『終天教団』のレビュー行くぜ!
俺がプレイしたのはNintendo Switch版ね。
パブリッシャー:DMM GAMES/EXNOA/Spike Chunsoft
機種:Switch/PC
ジャンル:アドベンチャー
発売日:2025/9/5
価格(税込):6980円
DMMGAMESとTookyoGamesのタッグによる完全新作のADVだ。独立してからも信じられないペースで新作を送り出す⼩⾼和剛の最新作となる。
とある宗教国家で起きた教祖殺害事件の謎に挑むストーリーで、プレイヤーが選んだルートによってゲームシステム自体が変化する構成が特徴だ。
開発はネイロが担当。
過去に『スカーレッドサルベーション』『ダイダロス:ジ・アウェイクニング・オブ・ゴールデンジャズ』という、俺の血管を景気良くぶち切ったゲームを2本も手掛けているので仇敵レベル!この開発がルートでシステム変わるゲームなんか作れるのか!?反社会的クラスター爆弾みたいなゲームが出来たりしないか!?
と、不安だったが、システムはさておき世界観やキャラ、ストーリーや演出などは良かったぞ!
- 舞台は宗教国家!バラバラ殺人で死んだ教祖が復活!5人の幹部から犯人を捜せ!
- 法務省ルートは王道の推理アドベンチャー!遺産相続に絡んだ殺人事件に挑む。
- 保健省ルートは極限脱出アドベンチャー!多人数のデスゲーム編が開幕!
- 科学省はマルチ視点ザッピングノベル!自然溢れる地下施設での濃密ドラマ!
- 警備省ルートはステルスアクションホラー!殺人鬼から逃亡せよ!
- 文部省ルートは恋愛アドベンチャー(?)!3人のキャラを攻略せよ!
- 5ルートが絡みあうシナリオ展開、キャラ数と背景美術の多さが圧巻!難点は……。
- クリアまでは40時間ほど。宗教国家と終末の物語を見届けろ!
舞台は宗教国家!バラバラ殺人で死んだ教祖が復活!5人の幹部から犯人を捜せ!

舞台となるのは絶望と混沌の世界に誕生した宗教国家「終天教国」。
人類の滅亡を待ち望む信者が暮らすその小さな国で、カリスマである教祖がバラバラ死体となって発見される。その教祖が神の力によって復活したのが主人公である「下辺零」だ。しかし記憶を失っており、自分が教祖であることも忘れている。それどころかこの国の基本的なルールすらおぼつかない。
神の使いを名乗る二人組によると、復活は仮の体であり、真の復活には真犯人の特定と殺害という儀式が必要とのこと。犯人候補は教団の幹部である5人。仮の体が使えなくなるタイムリミットは4日間。下辺零は真犯人を見つけ出し、教祖として返り咲くことが出来るのか!?
というストーリーだ。

神の使いである天使は、ちびっ子でCV悠木碧の可愛いボイスが賑やかなヒメルと、CV森川智之の落ち着いたセクシーボイスがシビれるミコトルの2人組。漫才みたいなやり取りで陰ながら応援してくれるノリが楽しい。こんな連中を派遣してくれる神は気が利いてるぜ!
零は復活した教祖であることがバレるとマズいので、身分は探偵と偽り、顔にはマスクをしている。顔モロ見えの半マスクはプレイヤーからこう見えているだけで、実際は完全に顔が隠れている……という表現と捉えたがどうなんでしょうか。
仮の体で復活してるから、教祖の死体自体は別に存在してるのが複雑。

