
先日、とある講演の準備をするにあたり、GEO(Generative Engine Optimization)やLLMO(Large Language Model Optimization)、AIO(AI Optimization)などの領域で語られている最適化手法について調査しました。具体的には、「生成AIで言及・引用されやすいライティングはこれだ!」「AIを意識したこれからのコンテンツ戦略はこうです!」といった提案内容を抽出し、精査しました。
この一覧を作成してざっと眺めてみたところ、その99.999%は単なる基本的なライティング技法に過ぎず、そもそもSEOの話ですらないのではないか、と気づきました。
この記事では、SEOとライティングの歴史を振り返りながら、何が一般的な汎用ライティング技法なのかを具体的に指摘していきます。
- SEOとライティングの歴史
- AI時代のコンテンツ&ライティング戦略で謳われていることは、基本的なライティング技術
- 人間にとってわかりやすいものは、アルゴリズムにとってもわかりやすい
- GEO・LLMO・AIOといった言葉に騙されないでください
- ライティング技術を学びたい方へ
- 追記:なぜSEOとライティング関係の知識はアップデートされないのか
SEOとライティングの歴史
検索技術が未成熟だった1990年代後半から2010年代前半にかけては、検索に配慮したライティングや表記方法が確かに存在しました。
代表的な例を2つ挙げましょう。
1点目は、検索語句の表記ゆれ対策です。例えば「引越し」というキーワード。引越し業者を探していると推定されるユーザーは「引越し」「引越」「引っ越し」といった表記で検索していました。2025年現在でこそ、これら3つの表記は同一語句と認識されるため、サイト運営者は特別な対応をする必要はありません。しかし、2000年当時は表記が異なれば別の単語として扱われていたのです。ページ内で「引っ越し」という表記で統一しているとき、検索語句「引越」では検索にヒットしません。
そのため、引っ越し業者がこれらの検索語句に対応するためには、タイトル要素に次のような記述が必要でした。
例:「引越・引っ越し・引越しのことなら○○引越へ 引越引越し業者」
また、本文内でもこの3つの表記を混ぜ込みながら文章を作成していました。現在の基準で考えるとウェブスパムにあたるかもしれませんが、当時はこれが唯一の現実的な対応方法でした*1。
検索語句の表記ゆれや類義語、同義語を処理するようになったのは、2003~2004年のフロリダ・アップデートがきっかけです。このアルゴリズム変更により、「SEO」「検索エンジン最適化」「サーチエンジン対策」といった言葉も同一単語として扱われるようになりました。エルメス(Hermès)やルイヴィトン(Louis Vuitton)といった複数言語表記対応のための併記も一部は不要となりました。さらに2013年に実施されたハミングバードによって、検索語句の文字単位ではなく、検索意図に基づいて関連性の高いページを検索結果に表示するようになったため、こうした表記ゆれ・同義語・類義語対策のための特別な配慮は不要となっていきます*2。
2点目は、見出しの付け方です。例えば「SEOサービスの紹介」ページを作成する場合、以下のような中見出しをつけたほうが検索順位は上がりやすかったのです。
SEOとは
SEOの必要性
SEOの効果
SEOの注意点
SEOサービスの価格
SEOサービスのお問い合わせ
それぞれの見出しにある「SEOの〜」が、読み手にくどく感じられるでしょう。しかし、当時の検索エンジンにページの内容を適切に伝えるためには必要悪な手法でした。
2010年代の低品質コンテンツ大量生産時代には多くのメディアが実践していましたが、実はあまり意味がなかったのではないでしょうか。おそらく2000年代のノウハウが、なぜかどのメディアにも広まってしまった、というのが真相ではないかと疑っています。2025年現在はまったく不要です。
代表例を2つ挙げました。形態素解析や分かち書きに伴うライティングもありましたが割愛します。
2010年代以降、Googleが検索語句の文字列ではなく、その背景や文脈を読み解いて検索結果を表示するように進化していきました。その過程で、従来の「SEO固有の特別なライティング技術」は不要となり、重視されなくなっていったのです。
検索可視性のために現在も考慮すべき配慮は、指示代名詞(これ・それ・あれ)の扱いや、統一した日本語表記が存在しない欧米の人名や固有名詞の扱い(たとえば、米四大スポーツ選手に言及するときの表記方法)が挙げられます。
「いや、そんなことない!もっと特別なライティング技法はあるはずだ!」と感じた方もいらっしゃるでしょう。しかし、それは単なるパラグラフ・ライティングやビジネスライティングで教えられる、ごく初歩的な話である可能性が高いです。
AI時代のコンテンツ&ライティング戦略で謳われていることは、基本的なライティング技術
私は高校生のときにパラグラフ・リーディングを、そして大学・大学院でパラグラフ・ライティングに加えて議論・交渉・演説など一連のコミュニケーションスキル(日本語・英語)を専門的に学んでいました。一般の方よりは少しだけ詳しい自負があります。
その経験から言わせてもらうと、SEOはもちろん、流行のバズワード・GEOなどで提唱されている「AIやLLMに合わせたライティングスキル」の99.999%は、一般的なライティング技術です。何ら特別な技法ではありません。
つまり、「人間にとって理解しやすい文章は、機械にとっても理解しやすい」という、それだけの話なのです。
手元のリストを紹介しながら具体的に指摘していきます。
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「記事の冒頭でコンテンツ全体の概要や結論、方向性を簡潔に説明しましょう」 これはパラグラフライティングの基本です。"Conclusion comes first"(まず結論を述べよ)という言葉があるように、第1段落で筆者が最も主張したいことを伝えるのは基本中の基本です。
