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Il-10 / Ил-10
B-33
Il-10(Ilyushin Il-10 イル10 / ロシア語:Ил-10 イール・ヂェースャチ)は、ソビエト連邦のイリユーシン設計局が開発し、ソビエト連邦赤軍などで運用された攻撃機。
ソ連を中心に「重シュトゥルモヴィーク(Тяжелый штурмовик)」として使用された。戦闘機なみの空中戦能力を有していたことから、「戦闘攻撃機(Ударный истребитель)」と呼ばれることもある。また、チェコスロヴァキアのアヴィア社でB-33攻撃機としてライセンス生産が行われ、チェコスロヴァキアやポーランドで運用された。
NATOが用いたコードネームの「ビースト (Beast)」は、野獣の意。
ソ連空軍では、大祖国戦争開戦以来Il-2を主力シュトゥルモヴィークとして運用してきた。しかしながら、多くの戦果を挙げたIl-2も、敵の戦闘機や防空能力の向上により、飛行速度、防御等の不足が隠せなくなってきた。そこで各設計局にIl-2の後継機の開発が求められたが、イリューシン設計局では、戦闘機として開発していた複座型Il-1を改称し地上攻撃機とすることに決定した。
改称された機体はIl-10と名付けられ、外見こそ前任機のIl-2に似ていたが、実際には全く別の航空機であり、Il-1から受け継いだ高度な空戦能力は、当時のソ連主力戦闘機La-7と互角のものであった。
Il-10は新たな主力シュトゥルモヴィークとなるべく生産が開始されたが、そのペースは遅く、大祖国戦争中にはIl-2ほどは用いられなかった。また、1945年5月のドイツ降伏に伴い総生産予定数も大幅に削減された。また、戦後しばらくはソ連軍の主力シュトゥルモヴィークとして使用されたが、1940年代後半のジェット機の台頭によりレシプロ機であったIl-10は旧式機と見られるようになってしまった。Il-10はハンガリー、ブルガリア、ポーランド、チェコスロヴァキアなどに輸出され、特にチェコスロヴァキアではアヴィア社によりB-33の名称でライセンス生産が行われた。B-33は約1200機生産され、この機体も東欧諸国や中東各国に輸出された。また、ソ連本国では主翼形状を改設計するなどしたIl-10M(Ил-10М)が開発され、1951年に初飛行をし、生産・配備された。本機の生産は1955年まで続けられ4966機が生産された。
Il-10は第二次世界大戦ではIl-2の陰に隠れてあまり大きな働きはしなかったように思われているが、戦後はいくつかの戦闘で注目を集めた。イエメンの内戦でもB-33が対地攻撃任務に使用されたが、それより遙かに有名なのは、朝鮮戦争において中華人民共和国義勇軍機や朝鮮民主主義人民共和国軍機として使用されたことである。この戦争では、Il-10は国連軍の戦闘機と互角の空中戦を行うなど対地攻撃任務以外にもいくらかの活躍を見せた。
Il-10は1950年代には第一線を退いたが、ソ連ではその後継機に当たる専用の地上攻撃機は採用されなかった。Il-10の発展型Il-16や新規設計された地上攻撃機Il-20、Il-40などはいずれもソ連空軍に採用されていない。
ソ連空軍には1960年代、「マッハ2の時代」になってからようやく攻撃任務専用に生産されたSu-7を配備するが、これも充分な能力を持っていたとは言い難いものであった。また、この機体はシュトゥルモヴィークではなく戦闘爆撃機であった。Il-10の後継機といえるシュトゥルモヴィークは、1975年に初飛行を行い現在ロシア空軍の主力攻撃機となっているSu-25まで採用されることはなかった。
| 型名 | 番号 | 機体写真 | 所在地 | 所有者 | 公開状況 | 状態 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Il-10 | |||||||
| Il-10 | 1219 | 写真 | 中国 北京 | 中国空軍航空博物館 | 公開 | 静態展示 | |
| 2080 | 写真 | 公開 | 保管中 | ||||
| 2583 | 写真 | ||||||
| 33 | 写真 | ||||||
| 86 | 写真 | ||||||
| Il-10 | 25? | 写真 | 中国 北京 | 北京航空航天博物館 | 公開 | 静態展示 | |
| Il-10 | DD-39 | 写真 | フランス セーヌ=エ=マルヌ県 | メルーン・ヴィアホッシュ飛行場博物館 | 非公開 | 保管中 | もう1機が保管されているようだが、不明。 |
| Il-10 | 不明 | 写真 | チェコ 南モラヴィア州 | ヴィシュコフ空港(Viskov Airport) | 公開 | 保管中 | Il-10数機の胴体前部が保管されている。 |
| Il-10M | 不明 | ロシア モスクワ州 | 空軍中央博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