時間が4日しか無いし、こっちには「神の力」というチート能力がある。まず5人いる容疑者の誰が犯人か選んでから、調査のために接触する各ルートを開始する順番になっているぞ。
「犯人をあてろ」とか書いてあるが最初は手掛かりゼロの状態なので、人狼ゲームの一日目みたいなノリで犯人を決めることになる。とりあえずラキオかしげみちにするか……二人ともいない!(グノーシア)
テキストを読みながら進めて、たまに画面内をアチコチ調べるオーソドックスなアドベンチャーゲームだが、選んだルートによってゲームシステムが変化する構成。
そして最終的に5ルートすべて遊ぶことになるが、開示される情報がルートによって異なるため、遊ぶ順番で物語への印象が変わるのが巧み。
「あの謎の単語はそういうことか!」と後から気づくこともあれば、「あのルートの情報を踏まえるとここはそういう意味か……」と、事前に得た知識を活かせることもある。「このルートを先に遊んでいたらこう思ったろうなぁ」と考えてしまうことも。ウリにするだけあってよく練られている。
俺がプレイした順番で各シナリオを紹介していこう。
各幹部を調査して告発するつもりがバディを組んで事件に挑むことになり、その過程で様々な情報を得ていく……というのが基本の流れになっているぞ。
法務省ルートは王道の推理アドベンチャー!遺産相続に絡んだ殺人事件に挑む。

犯人は法務省幹部の犬神 軋(いぬがみ きしる)だ!
法務省ルートのジャンルは推理アドベンチャー。マップを選択して移動し、関係者から証言を集め、現場を調べ、推理パートで矛盾に証拠をぶつけてシナリオを進めていく。作りはコンパクトだが、王道的な作りになっている。

犬神との接触に成功する零だったが、なりゆきで遺産相続の会議に第三者として立ち会うことに。案の定遺産を巡って殺人事件発生!舞台となる屋敷と陸地を繋ぐ橋は落とされ、テンポ良くクローズドサークルが完成だ!
自分が殺された殺人事件を調査してるのに、別の殺人事件を掛け持ちで捜査することになる零ちゃんである。タイムリミットは4日しかないってのに!

登場人物は金と権力に目がくらんだ長男と性格の悪い嫁、かかりつけの医師、ヒロインポジションとなる可愛い家政婦などなど。いかにもなキャラ付け。亡くなった頭首にも何か秘密が……?
トリックが強引ではあったが、遺産相続を廻る殺人事件モノとしてはポイントを押さえた作りだ。ただ、正直言って「ヤバい宗教国家で起こった、ヤバい教祖殺人事件に神の力で挑む!」というぶっ飛んだ導入から一発目にこれを選んじゃうと、話が地味で肩透かしに感じてしまった。

とはいえ、ビビってばかりだった零ちゃんがやる気になっていく姿はカッコ良かったし「終天教国はどういう国なのか」「どういう教義のある宗教なのか」が少しずつ分かっていくのも面白いところ。

何より犬神のキャラが良い!
法務省幹部でありながらヤク中でスピード狂。捜査中にもヤクをキメて急にハイテンションになったりする。しかし底の見えない洞察力でこちらを観察、サポートし、時には「真実」という言葉に対して味わい深い反応を見せる。強キャラかと思いきや、動揺して崩した表情を見せることもしばしば。面白すぎて好きになるだろ……!
保健省ルートは極限脱出アドベンチャー!多人数のデスゲーム編が開幕!

犯人は保健省の幹部である丑寅 幽玄(うしとら ゆうげん)だ!
保健省のジャンルは極限脱出アドベンチャー。3Dのダンジョンを歩き回って謎解きをしながら物語を進める。

丑寅は総合病院の院長として自ら腕を振るう情に厚い男で、探偵を名乗り近づいてきた零ちゃんにも協力的。しかし謎の集団による襲撃で零ちゃんと一緒に誘拐され、21人の男女によるデスゲームがスタート!
容疑者である丑寅が殺されるわけにはいかないし、当然自分が死ぬわけにもいかない。遺産相続の殺人事件に巻き込まれた時は平和だったな……となる忙しさだ。

謎のVTuber「福音のあ」によるコロシアイ生中継としてゲームは進行していく。
ドヤ顔で「コロシアイ」って表現を使いやがってよぉ……!

