新型宇宙ステーション補給機 HTV-X
HTV-X 1号機
所属
JAXA
主製造業者
三菱重工業 ・三菱電機
公式ページ
JAXA有人宇宙技術部門
国
日本
目的
ISSへの物資補給 ・技術実証
設計寿命
2年(ISS係留+技術実証)
打ち上げ機
H3ロケット 24W
先代
HTV (こうのとり)
計画数
5
打ち上げ数
1
初打ち上げ
2025年10月26日
物理的特徴
全長
8.0m(遮熱壁を含む)[ 1]
全幅
18.2m(パドル展開時)
直径
4.4m
発生電力
3,000W(周回平均)
主な推進器
RCSスラスタ(120N級) ×24基
打ち上げ時質量
16,000kg
サービスモジュール
3,800kg
与圧モジュール
3,800kg
技術実証ミッ ション機器最大
250kg
推薬・加圧ガス
2,400kg
補給能力
カーゴ合計最大
5,820kg
与圧カーゴ最大
4,070kg
曝露カーゴ最大
1,750kg
軌道要素
軌道
ISS軌道/低軌道
高度
最大500km (技術実証ミッション時)
軌道傾斜角
約51.6°
新型宇宙ステーション補給機 (しんがたうちゅうステーションほきゅうき)HTV-X は、国際宇宙ステーション (ISS)へ機材・食料・水などの物資を届ける目的の日本 の無人宇宙補給機 。宇宙航空研究開発機構 (JAXA)が開発し、与圧モジュールと機体システム全体の取りまとめを三菱重工 が、サービスモジュールを三菱電機 が担当した[ 1] [ 2] 。初号機開発費は356億円[ 3] [ 4] [ 注釈 1] 。
2009年から2020年まで9回のISS補給ミッションを完遂したHTV(こうのとり) の後継機として開発され、輸送量の大幅な増加や、モジュール構成の見直しによる射場作業の短縮などの改善が図られた。加えて、補給ミッションを終えた後にISSを離脱し、HTV-X単独で最大1年半の技術実証ミッションが実施される[ 5] 。
HTV-X 1号機 は2025年 10月26日 に種子島宇宙センター からH3ロケット 7号機で打ち上げられた[ 6] [ 7] 。ISSへは2029年 度までに計5回の補給ミッションを想定している[ 8] 。
ISSと結合したHTV-X 1号機
また、開発計画当初からISSへの補給だけではなく、月軌道プラットフォームゲートウェイ やISS後の商業宇宙ステーションへの補給など発展的な活動に適用することを想定されている。
名称
先代のHTV は「H-II Transfer Vehicle」のアクロニム であったが、HTV-XはHTVの後継機として提案段階から仮称された呼び名[ 9] をそのまま正式名称としたもの[ 8] で、個別のアルファベットが具体的な意味を持つわけではない[ 10] 。また、「こうのとり」のような和名の愛称を公募する計画はない[ 8] 。1号機打上後の会見でプロジェクトマネージャは「愛称を付けていただけるような雰囲気が盛り上がれば付けてもらえるのでは」と説明し、プロジェクトチーム主導で愛称を設定するものではないとの認識を示した[ 11] [ 12] 。
2020年 まで運用された宇宙ステーション補給機 (HTV)の後継機として開発され、計画開始当初は2021年 度に1号機を打ち上げISSへの補給業務を担当する計画であった[ 13] 。しかし、打ち上げロケットであるH3ロケット の開発スケジュールの遅延に伴い、HTV-X1号機の打ち上げ計画は2023年度末以降となり[ 14] 、H3ロケット1号機の打ち上げ失敗によって2025年度に延期された[ 15] 。また、新型コロナウイルスの感染拡大 の影響でサービスモジュールの製造遅延があった[ 2] 。
ミッション要求
ISSへの物資補給[ 16]
発展化[ 16]
技術実証ミッション
技術実証ミッションのためのプラットフォーム機能
