出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/02/14 04:45 UTC 版)
| WISE J080822.18-644357.3 | ||
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NASAのJonathan Holdenによる想像図
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| 星座 | とびうお座 | |
| 見かけの等級 (mv) | 17.51[1] | |
| 分類 | 赤色矮星 | |
| 位置 元期:J2000.0 |
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| 赤経 (RA, α) | 08h 08m 22.18s[2] | |
| 赤緯 (Dec, δ) | −64° 43′ 57.3″[2] | |
| 視線速度 (Rv) | 22.7±0.5[2] | |
| 固有運動 (μ) | 赤経: −11.54±0.12ミリ秒/年[2] 赤緯: 25.61±0.10ミリ秒/年[2] |
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| 年周視差 (π) | 9.8599±0.0551ミリ秒[3] | |
| 距離 | 101.4±0.6pc(331光年)[2] | |
| 物理的性質 | ||
| 半径 | 0.31太陽半径[1] | |
| 質量 | 0.16+0.03 −0.04太陽質量[2] |
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| 表面重力 | 4.92cgs(log g)[1] | |
| スペクトル分類 | M5.5V[4] | |
| 光度 | 0.01太陽光度[1] | |
| 表面温度 | 3050±100K[2] | |
| 年齢 | 4500+1100 −700万年[5] |
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| 他のカタログでの名称 | ||
| 2MASS J08082221-6443577[6] | ||
| ■Template (■ノート ■解説) ■Project | ||
WISE J080822.18-644357.3またはJ0808は、地球から331光年離れた先にある、年齢が4500万年+1100
−700万年[5]しかないとびうお座の恒星系であり、M型の主系列星(赤色矮星)の周囲をデブリ円盤が公転している。
2016年10月21日にNASAのゴダード宇宙飛行センターが、市民科学プロジェクトのディスクディテクティブに参加していた市民科学者によって、広視野赤外線探査機(WISE)の画像から波長12μmと22μmで赤外超過の兆候を見せるM型矮星として、J0808周囲のデブリ円盤が発見されたことを公表した。 この天体はプロジェクトのデータベースで、番号AWI0005x3s(省略して5x3s)のピーターパンディスクとして分類された。BANYAN IIを用いてのベイズ推定による解析では93.9%の確率を持って、視線速度20.6 ± 1.4km/sを持ち、りゅうこつ座にある年齢4500万年の若い恒星集団に属することが分かった。
M型矮星がもつデブリ円盤の多くは、年齢が3000万年を超えると消失するため、J0808は運動星団内で発見された最も年老いたM型矮星のデブリ円盤ということになり。この発見はこの種の円盤の進化についての制約への理解を変えることに繋がる[7][4]。
分光法による追観測がサイディング・スプリング天文台のオーストラリア国立大学2.3m望遠鏡で行われ、この天体が強いHアルファの輝線を持つ、リチウムを多く含むM5型星であることが分かった。これは、10−10 M☉ yr −1という低い降着率を示すことと一致する[8]。 アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)での観測では一酸化炭素は検出されなかったが、分解不能な波長1.3mmでのダスト放射が検出された[2]。 セロ・トロロ汎米天文台(CTIO)にあるビクター・M・ブランコ望遠鏡に搭載された赤外分光器で2017年から2018年にかけて行われた分光観測ではパッシェンβ線とブラケットγ線が検出され、同じくCTIOのSmartS90cm望遠鏡やTESS衛星で得られた高頻度観測では強い恒星フレアが観測されたことから、明確に降着が起こっているとされている[9]。
モデル化された円盤をJ0818のスペクトルエネルギー分布でフィッティングしたところ、円盤の温度は263Kと決定された[4]。 さらに研究が進むと、単一の円盤を持つというモデルでは波長22 μmにおける観測データとうまく一致しないことがわかり、そこから研究者は約240Kほどの外側の円盤と、その内側に広がる約1100Kの高温の円盤で構成されているというモデルが観測とよく一致することを発見した。外側の円盤は中心星から0.115auの位置にあるのに対し、高温の内側の円盤は中心星のすぐそばである0.0056auの位置に分布する。そしてこの内側の円盤が、中心星に降着する物質の供給源となっている。内側の円盤の温度は、非晶質のケイ酸塩が結晶質に焼きなまされる温度に相当する。また、内側の円盤の位置はこの赤色矮星のロッシュ限界に相当するため、この円盤はばらばらにされた微惑星で構成されている可能性がある。一方で外側の円盤は、B型主系列星からK型主系列星にかけても見られるダスト帯構造とよく似ている。こうした円盤の典型的な温度は190Kほどで、氷を含む微惑星から昇華した氷でできた細かいダストで構成されているとされる[8]。
ALMAの観測ではさらに3番目の、20Kほどしかない低温の構造が検出されている。この温度から、研究者はこのダストの質量を0.057±0.006 M☉程と見積もっている。 この質量は、年齢2000万年ほどのけんびきょう座AU星や5000万年ほどのオリオン座V1005星が持つ円盤の質量よりは大きいが、年齢1000万年ほどのポンプ座CE星(TWA 7)の円盤よりは小さい。円盤の半径は16auよりは小さいと制限されている。 円盤から一酸化炭素が検出されなかったことについては、一酸化炭素が失われるほどまでに円盤内の微惑星が成長してから何らかの理由で再度微惑星がダストに逆戻りしたとして、2種類のシナリオが考えられている。1つはkmサイズの微惑星が衝突を連鎖させ衝突のカスケードが起こったことでダストが放出されたという説、もう1つが最近起こった天体衝突で大量の細かいダスト粒子が生まれたという説である[2]。
CTIOで観測された光度曲線には変動が見られ、円盤内の物質が中心星の光を時々遮っている可能性がある。TESSで観測された光度曲線では、0.5日~2日ほどのタイムスケールで非周期的な減光が見られる[9]。
J0810と同じように、比較的古い年代の運動星団に属しながらも、若い天体のような性質を持つ恒星や褐色矮星は他にも発見されている[8][9]。 J0818と同様に、地球近傍の運動星団に属し、年老いた低質量の降着円盤を持つ天体はピーターパンディスクという呼び名で知られている[10][9]。