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成果につながらないオウンドメディア運営からの脱却:よくある失敗と解決策

今年に入ってから、オウンドメディアの運営やコンテンツ編集・制作に関する助言の機会が立て続けにありました。さまざまな現場を見てきましたが、抱えている課題とその根本的な原因は、ほとんど同じだと実感しています。

この記事は、自然検索流入を増やそうと情報発信に取り組んでいるものの成果が芳しくない方、あるいは現在の業務の進め方に不安を感じている方に向けて、見直しが必要な視点を提供するものです。もちろん、会社組織や予算、情報発信に対する上司や同僚の理解度など、それぞれの状況によって最適な対応方法は異なります。本記事が、皆さんがご自身で考えるための材料の一つとなれば幸いです。

 

SEOとコンテンツ制作業務をめぐるよくある失敗と解決案

 

「書ける」と「良い文章」の間にある大きな隔たり

日本語で文章を書くスキルと、「良い文章」を書くスキルは、まったく次元が異なります。この認識のズレこそが、クラウドソーシングや生成AIを利用して「効率的に記事を大量生産する」という発想に繋がりがちな要因の一つだと考えます。

ここで言う「良い文章」とは、「読者の心に響く」「ある話題について理解を深める」「ターゲット読者に深く刺さり、行動を促す」といった意味合いです。こうした”良い”コンテンツを実現するためには、文章を書く前の段階、つまり編集企画や構成、ストーリーテリングといった全体の設計が極めて重要になります。来訪するユーザーに読んでもらうのは、単なる情報ではなくストーリーであることを理解しなければなりません。

現状、ライティング業務に携わる多くのクラウドワーカーは、指定されたキーワードを含む日本語として整ったアウトプットは提供してくれます*1。しかし、**真に「良い」コンテンツを提供できる人はごく一部に限られます。**発注主側が企画の趣旨や狙いを考え抜き、それを明確に伝えることは稀ですし*2、受注側も報酬が発生しない業務は望まないからです。

もし社内に適切な人材がいないのであれば、知人や取引関係者からの紹介などを通じて、優秀なライターに継続的に仕事を依頼する方が良い結果に繋がるはずです*3

個人的には、あるトピックについてまとまった量の文章を作成する能力は、学生時代にどれだけ読書をしてきたのかに依存すると思います。つまり、社会人になるまであまり書籍を読んでおらず文章作成が苦手という意識を持っている方は、自分で制作するのではなく編集プロダクションや優秀なライターに依頼したほうがいいです。文章を書くコツがわからない人が、生成AIの出力した文章を手直しできるわけないじゃないですか

ところでその生成AIを活用して公開するコンテンツの大半を作成する手法は、少なくとも2025年7月現在では**実用的ではありません。**理由は2つあります。

第一に、生成AIの文章は情報として整っているものの、ストーリーテリングが苦手です。読み手であるオーディエンスの深い理解がなければ、彼らの認知や心情を捉えたデリバリーができません。AIはまだそこができません*4

第二に、ChatGPTやGeminiに尋ねて容易に得られるような情報と同じものを、わざわざウェブサイトで発信する必要性がありません。

1点目について、プロの編集者が書いた文章と生成AIが出力した文章の違いが分からないと感じる方もいるかもしれません。その場合は、皆さんが深い知見を持つ領域において、生成AIをフル活用しているであろうウェブコンテンツを読んでみてください。幸い、「生成AI SEOライティング」サービスを提供している会社の公式サイトには、導入した企業名や具体的なオウンドメディア名が記載されていることがあります。それらを参考に、実際のサイトを見て比較検討することをおすすめします。何がダメなのかわかるはずです*5

プロンプトを細かく調整したり、AIが出力した文章を人間が手直しすればいいと考えるかもしれませんが、ストーリーとは先述した通り企画趣旨や構成が大切です。AIはそれができないからどんなオーディエンスを想定したのか曖昧な企画趣旨や、金太郎飴のようなありきたりな構成案を提案しがちです。それを修正するということはAI生成記事の全体を修正することになり、「だったら自分でゼロから書いた方が早い」という結論になります*6

2点目については、ユーザーがAIチャットボットに尋ねれば容易に得られるような、あるいはそれ以下の品質の情報を自社サイトに置くことの意味を考える必要があります。ChatGPTやGeminiでは解決してくれない課題は何か? 自分たちが発信すべきユニークな情報は何か? 見込み顧客との信頼関係の醸成に必要なことは何か? こうした観点からウェブサイトのあり方を考えてみるのも良いでしょう。

