Infantry.
徒歩で移動し、槍、剣、銃などで戦う兵士(原義)。
近代以後の軍隊においては、小銃や機関銃、手榴弾などの小火器で武装し、徒歩で機動しながら戦闘行動を行なう兵士のことを指す。
「施設の占領および捕虜の拘束を行える唯一の兵科」
「最も多様な任務に対応できる兵科」
「隠密行動時に最も発見されにくい兵科」
「ユニットコストが最も安価な兵科」
「完全に無力化するのが最も難しい兵科」
という特徴がある。
このため、戦車や戦闘機といった兵器が登場し、進化した21世紀の現代にあっても、軍隊の中核としての重要性は揺らいでおらず、常に戦闘に決着をつける兵科でありつづけている。
また、現在では低強度紛争に対処する部隊の重要性が増している。
現代軍隊においては歩兵戦闘車やAPC(装甲兵員輸送車)、トラックなどで戦場を移動する機械化歩兵が一般的であり、また、戦車・自走砲や攻撃ヘリコプターと緊密に連携して動くのが常であるため、厳密な意味での「歩兵部隊」は、一部の国や地域を除いて殆ど存在しない。
なお、自衛隊では「普通科」と呼ばれている。
関連:特殊部隊
(Infantry から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/03/08 13:15 UTC 版)
歩兵(ほへい、英: infantry)は、兵の種類のひとつで、主に徒歩による戦闘をする兵士である[1]。
歴史的に見ると基本的には歩兵は陸軍に所属しているものだったが、海軍や空軍も歩兵を持つようになった。
歩兵は、地上の特定の地域を占領、確保することができる唯一の兵種である。現代の戦争では、空軍や海軍が特に重要な役割を果たし、特に民主主義国では自軍に犠牲者が出て国内で厭戦ムードが広がることを避けるために、地上戦を避け、空爆やミサイルや巡航ミサイルや攻撃用ドローンを使い、敵の防空能力を奪い敵のミサイル基地を破壊、あるいはそれらの手法で敵国の元首、指導者を殺害するなどして、つまり陸軍や歩兵を投入しないで済ます戦争も増えてきているが、もし敵国を占領、支配しようとする場合は、今でも地上戦を行い各建物内部に入り潜伏している敵兵を一掃する(あるいは捕虜にする)役割を果たす歩兵の投入が必要となる。
現代の歩兵は、歩兵と言えども、移動する場面では自動車類(輸送車、戦闘車 等)を使うことが多い。第二次世界大戦後の軍事理論では、歩兵は歩兵だけで単独で戦わせるのではなく、諸兵科連合(combined arms)と呼ばれる形で、さまざまな兵器・車両・航空機と協同して戦わせることが一般化した。たとえば、装甲兵員輸送車(APC)で移動することで、その装甲で歩兵を負傷から守る。あるいは歩兵戦闘車(IFV)を使い移動し、戦闘時には歩兵はIFVから降りて戦闘するが、IFVのほうも装備している火力(機関砲や対戦車ミサイル 等)で歩兵の支援を行う。また歩兵は戦車とともに行動し、歩戦協同(tank-infantry cooperation)と呼ばれる戦術を使い、歩兵と戦車が互いに弱点を補い合う形で戦うこともある。この場合、敵防御陣地の破壊、敵の装甲車両の撃破には自軍の戦車の強力な火力を使う。戦車は火力が強いがビルの上階からの対戦車ミサイル攻撃に弱いので、歩兵が目視で上階の対戦車ミサイルを撃とうとする射手をすばやく発見しライフル射撃で排除する役割を担う。
歩兵の役割の重要性は現代でも変わりないものの、その人数(軍隊に占める割合)はじわじわと減ってききている。古代から近代まで、軍の中で圧倒的に人数が多く、大きな割合を占めていたが、砲兵や工兵などが登場してからやや割合が低下し、さらに第一次世界大戦後や第二次世界大戦後は軍における職務や役割が多様化し、戦車・機甲兵種、空軍・航空部隊、後方支援(医療・補給・整備・輸送)、通信・情報・電子戦担当者、情報戦・偵察・サイバー部隊の隊員が登場し、軍全体に占める歩兵の割合はじわじわと減ってきている。 #歩兵の割合
