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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/16 23:31 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動| 基本情報 | |
|---|---|
| NSSDC ID | 2002-048A |
| 所属 | ESA/ NASARKA |
| 打上げ日時 | 2002年10月17日 |
| 打上げ場所 | バイコヌール宇宙基地 |
| 打上げ機 | プロトン-K |
| ミッション期間 | 19年と4か月 経過 |
| 質量 | 4,000 kg 以上 |
| 軌道高度 | 13,000 km (近点) 153,000 km (遠点) |
| 軌道周期 | 72 時間 |
| 所在地 | 地球軌道 |
| 形式 | 符号化マスク |
| 観測波長 | ガンマ線 |
| 口径 | 3.7 m |
| 開口面積 | 500 cm2 (SPI, JEM-X) 3,100 cm2 (IBIS) |
| 焦点距離 | ~ 4 m |
| 観測装置 | |
| SPI | 分光計 |
| IBIS | 撮像装置 |
| JEM-X | X線モニター |
| OMC | 光学モニター |
| 公式サイト | ESA INTEGRAL |
インテグラル(INTErnational Gamma-Ray Astrophysics Laboratory、INTEGRAL)は、欧州宇宙機関 (ESA) が運営し地球の周囲を周回している、ガンマ線観測人工衛星である。
2002年に、宇宙から来る強い放射線を検出するために打ち上げられた。これまで打ち上げられた中で、最も感度の良いガンマ線観測装置である[1]。
インテグラルは、ESAがロシア連邦宇宙局 (FKA) およびアメリカ航空宇宙局 (NASA) と共同で進めているミッションである。謎の「鉄クエーサー」の検出等、いくつかの顕著な業績を挙げている。またガンマ線バーストやブラックホールの実在の証拠の調査等でも大きな成功を収めている[2]。
ガンマ線やX線は地球の大気を通過できないため、直接宇宙から観測する必要がある。インテグラルはカザフスタンのバイコヌール宇宙基地から打ち上げられた。2002年にプロトン-DM2ロケットで発射されて高度700kmまで運ばれ、その後備えられたスラスタで放射帯を通過した。
インテグラルは、軌道周期72時間で、近点1万km、遠点15万3000kmの、離心率が大きい軌道で公転する。近点は地球の磁場の中であり、観測はこの領域の外で行なわれる。光が遮られる時間を減らし、また地上管制局に面する時間を最大にするために、遠点は北半球に位置している。
制御はドイツのダルムシュタットにある欧州宇宙運用センターで行われ、地上管制局はベルギーのルデュとカリフォルニア州のモハーヴェ砂漠にある。燃料の消費は予想内にある。インテグラルは2.2年間の予定運用期間を無事終え、2012年には運用10周年を達成した。
インテグラルは再突入まで200年はかかる軌道を周回していたが、運用終了から25年以内に大気圏に落下させなければならないというスペースデブリのガイドラインを遵守(インテグラルはこのガイドライン作成前に設計・打ち上げが行われため、守る必要は無かったが実施)するため、15年で落下するように2015年1月から2月にかけて軌道制御を4回実施することになった。遠地点高度を引き下げることにより、再突入は2029年になる予定。燃料が尽きる2020年代初めまで科学観測は続ける予定[3]。
2020年7月、インテグラルはセーフモードに突入した[4]。スラスターが使用できなくなったことが原因。通常、姿勢制御にはリアクションホイールが使用されるが、蓄積された角運動量は2-3日毎にスラスターを使用してアンローディングされる。インテグラルのスラスターは使用できなくなったが、太陽光の圧力を利用してアンローディングを行う「Z-flip」アルゴリズムが開発され、以降も観測を実施できる見込み。チームはCovid-19のパンデミックのため、自宅から復旧にあたった。
