読み方:あいじーいー
(IgE から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/05 06:29 UTC 版)
免疫グロブリンE(めんえきグロブリンE、英語: Immunoglobulin E、IgE)とは哺乳類にのみ存在する糖タンパク質であり、免疫グロブリンの一種である。
1966年、石坂公成はジョンズ・ホプキンズ大学においてブタクサに対してアレルギーをもつ患者の血清からIgEを精製した[1]。また1967年にはウプサラ大学(スウェーデン)のS.G.O JohanssonとHans Bennichも独立してこれを発見した[2]。
IgEの "E" というアルファベットはこの抗体が紅斑 (Erythema) を惹起するということに由来している。IgE分子は2つの重鎖(ε鎖)と2つの軽鎖(κ鎖およびλ鎖)から構成され、2つの抗原結合部位を有している。健常人における血清中のIgE濃度はng/mL単位であり他の種類の免疫グロブリンと比較しても非常に低いが、アレルギー疾患を持つ患者の血清中では濃度が上昇しマスト細胞や好塩基球の細胞内顆粒中に貯蔵される生理活性物質の急速な放出(脱顆粒反応)を誘起する。これらのことからIgEはヒスタミンなどと並んでアレルギー反応において中心的な役割を果たす分子の一つとして数えられる。また、IgE分子の性質として胎盤通過能や補体結合能を有さない。分子量は188 kDa。
IgEはIgGをはじめとした他のアイソタイプと構造的に類似している。これらの分子は2つの重鎖および軽鎖から構成され、ジスルフィド結合(-S-S-)により結びついてY字型の複合体として存在している。このY字状分子の2箇所の上端部が抗原結合部位(Fab部位)、下端が受容体との結合部位(Fc部位)である。抗体分子一般の構造の詳細については抗体の項を参照の事。IgE重鎖の定常領域(Fcε鎖)は四つのドメインから構成される。これらは可変領域に近い方からCε1-4と呼ばれ、IgE受容体への結合にはCε3ドメインが重要である。
マスト細胞表面受容体上のIgEに抗原タンパク質が結合すると、IgEが抗原を架橋するような形になり細胞内顆粒中に貯蔵されているヒスタミンなどの放出が行われる。その結果として炎症反応を促進するが、炎症には急性炎症と慢性炎症が存在し、それぞれ関与するメディエーター・細胞などが異なる。マスト細胞の脱顆粒により放出される物質のうちヒスタミンは血管透過性を亢進させることにより急性炎症を促進する。また、ロイコトリエンやサイトカイン、ケモカイン等の分子は炎症における遅延型反応に関与し、炎症性細胞を動員するなどの役割を果たす。気管支喘息等のアレルギー性疾患の患者では血清中IgE濃度が高値を示し、これらの反応が亢進されている。
IgEアイソタイプは、好塩基球やマスト細胞と共進化し、(シストソーマのような)蠕虫のような寄生虫に対する防御に用いられるが、細菌感染にも有効である可能性がある[要出典]。 疫学的研究によると、ヒトではマンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)[3]、アメリカ鉤虫(Necator americanus)[4]、線虫[5]に感染するとIgEレベルが上昇する。IgEは肺に付着した鉤虫の除去に有益である可能性が高い[要出典]。
1981年、マージー・プロフェットは、アレルギー反応が毒物から身を守るための最後の防衛手段として進化してきたことを提案した[6]。 当時は物議を醸したものの、新しい研究では、有害な毒素に対する防衛としてのアレルギーの適応的役割に関するプロフェットの考えの一部が支持されている[7]。
2013年には、ミツバチ[8]やラッセルクサリヘビ[8][9]の毒に対する後天的な耐性に、IgE抗体が不可欠な役割を果たしていることが明らかになった。著者らは、「少量のハチ毒が、はるかに大量の致死量に対する免疫をもたらす」とし、「この種の毒特異的でIgE関連の適応免疫反応は、少なくとも進化の観点からは、動物がハチの巣全体に遭遇した場合やヘビに噛まれた場合など、潜在的に毒性のある量の毒から宿主を守るために発達した」と結論づけている[8][10]。ハチ毒の主要アレルゲン(ホスホリパーゼA2)は、IgE抗体の産生を伴うTh2免疫応答を誘導し、「潜在的な致死量のチャレンジに対するマウスの抵抗力を高める」可能性がある[11]。