「神の力で配信画面を視界に投影している」
という設定で、デスゲーム中は常に「福音のあ」が配信画面として表示されて動いて喋る。たまに怪しまれつつ、配信から情報を得て他の参加者を出し抜いていく構成が面白い。21人全員が登場するわけではないが、小規模なADVならそれで埋まるくらいに多彩なキャラが登場しての駆け引きが展開されるし、デスゲームも種類が複数ある。
この手のジャンルの醍醐味が詰まっている。謎が謎を呼ぶ展開で引っ張るのはさすが実績があるスタッフ。

しかしデスゲーム部分は会話イベントで進行し、プレイヤーがやるのはほぼ一本道の3D迷路をウロウロし、ブロックで隙間を埋めるパズルやスライドパズルだのといった、どうでもいいパズルをチマチマ解くだけ!しかも回数が多い!ストーリー面白いのにゲーム部分がだるすぎる……。
これで極限脱出アドベンチャーとか名乗るの、スパイク・チュンソフトに失礼だろ!
これスパイク・チュンソフトも関わってるゲームだったわ!
科学省はマルチ視点ザッピングノベル!自然溢れる地下施設での濃密ドラマ!

犯人は科学省の幹部である伊音 テコ(いおん てこ)だ!口に出したくなる語感の良さ。

科学省のジャンルはマルチ視点ザッピングノベル。フローチャートを見て複数キャラの視点を切り替え、選択肢を選びながら進めていく構成だ。キャラの行動が上手く噛み合うように選択肢を選ばないとバッドエンドになることも。とはいえ、遊んでいて詰まる箇所はほぼ無い。

舞台となるのは科学省の広大な地下施設。緑が生い茂り多種多様な動物たちが暮らす場所だ。科学省の力ってすげー!終天教団に反発する異教徒の襲撃を受けた零ちゃんは伊音テコと協力して危機を脱すことになる。

ノベルゲームなので文章量が多く、幹部側の心情やドラマも掘り下げられる。地下施設は複数のエリアで構成されており、進むたびに景色がどんどん変わっていくのが変化あって良い。零ちゃんもテコも見せ場があるし、サブキャラもみんな個性的で忘れ難い連中ばかりだ。
バッドエンドルートを潰し辛いフローチャートが使い辛かったりはするが、シナリオの出来もボリュームも終わり方も5ルートの中では一番!ちょっとしたADVゲーム1本分の密度と満足度があった。
世界観に関する情報量はこのルートが一番多いので、遊ぶのは最後に回しても良いかも。
警備省ルートはステルスアクションホラー!殺人鬼から逃亡せよ!

犯人は警備省の幹部である伏蝶まんじ(ふしちょう まんじ)だ!
このルートはステルスアクションホラー。キャラを動かして見下ろし視点のマップを探索し、徘徊する殺人鬼から身を隠しつつ進んでいく。

伏蝶まんじは異教徒を絶対許さない武闘派で、初登場シーンはバイクでガラスをブチ破って豪快に登場だ!

やめろよ!犬神さんがビビってるだろ!

喧嘩っ早いし慇懃無礼な喋るバイクに乗ってるし、なかなかの主人公タイプだ。
伏蝶まんじとバディを組んで、終天教国に古くから伝わる伝説の殺人鬼に挑む!かなり先が読める展開ではあったが悪くない作り。

ゲームとしては殺人鬼に見つかったらとりあえずロッカーに隠れたり、スイッチを押すための重しを探してノロノロ歩いたり、ワープゾーンを使って移動したり……ステルスアクションとしては三流でだるい!「強引に突っ込まれたステルス要素ほどつまらないものは無い」をど真ん中で行く構成だぜ!
ステージが複数あって、本作の独特な背景美術の中を歩き回れるのは嬉しかったけど、普通に攻撃して戦う作りで良かった気がする。
文部省ルートは恋愛アドベンチャー(?)!3人のキャラを攻略せよ!

