出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/24 06:13 UTC 版)
WHOIS(フーイズ)は、インターネット上でのドメイン名・IPアドレス・Autonomous System (AS) 番号の登録者等をデータベースから検索するためのプロトコルで、RFC 3912として規格化されている。人間が判読できるテキストフォーマットで応答されるのが特徴である。[1]WHOISプロトコル上で提供されるサービスは、RDDS(Registration Data Directory Services)と呼ばれるディレクトリサービスであり、具体的にはTCPベースでクエリ(質問)・レスポンス(応答)を送り、データベース検索を行うプロトコルである。
後継のプロトコルはRDAPである。
類似プロトコルとして「RWhois(Referral Whois)」が、RFC 1714のちRFC 2167として公開されている。これはWHOISを改良したプロトコルで、任意のRWhoisサーバーにクエリを送れば、正しいサーバーにリダイレクトされる利点があるが、ポート番号が4321と別サービスであり、従来のWHOISとも直接的な互換性はない。RWhoisは、IPアドレスをエンドユーザーに割り当てした情報を、RIRのWHOISに登録して公開するのではなく、割り振りを受けたネットワーク事業者が設置したRWhoisサーバーで登録して公開する方法として採用されている。[2][3]
WHOISの記録(レコード)は、各種資源(ドメイン名、IPアドレス、AS番号)がインターネットに接続されるために必要とされる技術的情報や登録・有効期限、登録者情報を公示する役割を持っている(詳細は「クエリの例」を参照)。しかし、個人情報保護の強化により、登録者公示の役割を終えつつある。
WHOISサーバーは、TCPポート43番を使用し待ち受ける。クライアントはサーバーに接続後、コマンドラインとして検索キー(クエリ)を送信すると、サーバーはデータベースを検索し、即時にクライアントに対してテキストメッセージで応答後、接続は閉じられる。
コマンドラインインタフェース(CUI)でアクセスすることを前提とした時代のプロトコルであるため、きわめて単純な数回のコマンドのやりとりで済むことから、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)中心である現代においても、簡便なCUIで使用されることもある。現在では主流のウェブベースのWHOISクライアント(「Whois検索」や「Whois Lookup」と俗称される)でも、内部的にはWHOISサーバに接続して検索を実行している。
WHOISは登場した当初から、ディレクトリサービスを提供する目的ではあったが、登録されている内容は時代により違いがある。WHOIS初期のARPANET(アーパネット)とインターネット黎明期の時代では、ネットワークそのものが限定的であり、ARPANETのディレクトリサービスに登録されていないと接続できない[4]制約もあったことから、各々のネットワーク利用者の連絡先を登録し、互いに連絡を取り合えるようにする内部的な名簿のようなものであった。
プロトコルとしては、1977年にRFC 742として公開されたNAME/FINGERプロトコルを、ARPANETのNICNAMEプロトコルとして実装したものが起源で、1982年にRFC 812としてNICNAME/WHOISが公開された。[5]
1983年には、ARPANETが軍事ネットワーク(MIL Net)とARPR Internetに分離、後の1990年にアメリカ科学財団(NSF)のCSNETネットにARPA Internetを統合し、インターネットに移行していった[6]が、ドメイン登録情報の管理は引き続きアメリカ国防総省の下部組織、国防高等研究計画局(DARPA)が担っていた。
1984年のRFC 920によりドメイン名(現代のgTLD)の登録手順が示され、ドメインの管理責任者及び技術担当者の連絡先はWHOISで公開されるようになった。当時はドメイン名の登録を受けるには50台以上のホストを登録することなど要件[7]や審査があり、登録後もそのドメイン内のホストについて責任者は全責任を負わなければいけない等厳格な規定[8]があった。
1999年1月1日から、旧IANA(歴史的経緯により、コンピュータサイエンスの研究者であるJon Postelが管理していた複数のインターネット資源を管理する機能の名称)[9]を1998年に設立した非営利団体ICANNの部門として吸収合併したことにより、IPアドレスやAS番号のWHOISが移管、更に同年12月1日には、gTLDのうちcom、net、orgの管理もDARPAからICANNのIANAに移管された。その名残で、今もIPアドレスやドメイン名のルートWHOISサーバーは、whois.iana.orgである。WHOISは現代のようなドメイン名、IPアドレス、AS番号(各種資源)の登録者等のデータベースを検索するプロトコルとして再出発し、同時にWHOISサーバーも分離した。
