上田紀行『かけがえのない人間』(講談社現代新書)
この数年にわたって行われてきた「構造改革」は、利権を握って儲〔もう〕けている人たちを攻撃し、その構造を破壊すると声高らかに宣言しました。しかしはたして、利権を握って儲けていた人たちはいなくなったのでしょうか?多くの人たちは未だに手元の利権を使い、相変わらず利益を上げています。
<中略>
その中で、ローリスク、ローリターンの生活をして、怒りの声もあげず従順に暮らしていることは、結果として非常に大きなリスクを伴う生き方なのです。
と明確な異議申し立てを行ったりもしている(p21〜22)。
本書の白眉は明らかに後半の著者の自伝的な部分だと思うのだが、そこでは著者が幼児期に受けた虐待の記憶や、大学生時代に在日韓国人の政治犯救援活動という政治運動に関わった経緯が語られたりして、読者としてはかなりショッキングに感じる部分も多い。文科省ってこの手の話題が好きだとは思えないのだが、よく入試問題への採用を認めたものだ。入試制度がどうなってるのかはよく知らないけど。
(↑あ、著者に対しては肯定的な評価の表明です。念のために)
ちなみに著者のお母さまは『推定無罪』などの翻訳で知られた上田公子氏で、奥さまはNHKアナの武内陶子さんなんですね。本書に記された情報を元に検索してしまいました。すみません。しかし何という有名人一家!いや、そういうことが時々あるということは知ってるけど。
高橋昌一郎『理性の限界―不可能性・不確定性・不完全性』(講談社現代新書)
「アロウの不可能性定理」は、かすかに昔の同僚(東大教養学部卒)から聞いた記憶はあるが、詳しいことは全然知らなかった。もうちょっと知っておきたい!(だから本がまた増えるって)
それから「ぬきうちテストのパラドックス」と「ゲーデルの不完全性定理」が、こんなに密接につながってくるとは思わなかった!
「司会者」「会社員」「数理経済学者」「哲学史家」…と、肩書きだけで名前のない夥しいパネリストが登場する。中には「ロシア資本主義者」のように、一度しかしゃべらない奴もいる。「カント主義者」がいつも損な役回りを割り当てられているが、中島義道氏のような人が本書を読んだら怒らないか?それから「方法論的虚無主義者」が案外重要なことをしゃべっている。
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