アメリカ合衆国では、軍事用語(や学術用語)では、集団(兵科)としてとらえる場合はinfantry インファントリと呼び、兵士個々人はinfantrymanという。アメリカ独立戦争(1775年–1783年)のころはInfantryのほか、Footとも呼ばれ、基本的には武器はライフルであったのでRiflemenという呼び方もされた。ただし主にグレネード(擲弾)を担当する歩兵もいたので、その場合はgrenadiers(擲弾兵)と呼ばれた。南北戦争では、精度の高い銃で狙撃する役割の歩兵を区別して呼ぶためにsharpshooters(精密射撃専門歩兵)という呼び方も登場した。現代のアメリカの軍では、infantryという呼び方を基本としつつ、分類して、Light infantry 軽歩兵、Mechanized infantry 機械化歩兵、Motorized infantry 自動車化歩兵、Airborne infantry 空挺歩兵、Marine infantry 海兵隊歩兵などと呼んでいる。
ロシアでは、軍事用語(や学術用語)としては пехота(ペホータ)という。ただし、歴史的に見て、歩兵に銃をもたせるようになってからは стрелки(ストレルキ。射撃兵)と呼ぶことが一般化した。現代では歩兵といえども、移動時には主に車両で移動して移動効率を高めるので、мотострелковые войска(モトストレルコーヴィエ・ヴォイスカ。自動車化ライフル兵)と呼ばれる。
日本では、中世に武士が騎乗して戦うようになると、それと対比しつつ徒歩で戦う兵士を雑兵(ぞうひょう)と呼ぶようになった。室町時代末期ころからは足軽(あしがる)と呼ぶことが一般化し、江戸時代もそう呼ばれていた。明治時代に軍隊の西洋化が行われると、西洋の軍事用語 infantryが輸入され、それの訳語として歩兵が使われることが一般化した。第二次世界大戦までは歩兵と呼ばれ、旧日本帝国陸軍の兵科としては歩兵、騎兵、砲兵、工兵があった。戦後、陸上自衛隊においては、普通科と称されている。
近代の世界の軍隊に大きな影響を与えた欧州のものを中心に、歩兵の歴史をおおまかに辿る。
古代ギリシア時代、ポリス(都市国家)の市民を担い手とするポプリテス(重装歩兵)が誕生した。彼らはおもに農民や中小地主であり、"ポリス市民の義務"として兵となり、盾、槍、剣、鎧などを自費で用意して装備した。戦術としては、密集隊形を組んで戦う戦術(ファランクス)が用いられるようになった。この革新的な戦術はペルシャ戦争において、数的に勝るペルシャ軍を何度も打ち破り、現代にまで語り継がれることになった。ギリシアではこの他にもパノプリア(完全な鎧の意)やペルタステス(軽装兵)といった歩兵も登場した。軽装兵には、投石兵(slings)、弓兵、投槍(ジャベリン)兵などがおり、重装歩兵の前・側面・後方などに配置され、重装歩兵を支援し、敵の陣形をかき乱す役割を担った。
ギリシャの歩兵戦術はアレクサンドロス大王の時代にヘタイロイを中核とするマケドニア軍の騎兵戦術と合体(鉄床戦術)し、東方に一大帝国を築き上げる要因となった。
更にそれより後に覇権を握る事になる古代ローマは、ギリシャと同じ市民兵制度であり、騎兵の安定供給が難しいなどよく似た環境に存在していた事から、初めは自然とファランクスを模倣していた。しかし騎兵を活用したカルタゴ軍との戦いや散兵戦術を取るガリア軍との戦いの中で次第に独自の戦術を編み出していき、こうした努力はレギオンというより洗練された編制、隊形、指揮系統を持つ戦術に繋がっていった。またその構成要員も数千人にまで達するようになった。
装備品は共和政ローマ期(紀元前5〜1世紀)には、軍は市民が担うもので、兵士が自己負担で装備を用意するのが原則で、ばらつきがあった。
帝政ローマ期(紀元前1世紀〜3世紀)になると国家(ローマ)が標準装備を支給するようになり、統一化がはかられ、戦闘効率や陣形維持が向上した。 標準化された装備には次のようなものがあった