地上局との通信インタフェース(Sバンド による地上局との直接通信)
国際宇宙探査・ポストISSへの活用
モジュール化アーキテクチャ
サービスモジュールの単独使用能力、搭載機器の追加削除を容易に可能とする。
サービスモジュール軽量化
MMOD(流星物質 と軌道上デブリ )防御増強機能
回収・帰還機能
小型回収カプセルを搭載できるインタフェースを持つこと。
サービスモジュール貫通トンネル
SM内に宇宙服 を着た宇宙飛行士 が通れる内径1m以上の与圧トンネルを配備できるスペースを確保する。
年表
JP-US OP3構築にあたり東京で署名を交わした岸田文雄 外務大臣(中央左)、島尻安伊子 内閣府特命担当大臣(宇宙政策、中央右)、馳浩 文部科学大臣(左)、キャロライン・ケネディ 駐日米国大使(右)
2015年 (平成 27年)
12月8日 - 宇宙基本計画工程表でHTV-Xの開発が明記される[ 16] [ 17] [ 18] 。
12月22日 - 日米間で日米宇宙協力及び国際宇宙ステーション計画に係る文書の署名が交わされ、日米オープン・プラットフォーム・パートナーシップ・プログラム(JP-US OP3)を構築した。2021年から2024年までのISS運用延長への日本の参加が決定し、HTV-Xの活用が明記された[ 19] 。
2016年 (平成28年)
1月19日 - ミッション定義審査(MDR)実施[ 20] 。
2月23日 - プロジェクト準備審査実施[ 20] 。
6月1日 - システム要求審査(SPR)実施[ 21] 。
11月 - 競争入札を実施し、システムと与圧モジュールの担当に三菱重工が、サービスモジュールの担当に三菱電機が選定された[ 22] 。
12月 - 予備設計開始[ 22] 。
2017年 (平成29年)
6月29日 - システム定義審査(SDR)実施[ 23] 。
8月31日 - プロジェクト移行審査[ 23] 。
10月 - プロジェクト移行[ 2] [ 16] 。基本設計フェーズへ移行[ 22] 。
12月6日 - 宇宙開発利用部会で了承され、開発フェーズへ移行[ 2] 。
2018年 (平成30年)
3月 - 基本設計審査会[ 22] 。
5月 - サービスモジュールの基本設計審査会[ 22] 。
7月 - 与圧モジュールの基本設計審査会[ 22] 。
10月 - 詳細設計フェーズ移行[ 2] [ 24] 。
2020年 (令和 2年)2月 - 与圧モジュールの詳細設計完了[ 25] 。
2022年 (令和4年)
7月 - 与圧モジュールの開発完了審査(PQR)・出荷前審査(PSR)実施[ 26] 。
12月 - NASAによる開発完了審査(PQR)実施[ 27] 。
2024年 (令和6年)12月23日 - 開発完了審査#1完了[ 28] [ 注釈 2] 。
運用計画
日時は日本時間。
主な輸送物資・ミッション
HTV-X 1号機
曝露カーゴ
与圧カーゴ
「きぼう」の運用・利用を支えるシステム品
CO2 除去システム軌道上実証 DRCS
TUSK PM(マニピュレータ の自動操縦による微小重力下の誤差メカニズムの解析)
アジアントライゼロG2025(アジア・太平洋地域 の青少年アイディアの実験)
J-SSODを利用した超小型衛星放出ミッション(キューブサット 6機)
生鮮食品 (冷凍庫冷蔵庫 は搭載されず、保冷剤 による)
民間の「きぼう」利用機材(有償利用制度)
窒素 ・酸素 補給タンク
水補給タンク
宇宙食 、ISS船内用各種消耗品、各種実験機器
技術実証ミッション
超小型衛星放出 H-SSOD(船外PMアダプタ上に設置)
軌道上姿勢運動推定実験 Mt.FUJI(船外PAF面)
展開型軽量平面アンテナ軌道上実証 DELIGHT
次世代宇宙用太陽電池 軌道上実証 SDX
HTV-X 2号機
技術実証ミッション
HTV-X 3号機
技術実証ミッション
未定
