出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/12/31 14:31 UTC 版)
| PSR J2322-2650 b | |
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観測結果に基づいて描かれた PSR J2322-2650 b の想像図
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| 星座 | ちょうこくしつ座[注 1] |
| 分類 | 太陽系外惑星 パルサー惑星 超短周期惑星 |
| 発見 | |
| 発見年 | 2017年[2] |
| 発見者 | Renée Spiewak et al.[3] |
| 発見方法 | パルサータイミング法[2] |
| 現況 | 確認[2] |
| 位置 元期:J2000.0[4] |
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| 赤経 (RA, α) | 23h 22m 34.638615s[4] |
| 赤緯 (Dec, δ) | −26° 50′ 58.38398″[4] |
| 固有運動 (μ) | 赤経: -2.37 ミリ秒/年[4] 赤緯: -8.2 ミリ秒/年[4] |
| 年周視差 (π) | 1.59 ± 0.17 ミリ秒[5] |
| 距離 | 2,054+245 −196 光年 (630+75 −60 パーセク[5]) |
| 軌道要素と性質 | |
| 軌道長半径 (a) | 0.0102 au[2][3] (1,530,000 km) |
| 離心率 (e) | < 0.00012[5] |
| 公転周期 (P) | 0.3229640004 日[5] |
| 近点引数 (ω) | 333 ± 27°[3] |
| PSR J2322-2650の惑星 | |
| 物理的性質 | |
| 質量 | ≥ 0.7949 ± 0.0002 MJ[3][注 2] |
| 平均密度 | ≥ 1.84 g/cm3[3] |
| 表面温度 | 2,300 K(昼側)[5] 900 K(夜側)[5] |
| 大気圧 | 不明 |
| 大気成分 | 二原子炭素 (C2)[5] 三炭素 (C3)[5] |
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PSR J2322-2650 b は、地球からちょうこくしつ座[注 1]の方向に約750光年離れた位置にあるミリ秒パルサーである PSR J2322-2650 の周囲を公転している、パルサー惑星に分類される太陽系外惑星である。
主星であるパルサー PSR J2322-2650 は2011年5月4日にオーストラリアのパークス天文台によるサーベイ観測で初めて発見され、3.463ミリ秒(つまり1秒間に約300回自転する)の周期で自転するミリ秒パルサーである。PSR J2322-2650 b は、非常に規則的な周期で発せられるパルサーのパルスがその周囲を公転する惑星の重力によって変化が生じることでその存在を検出するパルサータイミング法によって2017年に発見された[3]。
PSR J2322-2650 b はパルサーからわずか約 0.01 au(約150万 km)しか離れていない軌道を8時間弱という非常に短い公転周期で公転している。軌道の離心率は非常に0に近く、極めて真円に近い形状の軌道となっている。物理的特徴については多くは分かっていないが、少なくとも木星の8割の質量を持つとみられ、表面が超高温のパルサーを至近距離で公転しているため、表面の平衡温度は高温になっていると計算され、可視光線で観測されるVバンドでの見かけの明るさは27等級から28等級程度になると推測されていた[3]。
パルサーからは強力なガンマ線が放射されているが、赤外線は放射されていないため、赤外線による観測を行うジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡によって2025年に PSR J2322-2650 b の詳細な調査が行われた[6]。重力が強いパルサーから至近距離にあるため、PSR J2322-2650 b はパルサーから強大な潮汐力の影響を受け、レモンのように楕円形に潰れた形状になっていると考えられている。また、その強い潮汐力により自転と公転の同期(潮汐固定)が起きているとみられ、これにより永久的にパルサーがある方を向いている昼側の面では表面温度は約 2,300 K、逆に永久的にパルサーがある方を向けない夜側の面では約 900 K 程度になっていることが判明した[5]。
また、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による大気の観測からは、PSR J2322-2650 b の大気はヘリウムと炭素を主成分としているが、その炭素は二原子炭素 (C2) と 三炭素 (C3) という原子分子として存在していると判明した。PSR J2322-2650 b の表面温度ではこれらの原子分子は他の原子と結合しやすいため、これは酸素や窒素といったその他の原子が大気中にほとんど存在していないことを示しており[6][7]、炭素に対する酸素の含有量は100分の1未満、窒素の含有量は1万分の1未満しかないとみられている[5]。このような大気組成は、それまでに詳細な大気の解析が行われてきた他の約150個の太陽系外惑星では知られておらず、この観測を行った研究チームの主任研究者であるシカゴ大学の Michael Zhang は「これまで誰も見たことのない新しいタイプの惑星大気である」と述べている[7]。さらに高圧の惑星の中心部では、大気中の炭素の雲が凝縮されてダイヤモンドが形成される可能性も示されている[6][7][8]。