 

オウンドメディアの運営目的が不明確なケース

最近私が相談に乗った案件のほぼすべてで、オウンドメディアを運営しているにもかかわらず**目的が明確に定まっていませんでした。**メディアを通じてユーザーに何を届けたいのかが不明確なだけでなく、そもそもユーザーがどんな検索行動をしているのか、具体的にどんな情報を求めているのかといった、ユーザーや市場の理解すら十分にされていない状態で運営されているケースが散見されました。

こうした状況を招く原因はシンプルです。事業KPIだけを現場に渡し、それ以外の管理指導が一切なされていないからです。現場担当者がコンテンツマーケティングに精通していれば、自身で必要な業務設計を行えるでしょう。しかし、多くの場合(適切な指示が与えられない組織では)、あまり知見のない方が担当にアサインされがちです。そのため、担当者が自身の業務目的やミッションを理解しないまま、会社からの指示だからと定期的に狙いが不明瞭なコンテンツを発信してしまう状況が生まれます。

また、KPIだけが上から降ってくるような組織は往々にして、オンラインにおけるコンテンツの真の意義を理解していません。単に「SEOで重要らしい」といった断片的な情報をどこかで聞きつけ、自社でもとりあえず始めてみよう、という程度の理解とノリで進行しているのです。だからこそ、検索順位やコンバージョンといった、現状の進捗度合いから見て計測指標として不適切なKPIが現場に渡され、担当者が困惑してしまうわけです。

この問題に直面した際、私は次の2つの対応を提案しています。

第一に、オウンドメディア運営に関与している関係者全員を集め、ミッションステートメントを明文化してもらいます。オウンドメディアが「どんなユーザーに向けて」「どんな情報を提供するのか」「その情報と接したユーザーにどうなってほしいのか」という3点を明確に定義するのです。

この狙いは、SEOを目的化した運営とそれに基づいた業務フローを排除し、適切な運営を継続するために必要な目標設定と、それを実現するための編集・企画フローを構築する土台作りをすることにあります。

つまり、SEOのためだけにコンテンツを作ろうとするからこそ、「検索ボリュームを調査する」→「検索ボリュームが多いキーワードを選ぶ」→「そのキーワードに関連したコンテンツを作る」→「検索上位に表示されているコンテンツをベースに作る」という、最悪の業務フローが生まれるのです。ここを根本的に見直すことから始めます。

先に挙げた3点を決定することで、自分たちが発信すべき情報の種類、求められる情報の品質、そして提供すべきストーリーを明確にできます。同時に、発信する必要がない情報や、自社における「良い」コンテンツの基準を定めることも可能になります。

戦略目標が明文化されると、複数人で運営されている場合でも、全員が同じ判断基準で意見を言えるようになります。完成したコンテンツについて「私たちはこういうメッセージを届けたいのだから、この段落は不要なのでは?」といった構成に関する具体的なフィードバックが可能になったり、社内から説明を求められた際にその情報構成に至った理由を自信を持って述べられるようにもなるでしょう。

私の講演レポートをまとめた以下の記事も参考にしてください。

 

business.hatenastaff.com

第二に、自分たちの事業領域におけるユーザー理解を深める機会を設けます。具体的には、メッセージを届けたいユーザーがどこにいるのかを考えることから始めます。多くの企業が検索対策をすれば売り上げが増えると信じていますが、リーチしたいユーザーは本当に検索プラットフォームにいるのか、という点から考えてもらうわけです。もしかしたら、TikTokやInstagram、YouTube、X(旧Twitter)、Facebookといった他のプラットフォームに、質の高い見込み顧客やファンになってくれるユーザーがいる可能性もあります。

その上で、検索が重要なチャネルであると結論付けられるのであれば、ユーザーがどんな検索をしているのか、具体的にどんな種類のキーワードで何を探しているのか、どんな情報が得られたらユーザーの課題は解決すると考えられるのかを社内で徹底的に話し合ってもらいます。このプロセスで検索語句を深く掘り下げることで、単に検索ボリュームや難易度だけで判断してはいけないということも同時に学んでもらっています。

 

自社における「良いコンテンツ」の定義づけ

Googleの公式発言でも「品質の高いコンテンツ」「ユーザーに有益なコンテンツ」といったフレーズが頻繁に登場します。では、”品質が高い””良い”コンテンツとは一体何でしょうか?