技術実証ミッション
機体設計
HTV-X 1号機。与圧モジュールの中央に四角形のハッチが見られる
HTV-Xはサービスモジュールと与圧モジュールの2つのモジュールで構成され、それぞれ独立性が高く設計されており、将来的にはそれぞれ単独で使用することが念頭に置かれている[ 33] 。サービスモジュール(三菱電機鎌倉製作所、神奈川県)と与圧モジュール(三菱重工飛島工場 、愛知県)は別々に射場へ輸送され、種子島宇宙センターの衛星フェアリング組立棟で結合される[ 38] [ 39] 。
単独飛行中のHTV-Xは無人機であるが、ISSと結合するとISSの一部として宇宙飛行士 がHTV-Xの与圧カーゴ内に出入りするために一部有人機と同水準の安全性が要求され、また結合前の接近時にも高い安全性が要求されることから計算機や推進系などは3系統の高い冗長性をもって設計されている[ 40] 。
サービスモジュール
サービスモジュール(SM)はHTV(こうのとり)で電気モジュール・推進モジュールに分散していた機能が統合され[ 41] 、人工衛星として必要な機能が集約された形となる。
HTVに搭載されていた500N級メインエンジン×4基は廃止され、120Nの姿勢制御スラスタ×24基のみで飛行制御を行う[ 41] 。スラスタの推進剤には無水ヒドラジン より比較的毒性の低いモノメチルヒドラジン (MMH)が使用され、酸化剤には四酸化二窒素 (NTO)に一酸化窒素 を3%混ぜたMON3が使用される。燃焼時に酸化剤を多めに混合させることで、未燃焼のMMHが残ることを防ぎ、燃焼ガスがHTV-Xの外壁やハッチに付着していてもISS内を汚染する可能性を低く抑えている[ 40] 。HTVではスラスタが複数モジュールにまたがっていたことで全機結合後に配管作業や推進系試験が必要だったが、推進系の集約により結合後に実施する必要がなくなり射場での作業が短縮された[ 22] 。
HTVで機体中央にあった開口のある非与圧部は、曝露カーゴとしてサービスモジュールの端面に配置され、フェアリング内の空間を活用して大型のモジュールを搭載可能となった[ 42] 。曝露カーゴ部には遮熱壁が設置されており、太陽光に曝される技術実証機器への影響を和らげる役割を果たす。遮熱壁はアルミ合金製で黒色陽極酸化処理 されている[ 43] 。
HTVで機体表面にボディマウントされていた太陽電池パネルは、30°のキャント角がついた展開式(太陽を追尾する回転機能はない)となり、ISS補給ミッション後の技術実証フェーズにおいてβ角(太陽光とのなす角)がある中でも年間を通して安定して電力を発生させるよう設計となっている。また、一次電池 は搭載せず、二次電池 (充電池)のみを搭載する[ 42] 。
与圧モジュール
与圧モジュール(PM)はHTVの与圧部が流用されている。モジュール内の収納棚には先代HTVで開発された棚構造HRR(HTV Resupply Rack)が引き続き使用され、奥にTypeDを1式、上下左右の4か所2列に8式(TYPE 5、6、6L)の合計9式搭載可能。TYPE 6Lがレイトアクセスに対応する[ 44] 。
HTVでPAFから遠い位置に配置されていたが、今回PAF接続部に配置されたことで機体全体の軽量化に貢献している。PCBM(ドッキング機構)や与圧部の気圧センサーなどは、シエラ・ネヴァダ・コーポレーション が開発している[ 45] 。
ロケット
打ち上げにはH3ロケット の
24W
( によんダブリュー ) 形態(ブースタを4本備え、H3で最も打ち上げ能力が大きい形態)が使用される[ 33] 。衛星分離部(PAF)は直径4.4m[ 33] のHTV-Xの専用設計[ 46] で、レイトアクセス時にPAFの内側からISS結合ハッチを経由してカーゴ搭載するために単純な衛星搭載用PAFよりも高さがある[ 47] 。
フェアリング