2021年9月22日正午ごろ、インテグラルは緊急セーフモードに突入した[5]。荷電粒子が電子回路などに突入すると、メモリが1bitだけ書き換わるシングル・イベント・アップセットと呼ばれる現象が発生することがある。これによりリアクションホイールの1つが停止し、ホイールに蓄えられていた角運動量によって衛星が毎分約17度(約21分で1回転、通常の姿勢制御の5倍の速度)で回転を始めた。姿勢の乱れによって通信が安定せず、復旧が困難になり、太陽電池による発電が行われず、バッテリーの残量は残り3時間にまで低下した。このトラブルの復旧後、再びインテグラルは回転を開始した。これの原因は判明していないが、衛星の姿勢を検出するスタートラッカのトラブルが関係していると考えられている。
宇宙船本体には、XMM-Newtonの機体が流用されている。これにより、開発費が削減され、地上施設との統合も簡素化された。しかし、ガンマ線とX線による長期間曝露に対策したため、インテグラルはこれまでESAが打ち上げた中で、最も重量の重い科学ペイロードとなった。
本体の大部分は複合体から構成されている。エンジンはヒドラジンの単元推進装置で、4つの外部タンクに544kgの燃料を含む。チタン製のタンクには30℃で2.4メガパスカルのガスを充填できる。姿勢制御は、恒星追跡装置、複合太陽センサ、モーメンタム・ホイールによって行われる。広げると16mの長さになり、2.4kWの電力を産み出す2枚の太陽電池を備え、予備として2つのニッケル・カドミウム蓄電池も積んでいる。
ペイロード部分も複合体から構成されている。剛体基礎が検出器の複合体を支え、H字型の構造が検出器から約4m離れた符号化マスクを支えている。ペイロードは本体とは別々に製造、試験ができ、費用の節減に役立っている。
主要な製造企業はタレス・アレーニア・スペースである。
複数の帯域で対象を観測するために4つの装置が配置されている。符号化マスクは、スペインのバレンシア大学が主導して開発した。
インテグラルの撮像装置IBIS (Imager on-Board the INTEGRAL Satellite) は、15キロ電子ボルト(硬X線)から10メガ電子ボルト(ガンマ線)の範囲を観測する。機械的分解能は12分であるが、デコンボリューションによって1分にまで下げることが可能である。95×95の長方形のタングステンのタイルが検出器の3.2m上に置かれている。検出器のシステムは、前側に128×128のカドミウム-タングステンタイル(ISGRI、軟ガンマ線撮像装置)、後側に64×64のカドミウム-ヨウ素タイル(PICsIT、カドミウム-ヨウ素望遠鏡)が置かれている。ISGRIは500キロ電子ボルトの感度であり、PICsITは10メガ電子ボルトになる。両者はタングステンと鉛のパッシブシールドに囲まれている。
インテグラルの主要な分光計はSPI (SPectrometer for INTEGRAL) である。20キロ電子ボルトから8メガ電子ボルトの放射線を観測できる。SPIは六角形のタングステンのタイルでできた符号化マスクから構成されており、検出器平面の19個のゲルマニウム結晶の上にある。ゲルマニウム結晶は機械システムを冷却し、エネルギー解像度を1メガ電子ボルト当たり2キロ電子ボルトにしている。
IBISとSPIには、背景放射を抑える方法が必要である。SPI ACS (AntiCoincidence Shield) は、マスクシールドと検出器シールドから構成されている。マスクシールドはプラスチックのシンチレーター層であり、タングステンタイルの後ろに置かれ、放射がタングステンに衝突した際に発生する二次放射を吸収する。検出器シールドはビスマス-カドミウムのシンチレーターで、SPIの側面と後ろを囲んでいる。
2つのJEM-X (Joint European X-Ray Monitor) ユニットは、3から35キロ電子ボルトの硬軟のX線を観測し、観測対象についての追加の情報を提供してくれる。スペクトルのカバー範囲が広い上に、波長が短いため画像がより正確である。検出器は、マイクロストリップの中のキセノンとメタンのガスシンチレーターである。