2004年に、WHOISプロトコルを置き換える目的で、IETFは、ドメイン名とネットワーク番号に関する全く新しい検索システムとして、仮称CRISP (Cross Registry Information Service Protocol) の策定を開始し、2008年にRFC 5144としてInternet Registry Information Service (IRIS)を公開したものの、普及しなかった。
2015年3月にはIETFが、改めてWHOISの代替プロトコルとして「RDAP(Registration Data Access Protocol)」を正式決定し、RFC7480~7484として公開された。[10]RDAPは機械的処理を目的とし、フォーマットが統一されている利点などがあるが、従来のWHOISのようなテキストフォーマットではないため、人間が直接判読することには適していない。
2023年4月30日(同年8月7日発効) 後継となるRDAPの運用要件が、ICANNのレジストラ及びレジストリ契約に規定された。同時に、WHOISプロトコルによるRDDS(Registration Data Directory Services)サービスを提供する義務が2025年1月28日に終了することが決定した。[11]
2025年1月をもって、gTLDレジストリ及びレジストラはgTLDドメインでのWHOISプロトコルによるディレクトリサービスを提供する義務がなくなり、後継のRDAPを提供することとなった。[11]RDAPプロトコルによるクライアントの場合は、「RDAP Lookup」のように呼ばれているが、ccTLDでのRDAPは義務でなくWHOISサービスも存続しているため、WHOISとRDAPの両方を取得している場合もあるため、「WHOIS検索」と称している場合もある。
初期のWHOISサーバは、現代のように悪意を持った不特定多数からの利用を想定しておらず、非常に甘い実装で、ワイルドカード検索が可能であった。人名の一部、メールアドレスの一部で検索ができたことから、キーワードの組み合わせによっては、管理者名から管理しているすべてのドメインを検索することや、特定のドメインに属するすべてのユーザーのメールアドレスを取得することなど、多くの情報を取得可能であった。[12]当時の時代背景として、個人情報保護という考えが一般にはほとんどなかったことや、ドメイン名取得し管理することの責任の重さ[8]があり、もし不適切な運用(倫理的、技術的)等があった際の自律的解決を目的として連絡先を公開していたものであった。
2000年代に入り、インターネットが一般大衆に広く利用されるようになってからは、WHOISからメールアドレスを収集して一方的にスパムメールを送付する事例が多発した。世界的な個人情報保護意識の高まりにより、日本では2003年に個人情報の保護に関する法律が施行され、個人情報保護が意識されるようになり、WHOISの公開情報をレジストラやリセラー名義に代理公開するサービスが提供されるようになった。2013年にはグレーゾーンであったWHOISの代理名義での公開が「プライバシー及びプロキシ登録に関する仕様」でICANNにより容認された。[13]
2018年のEU一般データ保護規則(GDPR)により、WHOISで公開されている個人情報についても抜本的に改正、原則として非公開の扱いとなり、WHOIS上で公開される個人(団体)情報部分は「redacted」と編集して公開する[14]など公開情報の規制が強化された。なお、WHOISやRDAP上では公開されないものの、引き続きレジストリ(レジストラ)は所要の個人情報(登録者と、管理・技術・請求担当者の4つ)を収集記録しており、「登録データ要求サービス/Registration Data Request Service (RDRS)」で申請を行い、正当な事由を有すると認められた場合、非公開登録情報の開示を受けることができる。[15][16]
2025年8月21日までに、ICANNの「登録データポリシー/RDP(Registration Data Policy)」[17](2024年2月21日に公開)に、すべてのレジストラが準拠することを義務化した。これにより、ドメイン登録の際に必須で記録されていた「登録者」「管理者」「技術管理者」「請求先」の4項目が、「登録者」と「技術担当者(任意)」の2項目のみ記録となり、その他の項目は削除される(同日以降削除項目はレジストリでの記録も受付されない)こととなり、更に個人情報保護が強化された。
同時に、「登録者組織名」の部分の運用が任意入力になるとともに厳格化された。従来は個人所有のドメイン名では慣習的に入力されていた「代わりの文字(個人名やPersonal等)」は不要となり、登録者組織名に記録がある場合は、「その名称の組織」が法的なドメイン名の登録者であるとみなされることとなったため、個人登録のドメイン名では組織名を削除する必要がある。(改正RDP:6.6.2登録者の組織名がドメイン名登録者と見なされること。)[18][19][20]