フェアリングはHTV-X専用となる直径5.4m×長さ16.5mのスイス のビヨンド・グラビティ(英語版 ) 社製[ 8] ワイドフェアリング[ 注釈 5] 。PAFの内側・与圧部の下部につながる縦1.6m×横1.5mの大型ドアが準備され、ロケット搭載後の打ち上げ直前に生鮮食品や実験機材を搬入できるレイトアクセスが可能になっている[ 46] [ 47] 。曝露カーゴにレイトアクセスするための直径0.6mのアクセス窓(標準フェアリングのアクセス窓と同じ大きさ)も設計されているが、1号機のフェアリングには設置されていない[ 47] 。標準のロング型フェアリングでも寸法上HTV-Xを搭載可能とされるが、既に開発済みで実績のあるレイトアクセスドアのついたフェアリングが適用可能であるとメーカーから打診され、一方でHTV-X対応フェアリングを国内開発するためのリソースが不足していたことからスケジュール等を優先して設計済みのものがワイド型として採用された[ 48] 。H3ロケットはフェアリングの回収コストを抑えるために海中に水没する設計になったが、ワイド型は水没する設計ではないため回収される[ 49] 。
自律飛行安全システム
HTV-Xは公称質量16トンであるが、HTV-X 1号機を搭載したH3ロケット7号機のシステムでは同質量を打ち上げる性能はなく、またHTV-X 1号機ではロケットに要求する打ち上げ能力が小さかったこともあり[ 50] 、HTV-X 1号機は満載質量よりも約1.5トン少ない約14.5トンの状態で打ち上げられた[ 51] 。H3ロケットは地上局から直接通信可能な範囲の外で燃焼をするために必要となる、ロケットの自律判断で飛行中断するための自律飛行安全システム を搭載する計画である。しかし、H3ロケット7号機(HTV-X 1号機の打ち上げ)までにこの機能は実用化されていないため、飛行効率を最大化できる(搭載ペイロード質量を最大化できる)水平方向に加速する飛行経路をとらず、高度方向に加速して第2段エンジン燃焼終了(SECO1)を地上コマンド局の可視範囲内に設定する従来技術で制御可能な効率がやや低い飛行経路をとった[ 47] 。また、同じH3ロケット7号機でこの自律飛行安全システムのソフトウェアを稼働させたが、飛行中断に繋がる線は結線させない状態とし、第2段燃焼フェーズ後半で実証データの取得だけ実施する形となった[ 52] 。自律飛行安全システムを使った打ち上げはHTV-X 2号機以降で実施される可能性がある[ 53] 。
質量・輸送能力
HTV-X 1号機
質量
打ち上げ時質量:16.0トン(搭載貨物を含む)
サービスモジュール(SM)(搭載構造を含む):3.8トン
推薬・加圧ガス:2.4トン
与圧モジュール(PM)(搭載構造を含む):3.8トン
貨物搭載能力:5.82トン
与圧モジュール貨物搭載能力:4.07トン[ 2]
曝露カーゴ貨物搭載能力:1.75トン[ 2]
技術実証ミッション:0.25トン(貨物に含まない)[ 54]
与圧カーゴ
容積:39m2 、物資輸送用バッグ(CTB)313個相当[ 54]
カーゴ一つの最大質量:90kg
給電カーゴ:最大2個
供給電力:28V、75W/ch、2ch、イーサネット通信[ 54]
熱制御:150Wの発熱に対応
冷凍庫搭載能力あり
大型ラック(2m×1.05m×0.86m)の輸送・廃棄に対応(ISS補給機唯一)[ 54]
打ち上げ前搭載時期
通常搭載:2.5カ月前(SM/PM結合前に搭載)[ 54]
レイトアクセス能力
3日前・24時間前
地上引き渡しから軌道上引き渡しまで:120時間以内[ 2]
曝露カーゴ
曝露カーゴ搭載物:最大4個
HTV-X単独飛行中の給電能力:120VDC、最大400W[ 2]
技術実証プラットフォーム[ 16] [ 55]
供給電力:50V、最大1,000W
底面積2.6m2 ×高さ1.5m
対地上直接データ通信
