出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/03/04 08:36 UTC 版)
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| 種類 | 株式会社 |
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| 略称 | ラピダス |
| 本社所在地 | 〒102-0083 東京都千代田区麹町4丁目1番地 麹町ダイヤモンドビル11階 北緯35度41分1.14秒 東経139度44分16.28秒 / 北緯35.6836500度 東経139.7378556度座標: 北緯35度41分1.14秒 東経139度44分16.28秒 / 北緯35.6836500度 東経139.7378556度 |
| 設立 | 2022年(令和4年)8月10日 |
| 業種 | 電気機器 |
| 法人番号 | 6010001228815 |
| 代表者 | 小池淳義(代表取締役社長) 清水敦男 (代表取締役専務執行役員) |
| 資本金 | 73億4,600万円 |
| 売上高 |
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| 営業利益 |
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| 経常利益 |
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| 純利益 |
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| 純資産 |
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| 総資産 |
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| 従業員数 | 約1,000人 (2025年11月現在) |
| 決算期 | 12月31日 |
| 所有者 | 日本国政府(40%)[2] |
| 主要子会社 | Rapidus Design Solutions |
| 外部リンク | https://www.rapidus.inc |
Rapidus株式会社(ラピダス、英語: Rapidus Corporation)は、日本の東京都千代田区に本社を置く半導体メーカー[3]である。
2022年(令和4年)8月10日に個人株主12人により設立され[3]、設立時の代表取締役社長はウエスタンデジタル日本法人の社長を務めた小池淳義、取締役会長に東京エレクトロン前社長の東哲郎が就任した[4]。同年10月31日に日本の大手企業8社から73億円の出資を受けた[3]。工場は北海道千歳市に建設中であり、2027年3月にプロセス・ルールが2nm以下の先端ロジック半導体の開発・量産を行うことを目指しており、そのための経済産業省の研究開発委託先として同年11月11日に採択されている[4]。
社名はラテン語で「速い」を意味し、社長の小池淳義が命名した[5]。ロゴマークは富士山をイメージしている[6]。
日本の半導体産業は1990年代以降に凋落したが、半導体が経済・社会のデジタル化を支え、安全保障上も重要であるとの認識が2020年代にかけて高まり、各国は性能向上と自国および友好国内での生産を重視するようになった[7]。第2次岸田内閣が2022年(令和4年)6月7日に発表した骨太の方針の中で、次世代先端技術の開発を行う民間企業への支援を検討することや、2020年代後半に次世代半導体の設計・製造基盤を確立することなどが盛り込まれた[8]。
また、ラピダス設立の後、10月3日の第210回国会における岸田文雄首相の所信表明演説の中で、デジタルトランスフォーメーション(DX)に対して官民の投資を促し、日米連携による次世代半導体の技術開発・量産化を進めていくと表明していた。経済産業省は、5月に合意した日米の半導体協力基本原則に基づいた両国間での共同研究を見据え、次世代半導体研究を行う組織として「最先端半導体技術センター」(LSTC)を設立することを決定している。これにより研究開発拠点としてのLSTC、将来的な量産製造拠点としてのRapidus、両輪での日本の次世代半導体量産基盤の構築を目指すとしている[9]。
2022年の半導体不足に伴う補正予算によって、経済産業省および新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募を行ったポスト5G通信システムの基盤強化に関する先端半導体開発委託事業に応募し、11月8日に採択された。これにより、政府から700億円の支援を受けることとなった[10]。
2022年(令和4年)12月13日、IBMとの提携を発表。この時点では大量生産技術の確立していないGAAトランジスタプロセス(2nm世代プロセス)製品の製造技術をライセンス購入することとなった[11]。IBMは前年2nm製品の開発に成功していたが、自社では半導体の大規模生産は行っておらず、技術のライセンス供与先を探していた[12]。微細化技術を生かした製品開発では、韓国のサムスン電子が2022年にGAAトランジスタプロセス(3nm世代プロセス)で量産を開始、台湾の最大手台湾積体電路製造(TSMC)は2025年にGAAトランジスタプロセス(2nm世代プロセス)の量産化を発表しており、先行企業を追いかけることとなった[13]。
2023年(令和5年)に入ると、工場設立に向けた動きを開始し、2023年(令和5年)2月21日には、北海道千歳市の工業団地「千歳美々ワールド」に65ha(ヘクタール)の用地を借り受け第一工場設置を決定。そして、9月1日に当地において第一工場の起工式が行われ、工事が開始された。当面の目標は、2025年4月までに工場の建設を完了し、試作プロセスの稼働が目標であるとされている[14]。
2024年12月25日にはオランダASML社製のEUVL装置が納入され、2025年4月30日に設置工事が完了した[15]。2025年4月度より、後工程の工事が開始されており、最終的には2027年までに前工程(IIM)から後工程(RCS)を完備した量産体制を確立することを目標に掲げている[16]。
2025年7月18日、2nm GAAトランジスタの試作を開始し、動作を確認したと発表した[17]。
ラピダスは2nm世代の技術をゼロから独自に開発するのではなく、米国のIBMから技術を導入し、それを基盤として量産化を目指している。IBMの研究所は2021年5月、ナノシートベースのGAA(Gate-All-Around)構造を採用した2nm世代の試作チップを発表しており、指先大のチップに500億個のトランジスタを集積できるとされる。この成果はニューヨーク州オールバニに所在する「Albany NanoTech Complex」で得られたものであり、同施設はIBMをはじめ、GlobalFoundries、サムスン電子、東京エレクトロン、ASMLなど数百社の企業や研究機関が参画する国際的な半導体研究拠点である[18]。
また、ラピダスは欧州ベルギーに拠点を置く研究機関「imec」(Interuniversity Microelectronics Centre)との連携も進めている。imecはEUV露光技術や次世代トランジスタ構造などの先端研究で知られており、2023年にラピダスはimecのコアパートナープログラムに参加した。これにより、ラピダスはimecの300mmパイロットラインやEUV露光関連技術にアクセスし、TSMCやサムスン電子などと同様の研究基盤を利用できるようになった[19]。
ラピダスは日本国内ではしばしば「日の丸半導体復活」の象徴として報道される。しかし、その実態は「米・欧・台・韓・日」の国際協業の枠組みに位置づけられており、特に台湾有事による半導体の供給途絶の懸念が背景にある[20][21][22][23]。
ラピダスは地政学的な観点から重要な役割を担っている。世界の先端ロジック半導体製造の大半はTSMCに集中しており、米国を中心に経済安全保障上の供給リスクとして懸念されている。そのため米国や欧州は「サプライチェーンの多元化」を重視し、米国CHIPS法や欧州半導体法などによって信頼できる同盟国に最先端半導体の製造拠点を持たせる方針を示している[24][25]。ラピダスの設立と支援はこの国際的な戦略に沿ったものであり、日本政府による巨額の補助金政策も相まって、ラピダスは国際協業の一員として組み込まれることとなった[26][27]。
従ってラピダスの意義は、かつてのように「日本独自の半導体メーカーとして世界市場で覇権を競う」ことではなく、国際コンソーシアムに参画することで経済安全保障上の役割を担い、国内に最先端製造拠点を確保することにあるとみられる[22]。