| Il-10UTI | 不明 | 写真 | 中国 北京 | 中国空軍航空博物館 | 公開 | 静態展示 | |
| B-33 | |||||||
| B-33 | B33-3061 | ポーランド レッサーポーランド県 | ポーランド航空博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
| B-33 | B33-5339 | 写真 | ポーランド ルブシュ県 | ルブシュ軍事博物館 (Lubusz Military Museum) |
公開 | 静態展示 | 旧塗装 |
| B-33 | B33-5502 | チェコ プラハ | クベリー航空博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
| B-33 | B33-5514 | スロヴァキア プレショフ州 | スリアチ空港 (Sliač Airport) |
公開 | 静態展示 | 旧塗装 |
|
| B-33 | B33-5523 | ポーランド ワルシャワ | ポーランド陸軍博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
| B-33 | B33-5542 | 写真 | チェコ プルゼニ州 | ズルチュ・ウ・プルズニェ航空公園[1] | 公開 | 静態展示 | |
| B-33 | チェコ 南モラヴィア州 | 航空機・地上技術博物館[2] | 公開 | 静態展示 | この3機以外に他3機の部分的な残骸が保管されている。 | ||
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インターロイキン-10(英: interleukin-10、略称: IL-10)またはCSIF(cytokine synthesis inhibitory factor)は、ヒトではIL10遺伝子にコードされるサイトカインである[5]。IL-10シグナルは、2分子のαサブユニットと2分子のβサブユニットからなるIL-10受容体を介して伝達される[6]。IL-10の結合によってαサブユニットとβサブユニットの細胞質テールが、それぞれJAK1、TYK2によってリン酸化され、STAT3シグナルが誘導される[6]。
IL-10タンパク質はホモ二量体であり、各サブユニットは178アミノ酸から構成される[7]。
IL-10は、IL-19、IL-20、IL-22、IL-24、IL-26、I型インターフェロン(IFN-α、β、ε、κ、ω)、II型インターフェロン(IFN-γ)、III型インターフェロン(IL-28A、IL-28B、IL-29、IFNL4などのIFN-λ[8])とともにクラス2サイトカインに分類される[9]。
ヒトでは、IL-10はIL10遺伝子にコードされる。IL10遺伝子は1番染色体に位置し、5個のエクソンから構成される[5]。IL-10は主に単球によって産生され、また程度は低いもののTh2細胞、マスト細胞、CD4+CD25+Foxp3+制御性T細胞、そして活性化されたT細胞やB細胞の特定のサブセットからも産生される。単球によるIL-10の産生はPD-1によって開始される場合がある[10]。また、β2アドレナリン受容体[11]やカンナビノイドCB2受容体[12]などのGPCRを介したアップレギュレーションも行われる。刺激されていない組織ではIL-10の発現は最低限であり、常在菌叢や病原菌叢による刺激を必要とするようである[13]。IL-10の発現は転写、転写後段階で緊密に調節されている。単球では、TLRやFc受容体経路の刺激後にIL10遺伝子座の広範囲の再編成が観察される[14]。IL-10の誘導にはERK1/2、p38、NF-κBシグナルが関係しており、NF-κBやAP-1といった転写因子がプロモーター領域に結合することで転写が活性化される[14]。IL-10は、自己分泌によるIL-10受容体刺激とp38シグナル伝達経路の阻害によるネガティブフィードバックループを介して、発現を自己調節している可能性がある[15]。IL-10の発現は転写後段階でも広範囲の調節を受けており、AUリッチエレメント[16]や、let-7[17]、miR-106[18]などのmiRNAを介してmRNA安定性制御が行われている可能性がある。
IL-10は1991年に発見され[19]、当初サイトカインの分泌、抗原提示、CD4+T細胞の活性化を抑制することが報告された[20][21][22][23]。その後の研究により、LPSや細菌産物によって誘導される、骨髄系細胞によるTLRを介した炎症性サイトカイン(TNF-α[24]、IL-1β[24]、IL-12[25]、IFN-γ[26])の分泌を主に阻害することが示された。