帝政ローマでは共和政期の市民兵制度から大きく変更され、軍が常備化され、兵士はプロフェッショナルとなり、給与(stipendium)が支払われるようになった。
蛮族の大移動により西ローマ帝国が崩壊し、ヨーロッパは中世となり、その後長きに亘り、歩兵に代わり騎兵が軍で優位を占める時代となった。これには馬の改良や鐙の登場だけでなく、戦闘の形態が大勢力による軍勢の衝突から、騎馬民族の荒略に対する迎撃や追撃に焦点が移動したためである。重装騎兵は日々の訓練が必要でありまたウマの肥育や装備の準備など経済力が要求されることから、封建社会の確立や地方分権の進展により定着した。かつてのような市民兵からなる歩兵の密集隊形は姿を消し、代わりに少数の貴族による重装騎兵(騎士)が戦いの中心となった。こうした傾向は最終的に一騎討ちという儀礼的な戦闘を交わすのみにまで陸戦の戦術的退化を招いた。
しかし中世後期ごろから中央集権化を果たした大国同士の戦が増えると再び戦いは歩兵を中心としたものに戻り始める。中世の終わりに起きた百年戦争で長弓兵や槍兵を主力とするイングランド軍が、貴族や騎士からなるフランス軍の騎兵部隊を完膚なきまでに破り(クレシーの戦い、ポワティエの戦い)、その決定的な契機になった。歩兵は再び軍隊における最も重要な存在へと復権を果たし、騎兵は副次的な存在として軽装さから来る機動性が重要視されるようになった。マキャベリは君主論において騎兵による散発戦闘ではなく、常設歩兵軍による集団戦法の有効性を論じた。
騎士文化を過去の物とした長弓は、より貫通力・殺傷力の高いマスケット銃が登場した後も、射程・命中率・攻撃力の集中・発射速度の点で優れていたことから並行して数百年の間使用されつづけた。しかし長弓は効果的に使うためには非常な熟練を要する武器であり、実戦で戦えるまで訓練するのには長い時間がかかった。このような欠点とは反対に、テルシオ隊形や三兵戦術の研究が進み、また数週間から数か月訓練した多数の人員と豊富な資金と銃や火薬の製造所さえあれば、編制可能なマスケット銃兵の部隊が用いられるようになった。また近世より産業化が進行し、田園的な貴族制は廃れて、都市に人と富が集中したことが、訓練は十分ではないものの大規模な歩兵部隊の迅速な招集を可能にした。
騎兵の機動性の向上、強い打撃力に対応して、歩兵にとっては槍が身を守る為の重要な武器となった。当初はマスケット銃兵に槍兵(パイク兵)が混成され、発砲の合間銃兵を護衛していたが、銃剣が普及するようになり銃兵に刀剣戦闘力が付加されるに至り、槍兵は姿を消し、近代の歩兵の姿が確立され始めた。
歩兵の輸送手段は、それまでは徒歩や船、馬であったが、19世紀より鉄道が使われ始め、1890年代以降いくつかの国では自転車が採用された(馬もしばらく併用されている)。第二次世界大戦では日本陸軍の歩兵が自転車で移動し、大成功を収めた(銀輪部隊)。
1920年代以降、自動車を使った自動車化歩兵の部隊が生まれたことは機動性における大きな革新となった。この頃から、移動中の兵士の安全を確保することの重要性が認識されるようになり、移動時に装甲車を使用する機械化歩兵が編成されるようになった。
歴史的には歩兵もさまざまな装備・編成で用いられてきた。
現代の歩兵はアサルトライフルや機関銃、手榴弾あるいは対戦車兵器などの小火器を携行する。 偵察、戦闘、治安維持などの役割を担う。そのほか、災害派遣でも活躍する。
次のような種類の歩兵がいる。
歩兵は主に陸軍に所属しているが、その他にも、空軍や海軍に属する歩兵がいる。
空軍に所属する歩兵としては
海軍関連の歩兵としては次のものがある
その他次のような歩兵もいる
John J. McGrath,の"The Other End of the Spear: The Tooth‑to‑Tail Ratio (T3R) in Modern Military Operations",Combat Studies Institute Press, 2007では、軍における戦闘要員をtooth("歯")、後方支援の役割の人々をtail(尾)と分類し、アメリカ軍のその割合の変化傾向を分析した。 McGrath"戦闘要員"には、歩兵だけでなく戦車搭乗員、砲兵、特殊部隊員も含まれるが、それも含めて次のように割合が減ってきている。