抗体分子は一般にB細胞から分化した形質細胞によって産生されることが知られている。形質細胞はその細胞表面に発現している抗体分子と同じものを産生することができる。抗原に出会っていないB細胞(ナイーブB細胞)はその表面にIgMあるいはIgDを発現しているものが多い。これらの細胞に対してサイトカインによる刺激が入ると遺伝子の組み換えによる免疫グロブリン分子のクラススイッチが生じる。IgEの産生はTh2細胞などにより産生されるインターロイキン-4 (IL-4) により促進され、インターフェロン-γ刺激によって抑制される。また、活性化したマスト細胞はIL-4およびIL-13の分泌やCD40リガンド (CD40L) の発現によりB細胞を刺激し、IgE定常領域をコードするCε遺伝子の転写を亢進させることによりIgE産生の亢進が行われる。
IgEはFc部位と呼ばれる部位を介して細胞表面のIgE受容体(Fcε受容体)と呼ばれる分子に結合することが知られており、Fcε受容体はマスト細胞、好塩基球、好酸球等の細胞に発現している。Fc受容体に対して抗体が結合し、細胞の細胞内顆粒に蓄えられているヒスタミンなどのメディエーターはFc受容体に抗原が結合することにより誘発され、種々のアレルギー反応に関与している。
IgE受容体にはIgEに対して高親和性を示すFcεRI(Rはreceptor = 受容体、Iはone; 1番目に見つかったの略)と低親和性のFcεRII(CD23)が存在する。これらは細胞膜を貫通して細胞内外にまたがっているが、FcεRI は細胞外領域に免疫グロブリン様ドメインを複数個有しており、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する。血中のマスト細胞や好塩基球をはじめとしてランゲルハンス細胞や樹状細胞などの抗原提示細胞、好酸球、単球などの細胞において発現が見られる[12]。FcεRI はα鎖、β鎖および二量体のγ鎖の四量体構造(αβγ2)をとり、計7個の膜貫通ドメインを有する[12]。細胞外ドメインを主としたα鎖はIgEとの結合部位を有しており、βおよびγ鎖の細胞内ドメインはシグナル伝達に関与しておりLynなどのチロシンキナーゼのリン酸化を介して行われる。一方FcεRIIはC型レクチンであり単量体あるいはオリゴマーとして存在している[13]。FcεRII はB細胞において発見され、その他にも単球、活性化T細胞、好酸球、血小板などの細胞表面に発現していることが分かっているがその機能についてはFcεRIと比べて十分に明らかになっていないところが多い。FcεRIIには細胞膜上に存在するmCD23と可溶性受容体として存在するsCD23が存在する。sCD23はB細胞に対する増殖因子として機能し、IgEの合成を促進する[14]。
形質細胞により産生されたIgEがマスト細胞および好塩基球表面のFcεRI に結合することでメディエーターの放出が促進される。抗原提示細胞上のFcεRIあるいはFcεRII にIgEが結合することによりT細胞の活性化が引き起こされるがマスト細胞などによる機構に対してポジティブフィードバックとして働き、IgEへのクラススイッチを亢進するIL-4の産生量が増加することによる。
マスト細胞上のIgE受容体を介したシグナル伝達経路には大きく分けて2つの経路が存在し、細胞膜のラフトに存在する膜結合型アダプター分子であるLATを介する経路と介さない経路に分けられる。
前者の経路は抗原刺激によりFcεRIβ鎖のITAMと呼ばれる領域にチロシンキナーゼであるLynが活性化を受けて結合する。ITAMとはチロシン残基を二つ含みシグナル伝達に関与するモチーフである。引き続いてLyn(リン)がγ鎖のITAMをリン酸化し、その部位にチロシンキナーゼであるSyk(シック)が引き寄せられて結合しリン酸化を受ける。SykはLATのリン酸化を介してさらに下流に存在する低分子Gタンパク質の活性化を起こす経路、ホスホリパーゼC、MAPキナーゼなどを介した種々の経路を活性化させる。これらは最終的に小胞体からのカルシウムイオンの放出や細胞の脱顆粒反応、プロスタグランジン類をはじめとしたエイコサノイドや炎症性サイトカインの産生亢進などを引き起こす。
一方、LATを介さない経路として抗原刺激によりチロシンキナーゼFyn(フィン)がリン酸化され、アダプター分子であるGab2(ギャブ2)を介してPI3キナーゼを活性化することが知られている[15]。
(IgE から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/12/27 07:03 UTC 版)