腫瘍を有するマウスへのIL-10の投与によって腫瘍の転移が阻害されることが示され、その機能がより精妙なものである可能性が浮上した[27]。その後の複数の研究室での研究により、腫瘍免疫の文脈ではIL-10は免疫刺激能を有することが支持されている。トランスジーンによる腫瘍細胞株でのIL-10の発現[28][29]やIL-10の投与は原発巣の成長を制御し、metastatic burdenを低下させる[30][31]。また、PEG化組換えマウスIL-10(PEG-rMuIL-10)は、IFN-γの分泌やCD8+T細胞依存的な抗腫瘍免疫を誘導することが示されている[32][33]。PEG化組換えヒトIL-10(PEG-rHuIL-10)は、CD8+T細胞からのグランザイムBやパーフォリンといった細胞傷害性分子の分泌を高め、T細胞受容体依存的なIFN-γの分泌を増強することが示されている[34]。
マウスでの研究では、IL-10はマスト細胞でも産生され、アレルギー反応部位でこれらの細胞が持つ炎症作用に対抗することが示されている[35]。
IL-10は誘導型シクロオキシゲナーゼ(COX-2)に影響を及ぼす。IL-10の欠損はCOXの活性化、その結果生じるトロンボキサン受容体の活性化を引き起こし、血管内皮や心臓の機能不全を引き起こすことがマウスで示されている。IL-10がノックアウトされたフレイルマウスは、加齢とともに心血管系の機能不全を発症する[36]。
IL-10はマイオカインと関連づけられている。運動によってIl-1ra、IL-10、sTNFRの血中濃度が上昇することから、身体活動が抗炎症サイトカインの環境を強化することが示唆される[37][38]。
多発性硬化症の患者では、健常者と比較してIL-10濃度の低下が観察される[39]。IL-10はTNF-α変換酵素を調節しているため、IL-10濃度の低下によってTNF-α濃度の効果的な調節が行われなくなる[40]。その結果、TNF-α濃度が上昇し、炎症が引き起こされる[41]。TNF-αはTNFR1を介してオリゴデンドログリアの脱髄を誘導し、慢性炎症も神経の脱髄と関連づけられている[41]。
メラノーマ細胞株では、IL-10はNKG2Dリガンドの表面発現を調節する[42]。
転写因子FOXP3は制御性T細胞(Treg)の必須の分子マーカーである。FOXP3の多型(rs3761548)はTregの機能や、IL-10、IL-35、TGF-βといった炎症調節サイトカインの分泌に影響を及ぼすことで、胃がんなどのプログレッションに関与している可能性がある[43]。
近年のマウスでの研究では、IL-10が食作用の重要なエフェクターであるCD36を調節し、脳内出血後の血腫のクリアランスを促進していることが示されている[44]。オスマウスではIL-10の欠乏によって外傷性脳損傷の悪化がみられるものの、メスマウスではこうした効果はみられない[45]。
マウスでのノックアウト研究により、IL-10は消化管において必須の免疫調節因子として機能していることが示唆されている[46]。また、クローン病患者は組換えIL-10産生菌を用いた治療に対して良好な応答を示し、体内での過剰な免疫応答への対抗にIL-10が重要であることが示されている[47]。
さまざまな自己免疫疾患の患者に対し、組換えヒトIL-10(rHuIL-10)を用いた臨床試験が行われている。期待に反して、rHuIL-10治療はクローン病[48][49][50]や関節リウマチ[51]の患者に対して有意な影響を及ぼさなかった。乾癬の臨床試験では当初有望なデータが得られたものの[52]、プラセボ対照ランダム化二重盲検による第II相試験では臨床的意義が示されなかった[53]。rHuIL-10のヒトへの影響に関する研究では、rHuIL-10は炎症抑制よりもむしろ炎症促進効果をもたらしていることが示唆されている[54][55]。
腫瘍免疫分野では、PEG化組換えヒトIL-10(PEG-rHuIL-10、AM0010、pegilodecakin)による治療を評価する臨床試験が行われており、前臨床データと同様に抗腫瘍効果が報告されている[56]。In vitroやin vivoで報告されていたIL-10の免疫抑制効果とは対照的に[21][22][23][24][25]、PEG-rHuIL-10を用いたがん患者の治療では、IFN-γ、IL-18、IL-7、GM-CSF、IL-4といった免疫刺激性のサイトカインの増加がみられ、CD8+T細胞の活性化が観察された[56]。こうした結果は、PEG-rMuIL-10を用いた前臨床データや[32][33]、rHuIL-10を用いたヒトに対する試験の結果とも一致している[54][55]。これらのデータは、IL-10は細菌産物によって刺激された骨髄系細胞においては免疫抑制効果を発揮しているが、ヒトでのrHuIL-10やPEG-rHuIL-10による治療では主に免疫刺激作用を示すことを示唆している。2018年時点で、PEG-rHuIL-10は転移性膵がんに対する第III相臨床試験が行われている[57]。
IL-10はIL10RAと相互作用することが示されている[58][59][60][61][62]。