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こんばんは。管理人のuncleゆーさん(@UncleYusan)です。
FIRE(早期リタイア)を実現した方や、会社を辞めて個人で生活している方にとって、「国民健康保険料(国保)」は、家計を圧迫する最大の固定費の一つです。
「確定申告をして配当控除を受ければ、税金が戻ってくる!」と喜んでいるのも束の間。実は、その申告が原因で翌年の保険料が数十万円跳ね上がり、トータルで大損してしまうケースが続出しています。
今回は、「FIRE・リタイア生活者が国保を最小化するための、もっとも賢い確定申告の戦略」をまとめました。
- 知っておくべき「国保」の残酷な真実
- 【重要な注意点】確定申告を「しない」という意味
- FIRE生活者の「最適解」はこれだ
- FIRE生活者が狙うべき「7割・5割・2割軽減」
- その他、国保を跳ね上げる「危険な所得」
- 究極の国保対策
- まとめ
知っておくべき「国保」の残酷な真実
会社員時代、社会保険料は給与から天引きされ、会社が半分負担してくれていました。しかし、リタイアして国保に加入すると、以下の現実が突きつけられます。
- 全額自己負担: 会社負担がなくなるため、実質的な負担感は倍増します。
- 「扶養」がない: 収入のない家族がいても、人数分だけ「均等割」という保険料が加算されます。
- 保険料の上限が上がり続けている: 2024年度の国保上限額は年間106万円でしたが、2025年度は109万円に。ここ20年で約50万円もアップしています。
リタイア後の生活設計において、この「見えない重税」である国保をいかに抑えるかが、資産寿命を延ばす鍵となります。
【重要な注意点】確定申告を「しない」という意味
このブログ記事で繰り返しお伝えしている「確定申告をしない方が有利なケース」とは、特定口座(源泉徴収あり)を利用しており、税法上「申告不要制度」を合法的に選択できる場合を指しています。
給与収入が複数ある場合や、特定口座(源泉徴収なし)を利用している場合、不動産所得・事業所得・一時所得など、確定申告が法律上義務づけられている所得がある場合などには、必ず申告が必要です。
本記事は、無申告や脱税を勧めるものでは一切ありません。
あくまで「申告する・しないを自分で選べる立場にある人が、
国保まで含めたトータル負担を考えたときに、どちらが合理的か」を解説するものです。
ご自身の状況が申告義務に該当するか不明な場合は、税務署や税理士など専門家への確認をおすすめします。
FIRE生活者の「最適解」はこれだ
FIRE生活の原動力である「配当金」や「株の売却益」。これらをどう申告するかで、国保の額が決まります。
「NISA」は最強の防衛策
NISA口座内で発生した利益や配当金は、どれだけ多額であっても国保の計算対象外です。FIREを目指す、あるいは継続する上で、NISA枠を使い切ることは国保対策としても最優先事項です。
特定口座(源泉徴収あり)は「申告しない」のが鉄則
特定口座(源泉徴収あり)で運用している場合、利益からはあらかじめ20.315%の税金が引かれています。
このまま「確定申告をしない(申告不要制度を選択)」とすれば、その利益は住民税・国保の算定基礎となる「課税所得」に含まれません。
「損益通算」と「配当控除」の罠
「A証券の赤字とB証券の黒字をぶつけて税金を取り戻したい(損益通算)」、「総合課税で申告して配当控除を受けたい」という誘惑がありますが、FIRE生活者は慎重になるべきです。
- 損益通算の罠: 税金が20万円戻ってきても、申告したことで「所得」が発生したとみなされ、翌年の国保が21万円上がれば、トータルでマイナスです。
- 配当控除の罠: 所得税・住民税だけを見れば、所得330万円以下の人は申告した方がお得ですが、国保を含めると「申告しない」方が安く済むことがほとんどです。
少し長くなりますが、2つの「罠」について、なぜ「得したつもりが大損」になるのか、具体的な数字を使ってシミュレーションしてみました。
計算を分かりやすくするため、国保料率を所得の10%(医療分・支援金分・介護分を合わせた標準的な数値)と仮定し、復興特別所得税などは簡略化して計算します。
※実際の国保料は自治体ごとに異なりますが、
本記事では理解しやすさを優先し、
「所得割=おおよそ10%」として概算しています。
ケース1:「損益通算」の罠
【状況】FIRE生活中のAさん。
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証券会社Xで 300万円の利益
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証券会社Yで 100万円の損失
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特定口座(源泉徴収あり)を利用中。
◎確定申告を「しない」場合
証券会社Xで利益確定時に、すでに税金が引かれています。
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引かれた税金: 300万円 × 20.315% = 609,450円
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国保料への影響: 申告しないため、算定上は「課税所得0円」扱い
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合計負担額:609,450円
◎確定申告をして「損益通算」した場合
「100万円の損を300万円の利益から引いて、税金を取り戻そう!」と考えた場合。
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通算後の利益: 300万円 - 100万円 = 200万円
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本来の税金: 200万円 × 20.315% = 406,300円
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還付される税金: 609,450円 - 406,300円 = 203,150円(おトク!)