コンテンツが発信される目的や想定閲覧者によって、品質基準や求められる”良い”の基準は変化します。つまり、普遍的な”良い”を定義するのではなく、皆さん自身の組織やオウンドメディアにおける”良い”の定義が不可欠なのです。

オウンドメディア運営に着手する初期段階で、自社にとっての**「良い」を具体的に定義**してください。コンテンツ原稿を確認・修正する際は、その「良い」の定義と照らし合わせて判断することで、オウンドメディアで発信する情報全体の品質も高められます。

さて、「良い」を定義するのは非常に難しいものです。新聞社や出版業界で働く編集者の方であれば、ある程度自分の中での品質に対する意見を持っているかもしれませんが、一般の人は深く掘り下げて考えた経験がないでしょう。だからこそ、意図的に定義する必要があります。

参考になる資料としては、やはりGoogle General Guidelinesが挙げられます。

 

https://static.googleusercontent.com/media/guidelines.raterhub.com/ja//searchqualityevaluatorguidelines.pdf

 

Google General Guidelinesは、Google検索結果の品質を評価する仕事(Search Quality Rater)に従事する方々に対して、判断基準や考え方を示すことで、全員が同じ評価基準を持って検索結果を審査し、フィードバックできるようにすることを目的として作成された文書です。

この文書は、”良い”ページやコンテンツとは何かを考えるための資料として非常に有用です。ぜひ活用して、自社のオウンドメディアにおける定義を行ってください。

なお、SEOをきっかけにオウンドメディアを始めているにもかかわらず、Google General Guidelinesを読んだことがない方が非常に多いのはなぜでしょうか。現在は生成AIや自動翻訳を使えば非常に読みやすい日本語で目を通せるのですから、せめてPart 1 Page Quality Rating GuidelinesPart 2 Understanding Search User Needsだけでも読んでみることを強くお勧めします。

 

おわりに

このSEMリサーチはページ上部に「企業で働くウェブマスター向けに、インターネット検索やSEOの専門的な話題を扱います」と記載している通り、インハウスSEO担当者を想定読者として、その方々のSEO推進支援に役立つことを念頭にしています。このミッションを定めているから、自分で適切であると信じる企画や構成を選択することができます。これがないと何を書いていいのかわかりません。 だからこそ、オウンドメディアを運営するならミッションを設定することが重要なのです。

執筆時点の29年のキャリアのうち、私はその多くを代理店側で過ごしてきました。現在は本業として事業会社の組織全体のSEOを推進しながら、副業で一部の企業さまのSEOやインハウスSEO体制の構築支援に携わっています。様々な現場を見てきてはっきりと断言できるのは、ことコンテンツ制作・編集領域においては、組織規模にかかわらずほぼ同じ課題を抱えており、同じ原因によって誤った方向に突き進んでいる点です。この記事で指摘した問題に心当たりのある方がきっといらっしゃると思います。その方々の参考になれば幸いです。

 

おまけ

AIを利用して業務を進めるようになってから思考速度が落ちてきた気がします。リハビリのためにこの一週間立て続けに記事を執筆・公開しました。中断している書籍の執筆をいったん終わらせるためにも(必要な思考水準を維持するために)、情報発信を当面継続予定です。

 

 

www.sem-r.com

*1:生成AIを使った場合も同じです。キーワードとテーマ決めて、他サイトから構成を拝借して作らせているだけなので”ストーリー”が欠如してしまう

*2:企画を十分に考え抜き言語化できる人材が社内にいるなら、クラウドソーシングで発注しようという流れにならないでしょう。それが分からないからクラウドソーシングを選ぶのです

*3:何をもって優秀と判断するかという問題がでてきます。その意味でも信頼できる編集者の方に紹介してもらってください。

*4:3年後はどうなっているのでしょうか

*5:わからない人はコンテンツ制作編集業務をやってはいけない人だと思う。品質を判断できる人に委ねるか、自分自身で品質判断ができるように学ばなければならない。

*6:文章作成・編集能力が不足している人はその結論に到達できないか、見て見ぬ振りをするか、検索エンジンのことしか頭にないから、低品質なコンテンツをそのまま一般公開するという流れ




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