歩兵は、作戦行動中は主に徒歩で活動する兵士の総称であるので、その装備や技能、運用形態や戦術的役割によっていくつかに分類ができる。
ここでは現代における師団・旅団レベルにおける歩兵の基本的な分類を述べる。(Field Manual 100-5を参考)
歩兵部隊の編成は時代・国・組織によって非常にばらつきがあり一概には言えない。
時代によっても歩兵の編成は変わってくる。例えば古代中国では卒、伍、隊、旅、軍というような編制の記述が兵法書にみられる。この影響からか近代の日本にも伍長、一兵卒、部隊、旅団というような名称があるように一部名残があるようである。
現代の軍隊では基本的に二人から六人程度で構成される班が戦闘の最小の行動単位となり機関銃などの制圧火器がしばしばこの部隊に配備される。二個から三個の班から構成される分隊があり(分隊支援火器として制圧火器がこの分隊に配備される場合もある)、分隊が三個から四個ほど集まった部隊を小隊、小隊が三個から四個ほど集まった部隊を中隊とする。中隊の規模になってくると歩兵の人員数は100~250人程になり、歩兵の部隊における比率は60%から90%程度になってくる。中隊がさらに三個から五個ほど集まって大隊となり、大隊は部隊を支援するための火砲や車両などを装備し、おおむね少佐や中佐といった士官が指揮を執る。その大隊を三個から四個ほど擁するのが連隊または旅団と呼ばれる。この連隊や旅団は大体1500~2500人程度の人員を抱え、中佐や大佐が指揮を執り、支援として戦車隊や工兵隊なども部隊を構成する場合がある。この程度の規模の部隊になれば歩兵の比率は25%から60%程度になってくる。ちなみに旅団や連隊よりも大規模な師団という部隊の単位も存在する。
歩兵には非常に多岐にわたる実践的な能力が求められる。その歩兵がどのような任務につく部隊に所属しているか、またどのような適性があるのか、予算がどのていど充実しているのかなどによって大きくその教育内容などが変わるので、概略することは難しい。平均的な歩兵の能力について以下は述べる。
歩兵としては一般的ではないが、選りすぐられた人員で編成する特殊部隊の兵が身につける技術には次のものもある
陸上戦闘で最も発生しやすい損害の大部分は歩兵である。しかし敵の陸上戦力を掃討して敵拠点を征圧しなければ戦争の勝敗を決定的なものにすることは難しい。そのため戦車、火砲、航空機などの兵器を用いて、まず敵部隊の圧倒的な戦闘力を破壊し、敵に逆襲が不可能な損害を与えてから歩兵部隊を投入することが望ましいと考えられている。(小隊や分隊レベルの歩兵の運用については歩兵の戦術を参照)
歩兵の仕事の大部分は移動、残りは防御陣地の建設と維持であり、その余禄に一割にも満たない戦闘が含まれる。映画などの娯楽作品では、往々にして歩兵は常に撃ち合いをしている様に描かれるが、実際にそのような状況下では、敵も味方も精神的に疲弊して戦闘ストレス反応(戦争神経症 shell shock)を示す場合がある。第二次世界大戦の研究によれば、100日~200日にわたって戦闘を生き延びた兵士のほとんどが心身共に磨耗し、戦闘不能になってしまっている。実質的に頻繁な戦闘行動が行われるのは、どちらかが一方的に大量の人材や物資を投入して、攻め上げている場合のみである。今日のアメリカがこの様式で、相手を疲弊させ、戦争の早期決着を目指す作戦を取っている。しかしながら、近年の湾岸戦争やイラク戦争などでは即席爆発装置(IED)で手足を失う兵士や心的外傷後ストレス障害などを患う兵士も多く、アメリカは国内外から強い反発を受けている(戦術を参照)。