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国保料への影響: 申告したことにより、所得が「200万円」とみなされます。
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増える国保料: 200万円 × 10% = 200,000円(増額!)
【結果】
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税金は 203,150円 戻ってきた。
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しかし、翌年の国保料が 200,000円 上がった。
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実質的な得:わずか3,150円。
※自治体によっては国保料率が12〜13%の場所もあり、その場合は完全に赤字になります。
ケース2:「配当控除」の罠
【状況】
FIRE生活中のBさん。
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年間の配当収入 300万円(他に収入なし・単身世帯)
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特定口座(源泉徴収あり)を利用中。
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引かれた税金: 300万円 × 20.315% = 609,450円
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国保料: 所得0円扱い。
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「7割軽減」が適用される可能性が高く、年間保険料は 約2万〜4万円 程度(均等割のみ)。
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合計負担額:約64万円
◎確定申告をして「配当控除(総合課税)」を受けた場合
所得300万円なら、総合課税にすれば所得税率が下がり、さらに配当控除(所得税10%+住民税2.8%)で税金がほぼゼロになるはず!」と考えた場合。
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所得税・住民税: 控除を駆使すると、税額は 約25万円 程度まで下がります。
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還付額: 609,450円 - 250,000円 = 約36万円(大幅おトク!)
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国保料への影響: 申告したことにより、所得が「300万円」とみなされます。
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翌年の国保料:
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計算式:(300万円 - 基礎控除43万円) × 10% + 均等割
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結果:約30万円〜35万円(激増!)
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軽減の消失: 所得が発生したため、①で受けられていた「7割軽減」が消滅します。
【結果】
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税金は 36万円 戻ってきた。
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しかし、国保料が 約30万円以上 増え、さらに軽減措置(数万円分)も失った。
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手元に残るお金:ほとんど変わらない、もしくは手続の手間を考えるとマイナス。
【重要】2024年度からのルール変更
以前は「所得税だけ申告して、住民税(=国保の基準)は申告不要にする」という使い分けができましたが、現在は所得税と住民税の課税方式を完全に一致させなければなりません。この「裏技」はもう使えないため、申告するかしないかの二択となります
FIRE生活者が狙うべき「7割・5割・2割軽減」
国保には、所得が一定基準以下の世帯に対して、保険料の「均等割」などを軽減する制度があります。
| 軽減割合 | 所得の目安(単身世帯の場合) |
| 7割軽減 | 43万円以下 |
| 5割軽減 | 43万円 + (29.5万円 × 世帯人数) 以下 |
| 2割軽減 | 43万円 + (54.5万円 × 世帯人数) 以下 |
※合計所得金額が2,400万円以下の場合
FIRE生活者がこの軽減を受けるためには、株式投資を含め、課税所得を極力発生させないことが重要です。
申告しなければ所得は「0円」とみなされ、最大7割の軽減を受けられる可能性が高まります。
その他、国保を跳ね上げる「危険な所得」
株以外にも、リタイア後に発生しがちな以下の所得には注意が必要です。
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不動産の売却益: 自宅や投資用不動産を売った利益は、一時的であっても国保を激増させます。
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暗号資産(仮想通貨)やFX: これらは「総合課税」または「申告分離課税」となるため、利益が出れば国保に直結します。
対策としては、年末に含み損がある場合は決済して利益を相殺(損出し)し、表面上の所得を抑える工夫が必要です。
究極の国保対策
もし資産規模が大きく、配当金などの所得をどうしても申告しなければならない事情がある場合、よく紹介されているのが「マイクロ法人の設立」です。
- 自分一人の会社を作り、社会保険(健康保険・厚生年金)に加入する。
- 自分への給与(役員報酬)を低く設定する。
- 社会保険料は「給与額」で決まるため、どれだけ個人に投資収益があっても、健康保険料を最低水準に固定できる。
これは多くのFIRE実践者が取り入れている、合法かつ強力なスキームです。ただし、設立・維持コスト(税理士費用・社会保険事務)や、将来の年金受給額への影響もあるため、万人向けではないと思います。
まとめ
今回の記事は、いかがでしたでしょうか?
リタイア生活を維持するために、確定申告前に以下のステップを確認しましょう。
- 原則、特定口座(源泉徴収あり)の利益は「確定申告しない」。
- 配当控除や損益通算による還付額が、増える保険料(所得の約10%)を上回るか計算する。
- 住民税非課税世帯や国保軽減の枠から外れないか確認する。
- 一時的な大きな利益(不動産など)が出る年は、他の控除で相殺できないか検討する。
「税金の還付」という目先のキャッシュに惑わされず、保険料を含めた「トータルの支出」を最小化すること。これこそが、FIRE生活を安定させるための真の節税戦略です。
※このブログ記事で解説した「申告しない方が有利」という考え方は、あくまで特定口座(源泉徴収あり)など、合法的に申告不要制度を選択できる場合に限ったものです。
申告義務がある所得については、必ず確定申告を行いましょう。
今回の記事がお役に立てれば、うれしいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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