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「各段落で結論を先に書きましょう / 結論とその根拠を簡潔に記載しましょう」 これもパラグラフ・ライティングの基本です。「ひとつの段落にひとつの主張を入れること」「主張は段落の冒頭か最後に記載すること」といった話を、SEO従事者向けに説明しているに過ぎません。 そもそも、結論と根拠を最初に簡潔に述べることはビジネスの基本です。これを「AI時代のコンテンツ」としてクライアントに提示し、対価を受け取ることに個人的には違和感を覚えます。
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「事実や経験に触れること」 これもSEOとは関係なく、自分が伝えたいトピックについて、筆者自身の経験が読者にとって有益であれば記載すればいいだけです。文章校正における基本的な検討事項であり、AI時代だからこそ実践すべき話ではありません。
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「FAQを積極的に活用する」 これもAI時代はまったく関係ありません。ユーザーの購買行動を踏まえて、そのコンテンツ形式が有用であれば提供すればいいだけの話であり、すでに多くの事業者が実践しています。これがどうして「AI時代だから」注目しなければならないのでしょうか。
- 「同じ単語を繰り返さない、言い回しを変える」 SEOでロングテールクエリに対応するためのライティング手法として語られることがあります。これは英文における「同じ単語を何度も使うな、幼稚にみえる」という理由で言い換えが推奨されている話が転用されています。ライティングの基本です。
ちなみに「共起語」の概念もこの話とつながります。文章が下手くそな方の特徴のひとつは、同じ表現を使い回しがちなこと。そういった方々に共起語を教えてあげると関連する単語を使ってくれるから結果として文章の幼稚さが消えるという話です。言い換えると、共起語の概念もまた、一般的なライティング技法のひとつです。
人間にとってわかりやすいものは、アルゴリズムにとってもわかりやすい
手元のリストにはあと50個ほどありますが、すべて上記のような「それ、単なる汎用的なライティングスキルの話ですよ」という結論になります。「人間にとって理解しやすいものは、機械的にも処理しやすい」という昔からの原則がここでも適用されるのです。検索技術が進化したおかげで、私たちが検索エンジンのために特別に配慮すべきライティングの工夫コストが劇的に減少し、ユーザーに伝える・伝わることを意識した文章作成を意識することで十分な時代になってきているのです。
GEO・LLMO・AIOといった言葉に騙されないでください
コンテンツやライティングを専門的に学んだ経験がない方もいらっしゃるはずですし、世の中の少なくとも半数以上の方は文章作成が苦手ではないでしょうか。そういった方に向けてSEOやLLMO/AIの文脈を加味したアドバイスをすることは、意味があると思います。ただ、それを声高に「これからの時代は〜」と喧伝するのは、やはりGEOやLLMO・AIOと称した、内容のよくわからないバズワードで商売をしたい人たちのセールストークに過ぎないのではないでしょうか。
2025年9月現在、これらバズワードで語られている内容で従来のSEOの範疇を超えている話題はありません。AIに強い魔法のライティングテクニックなどありませんので、基本的なライティング方法を学んだあとは普通に相手に伝わる・伝えることを意識するだけで十分です。
ライティング技術を学びたい方へ
私はときどき「日本語ライティング講座」を開催しています。その資料作成で参考にさせていただいたのが次の2冊です。具体例も豊富で分かりやすいので、基本的なライティングを学びたい方は読んでみてください。きっと「SEOで教わったあの書き方って、こういうことだったのか!」と腑に落ちるはずです。
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『書く技術・伝える技術』 倉島 保美 (あさ出版)
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『伝わる! 文章力が身につく本』 小笠原信之 (高橋書店)
追記:なぜSEOとライティング関係の知識はアップデートされないのか
SEO界隈で仕事をしていると、コンテンツやライティング関連の知識にキャッチアップできていない方が少なくない印象を受けます。
私は2014年の時点で「ライティングにおいて共起語など特別に意識する必要がない」と指摘しているのですが、2025年時点でも共起語を強調する方がいらっしゃいます。2013年に公開した「勘違いコンテンツマーケティング」で挙げた失敗事例を2025年現在もみかけます。当時はクラウドソーシング、それが生成AIに置き換わっただけで同じ無駄なことを繰り返しています。
「SEOを上手にするためには、特別なライティング技術が存在する」と思い込みがあるのでしょうか。あるいはコンテンツ関連のSEO情報を集めようとすると過去にアフィリエイターの皆さまが執筆されたキーワードをこねくり回す手法の情報に晒されるゆえに誤った学習をしてしまうのでしょうか。この記事で指摘したように、この20年あまりの検索技術の進化により機械可読性に配慮したライティング技法は限りなく限定されています。先に挙げた書籍にある内容を実践できるようになれば SEO に限らずビジネス全般で役立ちますので、ぜひこの機会に学んでみてください。
*1:この時代の検索エンジンは「IT革命」や音楽ユニット「I WiSH」と検索しても IT"や "I" がストップワード扱いで検索できなかったり。「モーニング娘。」の句点”。”が処理できないなど検索語句や単語処理に大きな制約があった。ちなみに「IT革命」の検索結果の上位はフランス革命が表示された。
*2:新語や造語、海外のマイナーファッションブランドなど例外あり