2025年8月現在、WHOIS(RDAP)への情報公開については、「全ての情報を公開する」、「Redacted(編集する)」、「Privacy Service(代理名義)」の3つが選択できる。ただし、レジストリ又はレジストラによっては、一部サポートしない場合がある。
WHOIS情報を格納する方法は二種類に分類できる。Thinレジストリ、Thickレジストリと呼ばれるが、ここではThinモデルとThickモデルとして解説する。Thickモデルでは、特定のレジストリ情報を1台のサーバに全て登録しておく(たとえば1台のサーバで、すべての.orgドメイン領域のクエリを実行することができる)。Thinモデルでは1台のWHOISサーバに、検索可能な全ての詳細データが登録してあるWHOISサーバ群の名前を登録しておく(たとえば、.comのドメイン情報が登録された WHOISサーバ群にWHOISのクエリを任せる)。(1台のWHOISサーバのみに接続する必要がある場合には)通常はThickモデルの方が一貫したデータとわずかながら速いクエリを確実にする。
もしWHOISクライアントがクエリに対してレスポンスを返せなかった場合、エンドユーザーに対する結果の表示はわずかなものとなる(WHOISサーバの情報と、おそらくは最低限の情報のみ)。WHOISクライアントがレスポンスできる場合、登録者についての詳細な情報が全て表示される。なお、WHOISプロトコルはThinモデルとThickモデルを区別する方法を規格に含んでいない。
登録情報を正確に格納するためには、ドメイン名を管理するレジストリ組織での変化を記録する必要がある。いくつかのトップレベルドメイン(.comや.netを含む)は、ThinモデルでWHOISを提供している。いくつかのレジストリ組織では、顧客に対してデータのメンテナンスを提供している。他のレジストラ(.orgを含む)はThickモデルでWHOISを提供している。
なお、日本においてはJPRSが主なドメイン名に関するレジストリ組織となり、WHOISも提供している。IPアドレスおよびAS番号に関するWHOISはJPNICが提供している。
wikipedia.orgのWHOISクエリ結果を下記に示す。
Domain ID: D51687756-LROR Registrar WHOIS Server: whois.markmonitor.com Registrar URL: http://www.markmonitor.com Updated Date: 2020-10-15T22:29:57Z Creation Date: 2001-01-13T00:12:14Z Registry Expiry Date: 2023-01-13T00:12:14Z Registrar Registration Expiration Date: Registrar: MarkMonitor Inc. Registrar IANA ID: 292 Registrar Abuse Contact Email: abusecomplaints@markmonitor.com Registrar Abuse Contact Phone: +1.2083895740 Reseller: Domain Status: clientDeleteProhibited https://icann.org/epp#clientDeleteProhibited Domain Status: clientTransferProhibited https://icann.org/epp#clientTransferProhibited Domain Status: clientUpdateProhibited https://icann.org/epp#clientUpdateProhibited Registrant Organization: Wikimedia Foundation, Inc. Registrant State/Province: CA Registrant Country: US Name Server: NS0.WIKIMEDIA.ORG Name Server: NS1.WIKIMEDIA.ORG Name Server: NS2.WIKIMEDIA.ORG DNSSEC: unsigned
WHOISフォーマット統一化前の独自フォーマットの例(whois.networksolutions.comから/2002年に取得したものを個人情報等を削除して加工)
Registrant:
Last, First
Address
City, State/Province PostalCode
JP
Domain Name: EXAMPLE.ORG
Administrative, Technical Contact:
Last, First first@EXAMPLE.ORG
EXAMPLE Organization
Address
City
State/Province
PostalCode
JP
+81 * **** ****
Record last updated on 19-Dec-2001
