小さな子どもが重い病気や怪我で苦しんでいるのを見るのは精神的にきつい。使う薬の量も成人とは違うし、注射や点滴にも技術と工夫が必要である。子どもが可愛いとか好きとかいうだけではやっていけない科だと思った。

 

高齢者施設、保健所、市町村保健センター、保健室のある大企業、小学校、の実習は楽しかった。しんどかったのは病院での実習。精神科や小児科など患者さんと遊ぶことの多い実習は病棟にいる時間はよかったが、事前の予習レポートや看護計画、実習報告などの膨大な宿題がしんどかった。貴重な経験ではあるがもう二度とやりたくない。




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