暗号利用モード(あんごうりようモード、Block cipher modes of operation)とは、ブロック暗号を利用して、ブロック長よりも長いメッセージを暗号化するメカニズムのことである。
ECBモード(単純なブロック暗号の利用法)では、ある鍵で同一の平文を暗号化すると、同一の暗号文になる。したがって、長いメッセージ(画像データなど)のある部分が他の部分と同じであるかどうかが、暗号文の比較によって判断できてしまうので、他のモードが必要となった。
暗号利用モードには、秘匿用の利用モードと、認証用の利用モードとがある。
秘匿用として多くの暗号利用モードが定義されており、これらのうち、ECB, CBC, OFB, CFBの4つは、FIPS, ANSIのほか、ISO、JISで規格化されている。またCTRは、AES制定の際に追加されたモードである。
代表的な暗号利用モードを以下に示す。以下の説明で、
ECBモードの欠点は、同じ鍵を用いた場合には、同じ平文ブロックを暗号化した結果の暗号文ブロックが常に同じとなることである。このため、データのパターンを隠蔽することができない。メッセージの機密性の保持には向かず、暗号化プロトコルにおける使用は推奨されない。同じ入力に対して常に同じ出力を返すことから、ECBモードは反射攻撃に対しても脆弱である。
ECBモードにおいてデータのパターンがどの程度残されるかを、ビットマップ画像の暗号化を用いて説明する。各々のピクセルの色情報を暗号化しても、暗号化処理後の画像にはピクセルごとの色情報のパターンが残留している。
| CBC | |
|---|---|
| Cipher Block Chaining | |
| 暗号化処理の並列化: | 不可 |
| 復号処理の並列化: | 可 |
| Random Read: | 可 |
CBCモード (Cipher Block Chaining Mode) は、1976年にIBMによって開発された[1]。CBCモードでは、平文の各ブロックは前の暗号文とのXORを取ってから暗号化される。すなわち、各々の暗号文ブロックはそれ以前のすべての平文ブロックに依存することとなる。メッセージごとのユニーク性を確保するため、最初のブロックの暗号化には初期化ベクトルが用いられる。
CBCモードは、最も広く用いられている暗号利用モードであり、ECBモードの欠点を補うものである。このモードの主な欠点は、各ブロックの暗号化にその前のブロックの暗号化の結果を使用することから暗号化処理を並列化することができないことと、暗号文ブロックのサイズの整数倍となるようメッセージをパディングする必要があることである。後者の例の一つが、Ciphertext stealingと呼ばれるものである。CBCモードの暗号化においては、平文あるいは初期化ベクトルが1ビットでも変化すると、それ以降の暗号文すべてが変化することとなる。
不正な初期化ベクトルを用いて復号した場合、復号後の平文の最初のブロックは正しい結果とはならないが、それ以降のブロックは正しく復号される。これは、隣接する2つの暗号文ブロックから平文を回復することが可能なためである。これにより、CBCモードの復号処理は並列化が可能となる。CBCモードの復号においては、暗号文が1ビット変化した場合、その位置に対応するブロック全体および次のブロックにおける対応するビットの復号結果に影響を及ぼすが、それ以外のブロックには影響を及ぼさない。
| PCBC | |
|---|---|
| Propagating Cipher Block Chaining | |
| 暗号化処理の並列化: | 不可 |
| 復号処理の並列化: | 不可 |
| Random Read: | 不可 |
PCBCモード (Propagating Cipher Block Chaining Mode[2] あるいは Plaintext Cipher Block Chaining mode[3]) は、CBCモードの変法である。
PCBCモードはケルベロス認証のバージョン4およびWASTEにおいて用いられているが、あまり一般的ではない。PCBCモードでは隣接する2つの暗号文ブロックを入れ替えたとしてもそれ以降のブロックの復号に影響しない[4]。このため、ケルベロス認証のバージョン5ではPCBCモードは採用されていない。
| CFB | |
|---|---|
| Cipher Feedback | |