Record expires on 27-Dec-2003
Record created on 27-Dec-1998
Database last updated on 11-Jan-2002 15:00:24 EST
Domain servers in listed order:
NS1.EXAMPLE.ORG 192.0.2.1
NS2.EXAMPLE.ORG 203.0.113.1
WHOISは時代の流れに応じ、その形が変化している。下記に変更点を紹介する。
初期のWHOISサーバへのアクセス方法は、コマンドラインのみであった。ほとんどの場合、UNIXまたはUNIX系のOS上で動作した。WHOISクライアント・ソフトは、開発当初から現在に至るまでオープンソースで供給されている。商業ベースのUNIXでは、独自のWHOISクライアントが実装されている(たとえば、SunのSolarisには、Sunが開発したWHOISクライアントが含まれている)。
一般的なWHOISコマンドライン・クライアントは、WHOISクエリのため、どのサーバに接続するかをオプションで選ぶことができ、デフォルトでどのサーバに接続するかを変更するには、再コンパイルで対処することになる。さらに別オプションとして、どのポートで接続するか、デバッグ用データを表示するかどうか、再帰的照会をするかしないかといったものがある。
大部分のTCP/IPクライアント・サーバアプリケーションと同様、WHOISクライアントはユーザーの入力を待ち、接続先サーバにIPソケットを開ける。WHOISプロトコルは適当なポートでクエリを送り、応答を待つ。そして、応答をユーザーに表示して終了するか、さらに入力を待つ。WHOISプロトコルに関する詳細な情報はRFCで見つけることができる。
GNUプロジェクトの jwhoisクライアントは、他の多くのWHOISクライアントとは違い、WHOISクエリの照会先を登録できるコンフィギュレーション・ファイルを持っている。この仕組みにより、参照/再帰的照会ロジックをソースコード外に出し、かつインターネット・インフラの変更にも素早く追従できるという特色を持った。
WHOISサーバから来るデータのすべてがテキストである上に、プロトコルは静的なものであることから、「グラフィカル」という項目は誤解を招くかもしれない。WHOISサーバにはインタラクティブという言葉は当てはまらない。この節において「グラフィカル・クライアント」とは、グラフィカルユーザインタフェース (GUI) を備えたOS上で動作するWHOISクライアントを指す。
Windowsで動作するポピュラーかつフリーなWHOISクライアントは、Sam-Spade packageの一部であって、「ホットリンク」が作られるようになっている(たとえば、WHOISクエリの結果の一部をクリックすることで、新しいクエリを実行することができる)。
もう一つのポピュラーなWindows用WHOISクライアントは Active Whois である。このツールはWHOISクエリと、WHOISホスト検索のためのDNS検索ロジックを組み合わせたもので、ThickモデルとThinモデルの両方に対応している。Sam-Spade同様、クエリ結果をホットリンクとして出力する。
World Wide Webの急速な発展による、ウェブ上での情報の一般化、特にネットワーク・ソリューション寡占の緩みに伴い、ウェブ経由でのWHOISクエリは一般的になりつつある。もっとも初期のウェブベースWHOISクライアントは、単にインタフェースをウェブとしただけの、コマンドラインWHOISクライアントに対するフロントエンドに過ぎず、必要に応じて出力結果を整形するか消去するのみであった。
現状では、直接WHOISクエリを入力し、表示のために整形された結果が得られるものが一般的である。多くはレジストラによって提供されている。しかし、オープンソース・クライアントも存在する。例えばGeekTools、Whois Proxyなど。
ウェブベース・クライアントの必要性は、コマンドラインWHOISクライアントが当初UNIX(系)と大型機にしかなく、WindowsやMacintoshはWHOISクライアントを備えていなかったため、レジストラは潜在的顧客のためにWHOISデータベースへのアクセス手段を見つけなければならなかった。専用アプリケーションとしてのWHOISクライアントツールが各OSに現存する今でも、多くのエンドユーザーはウェブベースのWHOISを利用している。
WHOISサーバとともに、Perlで作られたWHOISクライアントが存在する。これらの多くは、現在のWHOISサーバに対する全機能を備えている訳ではない。または、あまり流通していない。しかし、AS番号や登録者情報の検索には大いに役に立つ。
前述のとおり、2025年1月より、gTLDレジストリ及びレジストラはgTLDドメインでのWHOISプロトコルによるディレクトリサービスを提供する義務がなくなり、後継のRDAPを提供することとなった。[11]以下にWHOISプロトコルを廃止したレジストリ(レジストラ)を記載する。