インテグラルには、500から850ナノメートルに感度を持つ光学モニターOMC (Optical Monitor) が搭載されており、明るい観測対象の活動の様子や状態を記録することができる。
インテグラルには、較正を行なうために軌道のバックグラウンドを記録するための放射環境モニターIREM (INTEGRAL Radiation Environment Monitor) も搭載されている。IREMは電子と陽子のチャネルを持ち、宇宙線を検出することができる。バックグラウンドが規定のしきい値を超えると、IREMは装置を停止する。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/14 15:35 UTC 版)
数学の微分積分学周辺領域におけるヘンストック=クルツヴァイル積分(ヘンストッククルツヴァイルせきぶん、英: Henstock–Kurzweil[* 1] integral; HK積分)、一般化リーマン積分(いっぱんかリーマンせきぶん、英: generalized Riemann integral)、ゲージ積分(ゲージせきぶん、英: gauge integral) 、または(狭義)ダンジョワ積分(きょうぎダンジョワせきぶん、英: narrow Denjoy[* 2] integral)あるいはペロン積分(ペロンせきぶん、英: Perron integral)あるいはルージン積分(ルージンせきぶん、英: Luzin integral)は、いくつかある函数の積分法の定義のうちの一つで、リーマン積分を一般化したものであり、場合によってはルベーグ積分よりも有用なものとなりうる。
この積分を初めて定義したのはダンジョワで1912年のことである。ダンジョワは のような函数を積分することができるような、積分法の定義に興味を持っていた。この函数は点 x = 0 に特異点を持ち、かつルベーグ可積分でないが、それでも 0 を含む十分小さい区間 [−ε, δ] を除いて積分を計算し、その後 ε, δ → 0 とするのは自然に思われる。
一般論を形成するためにダンジョワは可能な全ての種類の特異点に対する超限帰納法を用いたが、そのことで定義は極めて込み入ったものになってしまった。これに代わる別の定義を与えたのはルジン(絶対連続性の概念の一種を用いた)およびペロン(連続な優函数と劣函数に着目した)であった。ペロン積分とダンジョワ積分が実際には同じものであることが分かるのはしばらくしてからのことである。
後の1957年に、チェコの数学者クルツヴァイルは、ゲージ積分と呼ばれるリーマンによる元々の定義ときれいにそっくりな新しい積分の定義を発見し、その理論はヘンストックによって研究が進められた。この二人の数学者の大きな貢献に因み、現在ではその積分はヘンストック=クルツヴァイル積分として広く認知されている。クルツヴァイルの定義の簡潔さから、微分積分学の入門的講義ではリーマン積分の代わりにこちらを用いるべきとする教育者もあるが、傍流である。
ヘンストックによる定義は以下のようなものである。
有界閉区間 [a, b] の点付き分割 とゲージと呼ばれる正値函数 δ: [a, b] → (0, ∞) に対して、点付き分割 P が δ-細 (δ-fine) であるとは、さらに を満たすことである。点付き分割 P と函数 f : [a, b] → R に対して、リーマン和(リーマンのオリジナルに限らず、この形の和分をこう呼ぶ) を定義することができる。与えられた函数 f に対して、 f のヘンストック=クルツヴァイル積分の値となるべき数 I は、
任意の ε に対して、適当なゲージ δ を選べば、P が δ-細分割である限り必ず
が成り立つ
という条件によって定義することができる。このような I が存在するとき、函数 f は [a, b] においてヘンストック=クルツヴァイル積分可能あるいはゲージ積分可能であるという(紛れの恐れがないときは単に可積分であるという)。
クザンの定理によれば、どのようなゲージ δ に対してもこのような δ-細分割 P は存在する。したがって、この条件は空虚な真(どのようなゲージ δ を選んでも δ-細分割である P が存在しないために上記の条件が真になること)とはなり得ない。リーマン積分はこの文脈で定数ゲージのみを用いた特別の場合として見ることができる。