戦闘は歩兵にとってもっともつらく苦しい仕事となる。戦闘はその目的や環境、参加戦力の規模や種類によってさまざまな形態がある(塹壕戦、市街戦、上陸戦など)。戦闘においては歩兵は基本的に班、分隊ごとに編成され部隊単位で動き、基本的に各々が別々の方向を警戒することで死角をなくす隊形をとりながら移動する。その地域の危険度によって歩兵が移動する際の手順は若干異なる。危険度が比較的低い場合においては全員が全方位に対して警戒を払いつつ、一度の攻撃で全滅しないように歩兵間の間隔をあけながら一斉に移動する(この間隔はジャングル戦、野戦などによって違う)。実際に戦闘に入れば、基本的に二つほどの班に分かれ、敵に対して制圧射撃(機関銃での射撃や煙幕を張ることを指し、敵の殺傷が目的ではなく、敵の行動を封じることが目的である)を交互に繰り返す。一方が射撃を行っている間にもう片方が敵よりも優位な地点を確保し、より優位な状況で戦闘を展開していく。これは現代における歩兵機動戦術の基本であり、こういった過程において敵味方戦力の分析ミスによる間違った戦術や、武器装備の不調、火力の不足、機動力の不足、部隊の士気低下、指揮官の失敗、チームワークの欠落などにより歩兵はしばしば死傷する。戦車や装甲車、迫撃砲などがあればより重火器で攻撃することができ、歩兵の負担は軽くなる。
制圧占領した都市や村落の治安警備活動はかならず歩兵部隊の担当業務となる。占領地域の治安業務は戦時国際法に決められた占領軍の任務であり、その地域の行政機構が機能するかぎり協力しながら、通常の保安業務のみならず交戦勢力やゲリラなどによる地域住民を対象としたテロ攻撃から防護する必要がある。
戦車は強力な火砲と機動力を備えており、敵の装甲車、戦闘陣地、銃座などに効果的な打撃を与えることができる一方、地形適応力や柔軟性は歩兵に劣る。戦車と比較すると、歩兵部隊は無力に思われるかもしれないが、塹壕や遮蔽物に隠れ、有効な対戦車兵器を装備した歩兵は、高価な運用コストゆえに数で劣る戦車部隊より信頼性の高い戦力となる。
戦闘車両は一般に視界が劣悪である。戦車は強固な装甲を備える一方、対戦車兵器を携行した歩兵に接近されると脆弱である。歩兵は地形に潜伏あるいはカモフラージュを施して戦闘車輌を待ち伏せることができる。肉薄に成功、または敵戦車に発見されなかった歩兵は、敵戦車の視界外から、車体後部や機関室上面など装甲の薄い箇所に攻撃を行い、これを破壊することができる。市街戦では戦車1台は概ね歩兵1~2個分隊程度の戦力に過ぎないと言われる。ゆえに視界の悪い地形・状況下で戦闘車輌が単独行動を行うのは非常に危険であり、随伴歩兵との連携が欠かせない。
また、歩兵部隊はある程度の人的被害を出しても部隊再編成を行い、柔軟な運用が可能だが、整備部隊から離れて行動している戦車が車体にダメージを受ければ車両を放棄するほか無い。行動可能な場所が限定されることから、地雷にも狙われやすい。
恐らく、過去現在問わず歩兵の柔軟性・有能性が一番発揮されるのは市街地やジャングルなどの閉鎖的地形でのゲリラ戦である。『孫子』にも書かれているように、太古の昔から、戦術的に複雑な機動が出来る少数精鋭によるゲリラ戦は、動きが鈍い重武装かつ大規模な敵戦力に対して有効な戦法として見られてきた。敵に気付かれず接近、奇襲攻撃で損害を与え、本格的な反撃が始まる前に撤収するのが基本であり、一方的に戦闘の主導権を維持することで精神的ストレスも敵に与えることができる。現在でもその図式は変わらず、また火器性能の著しい発達もあり、巨大勢力にとって小規模かつそれなりの練度があるゲリラ兵は脅威に他ならない。ただし、この戦術が有効なのは市街地やジャングルなどの遮蔽物が多数存在する場所に限られ、また敵情を確実に把握するための情報網や人脈、地形に通じた誘導員などが必要である。正規軍の特殊部隊によるゲリラ戦術(例・第二次世界大戦における、北アフリカでの英軍の特殊部隊)以上に、武装した民間人によるゲリラ戦術(例・第二次世界大戦でのドイツ占領下の各国のレジスタンス、パルチザン、ベトナム戦争でのベトミン、南ベトナム解放民族戦線)の方が活発である。