Sバンド:最大1Mbps
Xバンド(オプション):200Mbps
無人補給機のモジュール構成の比較(左から4番目がHTV-X、3番目がHTV「こうのとり」)
赤:与圧カーゴ、黄:非与圧カーゴ
運用フェーズ
2023年のISS構成モジュールの図示。HTV-XはNode2の地球側に接続される。
HTV-X 1号機がISSに接続した直後のISSと係留されている補給船(2025年10月29日時点)
カナダアーム2で把持されたHTV-X 1号機
初期軌道投入フェーズ(Initial checkout Phase)[ 40]
ランデブー フェーズ(Rendezvous Phase)
ロケット分離後の位相調整・高度調整
AI点(フェーズの到達点)の保持[ 40]
近傍運用フェーズ(Proximity Ops Phase)
ISSへの最終接近
ISS下方の規定点(距離約10m)で相対停止し、ロボットアーム(SSRMS) により捕獲される
Node2のNadirポート(地球面のポート)に結合される[ 40]
係留フェーズ
クルーにより補給物資のISSへの搬入、および不用品のHTV-Xへの搬入
ISSのロボットアームによる曝露カーゴの取り外し[ 40]
近傍運用フェーズ(ISS離脱)(Departure Ops Phase)
HTV-Xの航法系を動作させた状態でリリース
リリース後、クルーコマンドによりHTV-X制御開始[ 40]
技術実証ミッションフェーズ(On-Orbit demonstration Phase)
曝露カーゴに搭載した超小型人工衛星の放出や、搭載した実証モジュールの運用が最長1.5年間実施される[ 40]
再突入 位相調整フェーズ(Reentry Prep Phase)
再突入フェーズ(Reentry Phase)
2回のマヌーバで近地点 高度を下げ、3回目のマヌーバで再突入する[ 40]
管制
ISSに係留されたHTV-X1号機と日本の実験モジュール「きぼう」
管制室(MCR、Mission Control Room)はJAXA筑波宇宙センター 内にあり、HTVで使用された管制室をリニューアルして使用される[ 56] 。運用管制チーム(FCT、Flight Control Team)約40名、技術チーム(ET、Engineering Team)約120名体制[ 57] [ 58] 。
ISS接近から離脱まではNASAジョンソン宇宙センター (ヒューストン)のMCC-H(英語版 ) と連携して運用する[ 33] 。ISS係留中はきぼう運用管制チーム(JFCT) が運用する[ 59] 。
通信
HTV-XはJAXA追跡管制地上ネットワークとS帯で通信するほか、IOS(Inter-Orbit link System)アンテナによるNASAのTDRS (静止軌道データ中継衛星)を経由しての通信、ISS近傍では近傍通信システムPROX(Proximity Communication System)によりISS[ 注釈 6] と直接通信する[ 33] [ 60] 。
自動ドッキング(2号機で実証予定)の際にISSクルーが映像をモニタするためのWi-Fi 規格を使った通信技術WLD(Wireless LAN for Docking、ワイルド)はHTV9号機 で2020年5月に実証済みである[ 61] [ 62] 。
HTVとの違い
HTV「こうのとり」4号機
輸送内容の向上
従来のHTVでは与圧部・非与圧部を合わせて約4トンの物資を輸送できたのに対し、搭載量を5.82トンまで増加。またカーゴ容積も従来比で約60%増となる。さらにカーゴ内に搭載する実験ラック等へ給電を行うことも可能になる[ 5] 。構成としては与圧部の搭載箇所を拡大する一方で、曝露カーゴをサービスモジュールの先端部に取り付ける形に変更するなどの変更が行われる[ 5] 。ISSへの滞在期間も、従来の最大60日間から最大6ヶ月間に延長される。