任意の函数 f: [a, b] → R について、a < c < b とすると、 f が区間 [a, b] 上でヘンストック=クルツヴァイル積分であることの必要十分条件は、 f が [a, c] および [c, b] の両区間でともにヘンストック=クルツヴァイル積分可能であることであり、またこのとき区間に対する加法性 が成立する。また、ヘンストック=クルツヴァイル積分は線型、すなわち α, β を実数とすると f, g が可積分ならば αf + βg も可積分で、 が成り立つ。 f がリーマン可積分若しくはルベーグ可積分ならば、 f はヘンストック=クルツヴァイル積分可能であり、 f の積分値はいずれの積分の意味でとっても一致する。重要なヘイクの定理は、 が等式のいずれかの辺が存在する限り成立すること(およびこれと対称に、下の限界についての上からの極限をとったものも成り立つこと)を述べるものである。これはつまり、函数 f が「広義ヘンストック=クルツヴァイル可積分」ならば、 f は狭義ヘンストック=クルツヴァイル可積分であることを意味する。特に、 のような広義リーマン積分またはルベーグ積分はそのままヘンストック=クルツヴァイル積分にもなっているのである。したがって、有限区間上(の非有界函数に対する意味で)の「広義ヘンストック=クルツヴァイル積分」を考えることには意味がないことが分かるが、しかし のような無限区間に対する意味で広義のヘンストック=クルツヴァイル積分を考えることには意味がある。
かなりの種類の函数については、ヘンストック=クルツヴァイル積分がルベーグ積分よりも一般(より多くの函数を積分できる)というわけではない。例えば、 f が有界函数ならば、次の条件はどれも同値になる。
一般に、任意のヘンストック=クルツヴァイル可積分函数はルベーグ可測であり、また f がルベーグ可積分であるための必要十分条件は f および |f| がともにヘンストック=クルツヴァイル可積分となることである。これは、ヘンストック=クルツヴァイル積分を、「非絶対可積分」版ルベーグ積分と看做すことができることを意味する。またこれから、ヘンストック=クルツヴァイル積分が単調収束定理の適当な(函数が非負であることを課さない)変形版を満たすことや、優収斂定理の適当な変形版(函数列 fn に対する支配条件を弱めて、適当な可積分函数 g, h で g ≤ fn ≤ h とできるとしたもの)を持たすことが導かれる。
函数 F が至る所(若しくは可算個の例外を除く至る所)微分可能ならば、導函数 F′ はヘンストック=クルツヴァイル可積分で、その不定ヘンストック=クルツヴァイル積分は F に一致する(F′ がルベーグ可積分である必要はないことに注意)。すなわち、任意の可微分函数はその導函数の積分と定数の違いを除いて一致するという微分積分学の第二基本定理 がより簡潔でより十分な形で得られたことになる。逆に、ルベーグの微分定理はヘンストック=クルツヴァイル積分に関しても成立する。すなわち、 f が [a, b] 上でヘンストック=クルツヴァイル可積分で を満たすならば、[a, b] の殆ど至る所で F′(x) = f(x) が成立する(特に F は殆ど至る所微分可能である)。
ヘンストック=クルツヴァイル可積分函数全体の成すベクトル空間にはアレクシェヴィチノルム[* 3]が入り、このノルムに関して樽型かつ非完備になる。
興味深いことに、ヘンストック=クルツヴァイル積分に類似した方法でルベーグ積分を再定義することができ、マクシェイン積分という。まず初めに、ヘンストック=クルツヴァイル積分における条件である を δ-細分割 (δ-fine partition) の概念を用いた条件 に置き換える(ここで Uε(a) は a の ε-近傍とする)と、上で与えたものと同値になるが、このように変更したあとは条件
を落とすことができて、マクシェイン積分の定義の条件 が得られる(この変更の結果として得られるマクシェイン積分はルベーグ積分と同値になる)。