平時における歩兵は戦闘とは無縁の駐屯地や基地で訓練や雑用に追われる日々を送る。国によって差はあるが、欧米の軍隊では普通一日八時間程度の勤務を週五日か六日間こなす。演習がなければ、早朝六時ごろから決められたスケジュールに沿って行動する。訓練においては徹底的に歩兵は苦しい状況に慣れさせられることで、部隊の結束を強め、部隊戦術を覚え、実戦に備える。
また冷戦終結後は、戦争以外の仕事について歩兵の重要性が高まっている。具体的には、国連の平和維持活動、テロなどの緊急事態における、また対ゲリラ活動などの治安維持活動、災害救助活動などである。こうした任務をMOOTW(Military operations other than war)と呼ぶことがある。
テロ事件などにおいては歩兵は柔軟な戦闘力を持ちえることから、人質をとった立て篭もり、ハイジャックなど精密かつ迅速な攻撃が求められるテロの対応においては非常に優秀であり、各国の警察や軍隊でもこういった人質救出を専門とした訓練を受けた歩兵の部隊が特殊部隊として保有されている。彼らは建物や飛行機だけでなく、列車、自動車、バスなどありとあらゆる閉鎖空間で的確な動きができるように日々CQB訓練を受けている。
現代の戦闘を戦う歩兵の装備はその国の軍隊によってさまざまだが、一般的に使用される装備がある。しかし、その種類は非常に多様であり、ここでは主な装備に限って取り上げる。
民主主義国では、兵士が死傷すると、家族・親族・友人を失った人々の苦悩がマスコミ経由で国民に知られ、国内世論は変化し、厭戦ムードや反戦ムードになり、自国民に犠牲者が生じるような戦争を始めた政権(指導者)の支持率が低下し、政権の過ちや責任を追求する世論が強まる。("今は有事だから"という言い訳でとりあえず政権を維持することも多いものの)実際には政権の維持が困難になり、戦争が終わった時点でその政権(政党)は権力を失うことが多い。自国の兵士を死傷させると政権支持率が著しく低下するという事実は、ベトナム戦争以来、教訓として残っている。
民主主義国では歩兵の生存帰還率を引き上げる機械化に極めて熱心である。任務の多様性は増す一方であり歩兵の教育や訓練のコストも上昇していることも、歩兵の人的損害を軽減させるための研究の推進を後押ししている。また歩兵という犠牲者が発生しがちな兵科を投入しなければならない地上戦をすることは避けて、ミサイルや巡航ミサイルによる攻撃で済ませることが増えてきている。ただし、自国の兵士の犠牲は気にするが、ミサイルや巡航ミサイルによる攻撃で"敵国"の市民を、学校に通う子どもたちも含めて、何千人も殺害してしまうことを気にもしない政治指導者も2020年代には複数の国で登場している。
一方、非民主的な国、たとえば独裁国家や権威主義国家では、(民主主義国とは異なり)情報が統制されてしまっており、国民は真実の感情をマスコミで感情を表明することができず、多くの歩兵が犠牲になっても、国民は政権の責任を問うことすらできない。その結果、独裁国家や権威主義国家では、兵の犠牲数を小さくしようとする努力がほとんどおこなわれず、何十万、何百万、何千万という自国の兵士(主に歩兵)を、まるで安価に調達できる消耗品のように扱い、平然と死なせることを行う。たとえば次のような例がある。
2010年現在、欧米の軍隊を中心とした歩兵装備の見直しの研究や装備の改良などが進められており、特に歩兵個人単位でのネットワーク化が試験されている。1990年代より携帯情報端末などを装備した先進歩兵システムの開発が行われてきており、ウェアラブルコンピュータの導入などにより、歩兵への個別指示の密度も高くなることも予測されている[3]。これらの状況から、軽量なHMDを内蔵する動力付きの甲冑を装備した歩兵や、NBC兵器によって汚染された地域でも行動できる防護性の高いスーツを着込んだ歩兵などの将来像が考えられている。パワードスーツ(外骨格スーツ)の導入や、通信や情報伝達・相互連携にコンピュータとのインターフェースの改良による総合的な情報処理技術の導入なども長期的な視点で検討している。