犯人は黒四館 仄(こくしかんほのか)だ!このルートは恋愛アドベンチャー(?)。

聞き込みの為に黒四館に近づいた零ちゃんだったが毒を盛られてしまい、恋に恋して恋愛に狂いたい彼女の恋愛ゲームに挑むことに。終天学園のどこかに変装の名人である彼女が紛れ込んでいるので、それっぽい女の子を攻略!ラブ成立すればクリア!解毒剤と事件の情報をゲットという内容だ。
他のルートはどれも幹部と協力して事件解決に挑むシナリオだが、本作は幹部が用意したゲームに零ちゃんが挑戦する構図なので異色。
ただでさえ4日後に仮の体が限界迎えて死ぬってのに……!

ミコトルさんがシン・ウルトラマンの主題歌みたいなこと言ってる。君が望むならそれは強く応えてくれるのだ。

作りはほぼ一本道で、規定ターン以内に決められた女の子と合って会話して好感度を稼いでMAXにすればヨシ。ゲームが進むと、嫉妬して爆弾状態になった女の子に会いに行ってなだめる「爆弾処理」の要素なども登場する。『ときめきメモリアル』と『To Heart』を足してギュッとコンパクトにした作り。難易度は低い。
攻略対象のクセは強いが、自己表現の壁にぶつかって悩む彼女たちの描写はしっかり青春モノしてるし、モブ生徒との会話で、世界観に関する断片的な情報が入るのも面白い。

このゲームは⼩⾼作品にありがちな、手癖で下ネタやパロネタを言うキャラがいないから読みやすいなぁ……と思っていたら出やがったな!!!!!!
告白シーンのリアルタイムで選択肢選んでいくくだりも含めて、このルートだけかなり『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』を感じる!
まあ全編通して急に発情するのはコイツくらいだったので読みやすいのは確か。
1キャラずつ攻略していく構成と画面切り替えの多さがややじれったいが、ギャグ中心で他のルートとテイストが違うので箸休め的に楽しめたぜ。
5ルートが絡みあうシナリオ展開、キャラ数と背景美術の多さが圧巻!難点は……。

最初にも書いたが、自由に選べる5ルートの攻略順でシナリオへの印象が変わる構成がよく出来てるし、ADVとしてこういう見せ方があるか!と驚かされた。毎回手を変え品を変えてよくやってくる……!
登場キャラの多さと一枚絵の多さも圧巻。ここは「別のゲームを5本作る気合」が感じられたところ。ナイスデザインのキャラがすぐ死んで悲しくなることもあった!声優陣の熱演も素晴らしく、特に下辺零の声を演じた斎賀みつきさんの時に優しく、時に熱い演技が最高!これは教祖の説得力ある。
⼩⾼作品とTookyoGames作品はどうしても『ダンガンロンパ』からキャラデザやっている小松崎類 氏の印象が強いが、今回はしまどりる氏をメインに据えて雰囲気をガラッと変えたのも新鮮で良かった。怪しげな宗教国家の、どこかレトロで異質な街並みのデザインも魅力的。
欠点としてはやっぱりルートによってはゲームシステムが粗すぎてだるいのと、最終シナリオはオートセーブのみで任意セーブ出来ない点。いらんだろ!その縛り!
最終シナリオは満足だったが、途中長すぎてもうちょっと短くまとめても欲しくはあった。とはいえ、エンディングも良かったので個人的には許容範囲。
クリアまでは40時間ほど。宗教国家と終末の物語を見届けろ!

クリアまでは40時間ほど。
荒唐無稽で魅力的な登場キャラクターたちとカオスな世界観で送る、複雑怪奇なアドベンチャーゲームとしては骨太。「ヤバい宗教とヤバいバラバラ殺人事件に挑むゲーム」という視点では意外とマイルド。割といつものTookyoGames作品らしい作りかも。
ルートによるゲームジャンルの変化は小手先だけではあるが、なんだかんだで新しいルートを始める時の良い刺激になっているし、小手先だけなのでダルい時もある。
欠点も目立つが非常に力が入った完全新作で面白かった。
Nintendo Switch版のロード時間も気にならなかったぞ。
みんなも終天教に入ろう!ハッピー・ニュー・エンド!