PVGF
把持機構の変更
HTV-Xではロボットアームの把持機構グラプルフィクスチャ(英語版 ) がPVGF(Power and Video Grapple Fixture)となり、結合前からロボットアーム経由で給電を受けることが可能になった。HTVは給電機能のないFRGF(Flight Releasable Grapple Fixture)だった[ 63] 。
軌道上運用能力の強化
前述したとおり、HTV-XではISSからの離脱後も最長1年半の間軌道上にとどまり、各種実証実験のためのプラットフォームとして利用することが想定されている[ 5] 。具体的には「小型衛星の放出」「ISSから離れた環境での与圧実験」「自動ドッキングの技術検証」などが計画されており、そのため推薬タンクの容量増、太陽電池パネルのパドル化・大型化などが行われる[ 5] 。
発展構想
ゲートウェイのイメージ
月探査補給機
アメリカや日本などが計画している、月軌道プラットフォームゲートウェイ (Gateway)への物資・燃料補給機として、HTV-Xの発展型となるHTV-XG が検討されている[ 64] 。ゲートウェイ補給機の打上げは2030年度で計画されている[ 35] 。
ISSへの補給におけるHTV-Xでは、HTVで用いられてきたロボットアームにより捕獲される方法を採用するものの、ゲートウェイへの補給活動では完全な自動ドッキング能力が求められることになっている。HTV-X2号機において、この技術の安全性の確認と技術リスクを低減するために自動ドッキング技術実証が計画されており、メインの補給ミッション終了後に一旦ISSから離脱し、与圧モジュールのドッキング部とは反対側となる曝露カーゴ搭載部に搭載した自動ドッキングシステムでISSに自動でドッキングする計画になっている[ 33] 。
また、ISS軌道よりも遠い月へ到達する軌道へ投入するにはロケットの打ち上げ能力が不足するため、サービスモジュールと与圧モジュールを別々に打ち上げ、軌道上でドッキングを行う形で検討されており[ 41] 、設計当初から各モジュールの独立性が高くなるよう設計されている。HTVで搭載され、HTV-Xには採用されなかった500N級スラスタの搭載も検討されている[ 65] 。
商用物資補給船
HTV-Xをベースとした商用物資補給船 HTV-XC (HTV-X for Commercial)の開発が進められている[ 66] 。宇宙戦略基金の交付事業者に日本低軌道社中(三井物産 の100%子会社)が決定したことを受け、2025年7月に同社から開発開始が発表された[ 67] [ 68] 。同社はISSのきぼう 後継モジュールの開発も開始している[ 67] 。
HTV-XCはポストISSとなる海外の商業宇宙ステーションの接続が可能になるとしている[ 66] 。
脚注
注釈
^ 打ち上げロケット・打ち上げロケットのHTV-X対応・技術実証ミッションの費用を含まない
^ 通常1回で実施する審査だが、与圧モジュールとサービスモジュールを結合した状態で行う試験は種子島で実施されるため、それ以外の部分についての審査を1回目として筑波で実施された。
^ 当初予定の2025年10月21日 10:58は天候の悪化の予想により延期。
^ 令和7年度工程表の記載では、開発は決定していないが、関係機関との協議に基づいて開発準備の段階
^ コアロケットの直径、及び標準のショート/ロングフェアリングの直径は5.2m。ロングフェアリングの長さは16.4m。直径差のあるロケットとフェアリングを接続するためのアダプタを含めてロケットの全高は約0.6m大きくなる。
^ ISS側の通信アンテナはきぼうモジュールに設置されている
出典
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