銃器の威力向上や電子戦技術の発展、また現在のバッテリーの技術力がどうなろうが、戦争は殺し合いなので、本質的には「矛と盾」であり、2つの対立する軍の歩兵が衝突すれば、どちらかの歩兵、もしくは双方の歩兵が大量に死ぬ。機械化兵などシールドの強化がされれば、それを破壊するための火力も強化され、本質的には「矛と盾」の競争が続き、歩兵が安全になることは無い。
歩兵が取り扱わなければならない通信装備などが高度化し、市街戦などの増加もあって戦闘の中身も複雑化しているので、教育水準の高い人材がますます歩兵として求められている。
攻撃など最終的な判断は操作する兵士に委ねられるような自律制御でないリモートコントロール式のロボットの実戦配備は進められており、これらは従来歩兵が携帯している武器の延長的な運用をされるほか、歩兵に先行して周囲を偵察するために利用されている。イスラエルなどでは、パレスチナとイスラエルの境界域(壁付近)で(人型ではない)ロボットを自動走行させ、AI画像認識により、不審者を見分けさせ、ほぼ自動で攻撃させることが可能になっている。
輸送や負傷者の後方への搬送など非戦闘任務においての活躍が期待される自動走行するロボット自動車も研究されている(→ロボット#兵器)
2010年ころまでは、人型の自律型ロボットの実現は難しいと考えられていた。当時の課題("技術的な壁")は次のようなものがあった。
空間把握能力に関しては、自動運転車の研究・開発と販売開始により、現実のものとなった。アメリカのカリフォルニア州では自動運転車の無人タクシーが走り回っていることが すでに"当たり前"の風景になっており、多くの市民が利用している。
AIに関しては、2022年11月にLLMのGPTを用いた生成AIのchatGPTが公開されてから、世界中で人工知能開発が加熱し、アメリカ合衆国のいくつかの企業のほか、中華人民共和国の(中国共産党の支配下にある)企業も高い技術力を持つようになった。LLM技術を応用して、ロボットに物理的な動作を大量に学ばせる手法が研究されており、フィジカルAI(Physical AI)や「ロボット基盤モデル」(Robotic Foundation Models)」と呼ばれており、工場向けの生産用ロボットではフィジカルAIで自律的に動くロボットすでに登場し、市販されており、世界各国の多くの技術者が、その技術を応用しロボット兵士(ロボット歩兵)を実現することを考えている。
人型ロボットのメカトロニクス技術に関しては、2010年代から中華人民共和国で多数の企業による開発が活発化し、高性能のサーボモータを実現し、2020年代ではアメリカ合衆国や欧州の水準を追い抜いており、世界の先端を進んでいる。中華人民共和国の人型ロボットは、カンフーをしたり、バク宙をしたり、マラソン競技を行うようになっている。
上述のように、人型の自律型歩兵の実現に必要な技術の"壁"は、ひとつひとつ消去されてきており、自律型ロボット歩兵はかなり近い将来に実現する可能性が高くなってきている、と考えられるようになっている。
インドのDefence Research and Development Organisation(DRDO)も2021年にヒューマノイド型軍事ロボット(つまりロボット歩兵)の研究を開始し、2027年に完成させる予定だとされている。
自律型ロボット歩兵が搭載することが望ましい能力としてはつぎのものがある
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/16 10:16 UTC 版)
「ヘルツォーク・ツヴァイ」の記事における「INFANTRY(500G)」の解説
歩兵。拠点を制圧できる唯一のユニット。戦闘力には期待できない。
※この「INFANTRY(500G)」の解説は、「ヘルツォーク・ツヴァイ」の解説の一部です。
「INFANTRY(500G)」を含む「ヘルツォーク・ツヴァイ」の記事については、「ヘルツォーク・ツヴァイ」の概要を参照ください。
固有名詞の分類