| 暗号化処理の並列化: | 不可 |
| 復号処理の並列化: | 可 |
| Random Read: | 可 |
CFBモード (Cipher Feedback Mode) は、CBCモードと類似しており、ブロック暗号を自己同期型のストリーム暗号として扱うものである。CFBモードの操作はCBCモードとよく似ており、特に復号処理はCBCモードでの復号処理をほぼそのまま逆転させたものとなる。
上に示したもっとも単純なCFBモードでは、CBCモードのような自己同期型とはなっていない。1バイト、1ビットでも欠けた場合にはそれ以降の復号は不可能となる。そのような欠落の後も同期を続けるためには、1バイト、1ビットを同時に暗号化する必要がある。ブロック暗号の入力にシフトレジスタを組み合わせることで、CFBモードは自己同期型で利用することが可能となる。
CFBモードを任意のxの整数倍の欠落に対しても同期を維持することが可能な自己同期型のストリーム暗号として利用するためには、ブロックサイズと初期化ベクトルのサイズでシフトレジスタを初期化する必要がある。これはブロック暗号によって暗号化され、暗号化結果の上位xビットは平文のxビットとのXORを取られ、これがxビットの暗号文となる。これらxビットの出力はシフトレジスタにシフトされ、次のxビットの平文の処理に用いられる。復号も同様であり、初期化ベクトルから始まり、復号、復号結果の上位xビットと暗号文のxビットのXORによりxビットの平文となり、これが次のxビットの暗号文の処理に用いられる。このような処理はCFB-8あるいはCFB-1として知られている(シフト量の大きさによる)[5]。
まとめると次のようになる。ここで、Si は i 番目のシフトレジスタの状態、a << x は x ビットだけシフトした a、head(a, x) は a の上位 x ビット、n は初期化ベクトルのビット数である。
各々の操作はそれ以前のすべての操作に依存していることから、暗号化、復号ともに処理の並列化は不可能である。しかし、平文あるいは暗号文は各操作の最後のXORにのみ用いられることから、ブロック暗号による操作を先行して処理しておき、XORのみを最後に連続して行うことは可能である。
入力として0が連続する文字列を定数としてCBCモードを使用することでOFBモードの鍵ストリームを生成することができる。これは、CBCモード向けの高速なハードウェア実装をOFBモードに流用することが可能であることを意味する。
CFBモードのようにブロックの一部をフィードバックに用いた場合、OFBモードにおける平均サイクル長は
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| アルゴリズム | |
| 理論 | |
| 攻撃 | |
| 標準化 | |
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| セキュリティ要約 | |
| 一般的関数 | |
| SHA-3最終候補 |
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| その他の関数 | |
| MACアルゴリズム | |
| 認証付き暗号モード | |
| 攻撃 | |
| 設計 | |
| 標準化 | |
| 利用 | |
| パスワードハッシュ関数 | |
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|---|---|
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/15 02:00 UTC 版)
免疫グロブリンE(IgE)はヒト免疫グロブリンの0.001%以下と極微量しか存在しない単量体の抗体である。IgEが抗原と反応するとヒスタミンの分泌が起きる。寄生虫に対する免疫反応に関与していると考えられるが、寄生虫の稀な先進国においては、特に気管支喘息やアレルギーに大きく関与している。「肥満細胞」とも言われるマスト細胞の表面にあるFCεR受容体にIgEが常駐しているが、ここのIgEにさらに抗原が結合する反応によってマスト細胞が活性化され、ヒスタミンなどの分泌物をマスト細胞から放出する。好塩基球にもIgEが存在している。
※この「IgE」の解説は、「抗体」の解説の一部です。
「IgE」を含む「抗体」の記事については、「抗体」の概要を参照ください。